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2350 ら特集岡山弁護士会⑥

岡山弁護士会
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生活保護に関する偏見や差別を助長しない報道と,生活保護制度についての慎重な議論および適切な生活保護行政の実施を求める会長声明
1 人気芸能人の母親が生活保護を受給していたことについての報道を皮切りに,生活保護受給者に対する偏見につながる報道が続いている。
生活保護の不正受給が横行しているかのような報道,在日外国人が生活保護を受けていることが問題であるかのような報道,視聴者から寄せられた情報をもとにあたかも生活保護受給者の多くが資産や収入を隠しているかのような印象を与える報道がなされている。また,生活保護を受けることが恥であるかのような印象を与える報道も繰り返しなされている。
今回の一連の報道の発端となったケースでは生活保護制度における扶養の扱いが問題となった。この点については,生活保護法上,扶養については「民法に定める扶養義務者の扶養は保護に優先して行われるものとする。」と定められており(同法第4条2項),同法第4条1項のような「要件として」という文言があえて使用されていない。このことは,扶養義務者による扶養が実際に行われた場合にはその援助額だけ保護費を減額するということを意味しており,扶養義務者が扶養できないことは保護受給の要件ではないのである。これは,憲法第25条が生存権の保障を私的扶養の問題にせず,国の責務としているからである。
扶養義務者の扶養については,現在の運用においても,生活保護を申請すると原則として福祉事務所が親族に対して扶養の可否を尋ねる扱いがなされているが,これが障害となって保護を申請しない者が多数存在するとみられている。それにもかかわらず,扶養義務者の扶養をさらに強調することは,親族への負担や,親族関係の悪化への懸念から,生活困窮者が生活保護申請を断念する事態が更に広がる結果を招くおそれが大きい。
また,生活保護の不正受給は,金額ベースで全体の0.4%弱で推移しており,件数ベースでも2%弱で推移しているのであって*1,近年目立って増加しているという事実もない。
徐々に冷静な報道もみられつつあるものの,先に述べた一連の報道は生活保護受給者に対する偏見や差別を助長し,真に生活保護を必要としている国民の生存を脅かすことになる。
2 2012年(平成24年)5月25日,厚生労働大臣は,生活保護を実施する際の扶養義務者への調査権限の強化,生活保護基準の切り下げを検討すると表明した。また,6月26日に衆議院で可決された社会保障制度改革推進法案では,「安定した財源を確保しつつ受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図る」(同法案第1条)と謳ったうえで,「家族相互及び国民相互の助け合いの仕組み」を通じて社会保障制度改革を実施していくとしており(同法案第2条1号),家族や国民の自助を強調している。さらに,同法案では,生活保護の「不正受給への厳格な対処」や「給付水準の適正化」などの見直しを実施するとされている。
ところで,生活保護利用者数は増えているものの,総人口に占める利用者の割合を示す利用率は1.6パーセントで*2,先進諸国との比較でもいまだ利用率は非常に低い状態である*3。また,保護を必要としている世帯のうち実際に保護を利用している世帯の率,すなわち捕捉率は15.3?18%程度と推定されており*4,捕捉率も先進諸国との比較で非常に低い*5。さらに,厚生労働省の2009年(平成21年)の調査によれば,等価可処分所得の中央値は250万円で,その半分にあたる125万円未満の人の割合である相対的貧困率は16%であり*6,2005年(平成17年)段階でもOECD加盟国30カ国の中で,日本の相対的貧困率は,メキシコ,トルコ,アメリカに次いで4番目に高いとされている*7。非正規雇用の拡大によって雇用が不安定化し,格差と貧困が広がっているというのが日本の現状である。
以上の現状を踏まえるならば,今後,上記一連の報道に便乗して安易な生活保護基準の切り下げや受給抑制策がなされてはならない。生活保護基準については2011年(平成23年)2月にすでに社会保障審議会に生活保護基準部会が設置され,生活困窮者の生活支援戦略については2012年(平成24年)5月から社会保障審議会に特別部会が設置され,それぞれ議論が進められているが,政府,国会,および,生活保護実施自治体は,過熱する報道に惑わされることなく,生活困窮者の実態調査に基づいて慎重に生活保護制度を含めた生活困窮者支援制度の在り方を検討する議論を深め,適切な生活保護行政の実施に当たるべきである。
3 以上の通り,当会は,報道機関に対して生活保護受給者に対する偏見や差別を助長することのない配慮ある報道を求めると共に,政府,国会,および生活保護実施自治体に対して生活保護制度についての慎重な議論と適切な生活保護行政の実施を求める。以上
*1平成24年3月厚生労働省社会・援護局関係主管課長会議資料。
*2福祉行政報告例に記載の被保護人員実人員数を,総務省統計局発表の人口統計で割って率を算出。平成24年3月時点。
*3利用率について,ドイツ9.7%,フランス5.7%,イギリス9.2%など。いずれも2010年(平成22年)時点。「生活保護『改革』ここが焦点だ!」(生活保護問題対策全国会議編集)より。
*42007年国民生活基礎調査に基づく推計。
*5捕捉率について,ドイツ64%,フランス91%,イギリス47%以上など。いずれも2010年時点。「生活保護『改革』ここが焦点だ!」(生活保護問題対策全国会議編集)より。
*6平成23年7月厚生労働省・大臣官房統計情報部社会統計課国民生活基礎調査室発表
「平成22年 国民生活基礎調査の概況」より。
*72005年OECD 調査。OECD 2008「Growing Unequal? Income Distribution and Poverty in OECD Countries.」より。
2012(平成24)年8月8日
岡山弁護士会 会長 火 矢 悦 治

秘密保全法制に反対する会長声明
平成23年8月8日,秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議は,「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」を発表し,政府における情報保全に関する検討委員会は,同報告書に基づき法案化作業を進めている。
しかし,同報告書が整備を求める秘密保全法制(以下「当該秘密保全法制」という。)は,以下に述べるとおり,立法を必要とする理由を欠くものであり,また,国民主権原理から要請される知る権利などの憲法上重要な諸原理と正面から衝突するものであるから,当会は,その制定に強く反対する。
1 当該秘密保全法制は,いわゆる尖閣沖漁船衝突事件に係る情報漏えいを契機とし,その内容は,「特別秘密」に指定された情報の公開を制限するとともに,その実効性を担保するために,新たに刑罰や適性評価制度と称する人的管理制度を創設するものである。
しかし,上記事件で問題となった情報は本来国民に公開すべきものであるし,ネットワークを通じた流出の原因も当該映像に対する物的管理が不十分であったことにあるから,上記事件は新たな法整備や人的管理の必要性を基礎づけるものではない。また,自衛隊法,日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法,国家公務員法等の現行法制及び運用実態に照らせば,新たな犯罪類型の法定や厳罰化の必要もない。
このように,当該秘密保全法制は,そもそも立法を必要とする理由を欠くものと言わざるを得ない。
2 当該秘密保全法制の中核は,行政機関が,(1)国の安全,(2)外交,(3)公共の安全及び秩序の維持に関する分野で「特別秘密」に指定した情報の公開を制限することである。
しかし,規制の鍵となる「特別秘密」の定義自体が広範かつ不明確である。また,その指定権者は「特別秘密」を作成・取得する行政機関とされており,指定の適法性を事後的に検証する仕組みもない。
したがって,時の政府が,恣意的に指定権を行使して本来国民が知るべき情報を隠す懸念が極めて大きく,国民にはこのような運用の有無を検証し是正する機会が与えられていない。その結果,国民主権原理の要請でもある「知る権利」が不当に制約されることになる。
3 当該秘密保全法制は,その実効性を担保するため,特別秘密の故意の漏洩行為,過失の漏洩行為,特定取得行為,未遂行為,共謀行為,独立教唆行為,扇動行為を処罰対象とする。
しかし,保護対象である「特別秘密」概念自体が過度に広範かつ不明確であることに加え,過失の漏洩行為,共謀行為,独立教唆行為及び扇動行為という各行為の外延も不明確であるため,犯罪構成要件が極めて曖昧であり,罪刑法定主義と行為責任主義という憲法上の要請や近代刑法の基本原理に反する。
また,当該秘密保全法制の犯罪構成要件は極めて曖昧であって,報道機関は,取材活動が特定取得行為等として処罰対象となるか否かを予測できない。
さらに,その法定刑の上限は懲役5年又は10年とされているため,同法制が,報道機関の取材の自由に及ぼす萎縮効果は図りしれない。また,「特別秘密」の対象には民間事業者や大学等が作成・取得するものも含まれているところ,科学技術や重要な政策に関する自由な発言・批判も萎縮させられる危険があるといわざるをえない。
このように,当該秘密保全法制は,民主主義を支える取材・報道の自由を始めとする表現の自由等国民に保障された憲法上の諸権利を不当に制約するものである。
4 当該秘密保全法制は,特別秘密の管理を徹底するためとして,「特別秘密」の取扱者となりうるものを対象とした適性評価を実施するための事前調査と評価の制度を導入しようとしている。しかし,調査対象者には配偶者など家族が含まれており,極めて広範になるとともに,調査事項も対象者のプライバシーに関わる情報や,運用次第では私人としての活動全般にまで及ぶおそれもあり,調査方法も第三者機関への照会まで含んでおり,調査対象者が関係していた私的な団体にまで調査が行われる危険がある。したがって,適性評価調査は,調査対象者のプライバシーの権利を侵害するほか,調査を口実に思想調査が行われ,思想信条の自由が侵害される危険性が極めて高いなど,人権保障上看過し難い問題をはらんでいる。
5 当該秘密保全法制に違反して起訴された場合,その国家秘密が公開の法廷で公開されればそれはたちどころに秘密ではなくなることから無意味であるし,逆に,特別秘密が非公開のまま裁判が進行すれば,憲法に定められた公開原則に違反し,さらには被告人・弁護人の防御権行使を困難なものとさせ,裁判を受ける権利を侵害することになる。
以上のとおり,当会は,当該秘密保全法制の制定に対して強く反対するものである。
2012(平成24)年5月10日
岡山弁護士会 会長 火 矢 悦 治

死刑執行に関する会長声明
2012(平成24)年3月29日、東京拘置所において1名、広島拘置所において1名、福岡拘置所において1名の合計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、1年8か月間中断していた死刑の執行が再開されたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。国際社会においては、死刑廃止が潮流となっている。日本政府は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。
日本弁護士連合会は、2011(平成23)年10月7日に「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を決議し、「直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し、その議論の間、死刑の執行を停止すること」などを求めている。
当会においても、2011(平成23)年5月28日に憲法記念県民集会「いま、「死刑」を考える」を開催し、約200名の参加を得た。
このように、死刑の存否をめぐって社会全体で議論がなされている状況の中、死刑執行が再開されたことは極めて遺憾である。
また、議論の前提となる死刑執行の基準、手続、方法等死刑制度に関する情報は現在においてもほとんど公表されていない。昨年、当会の実施した上記集会のアンケートにおいても、「死刑制度について全く知らず、そういうことを知っていかないと、裁判員もできないと思う。」「公にされていない死刑制度についてもっと公開してほしいと思います。」等死刑制度に関する情報公開を求める意見が寄せられている。
法務省内部で行われてきた「死刑の在り方についての勉強会」が終了し、その報告書が公表されたが、死刑制度に関する新たな情報の公開を伴うものではなく、死刑制度賛成論・廃止論の論点整理にとどまっており、到底、死刑の廃止について全社会的議論がなされているとは言えないことは明らかである。
当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、わが国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2012(平成24)年4月2日
岡山弁護士会 会長 火 矢 悦 治

岡山弁護士会ハンセン病問題を考える集会における集会決議
平成23年11月 6日
集会参加者一同
本日、岡山弁護士会主催によりハンセン病問題について考える集会「ハンセン病のことを知っていますか??今も残る課題」が開催された。
今から10年前の平成13年5月11日、熊本地方裁判所は、「らい予防法」及びこれに基づく国の隔離政策が違憲であり、国に法的責任があることを認める判決を言い渡し、国は控訴を断念しこの判決は確定した。
この判決を受けて、国は、「13の国立ハンセン病療養所入所者(今後入所する者を含む)が在園を希望する場合には、その意思に反して退所、転園させることなく、終生の在園を保障するとともに、社会の中で生活するのと遜色のない水準を確保するため、入所者の生活環境及び医療の整備を行うよう最大限努める」ことを確約した。
ところで、平成13年当時、全国13の国立療養所の入所者は4400名と言われていたが、現在では、入所者数はすでに3000名を大きく下回っており、入所者の平均年齢も80歳を超えている。10年後には、入所者数はさらに3分の1以下になるとも言われている。
このような急速な高齢化と入所者数減少の中、医師等医療職の定員の確保が困難な状況も生じており、ハンセン病療養所は、医療体制及び生活水準の確保が緊急の課題となっている。
平成20年6月18日、「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」(ハンセン病問題基本法)が制定された。そして、同法第12条第1項において、「国は、入所者の生活環境が地域社会から孤立することがないようにする等入所者の良好な生活環境の確保を図るため、国立ハンセン病療養所の土地、建物、設備等を地方公共団体又は地域住民等の利用に供する等必要な措置を講じることができる。」と規定され、ハンセン病療養所を地域に開かれた施設となすべく法的整備がなされた。
ハンセン病問題基本法の成立を受け、岡山県にある2つの国立ハンセン病療養所長島愛生園及び邑久光明園は、平成23年3月、各園独自の将来構想を策定し公表している。
これらの将来構想は、高齢化したハンセン病療養所入所者の努力のみで到底実現できるものではなく、県民、国、地方自治体及び各種団体が力を結集して初めて実現可能なものである。
本日の集会において、参加者は、ハンセン病問題の深刻さ及び将来構想実現の緊急性・必要性を学んだ。
本日の集会参加者一同は、県民、国、地方自治体及び各種団体と力を合わせて長島愛生園及び邑久光明園の将来構想実現に向けて取り組むことを決意しここに決議する。以上

国選弁護報酬基準及びその運用の抜本的見直しを求める会長声明
日本司法支援センター(以下「法テラス」という。)は,2006年(平成18年)10月に業務を開始し,刑事事件については,法テラスが国選弁護人になろうとする弁護士との間で契約を締結し,国選弁護人候補の指名及び裁判所への通知,国選弁護人に対する報酬及び費用の支払いなどの業務を行うこととなった。そして,国選弁護人に対する報酬及び費用の支払いは,国選弁護人が活動終了後に法テラスへ報告書を提出し,法テラスが国選弁護人の報酬及び費用を算定して,その結果を国選弁護人へ通知し,支払いを行うという仕組みになっている。
この国選弁護人に対する報酬の算定に関して,先般,当会所属の弁護士が担当した国選弁護事件につき,次のような事例があった。
被疑事実の要旨は,被疑者がA金融機関において,Bが同所に設置の現金自動預払機から取り忘れたA金融機関代表者管理にかかる現金5万円を窃取したというものである。そこで,国選弁護人は,Bに対して5万円を支払って示談を成立させ,同人から被疑者に対する減刑嘆願書を受領し,示談書及び減刑嘆願書を検察官に提出するという活動を行った。その結果,被疑者は不起訴処分となって釈放された。
これに対し,法テラス本部は,「本件の被疑事実は金融機関が占有を取得したものとして構成されているため,本件窃盗の被疑事実に係る被害者はBではなくA金融機関とみざるをえず,Bとの間で示談を成立させ,減刑嘆願書を取得したことは弁護活動として評価できるところではあるが,現行報酬基準では算定することはできない」として,示談等の成立に関する特別成果加算報酬を0円と算定した。
しかしながら,上記事例において,A金融機関からBへの補填はなされておらず,実質的な被害者は現金を取り忘れたBであることは明らかであって,Bとの間で被害弁償等の交渉を行った国選弁護人の活動は常識的かつ正当なものであり,また,その活動が不起訴処分という結果に結びついたといえる。他方,経済的被害が生じていないA金融機関との間で被害弁償等の交渉を行うことは,無意味である。
にもかかわらず,法テラスが形式的な判断をし,特別成果加算報酬を0円と算定したことは,国選弁護人の活動を否定するに等しく,実質的にも極めて不合理である。
当会は,2009年(平成21年)8月にも,国選弁護事件における私的鑑定費用等の支払いに関して会長声明を発表したが,未だこの点に関する法テラスの報酬基準は改められていない。
また,徐々に改正されてはいるものの,依然として,保釈や無罪等に関する特別成果加算報酬の金額は低いと言わざるを得ないし,起訴後の接見回数が全く報酬に反映されない,被疑者段階の接見回数においても報酬算定のうえで基準回数が設定されている,特急料金や謄写料等の実費も全額が支払われないなど,法テラスの報酬基準には多くの問題が残されている。
当会は,法テラスに対し,国選弁護人の活動が正当に評価され,報酬に反映されるよう,国選弁護報酬基準及びその運用の抜本的見直しを強く求めるものである。
2011年(平成23年)10月12日
岡山弁護士会 会長  的  場  真  介

給費制の存続を求める会長声明
現在,政府の「法曹の養成に関するフォーラム」において司法修習生の給費制の存廃問題が論議されている。
現在給費制に代わるものとして検討されている貸与制については?「違法の疑い」があり,?司法修習生に著しい困苦を強い,?若者の司法離れに拍車をかける ものであり,?信頼性の高い弁護士制度を国民のために整備し提供する国の責務についての自覚を忘れた提案であるから,当会は,これに強く反対するものである。
1,貸与制移行に違法の疑いありとする理由
(1)国家公務員に労働基準法は適用はない。(※1)司法修習生は国家公務員ではないが国家公務員に準じた立場とされ(※2),労働基本法が直ちに適用されることはないと考えられている。しかし,国家公務員といえども「憲法上の労働者」(※3)だから,最低民間並みの保障は与えなければならない。国家公務員に労働基準法が適用されなくてよいとされるのは,一般的には国家公務員には民間より手厚い身分保障制度が提供されているからだとされる。司法修習生にはこれまでは給費制があったから労働基準法69条をわざわざ適用して保護する必要もなかっただけである。しかし,給費制をやめて無給(貸与制)にするとなると話は別である。
(2)民間企業が新入社員に「新人研修の間の生活資金を無利子で貸してあげるから入社後1年間は無給で新人研修を受けて。」というようなことを言うと,労働基準法第69条違反や24条違反ということで叱られることになる。労働基準法第69条は「使用者は,徒弟,見習,養成工その他名称の如何を問わず,技能の習得を目的とする者であることを理由として,労働者を酷使してはならない。」という社会のルールであり,要するに「研修中」「見習」だからといって労働の対価を与えずに労働させてはいけないということである。
(3)最高裁が修習生に修習専念義務を課し,アルバイトも禁止している以上,司法修習生を1年間も拘束し,その間に転勤まで求めながら,何らの給与も与えないということになると,民間労働者についての労働基準法第69条の基準すら下回るような過酷な扱いをすることになるから,労働基準法69条に準じたルールに照らして違法とされる疑いがある。
(4)司法修習生は,学生と労働者との中間的な存在であり,単純にどちらと割りきることは困難だが,少なくとも労働者の一面を完全には否定できない以上(検察官の不足を補う方法として修習生に公判立会の権限を与えることさえ検討されたことがある。※4),上のように考えるべきである。
このような考え方に対しては,司法修習生は学生の色彩が強いのであり,学生と見るならば奨学金のような貸与制でよいという反対もあるが,2つの理由からこの考え方はとれない。
1つめの理由は,昭和22年に司法修習制度ができた時の時代背景である。制度の設計者は,アメリカのロースクール制度を強く意識したはずである。ロース クールを出た者は弁護士登録が可能になり,弁護士としてキャリアを積んだ者の中から優れた者を判事や検事に登用するというシステムを意識しつつ,弁護士資格を得させる時期を敢えて2年間遅らせて,そこに統一修習期間を置いたわけである。弁護士として収入を得る可能性を国の政策で2年間を奪うという側面がある以上は,生活補償を与えることになるのは自然な判断だったのではないか。そして,このような自然な判断を今日修正する合理性はないのではないか。(※ 5)
2つめの理由は,修習生の修習専念義務が重く,アルバイトが禁止され,遠隔地への転勤が予測されていることなど時間的,場所的な拘束の程度が著しいことがあげられる。
(5)給費制を維持しつつ給費額を減額するような選択もありうるが,生活補償に必要な額,どの程度の修習専念義務を負わせることが必要か,生活資金の貸与との組み合わせなどを慎重に考慮すべきである。
(a)ドイツの例
ドイツ(ベルリン)では給費制(月10万円程度らしい)であるが,修習専念義務とはいいながら,週8時間まで副業が認めており,法律家的な副業(弁護士事 務所の手伝い等)については,週10時間まで許可されるということである。十分な生活補償はできないことについては,専念義務を緩和してバランスをとろうとしているようにも見える。義務付けはそのままで貸与制に移行するといった議論はいかにも乱暴である。
(b)日本においては,修習専念義務は堅持されるべきである。我が国においては,修習専念義務は堅持されるべきである。短縮された1年という修習期間はあまりにも短く,修習生が学ぶべき事はあまりにも多いのであって,アルバイトをしながらの片手間の修習で到底間に合わない。そうだとすれば,生活補償に十分な水準の給費制を維持するのが最善策であり,その限りでは生 活資金の貸与との組み合わせは不要である。
2,司法修習生に著しい困苦を強い,若者の司法離れに拍車をかけるものである。
(1)2010年(平成22年)の新司法試験の合格者(2074名)の平均年齢は29.07歳であり,法科大学院を卒業した者である。既婚者も少なくない。既に実社会で活躍した人材も含まれている。
(2)「300万円貸してあげるから,それで修習の1年間を生活してください。貸した資金は5年据え置きで10年かけて返してくれたらいいから」という貸与制はしょせん借金でしかない。修習専念義務を課せられるため1年間「無職」の借金生活者になることを余儀なくされ,実務修習地次第では遠隔地への転勤(場合によっては単身赴任)を強いられる司法修習生への補償が「貸与制」という名の借金だけというのはあまりに過酷である。4年制大学卒業後,最低2年 (多くの者は3年)以上法科大学院で勉学してきた修習生は平均で300万円,多い人は1200万円もの奨学金債務を抱えている。それでも数年前までは法曹 資格を得て法律事務所に就職すればこういった借金も返せたであろう。しかし,現在は弁護士激増のあおりで一括登録時点で就職先がないため立ちすくんでしま う者(登録未了者)が1割以上出ており,しかも登録している者の中にも「軒弁(※5)」「即独(※6)」と呼ばれる「イソ弁(※7)」以外の態様の者がおり,彼らが十分な収入を得ていけるとは考えにくい。加えて,就職ができた者が手にできる「イソ弁」の給料額も一部で暴落している。こういった中から奨学金 等の借金の返済に困難をきたす者が少なからず出る可能性がある。苦労して法曹資格を得てもちっとも報われないという残酷話である。
(3)多くの才能と情熱ある修習生が就職難に苦しんでいる。司法試験の合格者はずっと年500人くらいのペースであったのが,年2000人程度に増加した 結果であり,彼らの怠慢のせいにすることは適切ではない。司法修習生の就職難をもたらした弁護士人口の激増は,修習生を雇って教育する側の既存弁護士の経営基盤の弱体化をもたらしており,それが修習生の就職難をさらに悪化させるという悪循環に陥っている。その結果,法科大学院の志願者も減っている。優秀な若者が法曹に大きな夢を抱いてどんどん集まってくるという状況ではない。法曹人口の増加によって,競争を生み出し,競争によって安価で良質な法的サービス が供給されるという目論見が外れたのは明らかである。弁護士という職業の魅力自体が揺らいでおり,競争参加者が減少することで,適正な競争を成り立たせる 条件自体が失われつつある。給費制廃止は,法曹志願者の減少にますます拍車をかけ,法曹養成制度の危機をさらに深刻化させる愚行である。
3,信頼性の高い弁護士制度を国民のために整備し提供する国の責務
(1)司法修習制度を国費で行うのは,実務経験を積ませ,社会正義と人権の守り手に鍛え上げるための最終過程だからである。弁護士が特別偉いわけでも何でもないが,ただ弁護士は社会とその構成員を社会生活上のリスクから守るための実力装置として訓練され社会の中に配置される存在である。同じく国民をリスクから守るための基本的なインフラとしては医師,自衛官,警察などがあるが,このような安全のための基本的なインフラについては国(警察については地方自治体)が整備して国民に提供してきた。
弁護士制度については国が責任をもって整備しなくても大丈夫な状況が生まれたのかというとそのような状況にはなっていない。それどころか,複雑化する社会の中で,その必要は増大している。社会の仕組みから事前規制の仕掛けが解除され,事後規制の社会に舵を切る一連の政策変更があったことによって,国民が新 種の社会リスクによるトラブルに巻き込まれる危険が増すことが確実に予測され,これへの対処も弁護士増員の理由のひとつであった。一方で,国民のリスクの増大が予測される重大な政策変更をし,その手当てとして弁護士大増員を決めておきながら,他方で法曹養成制度を支えていた給費制を切り捨てることは,国民の安全を守るという基準に照らすと正反対のことをやろうとしているようにも見える。「司法試験合格者を大増員すると司法修習にかかる費用が増大して負担が大変だから,給費制はもう止めよう」という話はかなり短絡的であり,大きな司法を目指す本来の司法制度改革の理念とも文脈が違う議論のようである。また,少なくとも自然界では環境がよくなって餌が増えたときに,動物は大増殖するのが摂理であり,環境が悪いときに何かの間違いで大増殖をした種は大飢餓に陥るのである。残念ながら我が弁護士業界は長期の不況の最中に大増殖のスイッチを入れるとどういうことになるかを身をもって実験しつつある。そして,飢餓の影響をまともに受けているのが我々の卵であり雛鳥たちである。今給費制を打ち切ることは,正義感に溢れ才能豊かな若者たちを大虐殺するような愚行であると考 える。
(2)我々が住むこの社会は,社会的なトラブル(犯罪,インチキ商法,投機的取引,多重債務などなど)に遭遇するリスクにあふれている。そして,飽くなき人間の欲望は次から次に新種のリスクを生み出していき,インターネットなどによって瞬く間に社会に蔓延し甚大な被害を発生させることも多くなっている。新たな社会リスクにもっとも敏感に感知して動くのが弁護士であり,リスクへの応急処置をしながら,場合によっては立法・行政を動かしてリスクを押さえ込もうという働きをすることを期待されている。サラ金地獄,豊田商事事件,霊感商法,オウム真理教事件など激甚な社会リスクが発生した際に弁護士が果たした役割 を想起されたい。弁護士がそのような役割をごく自然に果たせるのは,その弁護士の資質や考え方もあろうが,実は司法修習時代に植え付けられた使命感に従って行動している部分も少なからずある。
4,大震災と給費制維持
(1)今回の大震災にあたり,日弁連は二重ローン解消などを強く提唱している。また,各地から弁護士が被災地に集まって,被災地の弁護士と共に懸命に法律相談活動を展開している。
(2)未曾有の大震災と原発被害によって発生した強烈な衝撃波は,これを放置すれば被災地に深刻な企業倒産,多重債務被害,家庭崩壊など連鎖的に引き起こし,被災地を食い物にしようとする犯罪者,悪徳業者までがからんで,惨劇の第二幕が開いてしまう。これを何とか食い止める闘いが続いている。東北地方に は,冷害など天災の度に多数の餓死者等を発生させた悲しい歴史がある。そういった悲劇だけはなんとしても防がなければならない。医師が疫病の蔓延による悲劇を防ごうと活動しているのと同じように,弁護士も悲劇の拡大を食い止めるための活動をしなければならない。
(3)大震災が今後日本各地に派生させる様々な社会病理の激増を予見してこれに対処する弁護士の活動が必要な時に,「震災被害と財政難の中,税金を投入するための国民の理解が得られない。」といった理由で給費制廃止の議論をしなければならないのは何とも情けないことである。
(4)こういう時にこそ,昭和22年に司法修習制度ができてから永々と給費制を維持して築き上げてきた弁護士制度が社会のためにどのように機能してきたかを検証されてしかるべきである。(5)私たちの岡山弁護士会からも遠く離れた東北の被災地に相談員を送る計画があり,47人が志願して待機している。弁護士は自分達を大切に育んでくれた社会のことを決して忘れないのである。
(6)司法修習制度が始まったのは,昭和22年のことと聞いている。焦土と化した我が国をこれから復興していこうとした時,先人は,弁護士制度を含む司法を再構築する必要性を重視して乏しい国家財政にもかかわらず,給費制で司法修習制度を創設した。今回の大震災は,多くの国民の幸福を破壊し,しかも今なお その破壊は進行中である。
司法修習生の給費制を維持するかどうかについて世論に配慮することももちろん必要だろう。しかし,国民の安全を守るための基本的インフラを整備して提供する国の責務について国の見識と断固たる意思を示すべきである。
5,他の制度との比較?医師臨床研修制度の場合
(1)医師臨床研修制度
(a)国が研修に国庫支出をする制度はいくつかあるが,その中でも医師臨床研修制度(但し,国から直接研修医に支給されるのではなく,研修先医療機関に対し,研修医に対して研修を実施し,給与を支給するために補助金が支給されている。)を取り上げて比較してみたい。(※8)
(b)研修医は既に医師なのであり法曹の卵にすぎない修習生と同列に論じることは慎重にしなければならないが,研修医が既に医師だからといって,「研修制 度を修了した医師」という個人資格を取得するための給料を国庫から出せるということには直ちにならないから,研修医と司法修習生を比較する有用性は失われ ない。なお,有給の研修医制度を構築する際には既に古くからあった司法修習制度も参考にされたようである。
(c)医師の場合は,国家試験合格後2年間研修医として臨床を体験することが必要とされており,現在は月30万円程度の給与を得ながら研修医として勤務することになる。この勤務医の給与の原資は国庫から支出されている。研修医は,臨床研修専念義務(医師法16条の3)を負う。2004年(平成16年)までは,研修医は無給であり,当直医などのアルバイトをして生計を立てる者が多かったが,医師臨床研修制度が見直され,研修専念義務が新設されるとともに有給となった。(なお,「研修医の身分の安定及び労働条件の向上に努めること」 などを求めた平成12月11月の第150回国会参議院国民福祉委員会附帯決議が参考になる。また「新医師臨床研修の基本3原則」という中に「アルバイトせずに研修に専念できる環境を整備」という項目がある。)
(2)制度の比較
(a)医師制度も弁護士制度も,国民にとって基本的な社会インフラであるがゆえに,国家がその制度の整備に直接に責任を持ってきた。
(b)「アルバイトせずに研修に専念できる環境を整備」していこうという新医師臨床研修と比較しても,司法修習の貸与制は,あまりにも劣悪な扱いであり,国の制度として整合性があるかも疑問である。
(c)司法修習制度の制度が作られたのは,法曹資格を付与する前に一定の実務修習・臨床経験を積ませることが不可欠と考えられたからである。研修医の場合も臨床経験を積ませようという制度の目的は共通である。
研修医制度ができる以前は,インターン制度だったが,インターン生は国家試験前の学生でありインターンが国家試験の受験要件とされた。インターン制度は廃止され,無給の研修医制度に代わり,それが平成16年から有給の研修医制度に変わった。ここに臨床体験を積ませるための研修制度であっても無給ではいけないという理解の深化が見てとれる。
有給の研修医制度はできてからまだ日が浅い制度であるが,大震災だからこれを無給に戻すべきだという議論も聞かない。
6,結語
当会は,貸与制については,以上述べたとおり,?「違法の疑い」があり,?司法修習生に著しい困苦を強い,?若者の司法離れに拍車をかけるものであり,? 信頼性の高い弁護士制度を国民のために整備し提供する国の責務についての自覚を忘れた提案と考えるから,給費制の存続を強く求めるものである。
2011(平成23)年7月13日
岡山弁護士会 会長  的  場  真  介
脚注
※1 国家公務員法附則16条は,「労働組合法,労働関係調整法,労働基 準法,船員法,最低賃金法,じん肺法,労働安全衛生法及び船員災害防止活動の促進に関する法律並びにこれらに基づいて発せられる命令は,第2条の一般職に 属する職員には,これを適用しない。」と定めているので,国家公務員に労働基準法の適用はない。しかし,司法修習生については,国家公務員ではないのだか ら,労働基準法の適用を否定する明確な根拠はない。
※2 最高裁のホームページでは,「司法修習生は,国家公務員ではありませんが,これに準じた身分にあるものとして取り扱われ,国から一定額の給与が支給されます(裁判所法第67条第2項)」と説明されている。
裁判所法第67条第2項は,「司法修習生は,その修習期間中,国庫から一 定額の給与を受ける。」と規定するだけである。
※3 全農林警職法事件・最大判昭和48年4月25日刑集27巻4号547頁 ※4 昭和23年03月29日の衆議院司法委員会における佐藤政府委員の発言
検察庁の人手不足対策に関して,「司法修習生が区檢察廳の立会をなすこと ができるようにするとか,あるいは地方檢察廳の立会までもできるようにしたらどうか,というような意見もありますので,その点については,目下研究をいたしておる次第であります。」このような政府委員の発言は司法修習生が純粋な学生とは異質な存在であったことを示している。
※5 「司法修習生=非法曹=学生」→「学生=無給」→「奨学金=貸与制で十分」という推論は,元々「司法修習生=非法曹」である必然性がない(「司法修習生=非法曹」はある法曹養成政策を選択した結果でしかない。)ことを見落としている。
司法修習生の「統一修習」は,法曹一元的な色彩を持つ一方で,経験を積んだ弁護士の中から判事・検事を登用するシステムを忌避するための妥協として生まれた制度という見方もあるが,法曹の質を高めるうえでは優れた制度であった。しかし,給費制の存廃が再検討されている時期なのであるから,キャリアを積んだ 弁護士の中から判事・検事を登用する法曹一元システムを本格的に導入することをあらためて正面から議論し直されてよいのではないか。
※6 「軒先を借りる弁護士」の意。「ノキ弁」とも書く。既存の法律事務所の一部を借りて机と電話を置き,営業を始める新米弁護士。給料は出ない。
※7 新規登録と同時に独立開業する弁護士。
※8 弁護士事務所に勤めている弁護士のこと。弁護士事務所に居候している弁護士なので「イソ弁」という説などがある。
※9 研修医制度については,厚生労働省 医師臨床研修制度のホームページを主に参考にした。ttp://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/rinsyo/

