2283 信州味噌栃木県弁護士会④

憲法記念日を迎えるにあたっての会長声明
本日、日本国憲法の施行から70回目の憲法記念日を迎えた。
 憲法は、前文に平和的生存権を定め、第9条に武力による威嚇・武力の行使の放棄、戦力の不保持及び交戦権の否認を規定し、恒久平和主義を明言している。
 日本は、このような憲法の平和主義のもとで、戦後70年以上の間、国際紛争における実力の行使をしたことはなく、平和国家としての道を歩み、国際的な信頼を得てきた。
 ところが、昨年3月29日に施行された、いわゆる安全保障関連法は、憲法改正手続きを経ることなく、歴代内閣が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認するものであって、憲法前文及び同第9条に定める恒久平和主義に反するものである。
 また、憲法に違反する法律を制定することは、憲法を最高法規として、公務員に憲法尊重擁護義務を課し、政府を憲法の制約の下におくことにより、個人の尊重と人権保障を図るという、立憲主義にも違反する。
 さらに、政府は、今回の安全保障関連法の改正後、南スーダンにおける自衛隊の任務について、駆け付け警護と宿営地の共同防衛という任務を追加した。
 先般、政府は南スーダンからの自衛隊の撤収を決定したが、今後もこのように、自衛隊員が戦闘に参加せざるを得ない状況に直面することは明らかであって、憲法において恒久平和主義を掲げる日本の活動として相応しいものとはいえない。
 当会は、基本的人権の擁護を使命とする弁護士により構成される弁護士会として、恒久平和主義や立憲主義といった憲法の基本原理を破壊する行為に対し、強く反対する。
 当会は、これまで、集団的自衛権行使の容認については、閣議決定がされる前から幾度となく、これに反対する会長声明を発出し、また総会決議も行った。
 今後も、政府の活動を注視し、断固たる決意の下、恒久平和主義や立憲主義といった憲法の基本原理を貫くための行動を惜しまない。
 70回目という節目の憲法記念日にあたり、先人たちの努力や願いに思いを致すとともに、恒久平和主義や立憲主義の意義を改めて確認し、これら基本的かつ重要な原理・理念を堅持すべく、引き続き力を尽くしていく所存であることをここに表明する。
2017年(平成29年)5月3日
栃木県弁護士会 会長 近藤 峰明

今市事件判決を受け、刑事訴訟法改正に反対する会長声明
 法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会の答申を受け、裁判員裁判対象事件及び検察官独自捜査事件(以下あわせて「対象事件」という。)について、身柄拘束を受けた被疑者に対する、検察官及び警察官の取り調べの全過程の録音・録画を義務化する刑事訴訟法改正法案(以下「改正法案」という。)が、昨年8月7日に衆議院を通過し、現在参議院法務委員会で審議中である。
 しかしながら、改正法案が導入する取り調べの全過程可視化は、わずか3パーセント程度の対象事件に限定されている点で、全く不十分である。また、対象事件であったとしても、全過程可視化には多くの例外規定が設けられているし、改正法案は参考人の取り調べについて、全過程可視化の義務化を導入していない。近時、それ以外にも次の問題が浮上している。
 参議院の審議に入る直前の4月8日、宇都宮地方裁判所において、旧今市市で発生した小学生殺害事件(以下「今市事件」という。)につき、殺人を全面的に争っていた被告人に対し、無期懲役判決が下された(以下「今市事件判決」という。)。今市事件は客観的証拠が乏しかったことから、被告人の自白の任意性、信用性が大きく争われたところ、有罪の決め手とされたのが、被告人の自白を録音録画した映像であった。今市事件は、商標法違反での逮捕勾留を経て起訴された後、100日以上後に、殺人罪で逮捕勾留、起訴という経過をたどった。そして、商標法違反での起訴直後から、殺人罪の取り調べは開始されたものの、取り調べの全過程の録音・録画が開始されたのは、殺人罪での逮捕後からであった。したがって、商標法違反による起訴から殺人罪の逮捕まで、長期間にわたり本件である殺人罪の取り調べが行われたにもかかわらず、その期間の取り調べの録音・録画は一部しか存在しない。ところが、今市事件判決は、全過程可視化がなされていない中での被告人の自白を録音・録画した映像により、自白の任意性を認め、有罪判決のよりどころとした。このように、今市事件判決は、対象事件ですら、全面的な取り調べの可視化が保証されていないことを露呈した。
 参議院法務委員会の4月14日の政府側答弁においても、別件起訴後の対象事件の取り調べや任意同行時における取り調べは、録音・録画義務の対象とはなっていない旨、明確な答弁がなされている。
 ところで、最高検察庁は昨年2月12日、依命通知を発し、取り調べの録音・録画媒体を実質証拠(供述調書の供述が任意になされたかを判断するための証拠にとどまらず、犯罪事実を認定するための証拠)として積極的に利用する方針を打ち出している。このような検察庁の方針に加え、部分録音・録画であるにもかかわらず、実質証拠として録音録画媒体を証拠採用するような実務の運用が定着すれば、裁判所が事実認定を誤る危険性を否定できない。
 もとより、全面録音・録画ではなく、部分録音・録画しか行われないのであれば、録音録画をされていない取り調べについての影響を事後的に検証することができず、自白の任意性についての判断を誤る危険性がある点は再三指摘をされてきた。
 以上、今般の改正法案の録音・録画の義務化は不十分であるうえ、さらなる冤罪を招く危険性を否定できないものである。そして、改正法案が目指している通信傍受制度の大幅拡大・拡充は、人権侵害や捜査機関による濫用の危険性をはらんでいるし、司法取引制度は、供述者が第三者を巻き込むことによる冤罪を招致しかねない法制度である。このように改正法案は、捜査機関の権限拡大ばかりが重視され、その弊害が大きいといえるから、当会としては賛同することはできない。直ちに廃案とすべきである。
2016年(平成28年)5月12日
栃木県弁護士会 会長 室 井 淳 男