修習生給費制会長声明
平成22年11月26日、司法修習生に対する貸与制の施行を1年間停止し、給与の支給を行うこととする「裁判所法の一部を改正する法律」が成立した。これにより昨年採用された新64期司法修習生は、従前と同様、給与の支給を受けられることになった。
当会は、署名活動、地元選出国会議員への要請活動、緊急市民集会など、司法修習生に対し給与を支給する制度(給費制)の存続に向けて運動を展開してきたところ、今回の法改正は、完全な給費制の復活とはならなかったものの、これまでの当会の運動方針に沿うものである。当会の運動方針をご理解いただき、署名等にご協力いただいた県民の皆様、報道等にご協力いただいたマスコミの皆様、問題の本質をご理解いただき、裁判所法の改正にご尽力いただいた各政党及び国会議員の皆様に心より感謝申し上げる次第である。
しかしながら、今回の法改正による給費制の延長期間は1年間のみであり、その附帯決議においては、その間に「法曹の養成に関する制度の在り方全体について速やかに検討を加え、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずること」が求められている。
そこで、当会としては、政府及び最高裁判所に対し、司法修習生に対する財政的支援の在り方や、法曹養成制度全体の在り方を検討する組織を直ちに設置するとともに、法曹が、国が費用を支出してでも養成すべき社会資源であることに鑑み、法曹志望者が経済的理由から法曹への途を断念することのないよう、平成23年11月以降も給費制が維持・存続される措置をとるよう、強く求めるものである。
2011(平成23)年1月12日
岡山弁護士会 会長  河 村 英 紀

秋田弁護士会所属弁護士殺害に関する会長声明
本年11月4日,秋田弁護士会会員で日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長を務めていた津谷裕貴弁護士が,同弁護士の自宅を訪れた男性により,刃物で刺され死亡するという事件が発生した。事件の詳細は明らかでないものの,報道によると,その男性は,かつて津谷弁護士が受任していた調停事件の相手方であったとのことであり,弁護士業務に関連する事件である疑いが強い。
また,本年6月にも,横浜弁護士会会員の前野義広弁護士が,事件の相手方に法律事務所内で刃物で刺され死亡するという事件が発生している。
このような行為は,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の職務を暴力でもって妨害しようとする卑劣極まりないものであり,司法制度や法秩序に対する重大な挑戦であって断じて許されない。
当会は,津谷弁護士の御冥福を祈り,その御遺族に対し深い哀悼の意をささげるものである。そして,このような暴力による卑劣な弁護士業務妨害行為に対して毅然と闘い,今後も,弁護士の使命である基本的人権の擁護と社会正義の実現のため全力を尽くす決意であることをここに表明する。
2010(平成22)年11月10日
岡山弁護士会 会 長  河 村 英 紀

給費制に関する会長声明
平成22年11月から、司法修習生に給与を支給する給費制が廃止され、必要な者に生活資金を貸与する貸与制が実施されることが予定されている。当会は、平成21年9月9日、給費制の継続を求める会長声明を出したが、いよいよ現実に給費制が廃止されるのが目前に迫ろうとしている現時点で、司法修習生の給与給費制を堅持すべきことを、改めて強く求めるものである。
1給費制の存在意義
裁判官、検察官、弁護士になるためには、司法試験に合格後に、司法修習を終えることが必要とされているところ、この司法修習は、裁判官、検察官、弁護士のいずれの道に進む者に対しても同じカリキュラムで行われ、法律実務に関する知識等のみならず、法曹としての高い職業意識と倫理観の修得も目的としている。そして、司法修習生には、修習に専念すべき義務が課されている。
司法修習生に対する給与給費制は、この司法修習制度の創設以来、これと不可分一体のものとして採用され、すべての司法修習生が貧富の差に関係なく司法修習に専念することを可能にし、法曹三者の統一修習を経済的側面から支えてきたものであり、この給費制があればこそ、あらゆる経済的階層から有為で多様な人材が法曹界に輩出されてきたのである。
2給費制廃止の弊害
法科大学院制度が導入され、法曹を志す者は司法修習生となるまでに多大な経済的負担を追っている現状の下で、給費制を廃止すると、司法修習中にも更に約300万円の負債を生じさせることになるため、多くの有為の人材が経済的事情により法曹への道を断念する事態につながり、経済的富裕層のみが法曹になっていく社会を現出させかねない。
また、給費制は、法曹三者、とりわけ弁護士の公共性・公益性を担保する役割を果たしてきた。弁護士・弁護士会による各種の公益活動を支える弁護士の使命感は、給費制の下での司法修習制度によって醸成されてきたものであるところ、給費制の廃止は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とすべき弁護士の在り方をも変質させかねない。
以上のとおり、給費制を廃止することは、高い専門的能力と職業倫理を備えた法曹の養成を担ってきた司法修習制度の存続を危うくし、ひいては司法制度の利用者である国民の利益を損なうものであることから、当会は、司法修習生の給与給費制を堅持することを強く求めるものである。
2010(平成22)年7月12日
岡山弁護士会 会長  河 村 英 紀

公訴時効廃止・延長に反対する会長声明
殺人等の重大犯罪について公訴時効を廃止・延長し、かつ、その遡及適用を行うことを内容とする刑事訴訟法の改正案は、平成22年4月14日に参議院で可決され、現在、衆議院にて審議が行われている。しかしながら、当会は、下記の観点から同法案には反対するものである。
1 被疑者・被告人及び弁護人の防御権の観点からの問題点
公訴時効制度は、一見、犯罪者に逃げ得を許すかのような制度にも見えるが、冤罪防止のために極めて重要な機能を有している。すなわち、事件発生から起訴までに長期間を要した場合、時間の経過により、?証人の記憶が薄れたり、証人が死亡したり、事件の現場の状況が大きく変わったりすることにより、反対尋問等による防御権の実質的保障の基盤が失われる、?被告人・被疑者に有利な証拠が散逸する(なお、捜査機関が被疑者・被告人に有利な証拠を積極的に収集・保全することは期待できない)、といった事態が生じ、冤罪防止のためにも重要な権利である被疑者・被告人及び弁護人の防御権が著しく侵害される危険があるところ、公訴時効はかかる危険を緩和する重要な機能を有しているのであり、その廃止・延長は、かかる重要な機能を大きく損なうものである。上記のような刑事司法の実情と公訴時効制度の存在意義が国民に十分に説明されていない現状からも、重大犯罪について公訴時効の廃止・延長を行うことには大きな問題がある。
なお、科学的証拠の活用により、事件発生から長期間を経た後の起訴事案についても冤罪の危険は軽減されるという見方もあるが、当時信頼できるとされた科学的証拠の信用性が後に否定されることもあり、したがってかかる見方が必ずしも正しいとは言えないことは、いわゆる足利事件の教訓からも明らかである。
2 立法事実及び比較立法の観点からの検討
公訴時効期間については、既に平成16年の刑事訴訟法改正において一定の延長がなされているところ、それ以後の約6年の期間に、再度の、かつ、一部廃止が含まれる大幅な改正が必要となるような、我が国における社会事情の変化が存するかについては、疑問である。
また、諸外国の立法例では、公訴時効が存在しない国もある一方で、例えばフランスでは公訴時効がない犯罪は集団殺害など人道に対する罪に限られ、ドイツでも公訴時効がないのは民族虐殺などの犯罪に限られている。これら立法例との比較検討の見地からも、我が国において殺人一般について公訴時効を廃止するに当たっては、慎重な検討が必要である。
3 遡及適用の問題点
憲法39条は、直接的には実体的刑罰法規の遡及適用を禁止するものであるが、訴訟規定であっても、被疑者・被告人の実質的地位に直接影響を持ち、したがって、実体法と密接な規定については、遡及適用は許されないと考えるべきである。また、公訴時効については、一定期間の経過によってその可罰性が減少するという実体法上の意味もあるところ、かかる公訴時効の実体的側面に鑑みると、公訴時効を廃止・延長する法案を遡及的に適用することは、実体的刑罰法規の遡及適用そのものということになる。
したがって、重大犯罪について公訴時効を廃止・延長する法案を、その施行の際に時効が完成していない事件に遡及適用することは、憲法39条に違反する疑いが強い。
4 犯罪被害者及びその遺族との関係
重大犯罪について公訴時効が廃止・延長されたからといって、犯人が直ちに逮捕・処罰されるわけではなく、犯罪被害者及びその遺族の立場が強化されるわけでもない。つまり、犯人が逮捕されないままの犯罪被害者及びその遺族にとって必要なのは、公訴時効の廃止等より、むしろ、初動捜査を含めた刑事警察の捜査能力の向上と、具体的な経済的・精神的な支援の施策や措置である。犯罪被害者及びその遺族に対する、社会的・精神的な援助を中心とする総合的な対策を後回しにして、重大犯罪についての公訴時効の廃止・延長と、その遡及適用を先行的におこなうことは、犯罪被害者及びその遺族への支援策としても、本末転倒で安易な弥縫策でしかない。
以上の観点から、当会は、重大犯罪について公訴時効を廃止・延長し、かつ、その遡及適用をおこなう法案に反対するものである。
2010(平成22年)4月21日
岡山弁護士会 会 長  河 村 英 紀

国選付添人制度の拡充を求める会長声明
1 少年審判において、弁護士付添人は、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう、少年側の立場から手続きに関与し、家庭や学校・職場等の環境の調整を行い、少年の立ち直りを支援する活動を行っている。
少年審判において、少年を受容・理解したうえで、少年に対して法的・社会的な援助を行い、少年の成長・発達を支援する弁護士付添人の存在は、少年の更生にとって極めて重要である。
子どもの権利条約第40条2項(b)は、「刑法を犯したと申し立てられた全ての児童は、…防御の準備及び申立において弁護人(又は)その他適当な援助行う者をもつこと」と規定し、第37条(d)は、「自由を奪われた全ての児童は、…弁護人(及び)その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有する」と規定しており、身体拘束を受けた少年には必ず弁護士と接触する権利が保障されなければならないとしている。
しかしながら、現実には多くの少年やその保護者には、弁護士付添人の費用を負担する資力がなく、仮に保護者に資力があったとしても、少年のために費用を負担することには消極的な場合がほとんどであって、国費により弁護士付添人を付する制度でなければ、少年が弁護士付添人の援助を受ける権利は実質的に保障されることにならない。
2 2008年(平成20年)に審判に付された少年は、54,054人、そのうち観護措置決定により身体の拘束を受けた少年は、11,519人であったが、弁護士である付添人が選任されたのは、4,604人で、身体が拘束された事件のわずか40パーセントに過ぎない。 また、現行の国選付添人制度は、対象事件を重大事件に限定しているため、同年の対象事件に該当する少年の数は707人で、身体の拘束を受けた少年の6パーセントに過ぎないうえ、実際に国選付添人が選任された少年の数は、422人(4パーセント)であった。
刑事被告人の98パーセント以上に弁護士の国選弁護人が選任されていることと対比すると、あまりにも低率といわざるを得ない。
3 日本弁護士連合会は、弁護士付添人の援助を受ける少年の権利を保障するため、全国の会員から特別会費を徴収し、弁護士付添人の費用を援助する付添援助制度を実施している。
これにより、弁護士付添人選任数は従来に比べ増加するに至っている。
しかし、付添援助制度は、弁護士会員がいわば自腹を切って支えている臨時的・暫定的なものであって、恒常的なものと位置づけられるものではないし、選任件数の増加により財源の枯渇するおそれも生じている。
4 よって、当会は、現行の国選付添人制度を拡充し、少なくとも身体の拘束を受けた少年の全事件に弁護士付添人が選任されるよう、政府に対し少年法を早急に改正することを求める。
2010(平成22)年2月10日
岡山弁護士会 会長 東 ?司←?は最初から

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2349 ら特集岡山弁護士会⑤

岡山弁護士会
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死刑執行に関する会長声明
2013(平成25)年12月12日、東京拘置所、大阪拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、本年9月17日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、本年になってから4回目、前回執行から3か月という短い間に連続して死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国であるのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎず、2013年(平成24)??年に実際に死刑を執行した国は我が国を含め21か国しかない。国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けており、本年5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、我が国に対し、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けている。
日本弁護士連合会は、本年2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
当会においても、本年2月9日、「死刑を考える日」を開催し、日本における死刑制度の問題点について広く考える機会を設けたところである。
このように、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いていることは極めて遺憾である。
今回の執行は、死刑判決確定から執行までの期間が一方は18年6か月であり、他方は1年4か月しかたっていない。この執行までの期間の長短について法務省からは何ら具体的な説明もなく、執行対象者の選定基準や死刑判決確定から死刑執行までの経過の不透明さが改めて浮き彫りとなった。
当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、わが国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2013(平成25)年12月13日
岡山弁護士会  会長 近 藤 幸 夫

特定秘密保護法案の参議院採決強行に抗議し,
改めて同法の廃止を含む見直しを求める会長声明
当会は,臨時国会において審理されていた特定秘密保護法案について,国民の知る権利やプライバシーの権利,報道の自由を侵害し,国民主権原理に反するものであるから成立に強く反対する立場から,本年10月19日に同法案に反対する会長声明を発し,11月9日には市民集会を実施し,11月20日及び12月4日に街頭宣伝活動を行い,同法案の危険性について訴えてきた。
そして,11月26日の衆議院の採決強行に際しては,衆議院の審議において多くの問題点が明らかとなり,福島市で行われた地方公聴会においては8名全ての公述人が同法案に反対であったにも関わらず,十分な修正審議がなされず,同法案に対する懸念がぬぐい去られることのないまま採決が強行されたことに抗議し,参議院において徹底した審理を求める会長談話を発したところである。
この間,法学者,外国人記者を含む報道関係者,映画監督等表現の自由の担い手とされる方々や国連人権高等弁務官からも続々と反対,懸念の表明がなされ,12月3日に行われた参議院国家安全保障特別委員会の参考人質疑において与党側の参考人も慎重な審理を求める発言があるなど,国の内外から同法案に対する懸念,不安が高まっている。にも関わらず,良識の府であるはずの参議院においても,2週間にも満たない短い審理期間しかなく,何らの修正もなされないまま,衆議院に続いて採決が強行され,同法案が可決,成立したことは極めて遺憾であり,強く抗議する。
同法案は成立したものの,国民の同法に対する懸念や問題点は消滅するわけではない。
当会は,政府及び国会に対し,改めて,同法が国民の重要な権利を侵害し,国民主権原理に反するものであることから,今後,廃止を含めた抜本的見直しを行うよう強く求めるものである。
平成25(2013)年12月7日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明
1 2013年(平成25年)9月10日,平成25年度司法試験の結果が発表され,2049名が合格した。これらの者の大半が第67期司法修習生として最高裁判所に採用され,当会においても,岡山地方裁判所配属の42名の司法修習生を司法修習指導のため迎え入れた。
しかし,新第65期司法修習生から,「裁判所法の一部を改正する法律」(平成16年法律第163号)が施行され,司法修習期間中の生活費等の必要な資金が国費から支給される給費制が廃止され,これを貸与する制度(以下「貸与制」という。)に移行している。
2 当会は,2011年(平成23年)7月13日には「給費制の存続を求める会長声明」,2013(平成25年)1月23日には「司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明」を発し,同年5月13日には,法曹養成制度検討会議の中間的取りまとめに対するパブリックコメントとして,司法修習生に対する給費制の復活を求めるなど,司法修習生に対する貸与制に反対し,給費制の復活を求める活動を続けてきた。
3 にもかかわらず,法曹養成制度検討会議は,同年6月26日,「法曹養成制度検討会議取りまとめ」(以下「取りまとめ」という。)において,貸与制を前提とした上で,(1)分野別実務修習開始に当たっての転居費用の支給,(2)通所圏内に住所を有しない者に対する集合修習期間中の司法研修所への入寮,(3)司法修習生の兼業許可に関する運用の緩和の各措置を,可能な限り第67期司法修習生から実施すべきであるとした。
そして,今後,司法修習生に対する経済的支援については,法曹養成制度検討会議の後継組織である法曹養成制度改革推進会議の下に設置された法曹養成制度改革顧問会議において,司法修習生の地位及びそれに関連する措置の中で検討されることになっている。
4 しかし,法曹養成制度検討会議が「取りまとめ」において指摘した各措置は,あくまで現行法下における運用改善による応急措置的な,極めて限定的な方策に過ぎず,司法修習生に対する経済的支援としては,給費制を復活することが不可欠である。
(1)そもそも,戦後一貫してわが国の司法は,日本国憲法の下で三権の一翼として国民の人権・権利擁護のため重要な役割を求められ,司法修習は,この司法を担い司法をつかさどる法曹である裁判官・検察官・弁護士の養成のための統一修習制度として制度化された。
そして,これら法曹の資格要件としての司法修習生の地位の重要性に鑑み,司法修習に人材を吸収し,また司法修習生に修習に専念させる等の見地から,特に一定額の給与が支給されることとされていたものである。
かかる日本国憲法の要請や社会的背景に何ら変わりはなく,また司法修習生は,司法の担い手たる法曹の予定者として,国の厳格な規律の下,国の権力行使に関与し,国民の権利義務に関わる法曹の職務そのものに密接に関連する準備過程に従事していることにも何ら変わりはない。
(2)また,日本弁護士連合会が行った「新第65期司法修習生に対する生活実態アンケート」(回答者数717通,回答率35.8%)及び「第66期司法修習生への修習実態アンケート」(回答者数850通,回答率41.8%)において,多数の司法修習生から,「司法修習配属地で住宅を借りるにあたり契約を断られた」,「貸与金返済の経済的不安感から,書籍購入や医者にかかることを自粛した」等の声が寄せられている。このように,司法修習生が司法修習に専念するに当たり,貸与制が大きな妨げとなっている。
(3)さらに,司法修習生の多くは,大学及び法科大学院の奨学金等の返還義務を負担しており,貸与制はその返還義務を加算することになり,法曹としてのスタート時点において多額の債務を負担することとなる。
上記アンケートにおいても,貸与制に移行したことによる経済的な不安等の理由から,司法修習生となることを辞退しようと考えたとの回答が,新第65期司法修習生のうち174名,第66期司法修習生のうち111名から寄せられた。
貸与制が今後とも継続されるのであれば,有為な人材が経済的事情によって法曹への道を断念する事態がさらに悪化し,法曹志願者数が減少する一方である。かかる事態は,2012年(平成24年)6月1日付け衆議院法務委員会における「経済的事情によって法曹への道を断念する事態を招くことがないようにする」との附帯決議に反しており,かかる事態を放置すれば,国民の人権・権利を擁護する担い手としての司法そのものの弱体化は必至である。
5 以上の理由により,当会は,法曹養成制度改革推進会議及び法曹養成制度改革顧問会議を含め,国に対し,一刻も早く,司法修習生に対する給費制を復活し,新第65期司法修習生,第66期司法修習生及び第67期司法修習生に対しても遡及的に適切な経済的措置が採られることを強く求める。
平成25(2013)年12月4日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

特定秘密保護法案衆議院採決についての談話
当会はこれまで、特定秘密保護法案に対し国民の知る権利、プライバシーの権利等を著しく侵害するものであるとして、本年10月9日、同法案制定に反対する会長声明を発し、11月9日、憲法講演会を開催し、さらには11月20日、同法案に反対する街頭宣伝活動を行った。
パブリックコメントでも大多数の人が反対し、法案提出後も、言論団体を始め、様々な団体が反対声明を出し、昨日25日の福島市の地方公聴会では、7人全員が反対意見を述べるなど、国民の懸念が高まっている。このように国会の審議を通じて、むしろ同法案に対する懸念が高まり、国民の関心が高まるにつれ、同法案の問題点がよりいっそう明らかになって来ている。にもかかわらず、国民の懸念を払拭するだけの徹底した議論や、実効的な修正もなされないまま、衆議院国家安全保障特別委員会で強行採決した上,同日衆議院で強行採決することは、多数派の横暴というほかない。今後、参議院においては改めて徹底した審議を行う必要があり、同法案の問題点に鑑みれば、廃案にされるべきである。
平成25年11月26日
岡山弁護士会 会長  近 藤 幸 夫

「特定秘密の保護に関する法律」制定に反対する会長声明
2013年9月3日,内閣官房より,「特定秘密の保護に関する法律案の概要」が示された。現在,政府が法案化作業を進めており,閣議決定を経て,今月招集される予定の臨時国会に提出される可能性が高い状況にある。
特定秘密の保護に関する法律案(以下,「本法案」という。)は,2011年8月8日に公表された,秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議(以下,「有識者会議」という。)による「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」に基づくものである。当会は,2012年5月10日,「秘密保全法制に反対する会長声明」において,同報告書に基づく秘密保全法制の整備が憲法上の諸原理と正面から衝突するものであることから,その制定に強く反対する旨表明し,日本弁護士連合会(以下,「日弁連」という。)においても反対の意見表明がなされた。
今回,意見募集に付された本法案については,当会及び日弁連の見解に多少配慮していることは窺えるが,基本的には,上記会長声明及び意見書において,同報告書に対し行ってきた批判がそのまま当てはまるものである。
本法案について,日弁連は2013年9月12日付で「「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見書」を提出し,本法案について強く反対する旨表明しているが,当会も,同法案の制定には強く反対する。
本法案の問題点は以下の通りである。
1 国民主権原理や国民の憲法上の権利などに重大な影響を与えるおそれのある法案の立法化が是認されるためには,当該法案を必要とする具体的事情(立法事実)の存在が必要不可欠である。ところが,有識者会議において紹介された過去の情報漏えい事案については,既に必要以上とも言える対策が採られている。従って,秘密漏えいを防止するために新たな立法を必要とする立法事実は存在しない。
2 本法案では,秘密指定の対象となる「特定秘密」の範囲を,(1)防衛,(2)外交,(3)外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止,(4)テロ活動防止の4分野とし,別表で項目を挙げている。
しかし,これによって秘密指定できる情報の範囲は広範かつ不明確に過ぎる。第1号(防衛に関する事項)は,自衛隊法別表第4と同じであり,何ら限定していない。第2号(外交に関する事項)は,「安全保障」の範囲が無限定に広がるおそれがある。第3号(外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関する事項)は,「外国の利益を図る目的」「我が国及び国民の安全への脅威」「その他の重要な情報」など抽象的で曖昧な文言になっており,範囲が極めて不明確である。第4号(テロ活動防止に関する事項)は,政府がどのような「テロ活動」を想定するかについての歯止めもなく,政府の主観的な判断次第であることから,際限なく範囲が拡大する可能性がある。
また,法律案の概要は秘密指定について有効期間を定めているが,回数制限のない期間更新が認められており,秘密指定の乱発を防止する機能を果たすものではない。
3 本法案は,特定秘密情報を取り扱う者及びその家族,同居者について,一定の事項を調査することを可能にする,適性評価制度を導入している。
現実には,様々なリスク要因があっても情報漏えいしない者がいる一方で,リスク要因がほとんどなかった者が情報漏えいすることも起こりうる。従って,リスク情報を集積することにより漏えい事件を未然に防ぐことは困難である。
他方,適性評価制度により取得することが可能であるとされた情報には,特定秘密情報を取り扱う本人のみならず,家族及び同居人の,他人に知られたくない個人情報が相当含まれており,プライバシー侵害のおそれが高い。本法案では,対象者の同意を要件としているが,上司等から同意を求められた行政機関職員等が真に自由な意思に基づいて同意・不同意の判断を行うことは不可能であり,家族・同居人及び対象者の関係者については,この点,何ら配慮されていない。
4 本法案では,過失による情報漏えいも処罰するとしているが,過失犯を処罰対象とすることは,責任主義の原則からして極めて問題である。
さらに,本法案では,国会議員,裁判官等が故意又は過失により秘密情報を漏えいした場合には懲役5年以下の刑罰を科することにしている。しかし,特に国会議員については,議員間の自由な討論や政策秘書に調査させることもできなくなるなど,議会制民主主義が空洞化する恐れがある。
また,本法案では,既遂の場合だけでなく,未遂,共謀,独立教唆,煽動の各行為も処罰対象としている。また,秘密情報を取得する行為態様が,「人を欺き」「人に暴行を加え」「人を脅迫する行為」「財物の窃取」「施設への侵入」「不正アクセス行為」「特定秘密の保有者の管理を害する行為」である場合,行為者は処罰される。
このように処罰できる行為の範囲が著しく広範囲・不明確であり,過剰と言わざるを得ない。また,正当な取材活動をも萎縮させ,支障を来すことになりかねず,国民の知る権利を侵害する恐れが強い。
5 本法案については,「国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない」等の拡張解釈禁止の規定が設けられ,また,報道の自由や国民の知る権利に配慮した条項を盛り込む動きもあるが,いずれも一般的・訓示的な規定に過ぎず,上記の懸念を払拭させるだけの実効的な措置が担保されているわけではない。
以上のとおり,日本国憲法の諸原理を尊重する立場から,当会は,本法案が立法化されることに強く反対するものである。
平成25(2013)年10月9日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

死刑執行に関する会長声明
2013(平成25)年9月12日、東京拘置所において1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、本年5月15日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、本年になってから3回目、前回執行から約4か月半という短い間に連続して死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止国が140か国(事実上の廃止国を含む。)であるのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。日本政府は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。
日本弁護士連合会は、本年2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
当会においても、本年2月9日、「死刑を考える日」を開催し、日本における死刑制度の問題点について広く考える機会を設けたところである。
このように、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いていることは極めて遺憾である。
今回、死刑執行がなされた死刑確定者については、一審で無期懲役判決が下されるなど死刑の適用について裁判官の中でも意見が割れた事例である。また、同確定者は執行時73歳であり、2008(平成20)年10月に公表された国際人権(自由権)規約委員会総括所見において、死刑の執行に対し、より人道的なアプローチを採るべきと指摘された高齢者にあたることからしても、死刑執行には慎重でなければならない事案であった。当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、わが国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2013(平成25)年9月17日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

中国地方弁護士会連合会ホームページ開設のお知らせ
ttp://www.okaben.or.jp/news/index.php?c=topics_view&pk=1378693335
この度,中国地方弁護士会連合会(中弁連)のホームページが開設されました。
中弁連は,中国地方にある5つの弁護士会によって構成されている団体で,各県の弁護士会の枠を超えて広域的な活動をしています。 「宣言・決議」や中弁連が主催または共催する企画など,有益な情報が掲載されておりますので,ぜひご覧下さい。
ttp://chugoku-ba.org/index.html

憲法96条改正に関する会長声明
1  自由民主党は,憲法改正の発議を衆参各議院の総議員の過半数によって行えるように憲法96条を改正することを次期参議院議員選挙の争点とする意向を表明している。自由民主党のほかも,日本維新の会もこれに賛成する旨を表明している。
しかし,のちに述べるように,憲法96条を改正して発議の要件を緩和することには大きな問題があり,このような提案に強く反対する。
2  民主的過程を経て選ばれた国家権力であっても,権力が濫用され国民の基本的人権が侵害されるおそれがある。そこで,憲法は,国家権力に制約を加えることによりその濫用を防止し,基本的人権を保障しようとしている(立憲主義)。
しかし,各議院の総議員の過半数の賛成で憲法改正の発議ができることになれば,その時々の政権与党の意向に沿った憲法改正の発議が容易に行えるようになる。このことは,憲法の制約に服するべき内閣が,都合により,自己の活動を制約する憲法の規定を改正できることを意味するものであり,ひいては国民の基本的人権の保障がないがしろにされる危険を有するもので,許されるべきではない。
3  日本国憲法96条は,「この憲法の改正は,各議院の総議員の3分の2以上の賛成で,国会がこれを発議し,国民に提案してその承認を経なければならない。」と定める。
96条改正に賛成する根拠として,現在の96条の要件の下では,憲法改正が各議院の多数の支持を得ていても,どちらかの議院で3分の1以上の反対があれば,発議ができないことになり,国民には憲法改正の是非を考える機会すら与えられない。これは少数意見による多数意見の封殺であるというものである、との主張がある。
憲法が基本的人権を保障し,国家の仕組みを定める国の最高法規であり,その改正が国民の基本的人権や国家の仕組みに重大な変更をもたらすものであること,少数者の基本的人権が多数派によって侵害されてきた歴史的経緯を踏まえれば,憲法改正に際しては,多数派の意見を安易に国民の意思とするのではなく,国民の間の様々な意見を集約し,調整しながら慎重に議論を進め,より広い国民的な合意を得ていく必要があるのは当然のことといえる。
諸外国でも,過半数より厳しい要件のもとで憲法の改正が行われる例は多々ある。上下両院の3分の2の賛成を発議の条件とする米国でも、幾度にもわたって憲法の修正が行われてきたことは周知のとおりである。我が国においても,憲法改正にあたっては広く国民的な合意を得る努力をすべきであり,安易に要件を緩和すべきではない。
4  以上のことから,憲法96条を改正して発議要件を各議院の総議員の過半数の賛成とすることは,立憲主義,基本的人権の保障の観点から認められるべきではなく,憲法96条の改正に強く反対するものである。
平成25(2013)年7月1日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

橋下徹氏の「慰安婦」等に関する発言に対する会長声明
日本維新の会の共同代表であり大阪市長でもある橋下徹氏は,2013年(平成25年)5月13日,(1)戦争時の軍隊に「慰安婦制度」は必要であった,(2)沖縄海兵隊司令官に風俗業を活用して欲しいと述べたとの発言をした。
日本国憲法13条は,国家は国民の人権を尊重すべきことを定める。そして,同14条及び24条は両性の本質的平等を定め,さらに女子差別撤廃条約は,女性の尊厳が男性と等しく尊重されるべき旨を定めている。
橋下氏の今回の発言は,これら憲法及び女子差別撤廃条約等が尊重する女性の尊厳を踏みにじるものである。
すなわち,橋下氏による「慰安婦制度」が必要であったとの発言は,「慰安婦制度」が国家の関与の下で女性を性の道具として扱った,女性の尊厳を著しく損なう重大な人権侵害であったことを看過し,「慰安婦制度」を正当化する一部の不見識な主張を助長する不用意な発言であり,当時慰安婦として人権を侵害された女性たちの名誉と尊厳をさらに傷つけるものである。
さらに,沖縄海兵隊司令官に風俗業を活用して欲しいと述べたとの発言は,今日の沖縄において,女性の性を国家が軍隊のために利用することを容認し正当化する発言であり,特に米軍兵士による性的暴行事件が度々問題となっている現状において,沖縄の女性をはじめすべての女性の尊厳を傷つけるものである。
これらの発言に対し,橋下氏は,2013年(平成25年)5月27日,「私の認識と見解」と題する文書において弁明し,「女性の尊厳は,基本的人権において欠くべからざる要素」であり,「日本兵が『慰安婦』を利用したことは,女性の尊厳と人権を蹂躙する,決して許されないもの」であることを認め,風俗業を活用して欲しいとの発言については「アメリカ軍のみならずアメリカ国民を侮辱することにも繋がる不適切な表現でしたので,この表現は撤回するとともにおわび申し上げます。」と述べた。
しかしながら,橋下氏は,(1)いまだ軍隊に「慰安婦制度」が必要であったとの発言を明確に撤回しておらず,(2)風俗業を活用して欲しいとの発言については撤回し,撤回理由においてアメリカ国民への配慮を見せるものの,かかる発言により沖縄の女性をはじめすべての女性の尊厳を傷つけたことへの配慮が見られず,また,(3)国政政党の共同代表並びに地方公共団体の首長として公権力を行使する立場にある公人である自らがかかる発言を行ったことによって傷つけた慰安婦及びすべての女性への謝罪を行っていない。
当会は,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命としており,全ての時及び場所において「慰安婦制度」ないし軍隊のために女性の性を利用する行為が決して許されない重大な人権侵害であることを確信する。その上で,橋下氏に対し,これらの発言をしたことを強く非難するとともに,当時慰安婦として人権を侵害された被害女性及び沖縄の女性をはじめすべての女性に対して謝罪することを強く求めるものである。
2013(平成25)年6月12日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

小野市福祉給付制度適正化条例の廃止を求める会長声明
平成25年3月27日,兵庫県小野市において,小野市福祉給付制度適正化条例が制定された。
本条例では生活保護,児童扶養手当等の福祉制度による金銭給付受給者が,これらの金銭をパチンコ,競輪,競馬等に費消し,生活の維持安定向上義務に違反することを防止し,同受給者の生活支援に資することを目的とし,そのために受給者らの責務を定めるとともに,市民及び地域の構成員に対して,市への積極的な協力,情報提供の責務を課している。
しかし,本条例は,違憲,違法の疑いが強いものであるから小野市は同条例を即時廃止すべきである。
まず,福祉制度による金銭給付受給者が受給した金銭は,そもそも使途を限定されているものではない。にもかかわらず,本条例は福祉制度により現金給付を受けている受給者の私生活を,その周辺の市民及び地域の構成員が監視し,市に情報提供し,市の職員が生活指導をするという仕組みを規定している。
この市民及び地域の構成員による情報提供の仕組みは,誰が生活保護をはじめとする福祉制度の受給者であるのかという高度なプライバシーに属する情報(憲法13条)を,一般市民が知っていることが前提となっている。ともすれば,生活保護受給者は,税金から給付を受けている以上,プライバシーを暴かれても受忍すべき存在であるとの差別や偏見を助長させかねず,このような危惧感から要保護者であっても生活保護の受給を躊躇するという効果を生みかねない。プライバシーの権利と生活保護受給権に対する侵害であり,憲法13条,25条に違反するおそれがある。本来生活保護の対象となるべき生活困窮者が何らかの理由で保護を受けられていない漏給が問題となっている現状に鑑みると決して許されるものではない。不正受給が許されないことは当然であるが,不正受給の防止は,行政の責任であるのに,これを市民に転嫁し,しかも,犯罪行為でさえ市民に法律上の通報義務はないのに受給者のプライバシーの領域まで一般市民に監視通報義務を負わせる条例の制定は,小野市が全市民を巻き込んだ相互監視社会化を助長し,福祉制度による金銭給付受給者に対して差別偏見を助長するものであるといわざるを得ない。
ところで,全市民の六割が本条例を支持しているとの報道もみられる。小野市に限ったことではないが「民主主義で得られた結論であるから正しい。」との論調で政策の実行や,条例の制定をする動きが往々にしてなされることがある。しかしながら,民主主義で得られた結論であるから正しいのではなく,その前提として既存の法体系との整合性,少数者の人権への十分な検討が必要である。このことを抜きにした,単に多数決による結論により誤った結果を招くことは過去の歴史を振り返ってみても明らかである。
当会は本条例の問題点を上記のとおり指摘した。小野市においては本条例を即時廃止すべきである。
2013(平成25)年6月12日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

生活保護法改正に反対する会長声明
1 政府は,2013(平成25)年5月17日,生活保護法を改正する法律案(以下「改正案」という。)を国会に提出することを閣議決定した。
2 改正案では,生活保護の開始のためにはあらかじめ定められた申請書を提出することを義務化,すなわち要式行為とすることが規定されている。
このことは,現在の生活保護法が保護の申請を書面によるものとせず,また,口頭による保護申請も認められるとする確立した裁判例(さいたま地裁平成25年2月20日判決など)からも生活保護申請権に制限を加えるものであることは明らかである。
従来から,生活保護の現場においては,生活保護を受給するために窓口を訪れた要保護者に対して,相談だけであるとして申請として扱わず審査すら行わないといういわゆる水際作戦が実施されていた例が多数報告されている。
厚生労働省が,保護を利用したいという意思の確認ができれば申請があったものとして取り扱い,実施機関の責任において必要な調査を行い,保護の要否の決定をなすべきとの見解を示しているにもかかわらずこのような事例が起こっているのである。
改正案のとおり,保護の申請を要式行為とすれば,たとえ意思の確認ができたとしても,申請書が提出されない以上申請があったと扱わず,実施機関対応する必要はないということになり,従来の違法な水際作戦にお墨付きを与えることになる。
この点,与野党による修正協議を経て,「保護の開始の申請は」との文言が「保護の申請をする者は」に改められ,また,但し書きとして「特別な事情があるときは,この限りでない」との文言が加えられ,現在と変わらない運用がなされることになるとの説明がなされている。
しかし,修正後の文言によっても,保護の申請は書面による要式行為であると解釈されるおそれがある。しかも,「特別な事情」の判断は実施機関に委ねられるため,水際作戦を助長する結果を招くことになる。
他方で,当該改正部分について,現在の運用と何ら変わらないのであれば、そもそも,このような法改正をする必要はないことになる。
3 次に,改正案では,保護開始の決定をする際には,保護の実施機関に対して,あらかじめ,要保護者の扶養義務者に対して,通知をすることを義務付けた上,扶養義務者等の資産や収入状況等について銀行や雇用主に対して報告を求めることができる権限を付与し,また,官公署に報告を義務付けている。
この点について,厚生労働省は,従前から,「扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行い,その結果保護の申請を諦めさせるようなことがあれば,これも申請権の侵害にあたるおそれがあるので留意されたい。」との通知を出している。
しかしそれでも,親族間に通知されることで生じる軋轢を恐れて,要保護状態でありながら生活保護の申請を断念する例は少なくない。にもかかわらず,扶養義務者等に対する通知が義務化され,調査権限が強化されると,要保護者の保護申請に現在よりもさらに萎縮的効果が働くことは必至である。
4 以上のとおり,本改正は要保護者の生活保護申請権を不当に制限するものであり,到底容認できない。本会は,改正案に強く反対するものである。
2013(平成25)年6月12日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

死刑執行に関する会長声明
2013(平成25)年4月26日、東京拘置所において2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、本年2月25日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、前回執行から約2か月という短い間に連続して死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。国際社会においては、死刑廃止が潮流となっている。日本政府は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。昨年12月20日には国連総会において、全ての死刑存置国に対し、死刑廃止を視野に死刑執行を停止するよう求める決議が過去最高の111か国の賛成多数で採択されている。
日本弁護士連合会は、2011(平成23)年10月7日に「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を決議し、その中で「直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し、その議論の間、死刑の執行を停止すること」などを求めており、本年2月12日には谷垣禎一法務大臣に対して、上記事項を求める要請書を提出している。
当会においても、本年2月9日に「死刑を考える日」を開催し、日本における死刑制度の問題点について広く考える機会を設けたところである。
このように、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いていることは極めて遺憾である。
当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、わが国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2013(平成25)年5月15日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

死刑執行に関する会長声明
2013(平成25)年2月21日、東京、名古屋、大阪の各拘置所において合計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、昨年10月10日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、昨年10月につづき、3名もの死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が潮流となっている。日本政府は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。昨年12月20日には国連総会において、全ての死刑存置国に対し、死刑廃止を視野に死刑執行を停止するよう求める決議が過去最高の111か国の賛成多数で採択されている。
日本弁護士連合会は、2011(平成23)年10月7日に「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を決議し、その中で「直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し、その議論の間、死刑の執行を停止すること」などを求めており、本年2月12日には谷垣禎一法務大臣に対して、上記事項を求める要請書を提出している。
当会においても、本年2月9日に「死刑を考える日」を開催し、日本における死刑制度の問題点について広く考える機会を設けたところである。
このように、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いていることは極めて遺憾である。
なお、谷垣法務大臣は、法務大臣に就任して2か月足らずであり、今回の死刑執行が十分慎重に検討した上での執行であったのかも大いに疑問である。
当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、わが国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2013(平成25)年2月25日
岡山弁護士会 会長 火 矢 悦 治

地方の法科大学院の存続発展に関する会長声明
2004年(平成16年)4月に始まった法科大学院制度は、これまでに多種多様な人材を法曹界に送り出す等一定の成果をあげているが、その一方で、司法試験合格率の低迷や、法科大学院への入学志願者の減少といった深刻な課題に直面している。
このような中で、2012年(平成24年)8月、法曹の養成に関する制度の在り方について検討を行うため、内閣に法曹養成制度関係閣僚会議(以下「閣僚会議」という。)が設置されるとともに、法曹の養成に関する制度の在り方について学識経験を有する者等の意見を求めるため、閣僚会議の下に、法曹養成制度検討会議(以下「検討会議」という。)が設置された。閣僚会議は、検討会議の意見等を踏まえつつ、2013年(平成25年)8月2日までに今後の法曹養成制度の在り方について検討を加えて一定の結論を出すものとされており、現在、検討会議においては、法科大学院の統廃合や定数削減に向けた具体的な基準案を検討することが決定されている。
現在法科大学院制度が直面している上記問題点からすれば、法科大学院の統廃合や定数削減についての検討は避けられないところではあるが、法科大学院の地域適正配置については、最大限の配慮がなされなければならない。家庭の事情や経済的理由等で地方を離れることができない法曹志望者にも法曹になる機会を実質的に保障するためには、地方の法科大学院が必要不可欠である。また、地方の法科大学院は、地方の様々な法的ニーズに応えることのできる法曹を養成して、地方を支える人材を育成するという重要な役割も担っている。
当会管内に所在する岡山大学大学院法務研究科(以下「岡山大学法科大学院」という。)は、これまでに岡山県内外に在住する多くの法曹志望者に対して、法曹となるための教育を受ける機会を提供してきている。岡山大学法科大学院からの司法試験合格者数は、これまでに81名に達しており、弁護士登録をした合格者の大半が当会及び近隣の地域の単位会に登録する等、地元の司法を担う人材として貢献し、のみならず、地域のニーズに対応した質の高いリーガルサービスを提供できる人材の育成にも積極的に取り組んでいる。
すなわち、岡山大学法科大学院は「地域に奉仕し、地域に根ざした法曹」として、依頼者に共感してともに汗をかき、涙を流せるような人権感覚豊かな法曹の養成を目的とし、問題発見・事案の解決能力、地域的法実務に必要な総合的判断能力・批判能力を養成することを目指し、地域の実態や法実務を踏まえながら、「ビジネス法分野」と「医療・福祉分野」を重点的教育分野としている。
そして、岡山大学法科大学院は、ネットワーク・セミナーなどの独自の法曹教育カリキュラムを構築し、また専門家との間のネットワークと、大学内に設置された法律事務所を活用した「理論と実務を架橋する法曹教育」の確立と充実を実行している。
このように岡山大学法科大学院は、自らの努力によって存続を維持する決意を有しており、だからこそ当会としても、岡山大学法科大学院に対して、会員を実務家教員や非常勤講師として派遣する等の積極的な支援を行ってきたところ、地方の法科大学院の経営あるいは存立自体を現在以上に困難にする動きを看過することはできない。
上記のとおり、岡山大学法科大学院をはじめとする地方の法科大学院は、大都市圏の法科大学院とは異なる存在意義を有している。したがって、法科大学院の統廃合や定数削減について検討するに際しては、地域適正配置という観点を軽視することがあってはならない。そこで、当会は、今後も岡山大学法科大学院を支援していくことを表明するとともに、検討会議及び閣僚会議に対して、地方の法科大学院の統廃合や定数削減を検討するに当たり法科大学院の存続発展に最大限配慮することを強く求めるものである。
2013(平成25年)1月23日
岡山弁護士会 会長  火 矢 悦 治

生活保護基準の切り下げに反対する会長声明
1 2012年(平成24年)8月10日、社会保障制度改革推進法が成立し、その附則2条において、生活保護の「給付水準の適正化」が明記され、8月17日に閣議決定された「平成25年度の概算要求組替え基準について」では「生活保護の見直しをはじめとして合理化・効率化に最大限取り組み、その結果を平成25年予算に反映させるなど、極力圧縮に努める」ものとされており、生活保護の削減方針が示されている。そして、財務省は10月22日、財政制度等審議会に生活保護基準切り下げに向けた具体的提言を行い、同審議会において、平成25年度の予算編成に向けた生活保護制度の見直しの議論が始められた。
これらの動きからすれば、平成25年度予算編成において、政府が生活保護基準切り下げに動く可能性が極めて大きい情勢である。
2 しかし、生活保護は憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を具体化した最後のセーフティネットであって、生活保護基準は生存権保障の水準を具体化して「健康で文化的な最低限度の生活」を決する極めて重要な基準である。
生活保護受給者の増加が問題視されることが多いが、実際には生活保護の捕捉率(生活保護を受給する資格がある人のうち、実際に生活保護を受給している人の割合)は2010年(平成22年)時点でも2割?3割程度(平成22年4月9日付け厚生労働省発表「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」)にとどまっている。本年になってからも札幌市、さいたま市、立川市などで餓死孤立死が相次いで発生しているが、こうした事例は生活保護を受給していれば防ぐことができた可能性が高いのである。このように、生活保護が必要な人々に行き渡っていないという現状であるにもかかわらず、生活保護受給者の増加が問題であるとして生活保護基準を切り下げて生活保護の受給にさらに厳しい要件を課すことは、本末転倒である。そのようなことがなされれば、生活困窮者を更に増大させ、あるいは、その抱える問題を更に大きなものにすることが容易に想像されるのである。
また、生活保護基準は、最低賃金、課税最低限度額、社会保険の自己負担額の基準とも連動しており、基準の切り下げは生活保護受給者だけでなく、それ以外の低所得者層の更なる貧困化を招くことになる。
3 このような生活保護基準の重要性からすれば、その基準のあり方については、2011年(平成23年)2月に発足した社会保障審議会生活保護基準部会における学識経験者らの専門的検討も踏まえ、生活保護受給者の生活実態も考慮して慎重に決せられるべきであって、財政目的の安易な基準切り下げがあってはならない。
4 岡山県は、津山市出身で国立岡山療養所(現在の独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター)に入院していた故・朝日茂氏が、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」「人間が人間らしく生きる権利」の保障を求めた「朝日訴訟(人間裁判)」を提起し、その後の生活保護基準の改善や社会保障制度の発展に大きく貢献した地でもあり、当会にとって、今般の生活保護基準の切り下げの動きは到底看過することができないものである以上のとおり、当会は、来年度予算編成における生活保護基準の切り下げに強く反対する。以上
2012年(平成24年)11月21日
岡山弁護士会 会 長  火 矢 悦 治

2348 ら特集岡山弁護士会④

岡山弁護士会
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「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明
第1 意見の趣旨
いわゆるカジノ設置推進を定める「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」に反対し,その廃案を求める。
第2 意見の理由
1 法案について
昨年12月,国際観光産業振興議員連盟(通称「IR議連」)に所属する有志議員が,「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(以下,「カジノ解禁推進法案」という。)を提出した。カジノ解禁推進法案については,今秋の臨時国会で継続審議となっている。
カジノ解禁推進法案は,カジノ管理委員会の許可を受けた民間事業者が,「特定複合観光施設区域」において,カジノを設置できるような措置を講ずることを内容とする。
しかし,この法案については,経済効果のみが喧伝され,カジノが社会に及ぼす深刻な影響についての検討がなされていない。
2カジノ解禁推進法案の問題点
(1)刑法上の各賭博罪に該当する問題性
「賭博」は,偶然の事情に関して財物を賭け,勝敗を争うことを言う。我が国では,刑法185条(単純賭博罪),186条1項(常習賭博罪),及び186条2項(賭博場開張罪・博徒結合罪)の各規定(以下,「各賭博罪」という。)により,「賭博」は処罰対象とされているが,これは,国民一般の健全な勤労観念を害するとともに,賭博が暴行,脅迫,殺傷,強窃盗その他の副次的犯罪を誘発しまたは国民経済の機能に重大な障害を与えるためである(最判昭和25年11月22日)。
カジノはまさに「賭博」そのものであるため,各賭博罪の構成要件に該当する行為であり,現行法下では設置することができない。従って,カジノの設置・運営を解禁しようとするのであれば,刑法の禁ずる各賭博罪の構成要件には該当するにもかかわらず,その違法性が阻却される理由が明らかにされねばならない。
例えば,現在合法とされている,競馬,競輪,競艇などは,(1)施行者が地方自治体または政府全額出資の特殊法人であること(公設),(2)運営機関が非営利法人であること(公営),(3)収益は社会貢献活動に使用すること(公益)を理由に,刑法上の賭博罪の違法性が阻却されるとされている。
しかるに,今回のカジノ解禁推進法案は,単なる民間事業者がカジノの経営を行うことを前提にしており,上記(1)ないし(3)に該当しないのであって,到底,各賭博罪の違法性は阻却されえない。
カジノの解禁を推進する立場からは,カジノ施設を含む特定複合観光施設やその設置区域の整備によって,観光,地域経済の振興,雇用の拡大,財政改善等のプラスの効果があると主張されているが,そもそも,それらの経済効果については疑問が呈されているところである。
(2)カジノ施設の設置による著しい弊害の発生
しかも, カジノ施設が設置されれば,以下で述べる様々な弊害の発生が予見される。カジノ解禁推進法案10条自身がこの点に言及していることからも,このような弊害が生じることは明らかである。
カジノ解禁推進法案は,これらの弊害を予見しながら,その防止及び排除の具体策を何ら検討していない。かかる状況の中,カジノを解禁するという結論のみを進めることは,賭博について刑事罰をもってまで禁止してきた趣旨に反するものであって,極めて無責任な立法である。
(1)ギャンブル依存症・多重債務者の増大
最も深刻な問題はギャンブル依存症の問題である。ギャンブル依存症はいったん発症すると治療が非常に困難な疾患であり,ギャンブル依存症から家族関係が悪化したり,多重債務に陥って犯罪や自殺に至ったりする者も少なくない。
我が国には,競馬,競輪,競艇等の公営ギャンブルが存在する。このような社会情勢の下,我が国におけるギャンブル依存症の患者数は推定で560万人以上,国民の中に占める依存症の有病率は男性の8.7%,女性の1.8%とされている。
もしカジノを解禁すれば,ギャンブル依存症患者が更に増加することが見込まれ,深刻な事態を惹起する。
2006年の貸金業法改正等,官民一体となって取り組まれてきた一連の多重債務者対策によって,この間多重債務者が激減し,結果として破産者等の経済的に破綻する者,また,経済的理由によって自殺する者も減少してきた。カジノの合法化は,これら一連の対策に逆行し,多重債務者を再び増加させる結果をもたらす可能性がある。
(2)青少年の健全育成への悪影響
また,合法的賭博が拡大することによる青少年の健全育成への悪影響も座視できない。
とりわけ,IR方式(カジノが,会議場,レクリエーション,宿泊施設その他と一体となって設置される方式)は,家族で出かける先に賭博場が存在する方式であるから,青少年らが賭博に対する抵抗感を持たないまま成長することになりかねず,そのような環境では健全な勤労観念が涵養されようはずがない。
(3)暴力団対策上の問題
カジノを解禁すれば,暴力団が資金獲得のためカジノへの関与に強い意欲を持つことが想定される。暴力団自身が事業主体となり得なくとも,事業主体に対する出資,従業員の送り込み,事業主体の下請け等といった,種々の脱法的方法でカジノ事業及びその周辺領域での活動に参入する可能性がある。
カジノ解禁推進法案においては,カジノ施設の運営から暴力団を排除するための具体的方策が何ら示されていないが,仮に何らかの方策がとられたとしても,暴力団の潜在的な関与を排除することがどこまでできるのか疑問である。
(4)マネー・ロンダリング対策上の問題
我が国は,FATF(Financial Action Task Forceの略。マネー・ロンダリング対策・テロ資金供与対策の政府間会合)に加盟しているが,2003年のFATFによる勧告において,カジノ事業者は,マネー・ロンダリングに利用されるおそれの高い非金融業者に指定されている。
我が国にカジノを設置した場合,仮にカジノ事業者に対して,犯罪による収益の移転の防止に関する法律に基づく,取引時確認,記録の作成・保存,疑わしい取引の届出を求めたとしても,こうしたマネー・ロンダリングを完全に防止することは極めて困難であると考えられる。
(3)経済効果喧伝に対する疑問
カジノ推進の立法目的に経済の活性化が掲げられているが,上で述べたような弊害を考えれば,仮に経済効果があったとしても推進すべきではない。
また,本当に経済効果があるのかどうかという点は,既存のカジノの状況等を十分に検証した上で評価されるべきである。
韓国,米国等では,カジノ設置自治体の人口が減少した,多額の損失を被ったといった調査結果が存在する。また,地域経済が一旦カジノに依存することとなれば,自治体がカジノ規制を忌避することとなり,必要なカジノ規制がなされなくなってしまうおそれもある。
そもそも,増加が予想される多重債務者やギャンブル依存症患者への対策等に要する社会的コスト等を考慮に入れると,これを上回る経済的効果が実際に存在するのか甚だ疑問である。
3 結論
以上のとおり,カジノ解禁推進法案が成立すれば,刑事罰をもって賭博を禁止してきた刑法の立法趣旨が損なわれ,様々な弊害をもたらす。
よって,当会は,カジノ解禁推進法案に強く反対の意見を表明し,カジノ解禁推進法案の廃案を求める。
平成26年(2014年)10月22日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

裁判所予算の増額を求める会長声明
声明の趣旨
最高裁判所は大幅な裁判所予算の増額を要求すべきであり、政府・財務省はそれを受けて裁判所予算を大幅に増額させるべきである。
声明の理由
1 紛争を解決し、権利侵害を救済し、違法な行為から身体や財産を守るのが司法の使命であり役割である。
このような観点から、司法制度改革審議会意見書(平成13年)は、司法制度改革を実現するために、裁判所等の人的物的体制を充実させ、司法に対する財政面の十分な手当が不可欠であるとし、政府に対して、必要な財政上の措置について特段の配慮を求めた。
また、「裁判の迅速化に関する法律」(平成15年)は、裁判を迅速に行い、司法を通じて権利利益が実現できるよう、政府に財政面も含めた措置を講じる責務を課した。
また、最高裁判所による裁判の迅速化に係る検証に関する報告書でも、「裁判所の基盤整備を含めた体勢面の施策も着実に実現していく必要がある」と指摘されている。
2 しかるに、裁判所予算の現状と推移は、近年、非常に憂慮すべき状況にある。
裁判所予算は平成8年度に3000億円を超え、平成18年度に約3331億円に達したが、それを頂点として7年連続で減少し、平成25年度予算では3000億円を割り込み、18年前の平成7年度の水準にまで落ち込んだ。
平成26年度予算額は前年度比約122億円増加して約3110億円となったが、給与特例法の失効に基づく人件費の増額分約171億円を含んでいるので、実質的には前年度比約49億円の減額となっている。しかも平成27年度の概算要求額は平成26年度予算額より1.5億円減少した。
また、裁判所予算が一般会計予算に占める割合は、平成20年度まで0.4%前後(司法の重要性の観点からはこの予算比自体が非常に少ないが)で推移していたが、平成21年度から低下し、平成25、26年度予算では約0.32%にまで落ち込んだ。
このような事態は、前記司法制度改革審議会意見書が求めた「財政上の特段の配慮」や、「迅速化法」が定める「措置を講じる責務」が怠られてきたことを意味している。
3 予算関係文書を子細に検討すれば、さらに憂慮すべき事情が明らかになる。
(1) 裁判官の報酬を含む人件費が大幅に減少している。最高裁判所及び 下級裁判所の人件費に該当すると思われる各科目(委員手当、退職手当を除く)の合計額は、平成24年度1900億円余から平成25年度1800億円弱へと約7.2%減少した。平成26年度予算額は約1980億円であるが、前記の給与特例法の失効に基づく人件費の増額分約171億円が含まれるので、実質的に平成24年度の水準には及ばない。
(2) IT化関連予算が大幅に減少している。最高裁判所及び下級裁判所の「情報処理業務庁費」の合計額は、平成24年度約15億円から、平成25年度5億円余へと、前年度比約64%も急減した。平成26年度予算では約7.3億円まで回復したが、平成27年度概算要求では約3.6億円と半減した。社会においてIT化の流れが定着し発展を続けている状況を考えれば、かかる予算の減少は、裁判所におけるIT化対応への意欲の欠落を如実に示していると言わざるを得ない。
(3) 概算要求書によれば、裁判所予算中の「経常的広報経費」の額は平成22年度(約490万円)以降おおむね減少傾向にあり、平成26年度予算額は約454万円、平成27年度概算要求額は約336万円である。もともと非常に少額な広報経費が、年々減少していっているのである。このことは例えば、平成25年に家事事件手続法が施行されて家事事件手続が全面的に変化したにもかかわらず、裁判所は手続利用者である国民に向けて広報(すなわち情報発信)を十分に行えないことを意味している。 これでは、裁判所が裁判制度や裁判所の業務を広く市民に知らせることが不可能である。
4 こうした裁判所予算の不足は、司法機能に看過できない悪影響を及ぼしている。中でも最大の弊害を生じさせているのが、裁判官を含む裁判所職員数の絶対的不足である。
(1)裁判官の勤務の過酷さは以前から異常な状態にあり、書記官をはじめ裁判官以外の職員の繁忙も激化の一途をたどっている。にもかかわらず、家庭裁判所以外の裁判所予算は総じて減少傾向にある。
(2)家庭裁判所は、近年の家事事件の増加と複雑化のため、繁忙が甚だしい。裁判官・書記官は多忙をきわめ、本来自ら行うべき申立内容の確認や後見業務の打合せなどを参与員に依存せざるを得ない状況となっている。
(3) 全国の各地に存在する裁判官非常駐支部は、いっこうに解消されず、支部での手続の遅れや不都合を生じている。
(4) 労働審判は、労働事件を簡易迅速に解決することを趣旨として創設 された制度で、利用件数が増加しているが、裁判所支部では立川・小倉を除き実施されていない。制度の本旨から国民の身近な裁判所で行われるべきなのに支部で実施されないのは、実施に必要な裁判官・書記官のマンパワーが、予算不足からくる人員不足のために不足しているからである。全国の弁護士会が裁判所に対し度々支部での労働審判実施を求めているが、ほとんど実現していない。
(5) 他にも、(1)勾留請求を受けて裁判官が勾留質問を行い判断するまでに時間がかかることが増えていること、(2)簡易裁判所民事事件の和解の大半が司法委員任せで裁判官が臨席しないこと、(3)簡易裁判所等を統廃合した際、代替措置として実施されることになった出張事件処理の利用促進がなされていないこと、(4)民事事件等において、現場検証などで裁判官が現地に赴くことが減少していることなど、裁判所の人員不足に起因する弊害はきわめて多い。
(6) 裁判官の人数が少ないために個々の裁判官の負担が過重となり、一 つ一つの事件に丁寧に取り組む余裕がない、という問題は、長く指摘されてきた。また裁判官数の不足は、裁判所支部での裁判官の非常駐や支部の取扱事件の制約などの問題も生み出してきた。このような事態は全国各地の国民の裁判を受ける権利(憲法第32条)が侵害されていることを意味する。
裁判官の大幅増員を実現するためには、財政措置として裁判所予算が大幅に増額されなければならない。近年の裁判所予算額の推移はこれに逆行するものであり、国民の裁判を受ける権利という観点から看過できない水準にまで落ち込んでいる。
5 裁判所予算の不足は、裁判所の物的施設の充実をも阻害している。
裁判所支部等には多機能トイレがない庁舎があるなど、バリアフリー化が進んでいない。小規模支部ではTV会議システムの導入が遅れ、遠隔地支部での証人尋問等に不都合をきたしている。
6裁判手続そのものも、予算不足の悪影響を受けている。
簡易裁判所での証人尋問等について、尋問調書の省略を徹底する取扱いがなされている。書記官の負担軽減(背景には人員不足がある)と反訳費用の節減が原因であることは明白である。
地方裁判所でも、尋問調書に項数が表示されなくなっている。証人尋問等の反訳は平成21年度以降最高裁が一括発注しているが、経費削減のため、発注仕様に「項数表示」が含まれていないことが原因である。
このような裁判手続自体の過度の簡略化は、裁判所を利用する当事者である国民の負担を増やすだけでなく、裁判官(特に上訴審)の業務の効率にも悪い影響を及ぼし、「迅速な裁判」の要請に反することにもなる。
7 以上のような、裁判所予算の不足による弊害、とりわけ裁判官を含む裁判所職員数の絶対的不足は、司法機能の弱体化をもたらす。
充実した司法の実現、迅速な裁判の実現のためには、裁判所予算を大幅に増額することが絶対に必要である。
8 よって、頭書のとおり声明する。
平成26年(2014年)10月22日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

死刑執行に関する会長声明
2014年(平成26年)8月29日、東京拘置所、仙台拘置支所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、本年7月9日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、死刑に関する情報公開や国民的議論が行われないまま、本年6月につづき、約2か月という短い間に連続して死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国を上回っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。その中で、2013年(平成25年)に実際に死刑を執行した国は我が国を含め22か国しかない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けており、2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、本年7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会は、2013年(平成25年)2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
冤罪による誤った死刑執行は人権侵害の最たるものであり、絶対にあってはならない。静岡地方裁判所は、2014年(平成26年)3月27日、死刑判決が確定していた袴田巌氏の第2次再審請求事件につき、再審開始、死刑及び拘置の執行停止を決定したが、この決定は、この要請書が指摘した、絶対にあってはならない冤罪による誤った死刑執行がなされるおそれが現実にあることを示すものである。
当会においても昨年2月に「死刑を考える日」を開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行っているところである。
しかしながら、現実には、国際社会の潮流に反し、また、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
今回の執行についても、執行対象者の選定基準や死刑判決確定から死刑執行までの経過については法務省より何ら説明もなく、死刑執行に至る過程についての不透明さが改めて浮き彫りとなった。また、今回の被執行者のうち一方は、一貫して殺意を否認し、先月に第3次再審請求が棄却され、近日中に第4次再審請求を行うべく準備を進めていたとのことであり、死刑執行にはより慎重でなければならない事案であった。
そこで、当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、我が国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2014(平成26)年9月17日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

集団的自衛権行使を容認する閣議決定に強く抗議し,
その撤回を求める会長声明
当会は,本年5月14日及び6月11日の二度にわたり,政府に対し,憲法改正手続をとることなく憲法解釈の変更によって集団的自衛権行使を容認することに強い反対の意見を表明してきた。
しかしながら,政府は,7月1日,「国の存立を全うし,国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する閣議決定を行った。
閣議決定は,集団的自衛権行使に関して,「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず,我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において,これを排除し,我が国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がないときに,必要最小限度の実力を行使することは,従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として,憲法上許容されるべきである」としている。
しかし,この閣議決定は,自衛のための必要最小限度の防衛力を持ち,専守防衛に徹するとしてきた従来の日本の防衛政策を根幹から変えるものであって,従来の政府見解の基本的な論理を大きく逸脱している。自衛のための措置との名目で,時の政府の判断によって,際限のない「武力の行使」に途を開くものである。
集団的自衛権を行使することは,我が国をいまだ攻撃していない相手方を攻撃することであるから,当然に我が国は戦争の当事国となり,反撃を受ける可能性が生じることを意味する。集団的自衛権の行使により,逆に,国民の生命,自由及び幸福追求の権利は根底から覆されることになりかねない。
我が国は,多くの尊い命を犠牲にしたアジア・太平洋戦争の惨禍に対する真摯な反省の上にたち,武力によらない平和の達成を目指して恒久平和主義を憲法の基本理念とした。その我が国が,憲法の基本理念に反して,一内閣の閣議決定によって実質的な改憲をし,この閣議決定に基づいて関連法を整備し,または新たな法案を提出することによって,再び戦争をする国となる危険な方向に向かうことは何としても避けなければならない。
閣議決定は,「我が国を取り巻く安全保障環境が変化した」ことを強調するが,仮にそうであったとしても,集団的自衛権行使という重大な方向転換を,憲法の定める国会による発議と国民投票という厳重な憲法改正手続によらず,一内閣の閣議決定による解釈変更で容認しようとすることは憲法破壊そのものである。政府や立法府による権力の行使を憲法の制限下に置き,権力の濫用を阻止しようとした立憲主義に著しく反するものであって断じて許されない。
よって,当会は,基本的人権の擁護を使命とする弁護士の団体として,立憲主義堅持の立場から,憲法改正手続をとることなく集団的自衛権行使を容認する閣議決定に強く抗議するとともに,その撤回を求める。
2014(平成26)年7月9日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