司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
 司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)については,この間,日本弁護士連合会・各弁護士会に対して,多くの国会議員から賛同のメッセージが寄せられているが,先日,同賛同メッセージの総数が,衆参両院の合計議員数717名の過半数である359名を超えた。
 まずはメッセージをお寄せいただいた国会議員の皆様に対し感謝の意と敬意を表するものである。
 メッセージを寄せられた国会議員は,与野党を問わず広がりを見せており,司法修習生への経済的支援の必要性についての理解が得られつつあるものと考えられる。
 そもそも,司法制度は,社会に法の支配を行き渡らせ,市民の権利を実現するための社会的インフラであり,国はかかる公共的価値を実現する司法制度を担う法曹になる司法修習生を,公費をもって養成するべきである。このような理念のもとに,我が国では,終戦直後から司法修習生に対し給与が支払われてきた。しかし,2011年11月から,修習期間中に費用が必要な修習生に対しては,修習資金を貸与する制度(貸与制)に変更された。この修習資金の負債に加え,大学や法科大学院における奨学金の債務を負っている修習生も多く,その合計額が極めて多額に上る者も少なくない。法曹を目指す者は,年々減少の一途をたどっているが,こうした重い経済的負担が法曹志望者の激減の一因となっていることが指摘されているところである。
 こうした事態を重く受け止め,法曹に広く有為の人材を募り,法曹志望者が経済的理由によって法曹への道を断念する事態が生ずることのないよう,また,司法修習生が安心して修習に専念できる環境を整えるため,司法修習生に対する給付型の経済的支援(修習手当の創設)が早急に実施されるべきである。
 2015年6月30日,政府の法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において,「法務省は,最高裁判所等との連携・協力の下,司法修習の実態,司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況,司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ,司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」との一節が盛り込まれた。
 これは,司法修習生に対する経済的支援の実現に向けた大きな一歩と評価することができる。法務省,最高裁判所等の関係各機関は,有為の人材が安心して法曹を目指せるような希望の持てる制度とするという観点から,司法修習生に対する経済的支援の実現について,直ちに前向きかつ具体的な検討を開始すべきである。
 当会は,司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)に対し,国会議員の過半数が賛同のメッセージを寄せていること,及び,政府においても上記のような決定がなされたことを踏まえて,国会に対して,給付型の経済的支援(修習手当の創設)を内容とする裁判所法の改正を求めるものである。
2016年(平成28年)1月20日
栃木県弁護士会 会長 若狭昌稔

夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判所判決を受け民法における差別的規定の改正を求める会長声明
 2015年12月16日,最高裁判所大法廷は,女性のみに6か月の再婚禁止期間を定める民法第733条について,再婚禁止期間のうち100日を超過した部分は合理性を欠いた過剰な制約を課すものとして,憲法第14条第1項及び同第24条第2項に違反すると判示した。他方,同日,最高裁判所大法廷は,夫婦同氏の強制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではないこと,個人の尊厳と両性の本質的平等という憲法第24条の要請に照らして夫婦同氏の強制が合理性を欠くとは認められないことなどを理由として,夫婦同氏の強制を定める民法第750条は憲法第13条,同第14条,同第24条のいずれにも違反するものでないと判断した。
 最高裁判所の民法第733条に関する判断は,違憲とされるのは100日を超える部分に限定されている点はなお議論が必要ではあるものの,当会のこれまでの主張とも基本的には合致するものであり,妥当であるが,民法第750条に関する判断は,誤ったものであり,不当である。
 民法第750条が定める夫婦同氏の強制は,憲法第13条及び同第24条第2項が保障する個人の尊厳,同第24条第1項及び同第13条が保障する婚姻の自由,同第14条1項及び同第24条第2項が保障する平等権を侵害し,女性差別撤廃条約第16条第1項(b)が保障する「自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」及び同項(g)が保障する「夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)」にも反する。
 今回の最高裁大法廷判決においても,5名の裁判官(3名の女性裁判官全員を含む)は,民法第750条は憲法第24条に違反するとの意見を述べ,問題となっているのは夫婦同氏の合理性ではなく,それに例外が許されないことの合理性であると指摘した。また岡部喜代子裁判官の意見(櫻井龍子裁判官,鬼丸かおる裁判官及び山浦善樹裁判官が同調)では,96%を超える夫婦が夫の氏を称する婚姻をしている現実から,夫婦同氏の強制によって氏の有する個人識別機能に対する支障や自己喪失感などの負担がほぼ妻に生じていることを指摘し,その要因として,女性の社会的経済的な立場の弱さ,家族生活における立場の弱さ,種々の事実上の圧力などを挙げ,婚姻の際にいずれかの氏を選択する意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用していると述べ,夫婦同氏の強制が個人の尊厳の両性の本質的平等に立脚した制度とはいえないと説示している。
 法制審議会は,1996年に「民法の一部を改正する法律案要綱」を総会で決定し,男女とも婚姻適齢を満18歳とすること,女性の再婚禁止の短縮及び選択的夫婦別氏制度の導入を答申した。また,国連の自由権規約委員会は婚姻年齢に男女の差を設ける民法第731条及び女性のみに再婚禁止期間を定める民法第733条について,女性差別撤廃委員会はこれらの各規定に加えて夫婦同姓を強制する民法第750条について,日本政府に対し重ねて改正するよう勧告を行ってきた。法制審議会の答申から19年,女性差別撤廃条約の推准から30年が経過したにもかかわらず,国会は上記各規定を放置してきた。
 これまで当会は,2010年3月17日付「家族法の差別的規定改正の早期実現を求める会長声明」を表明するなどして,これらの規定の速やかな改正を求めてきたが,今回の最高裁判所判決を受け,国に対し,民法第733条を速やかに改正することを強く求めるとともに,あわせて法制審議会にて改正が答申され,国連の自由権規約員会及び女性差別撤廃委員会から重ねて勧告がなされている民法第750及び同法第731条(婚姻適齢)も速やかに改正することを重ねて求める。
2015年(平成27年)12月22日
栃木県弁護士会 会 長 若 狭 昌 稔

「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」における罰則の強化等に反対する意見書
第1 意見の趣旨
 当会は,以下のとおり,政府が2015年3月6日に提出した出入国管理及び難民認定法(以下,「入管法」という。)の一部を改正する法律案(以下,「本改正案」という。)に対し,反対する。
1 罰則の強化について
本改正案は,「偽りその他不正の手段により,上陸の許可等を受けて本邦に上陸し,又は第四章第二節の規定による許可を受けた者」等を,「3年以下の懲役もしくは禁錮若しくは300万円以下の罰金」に処する旨の罰則規定を新設するものである(法第70条1項)。このような罰則の強化に対しては,反対する。
2 在留資格取消事由の拡充について
本改正案は,所定の活動を継続して3か月以上行わないで在留している場合(現行法)に加え,所定の活動を行っておらず,かつ,「他の活動を行い又は行おうとして在留している」場合にも,在留資格取消を可能にするものである(法第22条の4第1項) 。このような在留資格取消事由の拡充に対しては,反対する。
第2 意見の理由
1 罰則の強化について(法第70条1項)
(1) 罰則強化の立法事実が存在しない
罰則強化の必要性について,政府は,2014年12月10日に閣議決定した『「世界一安全な日本」創造戦略』が,「不法滞在対策,偽装滞在対策等の推進」を掲げ,不法滞在者及び偽装滞在者の積極的な摘発を図り,在留資格を取り消すなど厳格に対応していくとともに,これらを助長する集団密航,旅券等の偽変造,偽装結婚等に係る各種犯罪等について,取締りを強化するとしていることを挙げる。
 しかし,不法残留者数は,1993年には29万人を超えていたが,現在では大幅に減少している。
 また,2013年末の中長期の外国人在留者は約169万人であるのに対し,上陸と在留関係手続での不正行為により在留資格を取り消された外国人の数は,2013年の1年間で200名弱にとどまる。
以上のとおりであり,罰則強化の必要性が存在しない。
(2) 濫用の危険性
 法務省入国管理局の説明によれば,在留資格等不正取得罪および営利目的在留資格等不正取得助長罪は,過失犯ではなく故意犯であるから,申請代理業務を行った弁護士等が不当に処罰されることはないと主張する。
 しかし,故意犯であっても,未必の故意まで含むのであり,過失との区別は困難である。
 また,警察による安易な立件により,申請が結果的に真実ではなかった場合にも、弁護士,行政書士等の有資格者が故意に荷担したと疑われるなど、業務遂行に深刻な影響・萎縮効果を及ぼすおそれがある。
 さらに,「偽りその他不正の手段により」という構成要件はあいまいであり,申請書に記載した事項の真実性が証明できなかった場合にも処罰の対象となる恐れがある。真実か否かの判断が判断者により異なる事態も想定される。そのため,濫用的な告発により,申請者本人の他,本人の親族,雇用主,留学先の職員,弁護士や行政書士にも捜査が及び,多数の関係者に損害が生じる恐れがある。
 特に,入国管理法に関しては,書類が外国語で作成されている,外国での過去の細かい履歴を内容とする書類があり関係者への連絡が困難等の問題もあり,調査が困難な場合が少なくない。そのため,安易な立件や強制捜査が行われる危険がある。
(3) 難民認定申請を委縮させる危険性
 難民として本邦への入国を希望する者は,まず観光や親族訪問などを目的として入国審査官に告げ,「短期滞在」等の在留資格で入国した上で,難民認定申請を行う場合が多い。
 本改正案によると,このような場合,「偽りその他不正の手段により」上陸許可を得たとして,刑罰が科されることになる恐れがある。
 本改正案によれば,難民に該当することの証明があれば刑が免除されることとされている。しかし,本邦に入国した難民認定申請者が,難民であることの証明に失敗した場合には,処罰の対象となる恐れがある。そのため,本改正案は,庇護を必要とする難民に対し,難民認定申請を躊躇させるという効果を生じるおそれがある。
2 在留資格取消事由の拡大について
本改正案は,所定の活動を継続して3か月以上行わないで在留している場合(現行法)に加え,所定の活動を行っておらず,かつ,「他の活動を行い又は行おうとして在留している」場合にも,在留資格取消を可能にするものである(法第22条の4第1項)。
 本改正案によれば,就労等の在留資格を有する者が,退職等により所定の活動を行わなくなった場合,新たな勤務先を探す余裕もなく,直ちに在留資格を取り消される恐れがある。また,「行おうとしている」という要件は不明確であり,入管当局の主観的な判断によって在留資格が取り消される恐れがある。このように,本改正案は,外国人の地位を著しく不安定にするものである。
 在留資格が予定する活動を行わないものに対しては,在留期間更新の際の審査や,現行規定に基づく在留資格取消により十分対応可能であり,在留資格取消事由の拡大の必要性はない。
3 結論
以上の理由により,当会は,本改正案に対して反対する。
以 上
2015年5月14日
栃木県弁護士会 会長 若狭昌稔