死刑執行に関する会長声明
2014年(平成26年)6月26日、大阪拘置所において、1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、昨年12月13日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、死刑に関する情報公開や国民的議論が行われないまま、前回の執行から約6か月後に死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国を上回っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。その中で、2013年(平成25年)に実際に死刑を執行した国は我が国を含め22か国しかない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けており、2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けている。
日本弁護士連合会は、2013年(平成25年)2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
冤罪による誤った死刑執行は人権侵害の最たるものであり、絶対にあってはならない。静岡地方裁判所は、2014年(平成26年)3月27日、死刑判決が確定していた袴田巌氏の第2次再審請求事件につき、再審開始、死刑及び拘置の執行停止を決定したが、この決定は、この要請書が指摘した、絶対にあってはならない冤罪による誤った死刑執行がなされるおそれが現実にあることを示すものである。
当会においても昨年2月に「死刑を考える日」を開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行っているところである。
しかしながら、現実には、国際社会の潮流に反し、また、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
今回の執行についても、執行対象者の選定基準や死刑判決確定から死刑執行までの経過については法務省より何ら説明もなく、死刑執行に至る過程についての不透明さが改めて浮き彫りとなった。
そこで、当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、我が国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2014(平成26)年7月9日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書を受けて発表された「基本的方向性」に対する会長声明
2014年5月15日,首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下「安保法制懇」という。)が報告書を提出した。
これを受けて同日,首相は今後の検討に関する「基本的方向性」を発表した。その中で,憲法が掲げる平和主義を守ると述べるとともに,安保法制懇の報告書で示された集団的自衛権の行使容認についての二つの考え方のうち,「個別的か,集団的かを問わず,自衛のための武力の行使は禁じられていない,また,国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上,合法な活動には憲法上の制約はないとする」考え方(いわゆる芦田修正論)は,「これまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しない」として政府として採用できないとした。しかし,他方「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき,限定的に集団的自衛権を行使することは許される」という考え方については,従来の政府の基本的立場を踏まえた考え方であると強弁し,「今後さらに研究を進めていきたい」とした上で,「憲法解釈の変更が必要と判断されれば」閣議決定を行うとしている。
集団的自衛権は,日本が攻撃されていないにもかかわらず,実力をもって他国(同盟国等)への武力攻撃を阻止しようとするものである。限定的であれ,日本が攻撃されていないにもかかわらず我が国が集団的自衛権を行使すれば,相手国との間で全面的な戦争になり,自衛隊員が戦闘の中で人を殺し殺されることになるだけではなく,相手国が我が国を直接攻撃することも覚悟しなければならない。首相は,集団的自衛権が行使された後,国民が直接被害を受ける危険性について,ことさらに無視している。集団的自衛権の行使容認という国民の生命に直接関わる重要事項について,主権者たる国民の議論は不可欠である。
また,「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき」という限定は,「可能性」の判断を時の政府に委ねるもので,何の限定にもなっていない。同様に,被害国からの援助要請や必要最小限の実力を行使するというのも国際司法裁判所が明示している集団的自衛権の行使要件そのものであって限定の意味を有していない。その上,安保法制懇は,首相の私的諮問機関であって,首相の思惑に沿う結論ありきの報告書を作成したに過ぎず,当報告書において意義ある議論が尽くされたとはとうてい評せない。
そもそも,立憲主義は,人類の過去の経験に鑑み,時の政治権力がその権力を濫用しがちであるという権力に対する疑いや不信を前提として,憲法によって国家権力の行使をその制限下に置き,権力の濫用を防止することによって個人の人権を保障することに意義を有している。当会は,憲法改正手続をとることなく,閣議決定という国民の議論を抜きにした政府の一方的な憲法解釈の変更によって,憲法の基本原理に関わる重大な解釈の変更を行うことが立憲主義に著しく反するとして,2014年(平成26年)5月14日「集団的自衛権行使容認に反対する会長声明」を発表した。
また,日本弁護士連合会も,2013(平成25年)年5月31日の総会における「集団的自衛権の行使容認に反対する決議」に続いて,2014年(平成26年)5月30日の総会で「重ねて集団的自衛権の行使容認に反対し,立憲主義の意義を確認する決議」をし,その中で近代自由主義国家が共有する立憲主義の意義・重要性について,日本国憲法のもとにおける徹底した恒久平和主義とともに確認をしているところである。
集団的自衛権の行使を容認することは,これまでの日本国憲法の下で,戦争をしない平和国家である日本という国の在り方を根本から変えることになる。今回示された首相の「基本的方向性」は,「あくまでも憲法解釈の変更を閣議決定により行う」という首相の姿勢を鮮明にするものであり,この姿勢は,政府や立法府による権力の行使を憲法の制限下に置き,権力の濫用を阻止しようとした前記立憲主義に著しく反するものであり,立憲主義を踏みにじるものである。
したがって,当会は,重ねて,憲法改正手続をとることなく,政府の憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認することに強く反対するものである。
2014年(平成26年)6月11日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会・事務当局試案に関する会長声明
1(1) 我が国の刑事司法制度においては,捜査機関の想定に基づいて供述獲得が目指される密室取調べとその結果作成される供述調書が,公判実務に決定的な影響を与えている。また,いわゆる人質司法の問題,被疑者と捜査機関との間の証拠の偏在といった状況は,被疑者・被告人が十分な防御を行うことを困難にしてきた。
すなわち,捜査機関の力が刑事司法実務全体に過大な影響力を持ってきたという構造的な問題があり,これが往々にして,捜査機関による独善・暴走を許すことにつながり,冤罪・誤判を生み出す大きな要因となってきたものである。
このような状況は,適正手続を保障する憲法第31条,不利益供述の強要を禁止する憲法第38条,これらを実現する刑事訴訟法全体の趣旨に悖る状況と言わざるを得ないものであった。
(2) 近年,厚生労働省局長事件に関する証拠改ざん等の違法行為により,検察に対する社会の信頼は大きく揺らいだが,これを契機として法務省に設置された「検察の在り方検討会議」は,平成23年3月31日,「検察の再生に向けて」と題する提言を発表した。同提言は,「取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方を抜本的に見直し,制度としての取調べの可視化を含む新たな刑事司法制度を構築するために,直ちに,国民の声と関係機関を含む専門家の知見とを反映しつつ十分な検討を行う場を設け,検討を開始するべきである。」と結論付けた。
そして,同提言を受けて法務大臣は,法制審議会に対して「取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しや,被疑者の取り調べ状況を録音・録画の方法により記録する制度の導入など,刑事の実体法及び手続法の整備の在り方について,御意見を承りたい。」とする諮問第92号(以下「本諮問」という。)を発し,これを受けて法制審議会は,「新時代の刑事司法制度特別部会」(以下「本特別部会」という。)の設置を決定した。
(3) 本特別部会の設置に至る経緯は以上のとおりであり,本諮問が求める「見直し」とは,憲法及び刑事訴訟法上の適正手続保障の趣旨を徹底し,冤罪の発生を根絶するため,密室取調べなどの構造的な問題を抜本的に改善する方策の検討を行うことにあると理解すべきである。より具体的に述べれば,本諮問の趣旨は,「取調べの全面可視化を中心として,捜査の適正を確保し,捜査機関の暴走を抑制し,冤罪の根絶に資する方向での提言」を行う役割を本特別部会に求めたものである。
2 平成26年4月30日開催の法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会第26回会議において,事務当局試案が提示された。
(1)  同試案においては,取調べの録音・録画制度について,(a)録音・録画の対象を裁判員裁判対象事件に限定するか(A案),裁判員裁判対象事件の全取調べ及び裁判員裁判対象事件以外の全身体拘束事件の検察官による取調べに限定し(B案),(b)「被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき」などの例外事由を認めている。
しかし,このような限定的な取調べの録音・録画制度では,「取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直し」を実現することはできず,本諮問の趣旨を没却してしまう。
すなわち,(a)裁判員裁判対象事件以外の事件においても虚偽自白の強要及び冤罪の危険は減少せず,冤罪が起きてしまった場合に冤罪被害者が受ける影響は絶望的に大きい。また,(b)試案が認める例外事由は捜査機関による恣意的運用の危険を否定できず,ひとたび恣意的運用を許してしまえば,せっかく導入した録音・録画制度の価値を水泡に帰してしまうこととなる。
(2) また,同試案においては,被疑者・被告人の身体拘束の在り方についてなんら具体的な提言がなされておらず,いわゆる人質司法の問題を抜本的に解決し,冤罪の発生を根絶するという当初の目的は没却されてしまった。
(3) 証拠開示制度についてみれば,冤罪を根絶するための鍵ともいえる全面証拠開示制度は制度設計から外されてしまい,現行の公判前整理手続における証拠開示制度の枠組みを前提とした限定的な制度の提言にとどまっている。
このような提言を行うことは,冤罪を防止するための刑事司法制度の実現という本特別部会の本来の役割を放棄するものに他ならない。
3 そして,(a)刑の減軽制度,(b)司法取引,(c)通信傍受の拡充,(d)犯罪被害者等証人の支援・保護,(e)公判廷に顕出される証拠が真正なものであることの担保,(f)自白事件を簡易迅速に処理するための方策の各項目については,「捜査の適正を確保し,捜査機関の暴走を抑制し,冤罪の根絶に資する方向での提言」には該当せず,本諮問の趣旨に沿うものとは言えない。
特に,(a)刑の減軽制度については,取調べにおける利益誘導に基づく虚偽自白獲得を助長することになりかねず,また無実の第三者の引っ張り込みの危険も否定できない。(b)司法取引については,(a)と同様の引っ張り込みの危険に加え,共犯者への責任のなすりつけといった重大な事態が生じる危険も想定される。さらに(c)通信傍受の拡充については,現行の通信傍受法でさえも憲法違反の疑いが濃いと言われているにもかかわらず,更に捜査機関の権限を拡大し,広く一般市民のプライバシー侵害を引き起こす危険の強い内容となってしまっている。また,(e)公判廷に顕出される証拠が真正なものであることの担保として具体的に検討されている被告人の虚偽供述等の禁止については,いったん虚偽の自白調書が作成されてしまった事案において,被告人の防御権が著しく侵害されてしまい,「自己が真実と考える事実」を積極的に裁判において主張することができなくなってしまう。
4 当会は,同部会に対し,法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会・事務当局試案の撤回し,例外のない取調べの全事件・全過程の録音・録画制度を導入すること及び全面的証拠開示制度を実現することに関しては,再度,諮問の趣旨に立ち返って議論を行うことを求め,通信傍受法の対象犯罪の拡張など新たな捜査手法の導入を行うことに関しては,諮問の趣旨に沿うものとは言えないことから,検討項目から除外することを求める。以 上
2014年(平成26年)6月11日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

集団的自衛権行使容認に反対する会長声明
日本国憲法において,平和主義は,基本的人権の尊重,国民主権と並んで三大基本原理と評され,前文及びこれを受けた第9条において平和主義が様々な表現をもって詳細に規定されている。すなわち,前文においては,「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し…日本国民は,恒久の平和を念願し…平和を維持し,専制と隷従,圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において,名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と定め,恒久平和主義を謳っている。また,「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と平和的生存権を定めている。その上で,第9条は,その第1項において,戦争の永久放棄を定め,第2項において,戦力の不保持と交戦権の否認を定めたのである。このように恒久平和主義を子細かつ明確に謳った憲法は世界的に見ても類がなく,日本国憲法が定める恒久平和主義の理念は,日本国民の中に深く根付いている。
政府見解は,加盟国の個別的自衛権と集団的自衛権が固有の権利であるとする国際連合憲章51条のもとにおいても,「日本国憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は,我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており,集団的自衛権を行使することは,その範囲を超えるものであって憲法上許されない」として,一貫して憲法は集団的自衛権の行使を否定していると解釈してきた。
ところが,近時,政府は,これまでの政府見解を一変し,集団的自衛権の行使を容認する方向へと大きく舵を切り,猛進している。さらに,最近では,砂川事件最高裁判決が集団的自衛権行使を容認しているかのような説明までしている。しかし,砂川事件は駐留米軍の合憲性が争点となった事件であり,判決が「わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されてない」と述べているのは,日米安全保障条約に基づいて米軍を駐留させることを念頭に置いている。砂川事件最高裁判決が集団的自衛権の行使を容認しているとの理解は誤っている。
また,たしかに国際連合憲章51条は「この憲章のいかなる規定も,国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には,安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間,個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」と規定している。しかし,2度にわたる世界大戦の惨禍に学び,戦争の違法化と集団安全保障の仕組みを設けた国際連合憲章では,もともと個別的自衛権のみを想定していた。ところが,憲章作成交渉の過程で米ソの対立が決定的となり,一方の常任理事国の反対によって安全保障理事会の決議が得られない状態でも,合法的に戦争できるようにしたいとの米ソの政治的思惑から集団的自衛権が規定されたという経過がある。これにかんがみるなら,同条を根拠に集団的自衛権が固有権と断定してよいかどうか,疑問がある。
日本国憲法の基本原理である恒久平和主義を根本から揺るがしかねない集団的自衛権の行使が,憲法改正という厳格な手続を経ることなく,日本国民の意思や議論を排除したままで,閣議決定による時々の政府解釈の変更や政府による集団的自衛権の行使を可能とする法案の提出等によって,容認されることは,到底許されるものではない。このような,集団的自衛権行使の容認ありきで,日本国憲法が定める恒久平和主義の精神を踏みにじる政府の姿勢は,憲法の最高法規性(第10章)や,憲法に違反する法律や政府の行為を無効とし(第98条),国務大臣や国会議員に憲法尊重擁護義務を課す(第99条)ことで,政府や立法府による権力の行使を憲法の制限下に置き,権力の濫用を阻止しようとした立憲主義に著しく反するものである。
よって,当会は,政府に対し,日本国憲法の定める恒久平和主義の意義について改めて認識することを求め,憲法改正手続をとることなく,閣議決定という国民の議論を抜きにした政府の一方的な憲法解釈の変更によって,集団的自衛権行使を容認することに強く反対するとともに,集団的自衛権の行使を認める法案が国会に提出されることのないように強く求めるものである。
2014年(平成26年)5月14日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史
注.旧仮名遣いは原文のまま。この御仁は80才以上?

 

福川律美元会員に対する刑事事件の上告取下げを受けての会長談話
福川律美元会員が,業務上横領等被告事件について上告を取下げたとの情報に接しました。上告取下げにより,福川元会員に対する,懲役14年の判決が確定することになります。あらためて,福川元会員の犯行によって多数の被害者に対し深刻な被害が発生したことについて,こころから遺憾の意を表明いたします。
当会は,福川元会員の不祥事等を契機として,不祥事の再発を防止するため,預かり金等の取扱に関する規定,市民窓口に関する規定及び会員の非行情報の取扱に関する規定等を制定するなどし,現在,会を挙げて不祥事防止対策を実施しております。
今後とも,当会は,会員一人一人にさらなる自覚を求めるべく努力を重ね,不祥事の再発防止に全力で取り組んでまいります。
平成26年(2014年)4月9日
岡山弁護士会 会 長  佐 々 木   浩   史

「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」に抜本的修正を求める会長声明
1 厚生労働省は,昨年12月に成立した「生活保護法の一部を改正する法律」(以下「改正生活保護法」という。)に関して,「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」(以下「省令案」という。)の概要を本年2月27日に発表した。しかし,省令案の内容は,いわゆる「水際作戦」を合法化するとの批判を解消する方向でなされた改正生活保護法に関する国会での法文修正,政府答弁や参議院厚生労働委員会附帯決議をないがしろにするものであり,到底容認することができない。
2 改正生活保護法案の内容は,保護の申請に関して,従来とは異なり,書面による要式行為とし,申請時に保護の要否判定に必要な書類の添付を要件としているように読めたため,違法な水際作戦を合法化するものとして厳しい批判にさらされた。また,扶養義務者に対する通知義務や報告要求を定めていたため,事実上扶養が保護の要件とされるのではないかとも批判された。
そこで,国会における審議では,現行の運用を変えない旨の政府答弁が繰り返され,それに沿う形で法文修正が行われ,通知や報告要求を行うのは「極めて限定的な場合に限ることにし,その旨厚生労働省令で明記する予定である」とされた。
参議院厚生労働委員会でも,改正生活保護法案に対し,「これまでの取り扱いに今後とも変更がないことについて,省令,通達等に明記の上,周知するとともに,いわゆる水際作戦はあってはならないことを,地方自治体に周知徹底する」などと,7項目にわたって詳細に言及する異例の附帯決議を行った。
3 しかしながら,法文修正等によっても修正の趣旨がなお不明確であり,改正生活保護法案が成立すると,不明確な法文が一人歩きし,申請を要式行為化し厳格化したものであると誤解され,違法な水際作戦をこれまで以上に助長,誘発する可能性が極めて大きい。また,従前の運用を変更しないのであればそもそも法文の新設は不要なはずであった。
このため,当会は,平成25年6月12日,生活保護法改正に反対する会長声明を発表し,また当会の所属する中国地方弁護士会連合会は,平成25年10月11日,すべての人に生存権を保障するため,生活保護の利用を妨げる生活保護法の改正に強く反対する旨の決議を採択した。にもかかわらず,昨年12月にこのような反対を押し切る形で改正生活保護法が成立したものである。4 このような事情があるにもかかわらず,省令案は,以下の通りこれらの法文修正等を骨抜きにするものとなっている。
第1に,省令案は,「保護の開始の申請等は,申請書を・・・保護の実施機関に提出して行うものとする。ただし,身体上の障害があるために当該申請書に必要な事項を記載できない場合その他保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合は,この限りではない。」として,書面申請が原則で,口頭申請が認められるのは例外的とされており,国会での答弁に反する内容となっている。
また,改正生活保護法第24条1項但書は,単に「当該申請書を作成することができない特別な事情があるときは」という表現であるのに,省令案は,上記のとおり「保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合は」として特別の事情の有無の判断権を実施機関に委ねており,恣意的な判断がなされるおそれのある内容となっている。
第2に,改正生活保護法第24条2項については,要否判定に必要な資料の提出は可能な範囲で保護決定までの間に行うというこれまでの取り扱いに変更がないことを省令に明記すべきであるのに,省令案にはこの点に関する記述が一切存在せず,参議院厚生労働委員会の附帯決議に明確に反するものとなっている。
第3に,改正生活保護法第24条8項及び同法第28条において,扶養義務者に対する通知や報告要求を行うのは極めて限定的な場合に限るという国会答弁通りの内容を省令に明記すべきであるのに,省令案は,原則として通知や報告要求を行うものとし,「保護の実施機関が,当該扶養義務者に対して法第77条1項の規定による費用の徴収を行う蓋然性が高くないと認めた場合」など3つの場合を規定し,それらに該当する場合にのみ例外的に通知や報告要求を行わないとしている。これは,原則と例外を逆転させるものであって,国会答弁に全く反する内容となっている。
5 以上の通り,このたび明らかにされた省令案は重大明白な問題点を数多く含む内容となっている。このような省令案がそのまま成立してしまえば,「書類が整わないと申請を受理できない」などの口実で申請を受け付けず,単に相談を受けたのみの扱いとするなどの違法な水際作戦にお墨付きを与え,生活保護の利用を妨げる結果となる。このような事態は,まさに当会及び中国地方弁護士会連合会が危惧した事態にほかならない。
国会答弁によって批判をかわしつつ改正法を成立させながら,省令において国会答弁とは全く反する内容を規定することは,国会軽視とのそしりを免れず,ひいては国民主権を否定するものである。生活保護の申請を妨げることは,国民の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(憲法第25条)を侵害することになり,基本的人権の擁護を使命とする当会としては到底容認できない。当会は,上記の政府答弁や法文修正,附帯決議の内容を真摯に反映した省令へと抜本的に修正することを強く求めるものである。
2014年(平成26年)4月1日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

福川律美元会員に対する控訴審判決を受けての会長談話
本日,広島高等裁判所岡山支部において,福川律美元会員(平成25年4月5日付け登録取消)に対して控訴棄却の判決が言い渡されました。福川元会員の犯行によって多数の被害者に対して深刻な被害が発生したことに対し,当会としては,改めて心から遺憾の意を表します。当会は,不祥事の再発防止策として,平成25年9月28日の臨時総会において「預り金等の取扱いに関する会規」を制定(同年12月1日施行)し,同年12月14日の臨時総会において,市民窓口の体制強化及び非行情報の捕捉・管理に関する整備(平成26年3月1日施行)を行いました。
今後とも,当会は,福川元会員による重大な犯罪事実を真摯に受け止め,会員の倫理意識を高め、会員一人一人にさらなる自覚を求めるべく努力を重ねる所存であり,このような不祥事の再発防止に全力を挙げて取り組んでまいります。
2014年(平成26年)1月29日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

司法修習生に対する前期(集合)修習の実施を求める会長声明
1 旧司法試験合格者(平成22年度終了,以下「旧試合格者」という。) に対しては,司法研修所入所後,2か月間の「前期(集合)修習」を実施したのち,実務修習地に配属されていた。旧試合格者は,司法試験受験勉強中は,実体法の解釈中心の勉強をしており,法律実務家としての基礎的知識を修得していないので,実務修習に入る前に司法研修所で統一的に法律実務家としての基礎的学力を修習させる必要があった。
2 ところで,司法改革の一環として法科大学院が設立され,法科大学院卒の司法試験合格者が初めて採用されたいわゆる新60期司法修習生に対して,旧試合格者と同様の「前期(集合)修習」を実施するか否かについて,最高裁の司法修習委員会で検討された。その結果,「前期(集合)修習」に相当する教育は,法科大学院に委ねることとしているので,司法研修所入所後は実務修習から開始するが,法科大学院設置当初なので,実務への導入教育の成熟途上であるから,当面,司法修習の1年間の課程の冒頭に,法科大学院における実務導入教育を補完するための教育を行なうことを相当とし,差し当たり1か月程度の統一的な実務導入教育として,新60期司法修習生に対して「導入研修」が実施された。
3 ところが,次の新61期司法修習生に対しては,上記の「導入研修」を廃止し,「導入研修」教育を行なうことなく,実務修習地に配属することとし,現在(67期)まで,司法研修所による「導入研修」は実施されていない。
この間,法科大学院において最高裁の司法修習委員会が期待する「前期(集合)修習」に相当する教育が十分に行なわれているならば,いきなり実務修習から始めてもさしたる問題はない。しかし,現実は必ずしもそうではなく,多くの法科大学院において「前期(集合)修習」に相当する実務家教育がなされておらず,実施されているとしても法科大学院によって密度に差がある状況である。
4 したがって,法律実務家教育がほとんどなされていない司法修習生を,いきなり実務修習から開始することに対する懸念があるため,司法修習生を受け入れる弁護士会において,独自に司法研修所入所前の司法試験合格者に対し,事前の導入講義等を行なう工夫をしてきたが,大規模弁護士会に限られ,中小規模弁護士会では中々実施できないし,導入講義等を実施できたとしても短期間で,しかも全司法修習生に対して等しく実施されたわけではない。
そこで,日本弁護士連合会においては,平成24年度(66期)から,全司法修習生に対し民事,刑事の課題を司法研修所入所前に配布し,実務修習開始直後に2日間にわたって導入講義を実施している。しかし,この導入講義も,旧司法試験合格者に対する「前期(集合)修習」の内容と比べれば,全く不十分と評価せざるを得ない。
5 そもそも,法科大学院は司法試験合格のための教育を行なうこと,すなわち法律科目の基礎的知識,理解,解釈を司法試験合格レベルに到達させるのが第一の目的であり,法律実務家教育を行なうことを主たる目的としている教育機関ではない。仮に,法科大学院で法律実務家教育までも行なうことを制度的に予定されていたとしても,全ての法科大学院において旧司法試験合格者に対する「前期(集合)修習」に相当する教育の実施を求めることは困難である。
したがって,法律実務家を養成する責任を持つ司法研修所は,全ての司法修習生に対して,統一的かつ実務修習をより効果的に行なうために実務修習開始前の一定期間(1~2か月間程度),「前期(集合)修習」を実施すべきである。
6 よって,当会は,最高裁判所及び国に対して,早急に司法修習生に対して司法研修所による統一的な「前期(集合)修習」を実施することを強く求める。
2014(平成26)年1月15日
岡山弁護士会  会長 近 藤 幸 夫

2347 ら特集岡山弁護士会③

岡山弁護士会
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夫婦同氏制を定める民法750条の規定を合憲とする最高裁判所大法廷判決に対する会長声明
2015年(平成27年)12月16日、最高裁判所大法廷は、夫婦同氏制を定める民法750条につき、夫婦同氏制は旧民法で採用され我が国社会に定着してきたこと、氏は社会の自然かつ基礎的な集団単位である家族の呼称として一つに定めることに合理性が認められること、民法750条は夫婦いずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の協議に委ねているのであって、文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではないこと、婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないものではないことなどの諸事情を考慮すると、夫婦同氏制が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるとは認めることができず、憲法24条に違反するものではないと判示した。
ところで、氏名は個人の人格の象徴であって人格権の一内容を構成するものであり、個人は婚姻にあたり氏を自己決定する権利を有している。夫婦同氏制については,現行憲法制定当時としては、妻は家庭内において家事育児に携わるという家族生活が標準的な姿として考えられていたことから、妻が婚姻により氏を変更することに特に問題を生じることは少なかった。しかしながら、近年女性の社会進出が著しく進み、婚姻前のみならず婚姻後に稼働する女性が増え、その職業も家内的な仕事にとどまらず、社会と広く接触する活動に携わる機会も増加した。そのため、婚姻による氏の変更により、個人の識別、特定に困難を引き起こす事態が生じ、また、氏はその個人の人格を一体として示すものであるところ、氏を変更した一方は自己喪失感を持つに至ることもあり得るなど、夫婦同氏制が個人の人格的利益を侵害するに至っている。そして、現実に96パーセントを超える夫婦が夫の氏を称する婚姻をしており、氏の自己決定権の制約、個人の識別機能に対する支障、自己喪失感などの負担はほぼ妻のみに生じているため、個人の尊厳及び両性の本質的平等に反する事態が生じている。さらに、上記の不利益を避けるためにあえて法律上の婚姻をしないという選択をする者を生んでおり、夫婦同氏制によって婚姻の自由も制約を受けている。世界的に見ても、多くの国において夫婦同氏の外に夫婦別氏が認められており、現時点において、例外を許さない夫婦同氏制を採っているのは我が国以外にほとんど見あたらない。我が国においては、法制審議会が1994年(平成6年)に「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」を公表し、これをさらに検討した上で1996年(平成8年)に法務大臣に答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」において、いわゆる選択的夫婦別氏制という改正案が示され、国会においても選択的夫婦別氏制の採否が繰り返し質疑されてきた。我が国が1985年(昭和60年)に批准した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に基づき設置された女子差別撤廃委員会からも、2003年(平成15年)以降、民法に夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定が含まれていることについて懸念が表明され、その廃止が繰り返し勧告されている。
今回の最高裁判決は、夫婦同氏制が憲法24条に違反しないと判断したが、上記諸事情に照らすと、別氏を望む夫婦にまで同氏を強制する理由はなく、民法750条は、女性が持つ氏の自己決定権並びに氏による個人の識別機能及びアイデンティティという人格的利益、あるいは婚姻の自由を実質的に侵害している。最高裁判決は、上記不利益は氏の通称使用が広まることにより一定程度緩和され得るとするが、通称は便宜的なもので、使用の拒否、許される範囲等が定まっているわけではなく、通称名と戸籍名との同一性という新たな問題を惹起することになるだけでなく、そもそも通称使用は婚姻によって変動した氏では個人の同一性の識別に支障があることを示す証左なのであり、通称使用が広まることは、夫婦が別の氏を称することを全く認めないことの合理的な理由とはならない。5名の裁判官(3名の女性裁判官全員を含む。)が述べるとおり、民法750条は個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っており、憲法24条に違反する。また、法制審議会による答申後、国会において選択的夫婦別氏制が議論されながらその立法化を長年放置しており、国会による立法不作為も違法といわざるを得ない。
したがって、岡山弁護士会は国に対して、夫婦の氏を同等に尊重し両性の本質的平等を実現するために、夫婦同氏規定を廃止し、婚姻前の氏を引き続き称することを望む者にこれを認める選択的夫婦別氏制の立法化及びこれに伴う戸籍法等の改正を強く求めるものである。
2016年(平成28年)1月13日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

共謀罪規定の新設に反対する会長声明
報道によれば、政府は、過去3度廃案となった共謀罪の規定(以下「共謀罪規定」という)を、改めて国会へ上程しようとしている。
しかし、当会は、以下のとおり、共謀罪規定は極めて問題の多く、かつ危険な規定であるので、その新設に断固反対する。
そもそも、共謀罪とは、団体の活動として犯罪の遂行を共謀した者を処罰するための刑罰法規である。
そして、共謀した者の内に、犯罪の実行の着手やその準備行為を行った者を含まなくとも共謀罪が成立するという点において、従来の共謀共同正犯とは全く異なっている。これは、思想ではなく行為を処罰するという刑事法体系の基本原則に根本的に矛盾するものである。
また、個人がどのような思想や信条を持ち、また、それをどのように表現するかを処罰の対象とすることは、憲法が保障する思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由を侵害する危険が極めて強い。共謀罪規定はその対象を暴力団等の反社会的組織に限定していないため、例えば、一般市民によって構成される市民団体や労働組合が政府の政策に反対し、首相官邸前での座り込みなどの行動について話し合っただけで、身体を拘束され、処罰されてしまう可能性がある(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)。少なくとも、共謀罪規定が市民団体や労働組合等の活動に深刻な萎縮的効果をもたらすことは明らかである。現在検討されている共謀罪規定は、一定の法定刑(長期4年)以上の犯罪全てに適用され、600以上もの犯罪について一挙に共謀罪を新設する内容であることからすれば、共謀罪規定が国民に与えるであろう萎縮的効果は甚大である。
さらに、仮に共謀罪規定が導入された場合、捜査機関は、謀議を立証するため、取調べによる自白獲得の外、国民の私的な会話・通話・通信などを秘密裏に聴取・閲覧するなどの捜査活動に注力することが予想される。
そうであれば、通信傍受法の対象範囲拡大を前提に、通信傍受が広範かつ包括的になされる危険性も認められ、また、共同謀議を否認する被疑者に対しては捜査機関によって自白調書の獲得を目指して苛烈な取調べがなされる危険性は増大し、国民の基本的人権と深刻な対立を引き起こすおそれが増大する。
なお、先般のパリ同時多発テロ事件を受けて、テロ撲滅のために共謀罪規定が必要であるなどの意見もあるが、これは、無理やりなこじつけである。そもそも、政府は国際組織犯罪防止条約を批准することを目的として共謀罪規定の創設を提案しているところ、同条約の取り締まりの対象は、経済目的の組織的犯罪集団であって、その内容はテロ対策とはまったく関係ない。わが国では、組織的犯罪集団に関連した主要犯罪は既に未遂以前の段階から処罰できる体制がほぼ整っており、共謀罪規定の必要性はない。
以上のとおり、共謀罪規定は、刑事法体系の基本原則に矛盾し、基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こすおそれが高いことから、当会は、その新設に断固反対する。
2016年(平成28年)1月13日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

死刑執行に反対する会長声明
2015年(平成27年)12月18日、東京拘置所と仙台拘置支所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。
執行されたうちの1名は、裁判員裁判による死刑判決を受けた者として初めて死刑の執行をされた者である。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、死刑に関する情報公開や国民的議論が行われないまま、前回の執行から約半年後に死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国に上っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。その中で、2014年(平成26年)に実際に死刑を執行した国は我が国を含め22か国しかない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けており、2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、2014年(平成26年)7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会は、2015年(平成27年)12月9日には岩城法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
静岡地方裁判所は、2014年(平成26年)3月27日、死刑判決が確定していた袴田巌氏の第2次再審請求事件につき、再審開始、死刑及び拘置の執行停止を決定したが、この決定は、この要請書が指摘した、絶対にあってはならない冤罪による誤った死刑執行がなされるおそれが現実にあることを示すものである。
当会においても2015年(平成27年)1月にシンポジウムを開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行っているところである。
しかしながら、現実には、国際社会の潮流に反し、また、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
そこで、当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、我が国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2016年(平成28年)1月13日
岡山弁護士会  会長 吉 岡 康 祐

面会室における写真撮影に関する東京高裁判決に対する会長声明1 本年7月9日,東京高等裁判所第2民事部は,弁護人が面会室内で写真撮影を行っていたことを理由に,拘置所職員が接見を中断・終了させた行為について,同弁護人の国家賠償法に基づく損害賠償請求を一部認めた原判決を取消し,同弁護人の請求を全て棄却する逆転判決を言い渡した。
2 原判決は,弁護人が行った面会室内での写真撮影は,将来,公判等において使用すべき証拠を収集,保持しておくという証拠保全を主な目的としており,接見交通権に含まれないとしながらも,接見交通権は憲法で保障された権利であるので,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律117条,113条に基づいて,弁護人に対して面会を一時停止または終了させることができるのは,未決拘禁者の逃亡のおそれ,罪証隠滅のおそれ,その他刑事施設の設置目的に反するおそれが生ずる相当の蓋然性があると認められる場合に限るとし,拘置所職員が接見を中断・終了させた行為は違法であるとした。
3 しかし,本判決は,刑訴法39条の「接見」と「書類もしくは物の授受」が区別されていること,同規定が制定された当時はカメラやビデオ等の撮影機器は普及しておらず,弁護人が被疑者・被告人を写真撮影したり動画撮影することは想定されていなかったことを理由に,写真撮影,動画撮影は接見交通権の範囲外とした上で,さらに,東京拘置所長は,庁舎管理権に基づいて面会室内へのカメラの持ち込みや撮影を原則として禁止することができるとした。そして,これに反する面会は,どのような場合でも,面会を一時停止または終了させることができると判示し,弁護人の請求を棄却した。
4 そもそも,接見交通権は,身体の拘束を受けている被疑者・被告人が外部の人物と面会等する権利であり,その中でも弁護人との接見交通権は,憲法34条で保障されている弁護人依頼権の中核をなす刑事手続上の極めて重要な権利である。弁護人は,面会室内で被疑者・被告人と立会人を置かずに接見でき,当然ながら被疑者・被告人から事情を聴取する際に弁護人がメモをとることを想定している。そして,弁護人が被疑者・被告人を面会室内で写真撮影をしたり動画撮影をすることは,それによって被疑者・被告人の話や所作等を記録するために行うのであるから,面会状況の記録という意味では何らメモと異なるところはない。従って,弁護人が被疑者・被告人を写真撮影したり動画撮影することは,接見交通権の範囲内の行為であると言うべきである。
また,被疑者・被告人が捜査官等から有形力の行使を受けたと訴えた場合には,その痕跡を直ちに保全する必要があり,写真撮影はそのための有効な手段である。この点,本判決は,かかる場合は刑訴法179条の証拠保全を行えば足りるとする。しかし,証拠保全の手続を待っていては証拠保全の目的を十分に達せない場合があり,本判決の指摘は妥当でない。
さらに,本判決は,被疑者・被告人の逃亡のおそれ,証拠隠滅のおそれ,庁舎内の秩序の乱れ,警備保安上支障をもたらすおそれ等を理由に,拘置所長の庁舎管理権に基づいて面会室内へのカメラ持ち込みや撮影を禁止できるとするが,いずれも抽象的危険にすぎず,カメラの持ち込みや撮影禁止の根拠たり得ない。かつ,本判決の論理によれば拘置所長の庁舎管理権の裁量をより広範囲で認めることとなり,接見交通権の侵害になるとともに,ひいては弁護人の弁護権の制約につながりかねず,本判決は極めて不当である。
5 以上より,本判決は,刑訴法39条の解釈を誤った判決であるとともに,拘置所長の庁舎管理権を広範囲で認める極めて不当な判決であるので,本会は強く抗議する。
2015年(平成27年)9月30日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

参議院の安保法案強行採決に抗議する会長声明
今月19日、参議院本会議は、自民公明などの賛成多数で、安保法案を強行採決した。長年維持されてきた憲法解釈を一内閣の判断で変更したうえ、多数の国民の意思を無視して行われた、立憲主義・国民主権の原則に反する強行採決に対して強く抗議する。
そもそも、安倍内閣は昨年7月、歴代内閣が継承してきた憲法第9条の解釈を変更して、集団的自衛権行使を容認する閣議決定を行い、続いて集団的自衛権行使を前提とする安保法案を今国会に提出した。この閣議決定は、憲法第9条の恒久平和主義に反するだけでなく、憲法改正手続を経ることなく一内閣の判断で憲法解釈を変更する点において立憲主義にも反している。日本弁護士連合会及び全国52すべての弁護士会が、この閣議決定を撤回するように何度も求めてきた。
衆議院での審議中、憲法審査会に出席した与党推薦者を含む3名及び全国90%以上の憲法学者、数名の元内閣法制局長官、数名の元最高裁裁判官も明確に安保法案の違憲性を公述している。しかし、政府は、そもそも集団的自衛権について念頭になかった1959年(昭和34年)の「砂川最高裁判決」を合憲性の根拠に持ち出すなど、法律家として到底容認できない反論を重ねてきた。
そして、多くの国民が今国会での成立に反対しているにもかかわらず、7月16日衆議院本会議は数を頼んで強行採決の暴挙にいたった。
その後、審議の場は参議院に移り、国民の反対の声は一層大きくなった。例えば8月26日、日弁連主催の市民集会においては、元内閣法制局長官及び元最高裁裁判官、全国108の大学の学者らが一堂に会し、安保法案の違憲性及び廃案を主張し、続いて同月30日には市民十数万人が国会議事堂前に集まり、同時に全国300箇所以上で、数千、数万人の市民が集まるなど、連日のように全国津々浦々で安保法案の廃案を求めて集会やパレードが行われている。参加者の年齢層も、高校生からお年寄りまで広がっている。そして、9月初旬には、山口繁元最高裁長官が、「砂川最高裁判決」は集団的自衛権行使容認の理由にはならず安保法案は違憲と明言し、同月9日にも同様に大森政輔元内閣法制局長官も違憲性を公述し、同15日には元裁判官75名が連名で安保法案が立憲主義に反するなどする陳情書を参議院議長へ提出した。
さらに、参議院の審議中、安保法案の問題点は以下のように一層明らかになった。すなわち、政府が合憲性の根拠とする「砂川最高裁判決」の成立以前に、田中耕太郎最高裁長官(当時)や藤山愛一郎外務大臣(当時)が米国駐日大使らと密会し、同判決の見込みなどについて報告した事実(米国公文書による)によって司法権の独立が改めて問題になった。そして、自衛隊の統合幕僚監部が安保法案成立を先取りした研究を行い、同様に、河野克俊統合幕僚長も、昨年12月、米軍幹部に対して安保法案の整備は今夏までには終了するなどと説明していたことなど国会の審議を軽視していたことが明らかになった。また、安保法案の法文上兵站活動の範囲について通常兵器はもとより核兵器の運搬も可能であることなど法案自体の欠陥も明らかになった。
多くの国民の世論を聞こうとせず、違憲と主張する圧倒的多数の憲法学者など専門家の見解にも耳を貸すことなく、強行採決したことは、憲政史上最大の汚点となることは明らかである。
我々弁護士及び弁護士会は、法の支配の下、人権擁護と社会正義の実現を使命とする立場から、平和主義、立憲主義、国民主権に反する違憲法案を衆議院に続いて参議院においても強行採決したことに怒りを込めて抗議する。
2015(平成27年)9月24日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

戦後70年を迎えるにあたっての会長談話
2015年(平成27年)8月15日、戦後70年を迎えます。先の大戦は、私たちの想像がつかないほど悲惨で、惨い戦争であったと、戦争を体験した父や母あるいは先輩たちから聞いています。一枚の赤紙で兵隊にとられ、夫や恋人、息子を失った者。戦死したら、お国のために命を捧げた英霊と崇められるだけで、遺骨も帰って来ない。国民は、日々空襲の恐怖と飢えに苦しみ、明日への希望も持てなかった。命をつないでゆくだけで必死だったと聞いています。また、出征した兵士は、片道切符の戦闘機や特殊潜航艇で特攻を命じられたり、玉砕覚悟の突撃を強いられたり、理不尽な戦闘行為によって命を奪われました。捕虜になることを恥とし、自決させられた者もいます。あるいは、飢餓や疫病で命を失った兵士、戦後シベリアへ抑留され帰還できなかった人も大勢います。国内では、沖縄においては激しい地上戦が行われ、兵士だけでなく多数の非戦闘員(民間人)が犠牲になりました。空襲も東京、大阪等の大都市だけでなく日本各地の都市におよび、広島・長崎では、原子爆弾によって、一瞬のうちに何万もの人々の命が奪われました。おそらく自分が何故死んでゆくのか理解しないまま、亡くなったものと思います。戦争によって亡くなった全ての人々の無念さを想像すると、筆舌に尽くし難い思いが募ります。
他方、日本は、先の大戦によって、アジア・太平洋地域の人々に対しても、多大な被害を加えています。無差別攻撃、一般住民や捕虜に対する虐殺、生体実験、性的虐待、強制連行、強制労働、財産の没収、文化の抹殺等、アジア・太平洋地域の人々の生命だけでなく、自由や財産や文化までも奪いました。先の大戦の評価についてはさまざまではありますが、戦後50年に出されたいわゆる「村山談話」では、率直に植民地支配に基づく侵略戦争であったことを認め、それに対して真摯に反省するとともに、被害者に対する謝罪を、日本政府は行っています。過去に犯した過ちを反省・謝罪し、今後再びこのような過ちを繰り返さない決意をすることは、何度してもけっして十分ということはありません。
私は、まず、この戦後70年を迎えるにあたって、先の大戦によって生命・自由・財産・文化を奪われた全ての国の犠牲者に対して、心から哀悼の意を表したいと思います。
戦後、われわれは、先の大戦の痛切な反省から平和憲法を定めました。その前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起きることのないよう決意し」、憲法9条では「戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認」が謳われています。憲法施行後、自衛隊が創設されましたが、平和憲法の下で、自衛隊の活動は制約され専守防衛に徹し、この70年間、日本は戦争当事者となることなく平和国家としての道を歩んできました。戦争放棄を定めた憲法9条は、日本が国際社会の中で信頼を得る上で大きな役割を果たしてきたものと思います。そして、憲法9条を持つ日本国憲法の下で、法律家として仕事ができることを私は誇りに思っています。
ところで、日本政府は、日本を取り巻く国際環境の変化を理由に、戦後一貫して否定してきた集団的自衛権の行使を、憲法9条を改正することなく閣議決定で容認し、それに引き続いて、現在国会では集団的自衛権行使のための各種安全保障法制が立法化されようとしています。この動きは、戦後の恒久平和主義に立脚した我が国の70年の平和な存立の歴史とそのための努力を真っ向から否定するものであり、恒久平和主義に反するだけでなく、憲法に反する法律を、憲法を改正することなく成立させようとするもので、立憲主義にも反し、とうてい許されるものではありません。
軍事的抑止力によって平和がもたらされるという論理は、かつての歴史が明確に否定しています。日本国憲法前文で規定されているように、平和は、「諸国民の公正と信義に対する信頼」によってこそもたらされるものであることを日本政府は認識すべきです。文化・哲学・文学・芸術・芸能・映画・漫画・アニメ・音楽・経済・産業・医療・技術・観光・スポーツ・ボランティア活動等々、あらゆる分野で我が国は世界中の多くの国々とあるいは人々と国際交流を重ね、進展している状況に鑑み、日本政府は軍事力に頼らず、軍事力以外の分野での国際交流を通じて、平和外交の道を模索すべきです。そして何よりも、武力による威嚇外交ではなく、対話による平和外交を望みます。
1950年。日本弁護士連合会(以下「日弁連」という)は、第一回定期総会を原爆によって壊滅的被害を受けた平和都市「広島」で開催しました。それに引き続き行われた平和大会で、われわれ弁護士は、「平和と人権」を守る活動をすることを宣言しました。「基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命」とする弁護士の決意宣言です。「戦争は人権の最大の敵」であることを考えると、平和を守ることこそ弁護士の使命であると言っても過言でありません。  私は、岡山弁護士会会長として、憲法とりわけ憲法9条が危機的状況に陥っている今日、広島の「平和宣言」を再び思い起こし、日弁連及び全国の弁護士会そして平和を愛する国民の皆様とともに、日本国憲法の理念と基本原則を堅持し、戦争のない社会を構築するため、全力を尽くすことを誓います。
2015年(平成27年)8月12日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

衆議院の安保法案強行採決に反対する会長声明
本日、衆議院本会議において、自民公明など与党の賛成多数をもって安保法案は強行採決された。もとよりこの法案は、憲法9条違反であるにもかかわらず、安倍内閣が砂川最高裁判決を根拠にした独自の合憲解釈のもと、強行採決に踏み切ったものである。
そもそも、安倍内閣は、昨年7月、歴代内閣が継承してきた憲法9条の解釈を突如変更し、憲法9条のもとでも、集団的自衛権行使を可能とする閣議決定をなし、今国会にその集団的自衛権を前提とする安保法案を提出した。この閣議決定及び安保法案は、憲法9条の恒久平和主義に反するだけでなく、憲法改正手続を経ることなく一内閣が勝手に憲法の解釈を行ったという意味で立憲主義にも反するので、全ての弁護士会はこの閣議決定の撤回や安保法案の廃案を求めてきた。
しかも、安保法案の衆議院の審議中に、憲法審査会に出席した与党推薦者を含む3名の憲法学者全員が、提案された法案は憲法に違反すると公述したにもかかわらず、与党自民党の幹部は、「憲法学者が平和や安全を守ってきたわけではない」とか、「憲法違反と考えていない憲法学者もいる」とか、「違憲と考えている憲法学者の数が問題ではない」などと、全く不合理な反論を展開し、また、閣議決定や法案の合憲性については、集団的自衛権が争点になっていなかった砂川最高裁判決を持ち出すなど、法律家集団として到底容認できない反論を重ねてきた。
このような安倍内閣の不誠実な説明に対して、80パーセントを超える国民が十分な説明を受けていないと答えている。(7月6日毎日新聞)また、いまだ審理が尽くされていない論点も多数残されている。このように多くの国民が納得していない法案を、予定していた審議時間の経過という理由だけで強行採決することは、数の横暴以外の何物でもなく、国民主権にも反する極めて由々しき事態であり、到底認めることができない。
そもそも憲法に違反する法案について立法理由の説明がまともにできるはずはなく、審理が進むにつれて、益々、安保法案の違憲性が明らかになっていったことから、安倍内閣は、これ以上時間をかけて審理されたら、法案の違憲性が白日のもとになるため、早期に、数の力で押し通す以外に方法がないと判断したとしか考えられない。
国民の世論に耳を貸さず、違憲を主張する圧倒的多数の憲法学者の論にも耳を貸さず、自らの偏った考えだけで、国会運営を行い強行採決することは、憲政史上最大の汚点となることは明らかである。
当会は、法の支配の下、人権擁護と社会正義の実現を使命とする立場から、平和主義、立憲主義、国民主権に反して違憲立法を行う安倍内閣に対して、今一度、集団的自衛権行使を可能とする閣議決定の撤回を求め、参議院に対しては、安保法案の廃案を求めるとともに、いわゆる60日ルールを使って違憲法案を成立させることがないように、強く求める次第である。
2015年(平成27年)7月16日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

死刑執行に関する会長声明
2015年(平成27年)6月25日、名古屋拘置所において、1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、昨年9月17日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、死刑に関する情報公開や国民的議論が行われないまま、前回の執行から約10か月後に死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国に上っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。その中で、2014年(平成26年)に実際に死刑を執行した国は我が国を含め22か国しかない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けており、2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、2014年(平成26年)7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会は、2013年(平成25年)2月12日に谷垣法務大臣に対し、2014年(平成26年)11月11日には上川法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
冤罪による誤った死刑執行は人権侵害の最たるものであり、絶対にあってはならない。静岡地方裁判所は、2014年(平成26年)3月27日、死刑判決が確定していた袴田巌氏の第2次再審請求事件につき、再審開始、死刑及び拘置の執行停止を決定したが、この決定は、この要請書が指摘した、絶対にあってはならない冤罪による誤った死刑執行がなされるおそれが現実にあることを示すものである。
当会においても本年1月にシンポジウムを開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行っているところである。
しかしながら、現実には、国際社会の潮流に反し、また、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
今回の執行についても、執行対象者の選定基準や死刑判決確定から死刑執行までの経過については法務省より何ら説明もなく、死刑執行に至る過程についての不透明さが改めて浮き彫りとなった。
そこで、当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、我が国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2015年(平成27年)7月8日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

生活保護の住宅扶助基準、冬季加算の引下げに反対する会長声明h厚生労働省は、平成27年1月15日、平成27年度から生活保護の住宅扶助基準と冬季加算を引き下げるとの方針を発表し、同年3月9日、同省社会・援護局関係主管課長会議において、その具体的指針を現場に示した。この引下げにより、住宅扶助基準は平成27年7月から3年間にわたって総額約190億円、冬季加算は、平成27年度で30億円もの大幅な減額が行われようとしている。
これらの引下げに先行し、厚生労働省は平成25年1月、生活保護費のうち食費や光熱費などの生活費を賄う生活扶助基準について、3年間で総額670億円を減額すると発表し、実際に、平成25年8月、平成26年4月、平成27年4月の3度にわたり生活扶助の基準額を引き下げている。これに対して、日本弁護士連合会や当会を含む各弁護士会は、かかる一連の引下げは、最低限度の生活を保障する憲法25条に違反するとして強く反対する声明を繰り返し発してきた。同時に、生活保護受給者の最低限度の生活を行う権利が侵害されたとして、岡山をはじめ全国各地で減額処分の取消しを求める裁判が相次いで提起されている。
政府は、平成18年6月に施行された住生活基本法に基づき、平成23年3月に「住生活基本計画(全国計画)」を閣議決定し、「最低居住面積水準」を定めた。この最低居住面積水準とは、「健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準」であり、「単身者25平方メートル」「2人以上の世帯10平方メートル×世帯人数+10平方メートル」等と定められ、これらの水準未満の住宅については「早期に解消」するべきと決定された。この最低居住面積水準は、憲法25条が保障する「健康で文化的な生活」を住生活の面において数値化したものであり、「健康で文化的な生活」の具体化立法である生活保護法の実施にあたっても当然に守られなければならない。さらに、厚生労働省の諮問機関である生活保護基準部会は、生活保護受給世帯が居住する民営借家における最低居住面積水準の達成率に関して、一般世帯においては、単身世帯で76%、2人以上世帯で86%に対して、生活保護受給世帯においては、単身世帯で46%、2人以上世帯で67%と、生活保護受給世帯の水準は一般世帯に対してこれを大きく下回っているため、より適切な住環境を確保する方策が必要と指摘した(平成27年1月生活保護基準部会作成の報告書)。
しかし、厚生労働省は、今回の引下げに際して、この生活保護受給世帯の最低居住面積水準の実情を無視する姿勢を明確にし、住家賃物価の動向(全国平均△2.1%)を住宅扶助基準へ反映させることなどを理由に、住宅扶助基準の引下げを強行しようとしている。また、従前2人世帯の住宅扶助は単身世帯の1.3倍とされていたところを、今回の方針では1.2倍に引き下げるとしたため、単身世帯の住宅扶助基準が引き下げられた地域では、2人世帯の基準も大きく引き下げられる結果となった。しかも、生活保護受給世帯の住宅扶助の実績額(平均)は37,088円(2人以上の世帯)であって、一般低所得世帯(年収下位10%世帯、生活保護受給世帯や生活保護基準以下で生活する世帯も含まれる)の平均家賃額38,123円と比べても、なお低く、生活保護受給世帯が不当に優遇されているという実態はない。
また、冬季加算とは、冬季に暖房費などの出費のため、11月から3月までの期間、生活扶助基準に加えて、地域別、世帯人数別に定められた額を支給する制度である。上述の生活保護基準部会報告書では、季節要因等によって変動する現実の冬季増加費用が、冬季加算額によって実際に賄えるかを検証する必要があるなどと指摘した。しかしながら、厚生労働省の方針は、この指摘を無視したまま、11月から3月の一般低所得世帯における冬季増加費用と生活保護受給世帯の冬季増加費用を単純に比較するなどして、ほとんどの地域・世帯において冬季加算額を引き下げることを決めている。しかし、そもそも一般低所得世帯には生活保護受給世帯や生活保護基準以下で生活する世帯も含まれていることから、単純に比較すること自体きわめて不合理である。
これまでの3度にわたる生活扶助基準の引下げに加えて、今回の住宅扶助基準や冬季加算の引下げが実施された場合、生活保護受給世帯は、生活費の切り詰めや、家賃滞納で住宅の明け渡しを求められる等の危険が生じ、特に子どものいる多人数世帯の生活の場が不安定になることが懸念される。また、冬季加算の引下げは、平年以上に厳冬になった場合などは、寒冷地のみならず温暖地においてすら生命や身体への深刻な影響を招きかねない。
以上のとおり、今回の住宅扶助基準と冬季加算の引下げは、生活保護基準部会の専門的知見との整合性を欠くなどの点において、厚生労働大臣の裁量権を逸脱・濫用する点で生活保護法8条2項に違反し、同時に、生存権を保障する憲法25条にも違反するものであり、当会は、政府がこれらの引下げ方針を撤回するように、また、衆参両院に対しては、かかる厚生労働大臣の裁量権の逸脱・濫用行為を厳しく監視するように、強く求める。
2015(平成27)年6月10日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案が、今国会(第189回通常国会)に提出された。同案附則11条で、「少年法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされていることから、自民党は、少年法の適用年齢などの引下げについて検討するため、「成年年齢に関する特命委員会」(以下「特命委員会」という)を設置した。そして、2015年4月14日に開催された特命委員会の初会合において、「18歳から選挙権を持つようになることと関連付けて、果たす義務についても考えるべきであり、少年法の適用年齢も18歳未満にすべきではないか」という趣旨の発言があったと、報道されている。
しかし、法律の適用年齢を考えるにあたっては、それぞれの法律の立法趣旨に照らし、個別法ごとに慎重かつ具体的に検討すべきである。したがって、同じ適用年齢に関する問題であっても、法の立法趣旨によっては異なる年齢とすることも当然あり得、選挙権年齢が18歳以上となったからといって、少年法の適用年齢も当然に18歳未満に引き下げるということにはならないはずである。
そもそも、旧少年法では、適用年齢を18歳未満と規定していた。しかし、1948年に制定された現行少年法は、この程度の年齢(18歳、19歳)の者は、未だ心身の発達が十分でなく、環境その他の外部的条件の影響を受けやすく、「刑罰」を科するより保護処分によってその「教化」を図る方が、立ち直りのためには適切である場合が極めて多い(1948年6月25日付参議院司法委員会における佐藤藤佐政府委員の説明参照)ことを理由に、適用年齢を20歳未満に引き上げた。このように、少年法の適用年齢は、少年の「教化」という点を重視し、個人の権利義務とは異なる観点から定められたものである。したがって、少年法の適用年齢を考えるときに、選挙権年齢と関連して議論を開始すること自体が、少年法の趣旨に反し、許されない。
たしかに、現代の若年者は、身体的には早熟傾向にある。しかし、他方で、精神的・社会的自立が遅れたり、人間関係をうまく築くことができなかったりする傾向にあるとも指摘されている(2008年9月30日付法制審議会民法成年年齢部会第8回会議配布資料32)。かかる現代の若年者の特徴からすると、「立ち直り」のために必要とされるのは、「刑罰」による処罰ではなく、充実した「教化」であると考えるべきである。また、仮に少年法の適用年齢が18歳未満に引き下げられた場合、18歳、19歳の者については、現行少年法の下で行われている、犯罪の背景・要因となった若年者の資質や環境上の問題点の調査・分析が行われなくなり、「立ち直り」のための手当がなされず、極めて不当である。
さらに、特命委員会において、「続発する少年の凶悪犯罪に対処するために少年法の適用年齢を引き下げるべき」という趣旨の発言もあったと、報道されている。しかし、少年犯罪の件数は、2004年以降、減少し続け、凶悪犯罪も横ばいまたは減少傾向にある(警視庁「少年非行情勢」2014年1月?12月)ことを考えると、少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることによって、犯罪抑止効果が得られるという合理的な立法事実は存在しないというべきである。
以上より、選挙権年齢に合わせて少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることは、少年法の立法趣旨に反し、かつ、合理的な立法事実に基づかないので、当会は反対を表明する。
2015(平成27)年5月13日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

「集団的自衛権行使容認の閣議決定」の撤回を求め、「新ガイドライン」及び「平和安全法制案」に反対する会長声明
1  日本国憲法9条は、戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認を定め、徹底した恒久平和主義をとることを全世界に表明した。これは、先の大戦の多くの被害と加害の両方を経験した日本国民の願いであり、世界に向けての不戦の誓いでもある。
戦後70年、憲法9条は幾たびか改変の危機に見舞われてきたが、これまでの政府は、憲法9条は個別的自衛権までは放棄しておらず、自衛隊は専守防衛に徹する必要最小限度の実力であるから憲法9条の「戦力」ではないという解釈のもとに、外交・防衛政策をとってきており、かろうじて憲法9条は堅持されてきた。 しかし、2014年7月1日に、これまでの政府見解を変更し、現行憲法9条の下でも集団的自衛権の行使は可能であるとする閣議決定がなされた。これに対し、日本弁護士連合会及び岡山弁護士会をはじめとする各単位会は、この閣議決定は恒久平和主義及び立憲主義に反するので撤回せよとの会長声明・総会宣言・決議を幾度となく出してきた。
2 ところで、政府は、本年4月27日、米国との間で、新たな「日米防衛協力のための指針」(以下「新ガイドライン」という)に合意した。この新ガイドラインによれば、緊急事態のみならず、平時、グレーゾーン事態を含むあらゆる状況において、切れ目のない緊密な日米の軍事協力により、大気圏外及びサイバー空間にも及んで、アジア太平洋地域及びこれを超えた全世界に及ぶ日米同盟関係を形成するものとなる。これは、日米及び極東の平和と安全の維持に寄与することを主眼としてきた従来の日米同盟の本質を根本的に転換するものであると言わざるを得ない。
すなわち、新ガイドラインは、日米両国が、米国又は第三国に対する武力攻撃に対処するため、日米両国が当該武力攻撃への対処行動をとっている他国とも協力することを取り決め、集団的自衛権に関しては、自衛隊が機雷掃海、艦船防護のための護衛作戦、敵性船舶の臨検及び後方支援を行うこと等を具体的に定めている。また、これまでの「周辺事態」にとどまらず、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」への対応、及びアジア・太平洋地域を超えたグローバルな地域の平和と安全のための対応として、自衛隊と米軍が、実行可能な限り最大限協力するとし、後方支援を行うこと等を定めている。
もとより、国家の安全保障・防衛政策は、日本国憲法前文と憲法9条が掲げる徹底した恒久平和主義に基づいて行わなければならない。集団的自衛権の行使はもちろん、世界中に自衛隊を派遣して米国等の戦争の後方支援をし、武力行使の道を開くことは、日米安全保障条約の範囲すらも超えて、明らかに恒久平和主義に反するものである。
のみならず、集団的自衛権行使を容認し、世界規模での自衛隊の活動を認める内容の新ガイドラインについて、憲法改正の手続きを経ることなく、単なる政府間の合意でなされることは、立憲主義の根本原則を踏みにじるものである。
しかも、新ガイドラインの合意に際し、日本政府は、まだ国会に上程されていない安全保障関連法(平和安全法制整備法案)について、今国会で成立させると米国に約束した。まだ、国会にも上程されておらず、かつ、法案の内容すらも明確になっていない段階で、米国との約束を先行させ、既成事実化しようとするもので、国権の最高機関である国会そして何よりも国民を完全に無視する態度と言わざるを得ず、民主主義・国民主権に著しく違背し、到底許されない。
3 自民、公明両党は、5月11日の与党協議会で、新しい安全保障法制を構成する11の法案の内容で正式に合意した。今後は、閣議決定を経て、15日には国会に提出し、5月下旬より国会審議に入ると報道されている。
自衛隊の海外派遣の恒久法である「国際平和支援法案」と、武力攻撃事態法改正案・重要影響事態法案(周辺事態法)・自衛隊法改正案・PKO協力法改正案等を含めた10法案の、合計11の法案は「平和安全法制」と命名され、これらの法案は、「日本の平和と安全」に関するものと、「世界の平和と安全」に関するものに分かれる。
前者の「日本の平和安全」については、武力攻撃事態法改正案に、集団的自衛権行使の要件として「存立危機事態」を新設し、日本が直接、武力攻撃を受けていなくても、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃されて、日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態で、他に適当な手段がない場合に限り、自衛隊が武力行使できるように、また、従来の周辺事態法は「重要影響事態法」に変わり、「日本周辺」という地理的制限をなくし、世界中に自衛隊を派遣できるようにし、後方支援の対象も、米軍以外の外国軍に拡大している。
後者の「世界の平和と安全」については、「国際平和支援法」を新設し、国際社会の平和と安全を目的として戦争している他国軍の後方支援を、自衛隊が行うことを可能とする「恒久法」である。これまでは、自衛隊の海外派遣の度に特別措置法(時限法)を作ってきたが、この法案が成立すれば、国会の事前承認さえあれば、いつでも海外派遣することが可能となる。
以上のような内容の「平和安全法制」は、「平和」「安全」とは名ばかりで、まさしく「戦争法案」と評価せざるを得ず、日本国憲法前文及び憲法9条の徹底した恒久平和主義に反するもので、到底容認できるものではない。かかる内容の法案は、これまで、平和国家として日本がとってきた外交・安全保障政策や方針を180度転換するものであり、国民的議論を背景にした慎重な国会審議と直接に国民の意思を問う憲法改正手続を経ることがないまま、今国会の会期中で早急に審議し成立させるべき法案でない。米国との約束の履行より、国民の意思と覚悟の確認を先行させるべきである。
4 岡山弁護士会は、以上の通り、「集団的自衛権行使を容認した閣議決定」の撤回を再び強く求めるとともに、「新ガイドライン」及びその国内立法として、今国会(第189回通常国会)で審議予定の全ての「平和安全法制案」は、日本国憲法前文、憲法9条、立憲主義、国民主権という憲法の極めて重要な基本原則に違反し、我が国の平和国家としての根幹を揺るがすものとして、強く反対するものである。
2015(平成27)年5月13日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