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2282 信州味噌栃木県弁護士会③

日本国憲法の恒久平和主義に反する法案に反対する総会決議
決議の趣旨
栃木県弁護士会は、集団的自衛権の行使を容認し自衛隊を海外に派遣し他国軍隊の武力行使を支援する活動等を認める法案に、強く反対する。
決議の理由
1 日本政府は、2014年7月1日、集団的自衛権の行使容認等を内容とする閣議決定を行なった。そして、2015年4月27日日本の集団的自衛権の行使を前提とする新たな日米防衛協力のための指針を合意し、同年5月14日安全保障法制や自衛隊の海外活動等に関する法制を大きく改変する法案を閣議決定して、翌15日国会に提出した。
2 前記法案は、従来日本国憲法において許されないとされてきた集団的自衛権の行使を容認するとともに、自衛隊を海外のあらゆる地域の戦闘現場付近まで派遣し、米軍及び他国軍隊に対し、弾薬・燃料等の軍事物資の提供や輸送、その他の役務の提供等の支援活動を行うことを可能としている。これは、外国で戦争をしている他国軍隊の武力行使に対する積極的協力を意味し、我が国が戦争や戦闘行為に巻き込まれる危険を生じさせるものである。
3 我が国は、第二次世界大戦でアジア・太平洋地域の人々に甚大な被害を与えるとともに、自らも原子力爆弾や空襲、沖縄の地上戦等で多くの被害者を生み、兵士として送り出した多くの国民の命を失わせたことについての真摯な反省から、日本国憲法の前文及び9条で徹底した恒久平和主義を基本原理とすることを誓った。そしてこの誓いを守ることにより平和国家として世界の信頼を得てきたのである。戦争は最大の人権侵害であり、日本国憲法のよって立つ恒久平和主義は断じて変えてはならないと考える。
4 ところが、前記法案は、この日本国憲法前文及び9条の恒久平和主義に真っ向から反するものであり、戦後70年培ってきた国際的信頼を無にしてしまうものである。しかも、憲法の根本原理を改変するものであるにもかかわらず、主権者たる国民に十分な説明もなく、国民的議論も経ず、閣議決定や日米防衛協力のための指針見直しの合意を先行するということは、国民主権の基本原理に反するものであり許容できない。
5 国民の基本的人権を守るため憲法が制定され、国家権力は憲法に従わなければならないとする立憲主義を基本原理とする我が国において、前記法案は、憲法改正の手続きを経ないまま、法律で憲法を実質的に改変しようとするものであって、立憲主義に反し、到底許されるものではない。
6 当会はこれまで、憲法改正の発議要件を緩和して憲法改正を容易にしようとする動きに対し2013年5月25日付け総会決議により反対するとともに、内閣法制局長官交替人事等により集団的自衛権行使を容認しようとする政府の動きに対して2014年3月27日付け会長声明により反対の立場を表明し、さらに2014年7月7日には前記集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に対し抗議する旨の会長声明を発したが、改めて日本国憲法の恒久平和主義に反する法案に反対する立場を表明するものである。
2015年(平成27年)5月23日
 栃木県弁護士会定時総会

集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明
 平成26年7月1日、政府は、徒前の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定を行った。
 しかし、集団的自衛権の行使は、他国間で武力攻撃が発生した場合に、日本に対する武力攻撃がないにもかかわらず日本が一方に加担し、他国の防衛のため自衛隊の派遣と武力行使を容認するものであり、平和主義を定める日本国憲法の基本原則から到底許されるものではない。平和憲法は国際社会から高く評価され、私たち日本国民の誇りである。
 また、各種の世論調査でも、集団的自衛権の行使容認に反対の意見が多くを占めているうえ、いまだ国民の間で集団的自衛権についての十分な議論が尽くされているとは到底言えない状況である。今回の閣議決定は、主権者たる国民の意思を反映していないなか、国民への十分な説明さえ行わずいっときの政府が拙速に決定したものであり、立憲主義・民主主義に反するものである。
 戦争は、人が人の生命を奪うものであり、人権侵害の最たるものである。今回の閣議決定は、日本が最大の人権侵害である戦争を行う道を開くものであるし、国民の平和的生存権を奪うことにも繋がり到底許されない。
 当会は、2014(平成26)年3月27日、「集団的自衛権行使の容認に反対する会長声明」を公表したが、今回の明らかな憲法違反閣議決定に対しても、断固抗議し、政府に対して即時撤回を求めるとともに、今後予想される本閣議決定を前提とする違憲の立法等に対して、これを阻止すべく取り組むことを表明する。
2014年(平成26年)7月7日
栃木県弁護士会  会 長 田 中  真