2346 ら特集岡山弁護士会②

岡山弁護士会
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「共謀罪」と実質的に変わらない,いわゆる「テロ等準備罪」を創設する
組織犯罪処罰法改正法案の国会提出に反対する会長声明
1 当会では,昨年だけでも1月,11月と,二度にわたり,いわゆる「共謀罪」を内容とする法案の国会提出に反対する声明を発表しているが,現在の国会での議論状況及び報道を踏まえ,過去に3回も廃案になった「共謀罪」と実質的に変わらないいわゆる「テロ等準備罪」を創設する組織的犯罪処罰法改正法案を国会に提出することに強く反対する。
2 政府が本国会に提出しようとしている新法案(以下,「提出予定新法案」という。)の内容は,報道によれば,犯罪主体を組織的犯罪集団に限定した上で,特定の犯罪実現の計画に加え,準備行為を要件としているという。そして,政府はこれらの変更点から,提出予定新法案を従来の「共謀罪」とは全く異なるテロ対策のための法案であるとしてきた。
しかし,組織的犯罪集団の定義は曖昧であり,捜査機関の恣意的な解釈によって通常の市民団体や労働組合等が組織的犯罪集団と認定される危険性を孕んでいることから,主体がテロ組織等に限定されているとは言い難い。政府もテロ等準備罪について,「一般の方々がその対象になることはあり得ない」としながら,「団体の性質が一変することはある」と述べるなどその態度は一貫しておらず,テロ等準備罪が通常の市民団体や労働組合等に適用されるおそれは払拭されていない。
また,「計画」及び「準備行為」についても,何をもって「計画」がなされたと判断するのか基準が明確になっていない上に,「準備行為」も現行法上の予備罪における予備行為以前の危険性の乏しい行為を含むものであり,政府や捜査機関などの恣意的な運用により思想・信条の自由はもちろん,表現の自由,集会・結社の自由等の憲法上保障された基本的人権を侵害する危険性が含まれていることは平成28年11月9日発表の当会会長声明において述べたとおりである。
3 政府はこれまで,国連越境組織犯罪防止条約(以下,「条約」という。)締結のためにいわゆる「共謀罪」を創設する必要があるとしており,そのためには,条約において「4年以上の懲役・禁固の刑が定められている罪」について共謀罪を創設することが求められている以上,対象犯罪を減らすことはできないとの見解を示していた。それにもかかわらず,今回,何ら合理的な理由を示すことなく対象犯罪を600超から277にまで絞り込んだことは,政府の過去の説明と矛盾する。これは,従前の法案の内容でなければ条約を批准できないという政府の説明が誤りであること,及び条約の批准のために新たにテロ等準備罪を創設する必要のないことの証左である。
4 また,我が国の国内法においては,爆発物取締罰則,化学兵器禁止法,サリン防止法,航空機強取処罰法,銃砲刀剣類所持等取締法など,未遂以前の共謀や予備の段階からの処罰が可能となっており,しかも,これらについて講学上の共謀共同正犯も認められる以上,テロ対策のために新たにテロ等準備罪を創設する必要はない。加えて,我が国は,テロ対策のために制定されたテロ防止関連諸条約(13本)を締結している。これらの条約は,一定のテロリズム行為を国内法上の犯罪として,その犯人の処罰,引渡し等を行うことを定めることで,犯人を処罰しうる国際的な体制を取るものであり,国際的なテロリズムの行為の防止に関する国際協力の強化に資するものである。
これらの条約締結に際して,我が国は必要な国内法を整備しており,2002年に国連のテロ資金供与防止条約を締結した際には,国内法としてテロ資金提供処罰法(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律)を制定し,公衆等脅迫目的の犯罪を実行しようとする者を援助する目的で資金等を提供する準備行為についても処罰の対象としている。
このように,我が国のテロ対策は十分に法的整備がなされており,国民の基本的人権を侵害する危険を冒してまで,新たに広範なテロ等準備罪を創設する必要はない。
5 このようにテロ等準備罪は,政府や捜査機関の恣意的な運用によって憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,その制定の必要性に乏しいものであることから,当会は,いわゆるテロ等準備罪を創設する組織的犯罪処罰法改正法案を国会に提出することに強く反対する。
2017年(平成29)年3月8日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

改めて少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
1 当会は,この問題に関し,すでに平成27年5月13日付「少年法の適用年齢の引下げに反対する会長声明」を発表し,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることに対して反対運動を重ねてきた。しかしながら,法務省は,平成28年12月,「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」取りまとめ報告書を発表し,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げた場合に備えて若年者に対する刑事政策的措置に言及し,さらには法務大臣が少年法の適用年齢の引下げに関して法制審議会へ諮問したことが報道されるなど,少年法の適用年齢の引き下げの動きに向けた動きが進んでいる。
2 現行少年法は,少年の健全育成を目的に掲げて,その適用年齢を20歳未満と定め,全ての少年事件を家庭裁判所に送致したうえ,家庭裁判所及び少年鑑別所による科学的な調査と鑑別を踏まえ,少年に相応しい処遇を決する手続を採用している。かかる現行少年法の手続は,少年院などにおける個別的な指導と教育の処遇と相まって,少年の立ち直りと再犯の防止に有効に機能してきた。
この長きにわたり有効に機能してきた現行少年法の適用年齢を,いま引き下げる方向で見直さなければならない合理的な理由は存在しない。法律の適用年齢を考えるにあたっては,それぞれの法律の立法趣旨や保護法益に照らし,個別法ごとに慎重かつ具体的に判断すべきであって,国民のわかりやすさや整合性は適用年齢の一律引き下げの理由とはならない。
この点,民法の成人年齢引下げの議論は,公職選挙法との一致や,若年者の自己決定権を尊重することなどが理由とされている。しかし,これらは刑事手続において,若年者が,自己の権利を適切に行使して防御することが可能かどうか,あるいは今後いかに立ち直り更生することができるか,という場面とは,全く状況を異にするものである。仮に,契約を単独で行うことができることになっても,民法上想定されている通常の取引行為と,国家権力に対する防衛権を行使する必要がある刑事手続とでは,必要とされる知識,判断能力等は質・量ともに格段に異なる。
したがって,民法上の成年者であっても,社会的・精神的に未熟な18歳・19歳の者に対し,保護主義に基づき,家庭裁判所の後見的な処遇に委ねることには,合理性,必要性がある。
さらに,満18歳未満への適用年齢が引き下げられた場合,非行少年の多くが立ち直りに向けた十分な指導と処遇を受けられないまま放置されることになりかねない。現行少年法の下では,非行少年は家庭裁判所へ送致された後,家庭裁判所の調査官や少年鑑別所の技官などの専門家が,非行の背景や要因,少年の資質や環境上の問題点等の調査や分析を行い,少年院送致となった場合も,一人一人の少年の状態や問題点を踏まえて指導と教育が行われている。しかしながら,少年犯罪の約5割を占める18歳・19歳の非行少年が,少年法の対象外となった場合には,その多くが初犯であるため,不起訴処分,罰金刑,または執行猶予判決により施設収容されることなく手続を終了し,立ち直りに向けた十分な指導や処遇を受けられない。そもそも,18歳以上の非行少年の多くは,その発達過程で大きな問題を抱えており,成長発達権を保障されなかった子どもたちである。かかる非行少年にこそ,少年に可塑性を踏まえた個別的な指導と教育により,充実した「教化」が必要であり,その結果,非行少年の立ち直りと再犯の防止につながると考えられる。
加えて,少年犯罪の全体的な傾向は,増加も凶悪化もしていない。少年犯罪の検挙者数は,2004年以降減少を続け,凶悪犯罪も減少・横ばい傾向にあることを考えると,少年法の適用年齢を引き下げることによって,犯罪抑止効果が得られるということにはならない。
なお,法務省が発表した「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」取りまとめ報告書に記載されている若年成人層に対する刑事政策のあり方と少年法適用年齢の引下げに関する議論とは問題の所在を異にするため,区別してなされるべきである。若年成人層に関する刑事政策のあり方は,個別の問題点や必要性等から議論をつくし,慎重に判断されるべき事柄である。
3 以上のように,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げるという議論は,少年の立ち直りを阻害しかねないものであって少年法の立法趣旨に反し,かつ,合理的な立法事実にも基づかないものである。
したがって,当会は,少年法の適用年齢を18歳未満まで引き下げることに改めて強く反対する。
2017年(平成29)年3月8日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の成立に抗議し、法律の廃止を求める会長声明
「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下、「カジノ解禁推進法」という。)が、2016年(平成28年)12月15日成立した。
カジノ解禁推進法は、2013年(平成25年)12月に国会に提出されたものの、実質的な議論が行われないまま、一旦廃案となり、その後2015年(平成27年)4月に再提出されたものの、1年半以上もの間全く審議されなかった。
ところが、突如、2016年(平成28年)11月30日から法案の審議が始まり、わずか2週間後の12月15日未明に成立となった。
当会は、2014年(平成26年)10月22日、同法案に反対する旨の「カジノ解禁推進法案に反対する会長声明」を発しているところであり、その理由として、次のような点を指摘していた。まず、カジノは、刑法上の賭博に該当することは明白であることから、カジノの設置・運営を解禁しようとするならば、その違法性が阻却される根拠が必要である。しかし、カジノ解禁推進法では、民間事業者がカジノの経営を行うことを前提としており、違法性が阻却される理由は明らかでなく、これでは賭博罪の違法性が阻却され得ない。また、カジノ施設の設置により著しい弊害(ギャンブル依存症、多重債務者の増大、青少年の健全育成への悪影響、暴力団対策上の問題、マネー・ロンダリング対策上の問題)の発生が予見され、これらの点を考慮するならば、仮に喧伝されているような経済効果があったとしても推進すべきではないこと等を指摘した。
カジノ解禁推進法は、刑法が賭博を犯罪としている中で、民間賭博を認めることの法秩序全体の整合性を欠いていることに何ら変わりはない。また、カジノ解禁推進法第10条第8号では、「カジノ施設の入場者がカジノ施設を利用したことに伴いギャンブル依存症等の悪影響を受けることを防止するために必要な措置に関する事項」について、必要な措置を講ずるとしているが、当該規定は、抽象的な表現に留まっているだけでなく、我が国の実態に照らしても、何らカジノ解禁推進法を正当化するものではない。
そもそもギャンブル依存症とは、単に、ギャンブルが好きな傾向があるというものではなく、国際的に診断基準が定められ、深刻な行動障害を伴う疾患であるところ、我が国におけるギャンブル依存症の人数は推定で536万人以上、国民の中に占める依存症の有病率は4.8パーセントとされている。これは、米国や韓国などと比較して、突出して高い割合である(米国1.6パーセント、韓国0.8パーセント)。
つまり、もともと我が国はギャンブル依存症が深刻な問題でありながら、必要な対策が取られなかったため、ギャンブル依存症の割合が高い状態となっている。十分な対策を行うことは、当然に必要なことであり、民間賭博を解禁する代わりに、対策を行えば足りるというものではない。ギャンブル依存症が重篤な疾患であることを看過し、さらに民間賭博を解禁するならば、ギャンブルに接する機会が増加するのであるから、依存症患者が増加することもまた、容易に予測できる。ギャンブル依存症は、その疾患を抱える者だけでなく、家族を始めとする周囲にも深刻な影響を及ぼすのであって、これ以上、新たなギャンブル依存症患者が増加するような施策を採ることは、許されるものではない。
以上より、カジノ解禁推進法は、当会がかねてから指摘している問題点について解消策が講じられておらず、その審議経過も拙速といわざるを得ない。
よって、当会は、カジノ解禁推進法の成立に断固抗議し、その廃止を求める。
2017年(平成29年)3月8日
岡山弁護士会 会長 水 田 美由紀

死刑執行に関する会長声明
2016年(平成28年)11月11日、福岡拘置所において、1名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、またしても死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国に上っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、2014年(平成26年)7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会(以下、「日弁連」という。)は、2015年(平成27年)12月9日には法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
さらに、日弁連は、2016年(平成28年)10月7日に福井市で開催された第59回人権擁護大会で、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年(平成32年)までに死刑制度の廃止を目指すべきであること、死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討すること等を国に対して求めた。
当会においても本年9月10日にシンポジウム「徹底討論、死刑。―考え悩む世論―」を開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行ったところである。
しかしながら、我が国においては、国際社会の趨勢に反し、当会及び日弁連の度重なる要請にもかかわらず、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
そこで、当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、直ちに死刑の執行を停止した上で、2020年(平成32年)までに、死刑制度の廃止を目指すことを要請するものである。
2016年(平成28年)12月1日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

いわゆる共謀罪法案の提出に反対する会長声明
1 政府は,過去に3回廃案になった共謀罪法案に関し,テロ対策の必要性を新たな提出理由に加え,「共謀罪」という名称を「テロ等組織犯罪準備罪」に変更した組織犯罪処罰法改正案を今後の国会に提出する方針であると報じられている(以下,「提出予定新法案」という。)。
2 当会では,従前政府から提案されてきた共謀罪法案に対して,2016年1月に,共謀罪法案の問題点を指摘して,これに反対する声明を発表した。
3 提出予定新法案は,共謀罪法案と比較していくつかの修正が加えられている。しかし,その内容は以下に述べるとおり,罪刑法定主義により導かれる明確性の原則及び刑事法体系の基本原則に反するものであり,政府や捜査機関などの恣意的な運用により思想・信条の自由はもちろん,表現の自由,集会・結社の自由等の憲法上保障された基本的人権を侵害する危険性が含まれている。
まず,提出予定新法案は,適用対象を「組織的犯罪集団」とし,その定義について,「目的が4年以上の懲役・禁固の刑が定められている罪を実行することにある団体」とした。そして,犯罪の「遂行を2人以上で計画した者」を処罰することとし,その処罰に当たっては,計画をした誰かが「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の準備行為が行われたとき」という要件を付した。
提出予定新法案における「組織的犯罪集団」の定義は不明確であり,その認定は捜査機関が個別に行うため,解釈によっては処罰される対象が拡大する危険性が高い。また,処罰要件とされている「計画」及び「準備行為」についても,何をもって「計画」がなされたと判断するのか基準が明確になっていない上に,「準備行為」も現行法上の予備罪における予備行為以前の危険性の乏しい行為を含むものであり,例えば,預貯金口座から単なる団体の運営資金を引き出す行為も,捜査機関によって犯罪実行に向けた資金の準備行為と認定されれば立件されうることになる。
以上のように,提出予定新法案の処罰範囲は広範かつ不明確であり,今般の刑事訴訟法改正に盛り込まれた通信傍受制度の拡大と合わさることによって,テロ対策の名のもとに広く市民の会話が監視・盗聴され,市民社会の在り方が大きく変わるおそれさえあると言わなければならない。
加えて,「計画」とは,「犯罪の合意」を意味し,結局のところ,特定の犯罪を複数人で謀議したという「共謀」を処罰することと同じく,行為そのものではなく,「合意」の危険性に着目して処罰しようとするものに他ならない。これは,外形的行為のない「意思」を処罰しないとする刑事法体系の基本原則に反するものである。
4 政府は,国連「越境組織犯罪防止条約」(以下,「条約」という。)締結のためにいわゆる「共謀罪」を創設する必要があるとしているが,同条約は,締結国についてそれぞれ国内法の基本原則に基づく立法上・行政上の措置をとればよいことを定めており,締結国に対しては組織犯罪対策のために未遂以前の段階での対応を可能とする立法措置を求めているに過ぎない。そして,わが国では,既に現行法上刑法をはじめとする個別の法律により,組織的な犯罪集団による犯行が予想される重大な主要犯罪については,例外的に予備罪・陰謀罪が定められており,未遂に至らない予備・陰謀の段階での犯罪を処罰することも可能となっている。したがって,同条約を締結するためにいわゆる「共謀罪」を創設する必要があるとの政府の説明は全くあてはまらない。
5 また,提出予定新法案は,テロ対策の必要性を新たな提出理由に加えているが,条約は経済目的の組織犯罪を適用対象としており,宗教的・政治的目的のテロ対策は目的となっていないことから,条約締結とテロ対策は無関係である。
そもそも,テロ対策との側面から提出予定新法案を検討しても,同法案は適用対象犯罪を単に「4年以上の懲役・禁固の刑が定められている罪」と形式的に定めた結果,その対象犯罪は600を超え,テロ犯罪・組織犯罪との結びつきが必然でない一般犯罪についてまで対象とされてしまっている。このように形式的に適用対象を定めたことは人権に対する配慮を欠き,あまりにも杜撰であると言わざるを得ない。
6 提出予定新法案は,憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,外形的行為のない「意思」を処罰しないとする刑事法体系の基本原則に反するものであるにもかかわらず,その制定の必要性に乏しいものであることから,当会は,いわゆる「共謀罪」を内容とする提出予定新法案の提出に強く反対する。
2016年(平成28)年11月9日
岡山弁護士会 会長 水 田 美由紀

沖縄における機動隊による地元紙記者排除に強く抗議する会長声明
1 沖縄県の米軍北部訓練場(東村高江など)の新たなヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設をめぐり,本年8月20日午前,工事車両の搬入を阻止するために県道上に座り込んでいた人たちに対し,警察官(機動隊員)が強制排除を始めたが,地元新聞社である琉球新報,沖縄タイムスの各記者がその模様を取材していた。
両新聞社を含む報道によると,その取材中に,琉球新報の記者は,機動隊員に両腕をつかまれ,背中を押されて約40メートルも移動させられた。その後,再度,機動隊員に両腕をつかまれ,警察車両の間に押し込められた。排除される際に,カメラに付けていた同社の腕章を示した上で,「新報の記者です。取材なんです。」と訴えたが,聞き入れられず,約15分間にわたって,取材の機会を奪われた。
また,沖縄タイムスの記者も,社員証を見せ,記者であることを訴えたにもかかわらず,琉球新報の記者と同様に,2度にわたって強制排除され,警察車両の間で身動きがとれない状況におかれるなどして,約30分間にわたって取材活動が制限された。
2 機動隊員による上記各行為は,憲法21条で保障されている国民の知る権利及びそれと表裏一体をなす報道の自由,同条の精神に照らして十分尊重されるべき取材の自由に対する重大な侵害である。
言うまでもなく,報道機関の報道は,民主主義社会において,国民が国政に関与するにつき,重要な判断の資料を提供し,国民の「知る権利」に奉仕するものである(最高裁大法廷昭和44年11月26日決定)。
今回の取材対象は,基地建設に抗議する市民を,国家権力である警察をもって強制排除する現場である。強制排除の法的根拠について疑問が示されるなか,国家権力の行き過ぎをチェックするため,現場取材から事実を報道し,広く国民に提供する報道機関の役割は極めて大きい。
3 また,特に沖縄の人々にとっては,近世まで独立国家として日本本土とは異なる歴史を歩み,太平洋戦争では住民を巻き込んだ大規模な地上戦が行われ,戦後米軍統治下を経て,昭和47年に本土復帰したという経緯から,米軍および日本政府が沖縄に対してどのような態度で臨んでいるのかを知ることは,沖縄の今後の在り方を考える上で極めて重要である。
地元紙2紙は,このような沖縄の歴史的な経緯を踏まえ,こうした沖縄の人々はもちろんのこと,広く国民に対しても,沖縄の抱える基地問題を考える上で不可欠な情報を継続的に提供し続けている。当会においても,2015年(平成27年)5月30日,沖縄の基地問題について,沖縄発の生の情報に基づき市民とともに考える,「沖縄と岡山から民主主義と安全保障を考える」と題した憲法講演会を開催したが,この集会により,沖縄で実際起きている事実や基地問題を巡る沖縄県民の感情を,多くの国民が知ることの重要性を再認識した。
4 当会は,今般,基地問題の最前線で起きている事実を伝えるという使命のもと取材を続けていた新聞記者が機動隊員により妨害され,報道の自由が侵害されたことに強く抗議し,今後同様の事態が発生しないよう強く申し入れるものである。
2016(平成28)年11月9日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に対する会長声明
1 2016(平成28)年5月24日,「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(以下「本法律」という。)が成立し,同年6月3日,施行された。
2 近年,特定の国籍や民族の人々の排斥を主張する,いわゆるヘイトスピーチが全国各地で繰り返し行われている。
ヘイトスピーチは,憲法で保障された個人の尊厳を著しく傷つけ差別意識を生じさせるものであり,その根絶が強く求められる。そのため,本法律が成立したことは,ヘイトスピーチ解消に向けた取組を前進させるものとして評価できる。
3 しかし,本法律は,「不当な差別的言動」の対象となる被害者を,「本邦外出身者」であって「適法に居住するもの」に限定しており,「本邦外出身者」以外の者や在留資格を有しない者に対するヘイトスピーチは許されるとの誤解を生じさせるおそれがある。そもそも在留資格いかんに関わらず,ヘイトスピーチは憲法14条が定める法の下の平等の精神に反し,国際人権規約(自由権規約)及び人種差別撤廃条約等国際条約が禁止する差別にあたるものであり許されない。本法律は速やかに改正すべきである。
4 また,本法律第4条は,地方公共団体に対しては努力義務を定めるにとどまっているところ,より実効的にヘイトスピーチを根絶するためには,地域に根差した地方公共団体による差別解消に向けた取組が欠かせない。
5 この点,衆議院法務委員会及び参議院法務委員会において,「『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』以外のものであれば,いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤り」であること,「地域社会に深刻な亀裂を生じさせている地方公共団体においては」不当な差別的言動の「解消に向けた取組に関する施策を着実に実施すること」等の附帯決議がなされており,この附帯決議に沿って本法律を解釈運用することが求められる。
6 当会は,国や地方公共団体に対し,本法律に基づいてヘイトスピーチの根絶に向けた具体的な施策を講じることを求めるとともに,国会に対しては,必要な改正及びヘイトスピーチ解消に向けた更なる法整備を速やかに行うよう求めるものである。
2016(平成28)年8月9日
岡山弁護士会 会長 水田 美由紀

死刑執行に反対する会長声明
2016年(平成28年)3月25日、大阪拘置所と福岡拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、死刑に関する情報公開や国民的議論が行われないまま、前回の執行から約3か月後に死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国に上っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、2014年(平成26年)7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会は、2015年(平成27年)12月9日には岩城法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
当会においても昨年1月にシンポジウムを開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行っているところである。
しかしながら、現実には、国際社会の潮流に反し、また、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
そこで、当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、我が国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2016年(平成28年)4月1日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

憲法尊重義務(憲法99条)を誠実に履行することを求める会長声明
2015年(平成27年)9月19日未明に参議院で安保法案は強行採決の末成立し、2016年(平成28年)3月29日、施行されるに至った。以後、自衛隊はこれまで経験したことのない領域に活動の範囲を拡大することとなり、戦後の防衛政策は一気にその性格を変貌することとなる。1954年(昭和29年)の自衛隊創設以来、一人の戦死者も出さず、一人の外国人も殺していない自衛隊が、安保法制の下でその危険に晒されることとなる。
われわれ弁護士、弁護士会は再三にわたって、集団的自衛権行使を容認する閣議決定の撤回及び安保法制反対を訴えてきた。なぜなら、まず、憲法9条のもとでは集団的自衛権は許されないとする歴代政権の解釈を、国民の意思を問うことなく一内閣の解釈で変更することは、立憲主義及び国民主権に反するからである。そして何よりも、集団的自衛権を認めることは、憲法9条及び前文で定める徹底した恒久平和主義に反するからである。したがって、昨年成立した安保法制は、明らかに憲法に反し無効な法律である。われわれ弁護士、弁護士会は、無効な法律の執行を許すことはできない。今後も、安保法制の違憲性を国民に訴え、その廃止を求める活動を国民とともに行う決意である。
ところで、安保法案が国会で審議される前の2015年(平成27年)4月頃から、安倍政権の日本国憲法軽視の姿勢が顕著になってきた。たとえば、文部科学大臣が国立大学に対し、国旗掲揚・国歌斉唱を要請すると答弁したが、これは明らかに憲法23条で保障された「学問の自由・大学の自治」を侵害する行為である。また、政権与党議員らによる放送局に対する干渉行為は、憲法21条で保障する「表現の自由・報道、放送の自由」に対する侵害である。
安保法制成立後は、さらに現憲法軽視の姿勢に拍車がかかり、放送局を所管する高市総務大臣の「電波停止発言」、立憲主義との関係で極めて問題のある緊急事態条項(国家緊急権)を、憲法上に組み込むべく憲法改正を行いたいとの発言等にみられるように、現憲法の理念や基本原則を無視あるいは軽視する言動が相次いでいる。
現憲法が占領下のもとでアメリカ合衆国に押し付けられたものであるので、憲法改正をして自主憲法を制定すべきと安倍晋三氏が個人として考える事、また、国務大臣が個人として安倍晋三氏の考えに同調するのは、それぞれに「思想・信条の自由」があるので本来自由である。しかし、憲法によってその権限行使に縛りをかけられている国家権力の中枢にいる内閣総理大臣や国務大臣には、その職責上、当然ながら憲法尊重義務が課されていることに鑑みると、上記のような現憲法を無視あるいは軽視する言動は、極めて問題であると言わざるを得ない。
よって、われわれ弁護士、弁護士会は、現憲法のもとで基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命(弁護士法1条)とされている立場から、現憲法の理念、基本原則を軽視あるいは無視するかのような言動を繰り返す安倍内閣総理大臣及び各国務大臣に対して、憲法尊重義務(憲法99条)を誠実に履行することを、強く求めるものである。
2016年(平成28年)3月30日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

国家緊急権の創設に反対する会長声明
安倍首相は、2015年(平成27年)11月開催の衆参予算委員会において国家緊急事態条項の創設に触れ、憲法改正に向けた姿勢を示した。
安倍首相が創設を目指す国家緊急事態条項とは、戦争、内乱、恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において、国家権力が、国家の存立を維持するために、立憲的な憲法秩序(人権保障と権力分立)を一時停止して、非常措置をとる権限、つまり、憲法上のいわゆる国家緊急権のことを指している。安倍首相は、この国家緊急権は、東北大震災などの未曾有の災害時や、パリ同時多発テロ事件などの一連のテロ活動時に対しても、国民の生命・身体及び財産を守るために必要とする。
日本国憲法は基本的人権の保障を基本原理とし、立法、行政、司法の三権を分立することにより国家権力によって人権が侵害されないように規定している。憲法に国家緊急権を創設するということは、内閣総理大臣を長とする行政権力に対して人権保障及び権力分立制の停止権限を認めることであり、国家権力を制約して人権保障を実現しようとしている憲法の中に、人権を制約する権限を国家権力に付与する規定を創設する矛盾を含む。すなわち、国家緊急権の創設には、これを憲法的に厳格に枠づけようとすれば国家緊急権の意味をなさず、他方、国家緊急権を包括的・抽象的に定めれば国家緊急権に対する憲法による統制ができず人権侵害の危険性が増大するという問題がある。
日本国憲法が国家緊急権に関する規定を全く置いていないのは、一旦、国家緊急権が濫用されれば、憲法秩序の破壊や否定が容易に導かれるためであり、とりわけ我が国においては、過去、広範な国家緊急権を定めた大日本帝国憲法のもとで侵略戦争に邁進した過去を反省し、9条の戦争放棄条項により平和国家の確立を志向したためである。
また、日本国憲法が54条において参議院の緊急集会規定を置いた趣旨は、緊急時においても立法府による立法を可能にすることにある。
つまり、緊急時において人権を制限する法律を制定せざるを得ない場合においても、国民から選ばれた国会議員によることが必要であることを意味する。このことから、立憲主義に基づく憲法には安倍首相が考えているような国家緊急権は敢えて意図的に排除されていることを意味する。
歴史的にも、国家緊急権は国民の自由や権利を奪うことに使われてきた。ドイツでは、ワイマール憲法の国家緊急権の規定が濫用され、ヒトラーによる独裁に道を開くことになった。また、わが国でも、大日本帝国憲法の国家緊急権のひとつである戒厳宣告が関東大震災の混乱の中で発令され、この戒厳宣告がきっかけとなって軍隊により多くの朝鮮人・中国人が虐殺された事実がある(詳しくは2003年(平成15年)8月25日日弁連「関東大震災人権救済申立事件調査報告書」)。
以上より、一旦濫用されれば憲法秩序の破壊、否定に至る国家緊急権を、日本国憲法を改正して創設する必要は全くないのであって、外国からの武力攻撃、内乱、大災害などについては既に自衛隊法、警察法、災害対策基本法などが制定されており、これらによって対応すべきである。
よって、岡山弁護士会は、日本国憲法を改正して国家緊急権を創設することには断固反対する。
2016年(平成28年)3月9日
岡山弁護士会   会長 吉 岡 康 祐

高市早苗総務大臣をはじめとした政府並びに政権与党よる報道機関への圧力に強く抗議し、併せて高市早苗総務大臣の放送法に関する発言の撤回を求める会長声明
1 はじめに
高市早苗総務大臣は、2016年(平成28年)2月8日の衆議院予算委員会で、野党議員の質問に対し、「放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返し、行政指導しても全く改善されない場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにはいかない」と述べた上、政府が放送局に対し放送法4条違反を理由に電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性に言及した。
その際「政治的に公平」の意味として、「国論を二分する政治課題で一方の政治的見解を取り上げず、ことさらに他の見解のみを取り上げてそれを支持する内容を相当時間にわたり繰り返す番組を放送した場合」などと例示し、総務省は「政治的公平」の解釈について「一つ一つの番組を見て、全体を判断する」との政府統一見解を発表した。
また、これに先立つ2014年(平成26年)11月26日、政権与党である自民党報道局長福井照衆議院議員は、「報道ステーション(テレビ朝日)」の報道内容に関し、番組プロデューサー宛てに「アベノミクスの効果が、大企業や富裕層のみに及び、それ以外の国民には及んでいないかのごとく断定する内容」であり「放送法4条4号の規定に照らし、同番組の編集及びスタジオの解説は十分な意を尽くしているとは言えない」と批判する文書を送っており、2015年(平成27年)4月17日には、「報道ステーション」の番組内で古賀茂明氏が自身の番組降板を巡って官邸から圧力があったと発言したことについて、自民党情報通信戦略調査会が、テレビ朝日の幹部に対し、事情聴取を行っている。
高市早苗総務大臣の発言はもとより、政権与党の所属議員や自民党情報通信戦略調査会によるこれらの行為は、政権与党に批判的な言論を抑圧する意図に基づいており、以下のとおり、憲法21条及び放送法で保障される報道機関の報道の自由に対する重大な侵害行為であり、到底許されない。
2 表現の自由と報道の自由
(1)表現の自由の価値
そもそも、表現の自由(憲法21条)は、「表現」そのものが個人の人格を発展させるという価値とともに、近代市民革命の原動力となった重要な権利の一つとして政府に対する批判を核心部分として発展してきたものであって、「表現(言論)」を通じて国民が政治的意思決定に関与するという価値を有することから、国民主権制度の下では極めて重要で、かつ、不可欠な人権である。
また、「表現の自由」を含めた精神的自由権は、一旦傷つくとその回復が困難なことから、経済的自由権より優越した地位を有するとされ、原則として制限することはできず、制限が許されるとしても、必要最小限でなければならないとされている。そのため、憲法は表現の自由に対する事前抑制を原則として禁止している(憲法21条2項参照)。
(2)報道の自由の価値
また、情報の「送り手」であるマス・メディアが発達した現代社会においては、社会生活において情報の持つ意義が飛躍的に増大している。そのため、個人が多種多様な情報や思想を求め、受けることができてこそ、個人それぞれが自分の思想や意見を形成し、それを表現することができると考えられている。
したがって、憲法21条が保障する表現の自由は、思想や情報を発表し伝達する自由(送り手の自由)のみならず、多種多様な情報や思想を求め、受ける自由(いわゆる「知る権利」)も含むものとされている。
さらに、マス・メディアが発達し、情報が集中している社会においては、「報道機関の報道」は、民主主義を維持するための国民の「知る権利」に奉仕する極めて重要な意義を有している。そして、「放送の自由」は、「報道の自由」の一環として、当然ながら、憲法21条によって保障されているのである。
3 放送法の趣旨
(1)基本目的
放送法1条では、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を保障」し、「健全な民主主義の発達」を目的としている。これは、戦前の日本放送協会が国家権力の宣伝機関になっていったことの反省から、放送局が国家権力から独立したものになるように、国家権力の介入を防ぐために規定されたものである。それを受けて、放送法3条では、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、または規律されることがない」と規定している。この規定は、放送が周波数の割り当てという技術的理由によって無線局の免許という形で国家権力の介入を余儀なくされており、それゆえに国家権力による干渉や侵害の危険にさらされているところから、憲法21条の趣旨に照らして、当然のことをあえて明文化した規定である。
(2)放送法4条の趣旨
ところが、放送法1条で、「放送による表現の自由」が保障されているにも関わらず、放送法4条では、放送番組の編集に対し、「政治的公平」や、「多角的論点の提示」等の制約基準が示されている。これは、一般的には、放送は、新聞や雑誌と違って、放送の電波は限られており、放送局の数も制限されるので、放送局の放送が「公平でない場合」等の影響力が大きいからだと言われている。しかし、もし、この放送法4条が法的強制力を持つ強行法規で、同条に違反したら何らかの制裁を受けるとなると、同じ法律内に相矛盾する規定が存在することになるので、放送法4条は、放送局に対する倫理規範と解釈すべきであるとされている。すなわち、放送法4条で求められる「政治的公平」等の制約は、放送局側の自主的判断に委ねるという規定にすぎないのである。よって、放送法4条は、放送局に法的義務を課すものではなく、電波法76条1項や放送法174条の「違反したら電波停止や業務停止」にされる「法律」には含まれない。
4 高市早苗総務大臣及び与党議員や自民党調査会の行為の問題点高市早苗総務大臣が、放送法4条の「政治的に公平」という文言を行政指導の根拠とし、さらに違反した場合に電波法76条1項による電波停止の可能性にまで言及することは、放送事業者に対して「時の政府を批判する報道」を控えさせるに十分な言動であり、「重大な萎縮効果」が生じる。
さらに、政権与党所属の国会議員や自民党情報通信戦略調査会が、報道機関の報道内容を問題視して当該報道機関宛てに文書を送付したり、当該報道機関幹部に意見聴取を行ったりすることも、報道機関が、政権与党関係者らの出演を拒否され、あるいは放送免許を取り消される等の不利益を恐れて政権批判の報道を自粛することにつながる恐れがある。
したがって、このような行為は、実質的には政権批判報道を禁止するに等しく、報道・放送の自由に対する重大な侵害行為であると言わざるを得ない。
5 結語
よって、当会は、高市早苗総務大臣をはじめとした政府並びに、政権与党所属の国会議員及び自民党情報通信戦略調査会による報道機関への圧力に強く抗議するとともに、特に、高市早苗総務大臣に対しては、前記発言をすみやかに撤回することを求めるものである。2016年(平成28年)3月9日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