集団的自衛権行使の容認に反対する会長声明
 集団的自衛権とは、政府によれば、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」のことをいう。ここでいう「武力攻撃」には、単に当該国の領土に対する攻撃のみならず、当該国の領域外にある軍隊に対する攻撃も含まれる余地があるため、その範囲は広範囲にわたる余地がある。
 日本国憲法は、第9条で戦争放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を規定し、さらに前文では平和的生存権を確認し、第13条では幸福追求権を定めている。かかる日本国憲法のもと、自衛権を行使するには、第1に我が国に対する急迫不正の侵害があること、第2にこれを排除するために他に適当な手段がないこと、第3に必要最小限度の実力行使にとどめることを要件とし、集団的自衛権の行使は第1の要件を欠き認められないとの立場を政府は一貫して取ってきた。
 しかし、現在の政府は、2013年8月、山本庸幸内閣法制局長官を更迭し、集団的自衛権の行使容認に前向きとされる小松一郎駐仏大使を後任の長官に任命した。そして、安倍首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」から集団的自衛権の行使を限定的に容認する報告書が提出される予定である。また、政府は、集団的自衛権の行使を前提とした国家安全保障基本法を成立させようとする動きも見せている。このように、政府は、集団的自衛権に対するこれまでの見解を変更し、その行使を容認し、実質的に憲法を改正する動きを見せている。
 戦争は人権侵害・環境破壊の最たるものである。これまで集団的自衛権を根拠としてなされた武力行使のほとんどが濫用であったとの指摘もある。かかる集団的自衛権の行使を容認することは、我が国が最大の人権侵害・環境破壊である戦争を行う道を開くものである。したがって、我が国において、集団的自衛権の行使を容認することは、平和主義、基本的人権の尊重という憲法の基本原則から到底許されるものではない。
 加えて、集団的自衛権の行使を容認しようとする近時の政府の動きは、解釈若しくは憲法の下位法である法律によって実質的に憲法改正を行うものである。かかる動きは、法の支配、立憲主義を無視する、看過できない暴挙であるといわざるをえない。
 よって、当会は、日本国憲法を法律や解釈によって実質的に改正しようとする政府の動きに対し強く反対し、憲法の基本原則に則った国政が運営されることを強く求めるものである。
2014年(平成26年)3月27日
栃木県弁護士会
会 長 橋 本 賢二郎