消費者庁・国民生活センター・消費者委員会の地方移転に反対する会長声明
現在,政府は「まち・ひと・しごと創生本部」の「政府関係機関移転に関する有識者会議」(以下「有識者会議」という。)において,消費者庁・国民生活センター・消費者委員会を徳島県に移転することを検討している。
東京一極集中を是正し地方を活性化させるため,政府関係機関を地方に移転するという政策は評価でき,これ自体に反対するものではない。しかし,消費者庁・国民生活センター・消費者委員会については,その果たすべき役割と機能に鑑みて,地方に移転する機関としては不適切であり,当会としてはこれに強く反対するものである。
そもそも有識者会議は,道府県等からの提案のうち,「中央省庁と日常的に一体として業務を行う機関」や「官邸と一体となり緊急対応を行う等の政府の危機管理業務を担う機関」に係る提案,「現在地から移転した場合に機能の維持が極めて困難となる提案」については受け付けないものとしている。
消費者庁は,従前多数の省庁に分散していた消費者行政を一元化し,その推進の司令塔的役割を果たすものとして創設された組織であるから,各種施策の実施や立法・法改正に当たっては関係する府省庁との密接な連携が不可欠な機関である。また,消費者の安全に関する重大事故の発生時には,官邸及び中央省庁等と一体となり緊急対応を行うことが求められている。
国民生活センターは,全国の消費生活相談情報を集約・分析し,消費者庁と連携して諸問題を検討して関連省庁に意見を述べ,地方消費者行政を支援し,消費者・事業者・地方自治体・各省庁に情報提供を行うという機能を有している。
消費者委員会は,消費者庁等からの諮問事項を審議するほか,自ら任意の問題を調査して他省庁への建議等を行うという監視機能を有している。他省庁からの諮問を受ける場合も建議等の監視機能を行使する場合も,他省庁や関連事業者,事業者団体からの事情聴取や協議が頻繁に行われている。
したがって,いずれの機関も有識者会議のいう地方移転の提案が受け付けられない典型例である。
さらに,消費者庁・国民生活センター・消費者委員会は,現在,長年にわたり消費者問題に関わり,豊富な知識経験を有する多くの任期付公務員,非常勤職員,審議会委員等により支えられているところ,遠隔地に移転した場合,現在と同様の人材を確保し,機能を維持することは極めて困難である。
以上からすれば,消費者庁・国民生活センター・消費者委員会が地方に移転した場合,国民の生命や健康にも密接に関わる消費者行政の円滑な遂行が大きく阻害されることは明白であり,その結果,消費者である日本全国の国民の安全や安心が脅かされる結果となれば本末転倒である。
よって,当会は,消費者庁,国民生活センター及び消費者委員会の地方移転について強く反対する。
2016年(平成28年)2月3日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

司法修習生に対する給費制の実現を求める会長声明
1 司法修習生とは,司法試験に合格後,裁判官・検察官・弁護士としての能力・素養を磨くために,最高裁判所所管の司法研修所に配属され,修習を1年間にわたり行う者をいう(司法修習制度)。司法修習生は,修習に専念する義務を負い,兼業(アルバイト)は原則禁止されている。また,裁判修習では法廷に立ち会い,検察修習では被疑者・被告人の取調べにも同席する。弁護修習では依頼者からの聴き取りにも同席する。したがって,当然のことながら,公務員や弁護士に課せられる守秘義務も負う。
戦後,司法制度改革の過程において,我が国の司法は,日本国憲法の下,三権の一翼として新たな役割を求められ,司法修習は,司法作用を担う将来の法曹(裁判官・検察官・弁護士)の養成のために,国家による法曹の統一的な養成制度(統一修習)として制度化された。したがって,三権の一翼を担う将来の法曹を養成する責任は国家にあり,司法修習制度発足後64年間にわたり,司法修習生には国家公務員水準の給費が支給されてきた。
2 しかし,司法制度改革により司法試験の合格者が大幅に増加したことに伴い,財政負担も増大することを主な理由として,2011年(平成23年)11月,新65期司法修習生より,従来の給費制を廃止し,貸与制(無給制)へと移行した。これにより,新65期以降の司法修習生は,1年間の修習期間,国から貸与を受けるか,貯金を取り崩すか,親族からの支援を受けるかして生活せざるを得なくなった。司法修習生は修習に専念する義務があり,アルバイトが原則禁止されており,また,修習生には十分な貯金もなく,親族からの支援を受けられる者も限られているので,多くの修習生は,国に貸与の申請をしているのが現状である。新65期から68期の修習生については,約70?90%の修習生が貸与の申請をしている(最高裁判所調べ)。修習生の平均貸与額は約300万円であり,さらに,法科大学院や大学時代の奨学金返還債務を合わせて負っている修習生も約50%弱存在し,1000万円の債務を負っている修習生も存在する(日本弁護士連合会調べ)。司法研修所を修了して法曹になった時点で,数百万円の借金を背負って社会に出るのである。それが,今の司法修習生の現実である。
それゆえ,たとえ司法試験に合格しても,修習期間は無給で,法曹になっても借金の返済が待っているとなれば,司法試験を目指す法曹志望者が減少するのは必然である。実際,司法修習生に対する給費制が廃止されて貸与制に移行した2011年(平成23年)の法科大学院受験生(20,497人)は,2004年(平成16年)の受験生(40,810人)の約半分に減少し,平成27年度の実際の入学者は過去最低の2,201人で,募集した54校のうち50校で定員割れとなっている。さらに,司法試験に合格しても,貸与制への不安から司法修習を辞退した者も現れている。
3 以上のように,法曹志望者減少の理由は,司法修習生に対する給費制の廃止が大きな要因となっていることは明らかである。このまま,修習生に対する貸与制を継続させると,ますます法曹志望者が減少するとともに,経済的に余裕のある家庭の者しか受験できなくなる可能性が高くなり,多種多様な人材が法曹になるべきとする司法改革の理念も実現できない。司法修習生に対する給費制の実現は,法曹志望者減少に歯止めをかけるためにも早急に実現されなければならない。
4 日本弁護士連合会や各単位会,あるいは若手弁護士や法科大学院生等で構成される任意団体であるビギナーズ・ネットは,司法修習生に対する給費制実現の活動を継続的に行ってきた。国会議員に対する要請や院内学習会も開催し,多くの国会議員がそれによって給費制に前向きな意識を持ってくれるようになった。衆参両院の717名の議員のうち過半数を超える議員から賛同のメッセージが日弁連に寄せられている。与野党を問わず,また世代を超えて賛同者が集まっている。司法修習生に対する給費の必要性に対する理解が得られつつあることの現れであり,当会としても心から歓迎する。
5 さらに,昨年6月30日,政府の法曹養成制度改革推進会議(議長:菅官房長官)が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において,「法務省は,最高裁判所等との連携・協力の下,司法修習の実態,司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況,司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ,司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする」との一節が盛り込まれた。
これは,これまでの法曹養成制度改革に関する政府組織での提言や決定等が「貸与制を前提」と明言していたことに比べて,一歩前進したものと評価する。6 三権の一翼を担う司法,それに携わる法曹を養成するのは国の責務である。国は,法曹養成のため司法修習生に対し給費を支給し,修習生が生活の心配をすることなく修習に専念できる環境を構築していく責任がある。
よって,当会は,国会に対しては,司法修習生に対する給費の実現を内容とする裁判所法の改正を早急に求めるとともに,内閣,最高裁判所に対しては,同法改正を実現するため,早急に必要な措置をとることを求めるものである。
2016年(平成28年)1月20日
岡山弁護士会 会 長  吉 岡 康 祐

2345 ら特集岡山弁護士会①

岡山弁護士会
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意見表明・お知らせ
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会 長 大 土   弘
2017.12.06
【 意見表明 】最低賃金の大幅引上げを求める会長声明
2017.11.07
【 意見表明 】臨時国会の召集に関する憲法53条後段の趣旨を遵守するよう求める会長声明
2017.11.07
【 意見表明 】民法の成年年齢引下げに反対する会長声明
2017.10.16
【 意見表明 】弁護士法人アディーレ法律事務所に関する岡山弁護士会臨時電話相談窓口について
2017.08.18
【 意見表明 】日本国憲法施行70年にあたり、憲法の基本原理を再確認し、これを守り抜く決意を新たにする会長声明
2017.08.03
【 意見表明 】会員の懲戒処分の公表
2017.07.19
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2017.06.15
【 意見表明 】「共謀罪」と実質的に変わらない,いわゆる「テロ等準備罪」を創設する 組織的犯罪処罰法改正法案の採決強行に抗議し,同法の廃止を含む見直しを求める会長声明
2017.05.10
【 意見表明 】修習給付金を支給すること等を内容とする改正裁判所法の成立にあたっての会長声明
2017.04.03
【 意見表明 】大土弘会長のあいさつを掲載しました

会長 水 田 美由紀
2017.03.08
【 意見表明 】「共謀罪」と実質的に変わらない,いわゆる「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正法案の国会提出に反対する会長声明
2017.03.08
【 意見表明 】改めて少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
2017.03.08
【 意見表明 】「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の成立に抗議し、法律の廃止を求める会長声明
2016.12.01
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2016.11.09
【 意見表明 】いわゆる共謀罪法案の提出に反対する会長声明
2016.11.09
【 意見表明 】沖縄における機動隊による地元紙記者排除に強く抗議する会長声明
2016.08.09
【 意見表明 】本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に対する会長声明
2016.07.13
【 意見表明 】ハンセン病「特別法廷」最高裁判所調査報告に関する会長声明
2016.06.08
【 意見表明 】朝鮮学校に対する適正な補助金交付を求める会長声明
2016.04.20
【 意見表明 】消費者契約法改正についての意見書
2016.04.18
【 意見表明 】熊本地震発生にあたっての会長談話
2016.04.01
【 意見表明 】水田美由紀会長のあいさつを掲載しました
2016.04.01
【 意見表明 】死刑執行に反対する会長声明

会長 吉 岡 康 祐
2016.03.30
【 意見表明 】憲法尊重義務(憲法99条)を誠実に履行することを求める会長声明
2016.03.09
【 意見表明 】高齢者の消費者被害の予防と救済のためのネットワークづくりに関する要望書
2016.03.09
【 意見表明 】国家緊急権の創設に反対する会長声明
2016.03.09
【 意見表明 】高市早苗総務大臣をはじめとした政府並びに政権与党よる報道機関への圧力に強く抗議し、併せて高市早苗総務大臣の放送法に関する発言の撤回を求める会長声明
2016.03.09
【 意見表明 】ハンセン病を理由とした最高裁判所の「特別法廷」指定に関する会長声明
2016.02.03
【 意見表明 】消費者庁・国民生活センター・消費者委員会の地方移転に反対する会長声明
2016.01.20
【 意見表明 】司法修習生に対する給費制の実現を求める会長声明
2016.01.15
【 意見表明 】夫婦同氏制を定める民法750条の規定を合憲とする最高裁判所大法廷判決に対する会長声明
2016.01.13
【 意見表明 】共謀罪規定の新設に反対する会長声明
2016.01.13
【 意見表明 】女性の再婚禁止期間を定めた民法第733条第1項の一部について憲法違反とする最高裁判所大法廷判決に関する会長声明
2016.01.13
【 意見表明 】死刑執行に反対する会長声明
2015.09.30
【 意見表明 】面会室における写真撮影に関する東京高裁判決に対する会長声明
2015.09.24
【 意見表明 】安保法案を提出した安倍内閣、これに賛成した全ての国会議員に対する会長コメント
2015.09.24
【 意見表明 】参議院の安保法案強行採決に抗議する会長声明
2015.08.12
【 意見表明 】戦後70年を迎えるにあたっての会長談話
2015.07.22
【 意見表明 】安保法制改正法案の強行採決に抗議する岡山弁護士会歴代会長有志による声明
2015.07.16
【 意見表明 】衆議院の安保法案強行採決に反対する会長声明
2015.07.08
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2015.06.10
【 意見表明 】生活保護の住宅扶助基準、冬季加算の引下げに反対する会長声明
2015.05.13
【 意見表明 】少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
2015.05.13
【 意見表明 】「集団的自衛権行使容認の閣議決定」の撤回を求め、「新ガイドライン」及び「平和安全法制案」に反対する会長声明
2015.04.22
【 意見表明 】国立大学の国旗・国歌の扱いに対する不当な介入に反対する会長声明
2015.04.22
【 意見表明 】労働者派遣法改正案に三たび,反対する会長声明 2015.04.03
【 意見表明 】吉岡康祐会長のあいさつを掲載しました

会長 佐々木 浩 史
2015.03.11
【 意見表明 】労働時間規制の緩和に反対する会長声明
2015.03.11
【 意見表明 】商品先物取引法における不招請勧誘禁止を緩和する省令に抗議する会長声明
2014.11.12
【 意見表明 】「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
2014.10.22
【 意見表明 】「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明 2014.10.22
【 意見表明 】裁判所予算の増額を求める会長声明
2014.09.17
【 意見表明 】貸金業規制緩和に反対する会長声明
2014.09.17
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2014.08.06
【 意見表明 】過疎地公共交通支援に関する意見書
2014.08.06
【 意見表明 】 「金融商品取引法施行令の一部を改正する政令(案)」等(商品関連市場デリバティブ取引に係る行為規制関係)に関する会長声明
2014.07.09
【 意見表明 】集団的自衛権行使を容認する閣議決定に強く抗議し,その撤回を求める会長声明
2014.07.09
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2014.06.11
【 意見表明 】「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書を受けて発表された「基本的方向性」に対する会長声明
2014.06.11
【 意見表明 】法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会・事務当局試案に関する会長声明
2014.05.14
【 意見表明 】集団的自衛権行使容認に反対する会長声明
2014.04.22
【 意見表明 】「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
2014.04.22
【 意見表明 】「商品先物取引法施行規則」及び「商品先物取引業者の監督の基本的な指針」改正案に対する意見書
2014.04.09
【 意見表明 】福川律美元会員に対する刑事事件の上告取下げを受けての会長談話
2014.04.01
【 意見表明 】「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」に抜本的修正を求める会長声明

会長 近 藤 幸 夫
2014.01.29
【 意見表明 】福川律美元会員に対する控訴審判決を受けての会長談話
2014.01.15
【 意見表明 】司法修習生に対する前期(集合)修習の実施を求める会長声明
2013.12.13
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2013.12.07
【 意見表明 】特定秘密保護法案の参議院採決強行に抗議し,改めて同法の廃止を含む見直しを求める会長声明
2013.12.04
【 意見表明 】司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明
2013.11.26
【 意見表明 】特定秘密保護法案衆議院採決についての談話
2013.11.13
【 意見表明 】商品先物取引についての不招請勧誘禁止撤廃に反対し,改正金融商品取引法施行令に同取引に関する市場デリバティブを加えることを求める会長声明
2013.10.09
【 意見表明 】「特定秘密の保護に関する法律」制定に反対する会長声明
2013.09.17
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2013.09.10
【 意見表明 】中国地方弁護士会連合会ホームページ開設のお知らせ
2013.08.28
【 意見表明 】福川律美元会員に対する判決言渡を受けての会長談話
2013.07.01
【 意見表明 】憲法96条改正に関する会長声明
2013.06.12
【 意見表明 】橋下徹氏の「慰安婦」等に関する発言に対する会長声明
2013.06.12
【 意見表明 】小野市福祉給付制度適正化条例の廃止を求める会長声明
2013.06.12
【 意見表明 】生活保護法改正に反対する会長声明
2013.06.12
【 意見表明 】東京電力福島第一原子力発電所事故による損害賠償請求権の消滅時効につき特別の立法措置を求める会長声明
2013.05.15
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2013.05.15
【 意見表明 】「菊池事件」について検察官による再審請求を求める会長声明
2013.04.30
【 意見表明 】福川問題検証委員会からの報告書提出を受けての会長談話
2013.04.30
【 意見表明 】ホームページ復旧とサーバーへの不正アクセスのお知らせとお願い【重要】
2013.04.23
【 意見表明 】福川律美元会員の第一回公判期日を受けての会長談話
2013.04.05
【 意見表明 】福川律美会員の弁護士資格喪失についての会長談話

会 長  火 矢 悦 治
2013.03.11
【 意見表明 】当会の福川律美会員の破産手続開始決定についての会長談話
2013.03.11
【 意見表明 】裁判員制度施行3年目を迎えて  岡山弁護士会の提言
2013.02.25
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2013.02.08
【 意見表明 】当会の福川律美会員の追起訴についての会長談話 2013.01.23
【 意見表明 】地方の法科大学院の存続発展に関する会長声明
2013.01.23
【 意見表明 】司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明
2013.01.18
【 意見表明 】当会会員の追起訴についての会長談話
2012.12.28
【 意見表明 】当会会員の起訴についての会長談話
2012.12.10
【 意見表明 】福川弁護士問題・依頼者対応センター
2012.12.10
【 意見表明 】当会会員の逮捕についての会長談話
2012.11.21
【 意見表明 】生活保護基準の切り下げに反対する会長声明
2012.11.21
【 意見表明 】遠隔操作による脅迫メール事件等の取調べについての会長声明
2012.10.10
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2012.09.10
【 意見表明 】改正貸金業法完全施行後2年を迎えての会長声明 2012.08.08
【 意見表明 】生活保護に関する偏見や差別を助長しない報道と,生活保護制度についての慎重な議論および適切な生活保護行政の実施を求める会長声明
2012.08.08
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2012.05.10
【 意見表明 】秘密保全法制に反対する会長声明
2012.04.02
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明

会長  的 場 真 介
2011.12.26
【 意見表明 】外国籍会員の参与員選任を求める会長声明
2011.11.06
【 意見表明 】岡山弁護士会ハンセン病問題を考える集会における集会決議
2011.10.12
【 意見表明 】武富士の更生計画案の決議に関する会長声明
2011.10.12
【 意見表明 】国選弁護報酬基準及びその運用の抜本的見直しを求める会長声明
2011.09.12
【 意見表明 】提携リース契約を規制する法律の制定を求める意見書
2011.07.13
【 意見表明 】給費制の存続を求める会長声明
2011.04.01
【 意見表明 】東日本大震災会長声明
会 長  河 村 英 紀
2011.01.12
【 意見表明 】交通基本法案意見書
2011.01.12
【 意見表明 】修習生給費制会長声明
2010.12.01
【 意見表明 】たすっぴに決まりました
2010.11.12
【 意見表明 】秋田弁護士会所属弁護士殺害に関する会長声明
2010.07.14
【 意見表明 】給費制に関する会長声明
2010.05.14
【 意見表明 】労働者派遣法抜本的修正を求める会長声明
2010.04.22
【 意見表明 】公訴時効廃止・延長に反対する会長声明

会長 東 ?司
2010.02.10
【 意見表明 】国選付添人制度の拡充を求める会長声明

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安保法制改正法案の強行採決に抗議する岡山弁護士会歴代会長有志による声明
ttp://www.okaben.or.jp/news/index.php?c=topics_view&pk=1437616236
安倍内閣は,昨年7月1日,歴代政府による従前の憲法解釈を変更し,集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行い,これに基づき今国会に集団的自衛権の行使を可能とする自衛隊法・武力事態対処法等の安全保障法制改正案を提出し,7月16日衆議院はこれらを全て可決する強行採決をした。
しかし,現憲法のもとで行使できるのは個別的自衛権に限られるという長年積み重ねられてきた歴代政府の憲法解釈を一内閣の判断で変更することは,憲法は国家権力を縛るという立憲主義に反し,ひいては国民の意思にも反している。
さらに,安全保障法制改正案は,「存立危機事態」という不明確な概念のもとで,自衛隊が米軍その他の外国軍隊とともに,時間的,場所的な制約なしに武力行使することに道を開くこととなり,「我が国に対する武力攻撃が発生した場合にこれを排除する必要最小限度の実力行使」(合憲とする枠組み)という範疇を踏み外し,これにより「武力の行使による国際紛争の解決」を禁じた憲法9条に違反することは明らかである。
このような理由からほとんどの憲法研究者が憲法違反と言い,数々の世論調査の結果からも多くの国民が反対していることが明らかな安全保障法制改正案の強行採決は,憲法の平和主義,立憲主義,国民主権に反する暴挙である。よって,政府に対して法案の撤回を求めるとともに,国会に対して法案を廃案とするよう求める。
平成27年7月22日

昭和52年度 会長 一井淳治     昭和57年度 会長 井藤勝義
昭和58年度 会長 陶浪保夫     昭和60年度 会長 片山邦宏
昭和61年度 会長 田淵浩介     昭和63年度 会長 奥津 亘
平成 2年度 会長 河原昭文     平成 7年度 会長 高原勝哉
平成 8年度 会長 西田秀史     平成 9年度 会長 佐々木齊
平成10年度 会長 平井昭夫     平成11年度 会長 西田三千代
平成13年度 会長 山崎博幸     平成14年度 会長 和田朝治
平成15年度 会長 水谷 賢     平成16年度 会長 河田英正
平成17年度 会長 平松敏男     平成18年度 会長 大石和昭
平成19年度 会長 中野 惇     平成20年度 会長 秋山義信
平成21年度 会長 東 隆司     平成22年度 会長 河村英紀
平成23年度 会長 的場真介     平成24年度 会長 火矢悦治
平成25年度 会長 近藤幸夫     平成26年度 会長 佐々木浩史
平成27年度 会長 吉岡康祐

朝鮮学校に対する適正な補助金交付を求める会長
声明
1 文部科学省は,2016(平成28)年3月29日,朝鮮学校が所在する28都道府県に対し,「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知)」(以下,「本通知」という。)を通知した。本通知は,各都道府県知事に対して,「朝鮮学校に関しては,我が国政府としては,北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が,その教育を重要視し,教育内容,人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識して」いるとした上で,各地方公共団体に対して,「朝鮮学校の運営に係る上記のような特性も考慮の上,朝鮮学校に通う子供に与える影響にも十分に配慮しつつ,朝鮮学校に係る補助金の公益性,教育振興上の効果等に関する十分な御検討とともに,補助金の趣旨・目的に沿った適正かつ透明性のある執行の確保」を求めている。
本通知に先立つ自由民主党の「北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する緊急党声明」では,「対北朝鮮措置に関する要請」13項目の制裁強化策を速やかに実施するよう求めているところ,同要請第7項が「朝鮮学校へ補助金を支出している地方公共団体に対し,公益性の有無を厳しく指摘し,全面停止を強く指導・助言すること」とされていること,現に本通知を受けて補助金の交付停止を検討・決定する地方公共団体も出てきていることに鑑みれば,本通知は,政府が外交的な理由から各地方公共団体に対し,朝鮮学校に対する補助金交付を停止するよう求めたものと評価せざるを得ない。
2 そもそも,朝鮮学校に対する補助金の支給は,朝鮮学校に在籍する生徒が憲法第26条第1項,子どもの権利に関する条約第30条,国際人権規約A規約(「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)」)第13条などにより保障されている学習権を実質的に保障するために行われている措置である。大阪高判平成26年7月8日(判例時報2232号34頁等参照)では,朝鮮学校は,「民族教育を軸に据えた学校教育を実施する場として既に社会的評価が形成されている」学校であると認定しているが,それは,外国人も自らの社会的背景にある文化,歴史などを学習する権利があること及びその権利は社会的に評価されていることを認めたものに他ならない。
それにもかかわらず,朝鮮学校に在籍する生徒とは無関係な外交問題・政治問題を理由として朝鮮学校への補助金を停止することは,憲法第14条,国際人権A規約,国際人権B規約(「市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)」),人種差別撤廃条約(「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約」)及び子どもの権利条約が禁止する不当な差別に該当する。
また,本通知やそれに続く補助金の不交付,交付の留保は,朝鮮学校に通う子どもたちに社会からの疎外感を与えるとともに,朝鮮学校の子どもたちへの不当な差別を助長する可能性が高く,この点からも到底容認することができない。
3 2014(平成26)年8月28日に採択された国連人種差別撤廃委員会による「日本の第7回・第8回・第9回定期報告に関する最終見解」においても,地方公共団体による朝鮮学校に対する補助金の停止あるいは継続的な縮小を含む,在日朝鮮人の子供の教育を受ける権利を妨げる政府の行動について懸念が指摘されているところである。さらに,上記最終見解でも指摘されているとおり,我が国ではとりわけ韓国・朝鮮人に対して人種的ヘイトスピーチが広がっている現状がある。このような状況下において,本通知のように差別を助長する可能性のある措置は厳に慎むべきである。
4 子どもたちは人類の未来を担う存在であり,その学習権を保障することは,子どもたちが一個の人格として成長・発達するために重要である。その対象として,朝鮮学校に通う子どもたちも例外ではない。
5 当会は,以上の理由から,文部科学省に対し,本通知を速やかに撤回することを求める。また,岡山県をはじめとする各都道府県に対し,憲法及び各種条約に違反する本通知に拘束されることなく,朝鮮学校に対する補助金について,停止または縮小することなく交付することを強く求めるものである。
2016(平成28)年6月8日
岡山弁護士会 会長 水 田 美由紀

国立大学の国旗・国歌の扱いに対する不当な介入に反対する会長声明
安倍首相は、本年4月9日、参議院予算委員会で、次世代の党の松沢成文氏の、国立大学の入学式や卒業式での国旗掲揚、国歌斉唱に関する質問に対して、国立大学が「税金によって賄われていることに鑑みれば、教育基本法にのっとって正しく実施されるべき」と答弁し、これを受けて、下村博文文部科学相が「広く国民に定着し、国旗国歌法が施行されたことを踏まえて、各大学で適切な対応が取られるよう要請したい」と述べた。
しかし、安倍首相の答弁、下村文科相の発言は、それ自体が、政府(国家権力)による大学への不当な介入行為であり、憲法23条及び教育基本法7条2項に反し許されない。
そもそも憲法23条は、憲法19条(思想良心の自由)、憲法21条(表現の自由)とは別個に「学問の自由」を保障している。これは、明治憲法下において、滝川事件や天皇機関説事件などで、「学問の自由」が国家権力によって不当に侵害された苦い経験の反省から、特に規定されたものである。そして、「学問の自由」は、沿革的には大学の学問の自由がその中心にあり、大学の人事、学問研究、教育、運営などにつき、国家権力などの外部勢力が不当に干渉するときは、学問の自由に対する侵害の危険が生ずることから、特に大学に限って学問の自由を実質的に担保するために「大学の自治」が認められているのである。また、この憲法23条の趣旨を受けて、教育基本法7条2項でも、「自主性、自立性その他大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」と規定されている。
加えて、安倍首相の答弁及び下村文科相の発言は、政府の要請に従わなければ予算配分に影響を与えるという意味が含まれているとしか受け取ることができず、国立大学に対して、国旗掲揚、国歌斉唱を事実上強制することとなり、国立大学の自主性を著しく侵害する。また、国家予算が投入されているのは国立大学だけでなく、私立大学も同じであるので、安倍首相の答弁は、国立大学のみならず、私立大学を含めた全ての大学の自治を侵害する行為と言わざるを得ない。
よって、当会は、政府が国立大学に対して国旗掲揚、国歌斉唱を要請すること自体に強く反対し、安倍首相に対しては、参議院予算委員会での、国立大学に対する国旗掲揚、国歌斉唱が正しく実施されるべきとする答弁は、憲法23条、教育基本法7条2項で保障された大学の自治を侵害するので撤回するよう求めるとともに、文科省に対しても、国旗掲揚、国歌斉唱を国立大学に要請するとの方針を撤回するよう求める。
2015年(平成27年)4月22日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

外国籍会員の参与員選任を求める会長声明
1 当会は,2011年(平成23年)10月17日,岡山家庭裁判所からの推薦依頼を受けて,2012年(平成24年)1月1日からの任期の参与員について,2011年(平成23年)11月7日付けにて,外国籍弁護士1名を含む15名の参与員候補者を当会会員の中から推薦した。
ところが,2011年(平成23年)12月12日,岡山家庭裁判所から,日本国籍を有しない者については参与員に選任しない旨の連絡があった。その理由の概要は,参与員は,審判に立ち合って家事審判官に意見を述べ(家事審判法第3条1項),あるいは,人事訴訟において,審理又は和解の試みに立ち会って,裁判所に意見を述べる(人事訴訟法第9条1項)立場にあるため,公権力の行使または国家意思の形成への参画にたずさわる公務員に該当するというものである。
2 しかしながら,法律にも,最高裁判所規則にも,参与員について日本国籍を要求する条項は存在せず,ただ,「徳望良識のある者」(参与員規則 第1条)とされているのみである。最高裁判所のホームページにおいても,参与員については,「選任されるための特別な資格などは必要ではなく,人望があって,社会人としての健全な良識のある人から選ばれています。」と説明されているに留まる。
3 参与員の上記のような職務に鑑みれば,弁護士としての専門的知識を備え,あるいは,社会生活の上での日本の社会制度や文化,そこに住む市民の考え方に精通し,人格識見を備えた人物であれば,参与員としての資質に欠けるところはなく,日本国籍の有無を問題とすべきではない。ことに今回,参与員として選任されなかった会員は,永住資格を有し,司法修習を終え,弁護士としての経験を積み,参与員としての能力・適格性を十分に備えているものである。
また,参与員の職務の内容は,裁判所・家事審判官の補助機能しかなく,いわゆる公権力の行使に当たるものではない。破産管財人,相続財産管理人,不在者財産管理人など,公的側面も有する職務について,外国籍の弁護士等の就任が認められていることに照らしても,参与員が,審理に立ち会い,家事審判官に意見を述べる立場等にあることをもって,外国籍の者を参与員に選任しないとすることには,合理性を見出しがたく,国籍を理由とする不合理な差別というほかなく、これを是認することは到底できない。
4 よって,当会は,岡山家庭裁判所に対して,当会が推薦した外国籍の会員についても参与員に選任するよう改めて求めるものである。
2011年(平成23年)12月26日
岡山弁護士会 会長  的 場 真

<PDファイル縦書きです。>
安保法案を提出した安倍内閣、これに賛成した全ての国会議員に対する会長コメント
ttp://www.okaben.or.jp/news/index.php?c=topics_view&pk=1443080940
憲法はあなたのためのものじゃない
まもり護って国の礎
2015年(平成年27年)9月24日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