特定秘密の保護に関する法律の廃止を求める決議
決議の趣旨
当会は、特定秘密の保護に関する法律(平成25年12月13日法律第108号)を、直ちに廃止するよう強く求める。
決議の理由
第1 時代錯誤の誤った立法であること
2013年(平成25年)12月6日、参議院の議決を経て「特定秘密の保護に関する法律」(平成25年12月13日法律第108号、以下「特定秘密保護法」という。)が成立した。
 国民主権、民主主義の下では、主権者である国民が国政について意思を決定するに当たり、国政に関する情報を広く十分に与えられる必要がある。しかし、国の規模での情報公開は、地方自治体に後れ、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(以下「情報公開法」という。)は、成立したのが1999年(平成11年)5月で、施行されたのが2001年(平成13年)4月であり、山形県金山町が1982年(昭和57年)に我が国で初めての情報公開条例を制定してから約20年を経てからのことであった。しかも、情報公開法の下でも、国の安全等に関する情報(同法第5条第3号)や公共の安全に関する情報(同条第4号)などは不開示事由とされているほか、行政文書の不存在(「開示請求に係る行政文書を保有していないとき」)の場合も開示しない旨の決定がされることになっている(同法第9条第2項)。しかしながら、行政文書の不存在は体系的な公文書管理の不備により招来された結果であることもあり、国の安全等に関する情報や公共の安全に関する情報等も、これを開示しないことが国民の知る権利に優越する利益となるのか、不開示のままでは検証しようがない。情報公開法の運用の実際も、国民の知る権利を充たし政府の有するその諸活動を国民に説明する責務(説明責任、情報公開法第1条)を果たしているとはいい難い状況である。
 しかしながら、上述のように、望まれるのは情報公開の一層の推進・充実、不開示情報についても一定期間経過後はこれを開示するというルール作りであり、秘匿し得る情報の拡大ではない。
 したがって、今なすべきなのは、情報公開法の不備を整えることであって、特定秘密保護法は、情報公開に向けた我が国のこれまでの法制度の流れに逆行するものである。
第2 特定秘密保護法の内容的な問題点
1 「特定秘密」の範囲が広範に過ぎ、不明確であること
特定秘密保護法が「特定秘密」の範囲とする①防衛、②外交、③特定有害活動の防止及び④テロリズムの防止の4分野のうち防衛の分野などは、「特定秘密」として指定し得る事項が自衛隊法別表第4と同様で、防衛省の所掌事務をすべて網羅するように挙示され、列挙による限定はないに等しい。他の分野でも、「特定秘密」概念は広範に過ぎる。
 これでは、行政機関による恣意的運用を防ぐことができず、特に秘匿することが必要でない情報まで主権者たる国民に知らされない結果となり、国民の知る権利を侵害する危険が大きい。
2 適性評価がプライバシーを侵害するおそれが強いこと
 特定秘密保護法は、特定秘密取扱い者の適性評価を行うものとしている。この適性評価は、調査事項が広範囲にわたっている上、精神疾患に関する事項や信用状態その他の経済的な状況に関する事項など機微にわたる個人情報まで含まれていて、その調査によりプライバシーが侵害されるおそれが強い。また、調査事項のうち、「我が国及び国民の安全を著しく害し、又は害するおそれのあるもの」(特定有害活動)という文言は抽象的であり、その抽象性ゆえに行政機関の長又は警察本部長の恣意的判断によって、個人の政治活動や組合活動、更には思想・信条にまで踏み込んだ調査がなされる危険性も否定できない。
 適性評価によって侵害されるプライバシーの権利は多数決によっても侵し得ない個人の尊厳にかかわる権利であり、これを侵害するおそれの強い特定秘密保護法は違憲の疑いが強いと言わざるを得ない。
3 罰則による人権の制約が過度に重いものであること
(1)特定秘密の取得行為の処罰
 特定秘密保護法が処罰の対象とする「管理を害する行為」の内容は、欺く行為や暴行などの例示によってもなお不明確である。これは、罪刑法定主義に反する。
 また、このような不明確な概念で取得行為を処罰することは、報道機関の取材活動を萎縮させ、ひいては国民の知る権利を侵害することになる。
(2)未遂、過失の処罰
 特定秘密保護法は、特定秘密の漏えいと取得の双方について未遂を処罰し、漏えいは過失による場合も処罰するものとする。しかし、特定秘密概念の過度の広範性・不明確性は、何が実行行為に当たるか、どの情報の漏えいを避けるべき注意義務を課されるか、明示し得ない。未遂や過失による場合も処罰することも、処罰範囲の外延を不明確にし、罪刑法定主義に反する。
(3)共謀、教唆又は煽動の処罰
 特定秘密保護法は、共謀、教唆又は煽動をも処罰するものとする。共謀の処罰は行為責任主義に反し、何らの実害も生じていない独立教唆を処罰することは甚だ疑問である。煽動については、目的要件を付加し方法も明示して限定している破壊活動防止法第4条と比べても、特定秘密保護法は限定のない「煽動」をそのまま処罰の対象とするもので、国民の表現活動を著しく制約する。
4 国会の最高機関性を損なうこと
 特定秘密保護法では、国会にも特定秘密が提供され得ることにはなっているが、①秘密会であること、②知る者の範囲を制限すること、③目的外に利用されないようにすること、④政令で定める措置を講じること、⑤提供元において「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めること」という厳しい条件が付されており、しかも⑤は最終的には行政機関の長の裁量判断に係ることになっている。これは、国会が行政をコントロールする議院内閣制の仕組みや国会の最高機関性(憲法第41条)を否定するに等しいものである。
 国会の最高機関性は法律によっては侵し得ない憲法上の原理であり、これを損なう特定秘密保護法は違憲の疑いが強いと言わざるを得ない。
5 付可条項では不十分であること
 特定秘密保護法には新たに「国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。」という条項が付加されたが、これは抽象的な訓示規定にすぎず、如上の問題点を払拭し得るものではない。
6 国際社会のスタンダードを蔑ろにすること
 また、特定秘密保護法は、国際連合、人及び人民の権利に関するアフリカ委員会、米州機構等世界70か国以上の専門家により2013年(平成25年)6月12日に南アフリカ共和国のツワネで公表され、国家機密の必要性を認めながらも国がもつ情報の公開原則とのバランスに配慮すべきだとする「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(ツワネ原則)との整合性についても全く検討されておらず、国際社会のスタンダードを蔑ろにするものであって、我が国に対する国際社会の信頼を大きく損なうものである。
第3 審議過程の問題点
 特定秘密保護法は、上述のような重要な問題点を含んでいるにもかかわらず、審議に必要な時間を充てることをせず、むしろ、会期のみに意を用いて審議期間を定めるという、審議内容とは無関係の都合で決められた本末転倒の審議日程において、衆参両院とも強行採決により可決され成立したものである。討論と説得という民主主義の過程とはおよそかけ離れた手続きにおいて成立した法律であって、我が国の憲政史上に禍根を残す欠陥法であるとの誹りを免れない。
第4 結論
 以上のように、特定秘密保護法の成立は、内容においても手続きにおいても国民主権・民主主義の理念を踏みにじるものである。
 当会は、国の安全、外交、公共の安全及び秩序の維持の分野を対象として広く秘密を設け、その漏えいに対する重罰化を図る法律の立案作業が進行していることが明らかになってきた状況下において、2012年(平成24年)9月26日にこれに反対する会長声明を発表し、その立案が「特定秘密の保護に関する法律案」として具体化した後は2013年(平成25年)11月28日にこれに反対する会長声明を発表してきた。ところが、衆参両院で相次いで強行採決がなされ、特定秘密保護法は成立した。そこで、2013年(平成25年)12月12日、特定秘密保護法の成立に抗議する会長声明も発した。
 よって、当会は、改めて特定秘密保護法の廃止を強く求めるものである。
以上のとおり、決議する。
2014年(平成26年)2月22日
栃木県弁護士会総会