臨時国会の召集に関する憲法53条後段の趣旨を遵守するよう求める会長声明
2017(平成29)年6月22日,野党所属議員らは森友学園及び加計学園と安倍晋三内閣総理大臣の関係についての疑惑解明を目的とした臨時国会の召集を求める要求書を内閣に提出した。
ところが,安倍内閣は3か月余りこれを放置してきた。そのうえ,2017(平成29)年9月28日,臨時国会を召集したその冒頭に衆議院を解散した。
憲法53条後段は,臨時国会の召集に関し,「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば,内閣は,その召集を決定しなければならない。」と定めている。この規定の趣旨は,議院内閣制のもとで,国会内の少数派が内閣に対して臨時国会の召集を義務付けることにより,少数派の提起する案件について国会で議論する機会を保障し,民主主義を徹底しようとする点にある。
したがって,国会法には召集要求があった際の召集期間に関する規定が存在していないところであるが,臨時国会召集のための事務手続に要する期間を考慮しても,内閣は速やかに臨時国会を召集し,要求のあった案件について国会審議がなされるべきである。
今回,「総議員の4分の1」という要件を満たした召集要求があったにもかかわらず,安倍内閣が3か月以上これを放置したあげく,臨時国会を召集したその冒頭に衆議院を解散したことは,議院内閣制のもとで少数派に保障された臨時国会召集要求権をないがしろにし,少数派の提起する案件について国会で議論する機会を奪うものであるから,憲法53条後段の趣旨を実質的に没却することは明らかである。
安倍内閣は,2015(平成27)年にも,野党所属議員らからの臨時国会の召集要求に応じなかった。以上のような安倍内閣の態度は,国会において多種多様な観点から議論を行うという民主主義の根本原理に反し,許されない。
したがって,当会は,内閣に対し,臨時国会の召集に関する憲法53条後段の趣旨を遵守するよう求めるとともに,国会に対し,憲法53条後段に基づく召集要求があった場合の召集手続に関する国会法の整備を行うよう求める。
2017(平成29)年11月7日
岡山弁護士会  会長  大 土  弘

民法の成年年齢引下げに反対する会長声明
第1 はじめに
現在,民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正法案の立案作業が進められている。
しかし,次の理由から,民法の成年年齢を引き下げることに反対する。
第2 成年年齢引下げによる弊害は大きい
1.未成年者取消権の喪失による消費者被害の拡大
(1)民法は,未成年者が,親権者の同意なく単独で行った法律行為につき,取消権を認めている(民法第5条
第2項)。この未成年者取消権が認められた趣旨は,社会経験が乏しく判断能力が未熟な未成年者を保護する
ためである。
若年者は,社会経験の乏しさや判断能力の未熟さから,違法・不当な契約の勧誘に脆弱な面があること
から,様々な消費者被害が発生している。
また,若年者は,学校等における先輩後輩関係や友人関係等の影響を受けやすく,そういった人間関係から被害が拡大しやすい。さらに,被害に遭ったときに適切な対応ができないため問題を抱え込んでしまうことも少なくない。
そのため,未成年者取消権は,未成年者保護のために重要である。(2)未成年者取消権は,未成年者に対する違法・不当な契約の締結を勧誘する悪質な事業者に対する抑止力としての機能も有している。
未成年者取消権が抑止力として機能していることは,全国の消費生活センター等に寄せられる相談件数が,18歳から19歳までの平均値と20歳から22歳までの平均値を比較すると,20歳から22歳までの平均値が18歳から19歳までの平均値の約1.55倍と増えていること(平成27年度)からも推認できる。
すなわち,悪質な業者は,未成年者取消権を失った直後の若者を狙って勧誘をしているために,20歳を境に相談件数が増加していると考えられる。そのため,未成年者が18歳に引き下げられれば,18歳を境に消費者被害が増加すると考えられる。
さらに,18歳及び19歳の若年者は,20歳を超えた若年者と比較して,より社会経験に乏しく判断能力が未熟であるため,消費者被害が拡大することが容易に予想できる。
(3)このように,成年年齢の引下げにより,18歳及び19歳の若年者が未成年者取消権を行使できなくなる結果,消費者被害が拡大することが懸念される。
2.労働契約の解除権の喪失に伴う労働者被害の拡大
労働基準法第58条2項は,「親権者若しくは後見人又は行政官庁は,労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては,将来に向ってこれを解除することができる」と規定し,未成年者の労働契約について,未成年者にとって不利な労働契約の解除権を認めている。
民法の成年年齢を引き下げた場合,18歳及び19歳の若年者は,民法の未成年者取消権による保護だけではなく,労働基準法第58条第2項の解除権による保護も受けられなくなる可能性が高く,解除権による抑止力が働かなくなる結果,労働条件の劣悪ないわゆるブラック企業等による労働者被害が18歳及び19歳の若年者の間で一気に拡大する可能性がある。
3.若年者の消費者被害拡大のおそれに対する対策が不十分である(1)法制審議会「民法の成年年齢引下げについての最終報告書」(以下「最終報告書」という。)は民法の成年年齢を18歳に引き下げるのが適当であるとの結論を出している。ただし,最終報告書も,成年年齢の引下げのためには,消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現される必要があるとの留保をつけている。
しかし,次のとおり,消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策は実現していないことからも,成年年齢を引き下げるべきではない。
(2)最終報告書においても,若年者の社会的経験の乏しさによる判断力の不足に乗じて取引が行われた場合(以下「『つけ込み型』勧誘の類型」という。)に,契約を取り消すことができるようにする等の施策の充実を図る必要があるとされた。
また,平成29年8月8日付の「消費者委員会答申書」においても,「つけ込み型」勧誘の類型についての消費者の取消権につき,早急に検討し明らかにすべき喫緊の課題とされている。
しかし,平成29年8月21日,消費者庁により,消費者契約法の見直しに関する意見公募手続が実施されたが,その意見募集対象である消費者契約法の改正に関する規定案には,「つけ込み型」勧誘の類型について,取消権を認める等の規定案は含まれていない。そのため,次回の消費者契約法改正において,「つけ込み型」勧誘の類型について,消費者の保護の規定が追加される可能性は低い。
(3)このように,若年者の消費者被害拡大のおそれを防ぐための施策がなされているとはいえない状況である。
第3 まとめ
以上のとおり,民法の成年年齢の引下げにより,18歳及び19歳の若年者への消費者被害を拡大させ,また,労働者として搾取される等の被害を増加させるおそれが高いことから,当会は,民法の成年年齢の引下げに反対する。
2017(平成29)年11月7日
岡山弁護士会  会長  大 土  弘

日本国憲法施行70年にあたり、憲法の基本原理を再確認し、
これを守り抜く決意を新たにする会長声明
日本国憲法が1947(昭和22)年5月3日に施行され、今年で70年を迎えた。
この70年間、日本国民は、基本的人権の尊重、国民主権、恒久平和主義という憲法の基本原理や、憲法が最高法規として国家権力の濫用から国民の人権を保障するという立憲主義の理念を不断の努力によって守り抜いてきた。
憲法9条については、1960年代の憲法調査会の設置など、何度も改変の危機があったにもかかわらず、第二次世界大戦で膨大な犠牲を払うことを強いられた国民の、戦争を二度と起こしてはならないという強い決意と行動の結果、明文による憲法改正を許さず、今日に至っている。
また、憲法25条の生存権についていえば、ここ岡山において、国立岡山療養所に入所していた朝日茂さんが立ち上がった、いわゆる朝日訴訟が「健康で文化的な最低限度の生活」の実質的な保障につながる第一歩となった。
しかし、いま、日本国憲法は最大の危機に瀕している。
2014(平成26)年7月の閣議決定で、従来の政府の憲法解釈が変更されて、集団的自衛権の行使が容認された。これに対しては、当会を含む全国各地の弁護士会や圧倒的多数の憲法学者が憲法違反であるとの声明を出していたにもかかわらず、2015(平成27)年9月には新たな安全保障法制が成立した。こうして、憲法の基本原理である平和主義にかかわる重大な解釈を、憲法改正手続を経ずに変更した。 そして、新たな安全保障法制のもとで、早速、南スーダンに派遣されている陸上自衛隊の部隊に「駆けつけ警護」の新任務が付与された。その上、米国と北朝鮮の緊張関係の高まりを契機として、国民に対する十分な説明がなされないまま、2017(平成29)年5月に米国の艦船を自衛隊の艦船が守る「武器等防護」が、日本近海において初めて実施された。
さらに、2017(平成29)年6月に委員会採決を省略するという異例の強行採決によって成立した、いわゆる共謀罪法(組織犯罪処罰法改正法)によって、プライバシー権(憲法13条)、表現の自由(憲法21条)、ひいては思想・良心の自由(憲法19条)すら脅かされようとしている。277もの広範囲な罪について、「準備行為」を要件としているものの、その適用範囲が限定されたものとは言えず、事実上、共謀のみをもって犯罪とする共謀罪法は、刑罰権の発動は実行行為をまって行われるという刑法の基本原則に反するものである。それにもかかわらず、日本における共謀罪法の必要性、犯罪主体等の構成要件について十分な審理を行わずに成立した共謀罪法は、罪刑法定主義(憲法31条)に反するのみならず、表現の自由(憲法21条)等の精神的自由に対する萎縮効果は大きく、基本的人権尊重の基本原理に反する。
このような憲法の基本原理にとって重大な脅威となる法律が続々と成立する中で、明文の憲法改正を目指す動きも活発になってきている。安倍晋三内閣総理大臣は、今年5月3日、憲法改正を推進する集会の場に、自ら、「2020年までに新憲法を施行したい」、「憲法9条を改正し、自衛隊の存在を明記する」と発言したビデオメッセージを寄せた。憲法改正に関する国民的議論が進んでいない状況において、憲法改正を発議する立法府の頭ごしに、憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負っている内閣総理大臣が憲法改正を主張することは、立憲主義を軽視するものといわざるを得ない。
このように、この70年間、国民が守り抜いてきた憲法の基本原理を一気に破壊しようとする動きが着々と進行している。
われわれ弁護士、弁護士会は、あらためて、日本国民がこの70年間守り抜いてきた憲法の基本原理を再確認するとともに、憲法の基本原理を破壊するいかなる企てに対しても、国民と共に抵抗し、不断の努力によって、憲法の基本原理を守り抜く決意を、ここに新たにするものである。
2017(平成29)年8月18日
岡山弁護士会  会長 大 土   弘

会員の懲戒処分の公表 ←下記?は最初から
平成29年8月3日
岡山弁護士会
会長 大 土   弘
会員の懲戒処分の公表
本会は、懲戒委員会の議決に基づき、下記のとおり会員を懲戒したので、お知らせします。

1.対象弁護士の氏名、登録番号及び事務所
(氏   名) 櫻 井 幸 一
(登録番号) 第18623号
(事 務 所) 岡山市中区下54?15
さくらい法律事務所
2.懲戒の処分の内容
退会命令
3.懲戒の処分が効力を生じた年月日
平成29年8月3日
4.懲戒の処分の理由の要旨
第1
1 対象弁護士は,平成27年11月から平成28年6月までの本会会費合計16万円及び同期間中の日本弁護士
連合会会費合計10万7200円並びにその他同連合会の特別会費を滞納した。
これは,本会会則第108条第1項(本会会費納付義務)及び同第111条第1項(同連合会会費納付義務)に
違反する。
2 また,対象弁護士は,次のとおり紛議調停の期日に出頭せず,答弁書を提出しない等の行為を行った。
(1)平成26年7月10日付けで申し立てられた紛議調停事件について,正当な理由なく期日に出頭しなかった。
(2)平成27年2月12日付けで申し立てられた紛議調停事件について,答弁書を提出期限までに提出せず,再度指定された提出期限までにも提出しなかった上,申立人に対し12万円支払う旨調停外で申立人と合意しながら履行せず,弁済計画の提出要請にも応じず,6万円しか支払わなかった。
(3)同年6月19日付けで申し立てられた紛議調停事件について,(1)正当な理由なく期日に出頭しなかった上,
?答弁書を提出期限までに提出せず,再 度指定された提出期限までにも提出しなかった
(4)同年11月17日付けで申し立てられた紛議調停事件について,答弁書を提出期限までに提出せず,期日で合意した提出期限までにも提出しなかった上,弁護士賠償保険金請求の進捗状況を説明することを約束したにもかかわらず,申立てが取り下げられるまで説明しなかった。
(5)同月26日付けで申し立てられた紛議調停事件について,答弁書を提出期限までに提出せず,再度指定された提出期限までにも提出しなかった上, 自ら申し出た提出期限にも提出しなかった。(6)対象弁護士の(1)及び(3)?の各行為は,本会紛議調停に関する会規第14条(紛議調停への出頭義務)及び弁護士職務基本規程第26条(紛議が生じたときは紛議調停で解決するよう務める義務)にそれぞれ違反し,(2),(3)?,(4)及び(5)の各行為は弁護士職務基本規程第26条に違反する。
3 以上の対象弁護士の各行為は,弁護士法第56条第1項に定める「品位を失うべき非行」に該当する。
第2
1 対象弁護士は,懲戒請求者から,医療過誤が問題となった件を受任し,平成26年11月11日,懲戒請求者の家で打合せをした。しかし,その後,対象弁護士から懲戒請求者に対し,事件の経過を報告したり,協議したりすることは一度もなく,対象弁護士は懲戒請求者からの苦情を受けて平成27年3月5日付けで懲戒請求者に手紙を出しただけであった。その後も対象弁護士は懲戒請求者に連絡を取らず,同年7月3日,懲戒請求者は対象弁護士を解任するに至った。
2 対象弁護士において懲戒請求者からの連絡に十分対応できなかった期間は少なくとも7か月に及んでおり,職務基本規程第36条(依頼者への報告義務)に違反する。また,平成27年3月5日以降4か月にわたって
事件処理を放置しており,同規程第35条(事件の処理義務)にも違反する。
3 以上の対象弁護士の行為は弁護士法第56条第1項に定める「品位を失うべき非行」に該当する。
なお、櫻井幸一(さくらい こういち)氏は、退会命令を受けたため,現在では,岡山弁護士会会員ではなく,弁護士ではありません。したがいまして,櫻井幸一弁護士またはさくらい法律事務所の名で法律相談を行ったり、事件を引き受けることはできません。依頼した方にも、被害が及ぶことがありますので、ご注意ください。
法律問題に関する相談などは、このウェブサイト内でご案内している法律相談センターでご相談ください(有料のものもあります。また電話相談はいずれも通信料ご利用者負担となります)。

死刑執行に関する会長声明
2017年(平成29年)7月13日、大阪拘置所及び広島拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、またしても死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が141か国に上っているのに対し、死刑存置国は57か国に過ぎない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。
日本弁護士連合会は、2015年(平成27年)12月9日には法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
また、2016年(平成28年)10月7日に福井市で開催された第59回人権擁護大会で、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであること、死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討すること等を国に対して求めた。
なお、同宣言では、我が国が、国連自由権規約委員会や国連拷問禁止委員会等の国際機関から、これまでに死刑判決の全員一致制、死刑判決に対する自動上訴制、死刑判決を求める検察官上訴の禁止等の慎重な司法手続が保障されていないことについて幾度となく改善を勧告されているにもかかわらず、今日まで見るべき改善がなされていないことも指摘されているが、今回、広島拘置所において死刑が執行された者は、2013年(平成25年)2月に岡山地方裁判所における裁判員裁判で死刑判決を受け、その後、控訴したが、同人が控訴を取り下げたことにより上訴審において量刑に関して十分な審理がなされないまま死刑判決が確定した者であり、今回の死刑執行はかかる国際機関による勧告も考慮することなく行われたと言わざるを得ない。
当会においても昨年9月にシンポジウムを開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行ったところである。
このような国際社会の潮流に反し、また、当会や日本弁護士連合会の要請等に反し死刑の執行が続いていることは極めて遺憾である。そこで、当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、死刑の執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきことを要請するものである。
2017年(平成29年)7月19日
岡山弁護士会  会長 大 土   弘

「共謀罪」と実質的に変わらない,いわゆる「テロ等準備罪」を創設する組織的犯罪処罰法改正法案の採決強行に抗議し,同法の廃止を含む見直しを求める会長声明
当会では,今国会において審理されていた組織的犯罪処罰法改正案について,市民の思想・信条の自由はもちろん,表現の自由,集会・結社の自由等の憲法上保障された基本的人権を侵害する危険性を有し,我が国の刑法の基本原則に反するものであるから成立に強く反対するとの立場から,昨年1月,11月,本年3月と,三度にわたり,いわゆる「共謀罪」を内容とする法案の国会提出に反対する声明を発表し,街頭宣伝活動や市民集会を開催するなど,同法案の危険性について訴えてきた。
同法案の対象となる277の罪の中には,著作権法違反等およそテロ犯罪とは無関係な犯罪が含まれており,対象範囲が広範に過ぎる。また,「組織的犯罪集団」がテロ組織や暴力団等に限定されず,これまで繰り返し述べてきたように市民団体や労働組合等も対象となり得ることから,ひいては一般市民も捜査の対象となり得るという懸念は払拭できない。加えて,同法案に係る衆議院法務委員会での審議において,計画(共謀)よりも前の段階から尾行や監視が可能となることが明らかになるなど,問題点は解消されるに至っていない。
また,同法案が既遂処罰という我が国の刑法の基本原則に反することはこれまでにも繰り返し述べてきたことであるが,既に予備罪が規定されている強盗罪等について,同法案に基づく共謀罪の方がその予備罪よりも法定刑が重いという不均衡が生じる点についてもなんら合理的な説明がない。
同法案については,日本弁護士連合会及び全国52の弁護士会全て並びに刑事法学者ら等からも続々と反対の表明がなされ,国連特別報告者からも「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」として懸念を表明する書簡が内閣総理大臣宛てに送付された。本年6月10日に当会が開催した市民集会及びパレードには約600名の市民が参加し,多くの市民が同法案の内容に疑問を抱いていることが明らかになった。
それにもかかわらず,上述のように十分な議論を経ぬまま衆議院において強行採決し,良識の府であるはずの参議院においても委員会採決を省略した上で採決が強行され,同法案が可決,成立したことは極めて遺憾であり,強く抗議する。
当会は,政府および国会に対し,改めて,同法が国民の重要な権利を侵害し,我が国の刑法の基本原則に反するものであることから,今後,廃止を含めた抜本的見直しを行うよう強く求めるものである。
2017年(平成29年)6月15日
岡山弁護士会  会長 大 土   弘

修習給付金を支給すること等を内容とする改正裁判所法の成立にあたっての会長声明
1 はじめに
本年4月19日、司法修習生に対して修習給付金を支給すること等を内容とする改正裁判所法(以下、「本法」という。)が成立した。本法の施行日である本年11月1日以降の司法修習生に対しては本法67条の2に基づき、基本給付金として一律月額13万5000円、さらに必要に応じて住居給付金(上限3万5000円)及び移転給付金が支給される見込みとなった。
給費制の実現に向けては、日本弁護士連合会及び各弁護士会が、法曹志望者・法科大学院生・若手弁護士らを中心とするビギナーズ・ネットや市民の皆様とともに、7年余にわたって活動してきたものであるが、本改正が実現したのは、多くの市民の皆様、国会議員の皆様、法務省をはじめとする関係各省庁及び最高裁判所、マスコミ関係者の方々など、多くの方のご理解とご協力があったからであり、当会として、心から感謝申し上げる。
2 従前の制度
この修習給付金をめぐっては、2011年(平成23年)の裁判所法改正により、司法修習生に対する給費が廃止され、同年採用の司法修習生以降、司法修習生に対し、月額23万円を標準とする修習資金相当額を貸与する制度(貸与制)が導入された。しかし、貸与金はあくまで司法修習生にとって借入金(債務)にすぎず、2011年(平成23年)から2016年(平成28年)の間に採用された司法修習生は、無給での司法修習を強いられてきた。
3 司法修習生の経済状況
司法修習生は、本法67条2項により修習専念義務が課されたうえ、原則として副業が禁止されていることから、無給となった司法修習生は経済的に非常に困窮し、多くの司法修習生は、国からの修習資金の貸与を受け、司法修習に要する経費及び生活費等を賄ってきた。もっとも、修習資金の貸与を受けるためには年収150万円以上の保証人2人を付けるか、機関保証(有利子)を申し込む必要があったため、保証人を付けられず、かつ、機関保証を申し込んで更に債務が増大することを恐れた司法修習生は、貸与金の申請が行えないといった事態も生じた。加えて、貸与制の下の司法修習生は、司法修習生に採用される以前の法科大学院や大学の奨学金返還債務を抱えていることが多く、約300万円の貸与金返還債務は経済的に非常に重い負担となった。このような経済的負担は、近年の法曹志望者激減の一因ともなった。
4 司法修習の意義
そもそも、法曹(裁判官・検察官・弁護士)になるには、司法試合格後、1年間の司法修習を経て、考試(本法67条1項)に合格することが必要である。司法修習は、法曹として実務に必要な能力や高い見識・倫理観等を習得するために必要不可欠なものであり、法曹志願者としては必ず経なければならない制度である。国は、法律上、法曹志願者に対し、1年間の司法修習制度を定め、かつ、司法修習期間においては修習に専念する義務を課しているから、司法修習生の生活を賄うべく公費を投じることは、国の当然の責務といえる。
5 当会の活動
貸与制は、こうした国の責務を放棄するものであり、当会では、これまで、日本弁護士連合会やビギナーズ・ネットなどとともに、貸与制を廃止し、かつての給費制を実現すべく、地元選出の国会議員との面談、市民集会の開催、司法修習生給費制実現PTの立ち上げ、地元紙における意見広告、マスコミの皆様との意見交換、院内集会への委員の派遣等の活動に取り組んできた。
この活動が、司法修習生に対する経済的支援の必要性を広く認識していただく一助となり、本法が成立した。
6 法改正の評価
本法は、司法修習生に対する一律での給付が実現したという点において、これまでの貸与制が誤りであったことを認めたものであり、また、司法修習生の経済的困窮を幾分か和らげるものではある。したがって、当会としても、本法の成立自体について司法修習生に対する経済的支援の前進と評価する。
7 残された課題
しかしながら、本法は以下の2つの課題を残したといえる。
第一に、給付金額13万5000円という金額は、経済的不安なく司法修習を行うための費用としては必ずしも十分ではない。本法に基づく給付金額については、司法修習の意義及び今後の司法修習の実態も踏まえて、その適正額について引き続き検討が続けられるべきである。
第二に、本法の成立により、貸与制の下で司法修習を行った2011年(平成23年)から2016年(平成28年)の間に採用された司法修習生のみが、無給での司法修習を強いられ、給費制のもとで修習した2010年(平成22年)以前の司法修習生及び修習給付金の支給を受ける本年以降の司法修習生と比較して著しい不公平が生じることとなる。そこで、2011年(平成23年)から2016年(平成28年)の間に採用された貸与世代の司法修習生に生じる著しい不公平を解消するための措置をとることが必要不可欠である。本法案の審議の過程においても、与野党を問わず国会議員の皆様から同様の指摘がなされ、何らかの措置を講ずべきであるとの意見もあったにもかかわらず、本法にはこの点につき何らの言及もない。
貸与世代の第1期生である2011年(平成23年)に採用された司法修習生であった者に対する貸与金の返還開始時期である2018年(平成30年)7月が迫ろうとしている。一度貸与金の返還が開始されてしまうと、貸与世代の司法修習生に生じる著しい不公平を解消するために必要な措置をとるに当たり、制度設計上困難な事態が新たに生じてしまうことは明らかであり、上記第二の課題は喫緊の対応が必要である。
8 おわりに
当会としては、本法の成立をひとまず前進と受け止めるとともに、今後も、上記2つの課題を解決すべく、引き続き活動を続けていく所存である。
2017年(平成29年)5月10日
岡山弁護士会 会長 大 土   弘

2344 どんたく滋賀弁護士会②

夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20160114.html
1.2015(平成27)年12月16日、最高裁判所大法廷は、女性のみに離婚後6ヵ月の再婚禁止期間を定めた民法第733条について、「100日超過部分」は、合理性を欠いた過剰な制約を課すものとして、憲法第14条第1項、同第24条第2項に違反するものと判断し、他方、夫婦同氏の強制を定めた民法第750条については、憲法第13条、同第14条、同第24条のいずれにも違反しないと判断した。
2.当会は、2010(平成22)年5月11日、「民法(家族法)の早期改正を求める会長声明」において、個人の多様な生き方を認め合い、男女共同参画社会を実現する為に、選択的夫婦別姓の導入及び女性の再婚禁止期間撤廃等を内容とする民法改正を速やかに実現するよう国に求めてきた。
すなわち、民法第733条については、現在では、DNA鑑定の普及により低廉な価格で高精度に父子関係の判定ができるのであるから、再婚禁止期間というかたちで、婚姻の自由を大きく制約する必要性は失われていると指摘し、また、民法第750条については、現実には、ほとんどの場合(96%)、女性が氏を変更していること、氏を変更した者の中には、やむなく改姓し、社会生活上、職業上の不利益を被っている者も少なくないこと、夫婦同姓を強制する国は、今や先進国においては日本のみであること、氏名は人格権の一内容を構成するものとして尊重され、婚姻後も人格の象徴としての姓を継続して使用することは憲法上の要請といえることから、選択的夫婦別姓制度を導入すべきであると指摘してきた。
3.まず、民法第733条については、最高裁判決が現行規定の違憲性を明らかにしたことは評価できる。しかし、再婚禁止期間というかたちで女性の婚姻の自由を制限すること自体、合理性は失われているのであるから、100日未満の期間についても、なお問題であり、立法府において、議論を継続する必要がある。
4.次に、民法第750条については、最高裁判決が「家族の呼称を一つに定めることには合理性が認められる」「夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではなく、夫婦がいずれの氏を称するかは、夫婦となろうとする者の間の協議による自由な選択に委ねられている」「氏の変更による負担は、通称使用の拡充によって一定程度緩和される」等として、憲法に違反するものではないと判断したことは、個人の尊厳や両性の本質的平等の要請に反する上、個人の生き方の多様化、男女共同参画社会推進の流れに反するもので、極めて不当である。
この点、岡部喜代子裁判官(櫻井龍子裁判官、鬼丸かおる裁判官、山浦善樹裁判官も同意見)は、氏の変更により、個人識別機能に対する支障や自己喪失感などの負担が生じるところ、96%もの多数の女性が夫の氏を称しており、氏の変更の負担はほぼ妻に生じていること、その背景には、女性の社会的経済的な立場の弱さ、家庭生活における女性の立場の弱さ、種々の事実上の圧力など様々な要因があり、妻が夫の氏を称する意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用していることを指摘し、その点の配慮をしないまま夫婦同氏に例外を設けないことは、「個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っており、憲法第24条に違反するものといわざるを得ない」との意見を述べており、当会の主張と合致するものである。また、通称使用についても、便宜的なものであること、通称名と戸籍名との同一性という新たな問題を惹起すること、夫婦同氏の強制により婚姻をためらう事態が生じている現在において、不利益が若干程度緩和されるからといって、夫婦同氏に例外を認めないことの合理性が認められるものではないと指摘しており、正当である。
選択的夫婦別姓制度の採用については、すでに1996(平成8)年の法制審議会で答申されていた。また、女性差別撤廃委員会は、国に対し、2009(平成21)年、2011(平成23)年、2013(平成25)年と、再三にわたって家族法改正を勧告しており、夫婦の氏の選択に関する差別的な法規制が含まれることに懸念が表明され、その廃止が要請されるにまで至っている。
上記状況を踏まえ、山浦善樹裁判官の反対意見は、1996(平成8)年の法制審議会の答申以降の相当期間を経過しても国会が改廃等の立法措置を怠っていたのは、国家賠償法上も違法であると指摘している。
よって、当会は、国に対し、本判決の合憲判断を理由に議論を停滞させるのではなく、民法第733条及び同法第750条等の民法(家族法)の差別的規定を速やかに改正するよう、強く求める
2016(平成28)年1月14日
滋賀弁護士会 会長 中原淳一

司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20160120.html
司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)については、日本弁護士連合会・各弁護士会に対して、多くの国会議員から賛同のメッセージが寄せられているところ、先日、同賛同メッセージの総数が、衆参両院の合計議員数717名の過半数である359名を超えた。
まずはメッセージをお寄せいただいた国会議員の皆様に対し感謝の意と敬意を表するものである。
メッセージを寄せられた国会議員は、与野党を問わず広がりを見せており、司法修習生への経済的支援の必要性についての理解が得られつつあるものと考えられる。
そもそも、司法制度は、社会に法の支配を行き渡らせ、市民の権利を実現するための社会的インフラであり、国はかかる公共的価値を実現する司法制度を担う法曹になる司法修習生を、公費をもって養成すべきである。このような理念のもとに、我が国では、終戦直後から司法修習生に対し給与が支払われてきた。しかし、2011年11月から、修習期間中に費用が必要な修習生に対しては、修習資金を貸与する制度(貸与制)に変更された。この修習資金の負債に加え、大学や法科大学院における奨学金の債務を負っている修習生も多く、その合計額が極めて多額に上る者も少なくない。法曹を目指す者は、年々減少の一途をたどっているが、こうした重い経済的負担が法曹志望者の激減の一因となっていることが指摘されているところである。
こうした事態を重く受け止め、法曹に広く有為の人材を募り、法曹志望者が経済的理由によって法曹への道を断念する事態が生ずることのないよう、また、司法修習生が安心して修習に専念できる環境を整えるため、司法修習生に対する給付型の経済的支援(修習手当の創設)が早急に実施されるべきである。
昨年6月30日、政府の法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において、「法務省は、最高裁判所等との連携・協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」との一節が盛り込まれた。
これは、司法修習生に対する経済的支援の実現に向けた大きな一歩と評価することができる。法務省、最高裁判所等の関係各機関は、有為の人材が安心して法曹を目指せるような希望の持てる制度とするという観点から、司法修習生に対する経済的支援の実現について、直ちに前向きかつ具体的な検討を開始すべきである。
当会は、司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)に対し、国会議員の過半数が賛同のメッセージを寄せていること、及び、政府においても上記のような決定がなされたことを踏まえて、国会に対して、給付型の経済的支援(修習手当の創設)を内容とする裁判所法の改正を求めるものである。
2016(平成28)年1月20日
滋賀弁護士会 会長 中原淳一

消費者庁・国民生活センター・内閣府消費者委員会の地方移転に反対する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20160614.html
政府は、「まち・ひと・しごと創生本部」に「政府関係機関移転に関する有識者会議」を設置し、政府関係機関の地方移転を審議している。そして、同会議において、消費者庁・国民生活センター・内閣府消費者委員会(以下「消費者庁等」という。)の地方への移転に向けた検証が行われている。
しかし、当会は、以下の理由により、消費者庁等を地方へ移転することに反対する。
消費者庁等がその機能を果たすためには、各省庁及び国会と同一地域に存在すること等が必要であり、地方移転は大幅な機能低下をもたらすおそれが大きい。すなわち、①消費者庁が特命担当大臣の下で政府全体の消費者保護政策を推進する司令塔機能を果たすとともに消費者被害事故などの緊急事態に対処し所管する法制度について適切な企画・立案・実施を行う機能を果たすためには、各省庁及び国会と同一地域に存在することが必要である。また、➁国民生活センターが全国の消費生活相談情報の分析を踏まえて消費者保護関連法制度・政策の改善に向けた問題提起及び情報提供を行うためには、消費者庁及び内閣府消費者委員会と密接に連携して分析及び情報交換を行うべく同庁等と同一地域に存在することが必須であるし、同センターが全国にある消費生活相談窓口等支援の中核機関としての機能を果たすためにも、各省庁のほか神奈川県にある同センターのテスト・研修部門と近接した場所に存在することが重要である。さらに、➂内閣府消費者委員会が他省庁への建議等の監視機能を果たすためには、他省庁・関連行政機関・事業者との間で相互の意見交換及び協議を十分に行える環境が重要であるし、同委員会が消費者庁を含む関係省庁からの諮問に対する調査・審議を迅速かつ円滑に行うためには、関係各省庁と同一地域に存在することが必要である。加えて、➃消費者庁等の機能は、消費者問題について専門的知識と豊富な経験を有する多数の任期付き公務員、職員、専門委員等により支えられている。このような必要な専門家を地方で確保することは困難が予想され、専門家確保の面からも地方移転による弊害は否定できない。
現に、消費者庁が本年3月に実施したICTを活用したテレビ会議・テレワークによる業務の執行に関する検証について、坂東久美子消費者庁長官は、一定の評価をしつつも、他省庁との連携の困難性や緊急事態への対処困難性をはじめとする地方移転に伴う様々な問題点を指摘しているが、現時点において、これら問題点の改善策は示されていない。
なお、本年5月25日に成立した消費者契約法の一部を改正する法律に関し、参議院特別委員会において「消費者庁、消費者委員会及び国民生活センターの徳島県への移転については、本法等消費者庁所管の法令の運用に重大な影響を与えかねないため、慎重に検討すること。」との付帯決議がなされている。同決議のとおり消費者庁等の地方移転は、法令の運用の観点からも慎重に判断すべき事項である。
以上により、消費者庁・国民生活センター・内閣府消費者委員会の地方への移転は、消費者庁等が果たす機能を低下させ、消費者行政の推進を阻害しかねないので、当会は、消費者庁等を地方へ移転することに反対する。
2016(平成28)年6月14日
滋賀弁護士会 会長 野嶋直