特定秘密保護法の成立に抗議する会長声明
 本年12月6日、参議院において、特定秘密保護法案が可決され、同法が成立した。
 当会は、これまでに、秘密保全法制定に反対する会長声明、法案の概要に対する意見書、法案に反対する会長声明を表明し、政府による特定秘密保護法案制定の動きに反対し廃案を求める意見表明をしてきた。同様の意見表明は、日本弁護士連合会や全国各地の弁護士会、さらには、マスコミ各社、出版団体、消費者団体、映画・演劇団体や科学者団体など、国民各層からもあいついで表明され、法案が国民の知る権利を侵害し、憲法の定める国民主権を害する恐れが極めて大きいことに対する重大な懸念が示されていた。
 にもかかわらず、政府は、このような国民各層が示していた懸念の声に全く耳を傾けることなく、国会の会期が残り少ないことを理由に極めて拙速に審議を終了し、衆議院に引き続いて参議院における採決を強行したものであり、我が国の憲政史上に重大な禍根を残したと言うべきである。
 特定秘密保護法は、既に何度も指摘するとおり、秘密の範囲が広範かつあいまいであること、適性評価が個人のプライバシーを侵害するものであること、厳罰をもって禁圧する不当なものであること、国会及び裁判所によるチェックができないこと、国際的なスタンダードを無視するものであること、など、法律としての欠陥があまりにも大きいと言わざるを得ず、日本国憲法の定める国民主権原理を損なうものである。
 したがって、当会は、特定秘密保護法の成立に断固として抗議するものであり、改めて法律の廃止を求めるものである。
2013年(平成25年)12月12日
栃木県弁護士会 会 長  橋 本 賢二郎

きりがないです。

2281 どんたく岐阜弁護士会

どんたく岐阜弁護士会
平成15年3月28日教育基本法「改正」に反対する声明
ttp://www.gifuben/org/oshirase/seimei/seimei030328.html
中央教育審議会(中教審)は、本年3月20日、教育基本法の「改正」について文部科学大臣に「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画のあり方について」と題する答申(最終答申)を行った。
 教育基本法は、現憲法と同じ1947年に施行され、憲法の理想の実現を「教育の力にまつ」という理念に基づき、憲法に照らして教育がなすべきことと行ってはならないことを定めたもので、準憲法的な性格を持つものである。また、国際人権規約・子どもの権利条約(児童の権利条約)など、時代の進展や国際的な人権意識の向上にも十分対応できる法律である。従って、その改革には、その必要性を含め、十分かつ慎重な対応が必要である。
 ところで中教審は、現在の教育現場に「いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊」などさまざまな問題を解決するために教育基本法の見直しをするとした。しかしながら、最終答申は、「人格の完成を目指し、心身ともに健康な国民の育成を期して行われるものであるという現行法の基本理念を引き続き規定することが適当」である、つまり教育の「危機的状況」は教育基本法に原因があるのではないとしており、改正の理由は消滅したと言える。ところが最終答申は、現行法の基本理念に加えて「社会の形成に主体的に参画する『公共』の精神、道徳心、自立心の涵養」や「日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心の涵養」などを、新たな教育の基本理念として規定することが必要であるとしている。しかしながら、これらは個人の内心の問題であり、しかも意味内容もあいまいである。これらの理念が教育基本法に規定されれば、それが強制されることとなり、憲法で保障された思想・良心の自由を侵害するおそれがある。現に、国旗・国歌法の制定以後、学校現場や地域社会で「日の丸・君が代」が事実上強制されている現状がある。
 また、最終答申は、男女共学に関する教育基本法第5条は削除するのが適当としている。しかし、学校教育の現状は、固定的性別役割分業意識や職業での差別分離を生じさせているなど、真の男女平等教育実現の観点からは数多くの問題があり、男女共学はより一層推進されるべきであって、削除するのは問題がある。
 さらに、最終答申は、教育振興基本計画の策定の根拠を教育基本法に設けることとしている。しかし、教育振興基本計画には学校教育・家庭教育・生涯教育など市民生活全般にわたって教育の在り方や内容についての施策が盛り込まれるのであり、教育内容に対する積極的な国家介入を可能にする道が開かれることになる。
 現在の教育における問題は、教育基本法にあるのではなく、むしろそれに反する画一的な教育やエリート養成教育等にあるのであり。教育基本法の掲げる理念に近づける努力が引き続き必要なのである。今、教育基本法を「改正」する必要はないものといわなければならない。
 当会は、こうした意味で、この最終答申には重大な問題があるし、教育基本法の理念を後退させる「改正」には反対であることを表明する。
2003年(平成15年)3月28日  
岐阜県弁護士会 会長 河合良房
 

平成14年12月7日心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療および観察等に関する法律案に反対する声明
ttp://www.gifuben.org/oshirase/seimei/seimei021207-1.html
政府は、本年3月15日国会に提出したものの継続審議となった「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療および観察等に関する法律案」(以下、政府案という)を、12月6日衆議院法務委員会において修正のうえ強行可決させ、成立させようとしている。
この政府案の骨子は、殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ及び傷害の行為に当たる行為(対象行為)を行い、心神喪失または心神耗弱であることを理由に、不起訴処分を受けたり、無罪判決あるいは執行猶予付き有罪判決を受けた者について、継続的な医療を行わなくても再び対象行為を行う恐れが明らかにないと認められる場合を除き、検察官は原則として裁判所に対し審判を求めなければならず、裁判所は、裁判官1名と精神科医師1名との合議体で、「医療を行わなければ心神喪失又は心神耗弱の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認める場合」には、入院ないし通院決定を行うというものである。
そして、修正案は、この「再び対象行為を行うおそれ」を削除して、「同様の行為を行うことなく社会に復帰することを促進するため、医療を受けさせる必要がある場合」としたのである。
しかし、この政府案及び修正案には多くの問題点が存在している。
 1.政府案の「再び対象行為を行うおそれ」とは再犯のおそれにほかならず、修正案の「同様の行為を行うことなく社会に復帰することを促進するため、医療を受けさせる必要がある場合」も結局は再犯の予測であって、これを予測することは医学的にも困難なものとされている。従って、その信頼性の極めて乏しい、不確実な再犯予測を前提に、入院期間の更新により無期限に及ぶことのあるような身柄拘束を可能とすることは重大な人権侵害となるおそれがある。また、その判断に当たっては、精神障害者の治療よりも治安のための隔離が優先され、予防的な拘禁になるおそれもある。
2.政府案・修正案によれば、事実の取調、責任能力の有無の認定手続は、非公開であり、職権主義的であり、弁護士である付添人や本人に証拠取調請求権を認めていないし、遡及処罰の禁止や二重処罰の禁止を定めていない。重大な人権制限を課する手続であるにもかかわらず、憲法31条以下の適正手続が保障されていないのである。
3.政府案・修正案は、退院した対象者を保護観察所の監督に服させて通院を確保しようとしている。しかし、保護観察所は、元来刑事政策を担当する機関であり、精神医療の専門機関ではない。同所の監督によって、精神医療の現場に対し、刑事政策的影響が強まる危惧を払拭し得ないのである。
4.政府案・修正案は、重大な他害行為を行った精神障害者を入院・通院において他の精神障害者から分離して処遇しようとしている。しかし、精神治療という観点からは、重大な他害行為を行った精神障害者と他の精神障害者の間で違いはないと言われているのである。
5.そもそも、精神障害者による犯罪行為に当たる事件は、一般市民のそれと比べて、発生率、発生件数ともに高くはなく、再犯率に至っては極端に低いと言われている。時として起こる不幸な事件は精神医療の提供がなく、もしくは医療の中断という事態の中で生じているのである。従って、緊急不可欠な課題は、これら不幸な事件を防止するための精神医療の改善・充実であり、地域における精神障害者に対する偏見や差別をなくし、人権に配慮した地域精神医療体制を確立することである。
 ところが、政府案・修正案は、精神医療の改善・充実策を全く提示しないまま、「犯罪」をおかした精神障害者を隔離し、上記のような人権侵害のおそれの強い特別な処遇を定めようとするものである。それどころか、「精神障害者は危険である」という差別・偏見を助長するものとなりかねない。
 よって、当弁護士会は、政府案・修正案に反対するとともに、早急に精神医療の改善・充実が図られることを求めるものである。
2002年(平成14年)12月7日  
岐阜県弁護士会 会長 河合良房

 

平成15年4月12日個人情報保護法案に対する会長声明
ttp://www.gifuben.org/oshirase/seimei/seimei030412.html
 民間部門を対象とする個人情報保護法案と行政機関を対象とする行政機関個人情報保護法案の審議が、4月8日に衆議院ではじまった。前者については主にメディアの取材・表現の自由・国民の知る権利を侵害するものとして、後者については情報の収集制限、不正行為者に対する罰則規定がないなど民間に比べ行政機関に甘い法案であるとして、市民、メディア、弁護士会からの強い批判を受けた。岐阜県弁護士会では、前者については2002年(平成14年)6月7日に、後者については2002年(平成14年)5月30日に、両法案の根本的な見直しを求める会長声明をおこなった。その結果、昨年秋の臨時国会で廃案となった経緯がある。
 政府はこれらの批判を受け、個人情報保護法案についてはメディアに対する一定程度の配慮をし、行政機関個人情報保護法案については個人情報の不正な提供行為に罰則規定を設けるなどの修正をしたが、いずれも以下に述べる通り、個人情報の保護について看過できない重大な問題のある法案といわざるを得ない。
1.個人情報保護法案について
 法案は、依然として、すべての民間部門を一律に規制するという基本構造をとっているが、民間部門の中には、一方でメディア、弁護士、NGOその他の団体ないし個人があり、他方で個人信用情報を悪用する名簿業者などがある。これらを一律に規制する法案の構造は、前者については規制が厳しすぎその本来的な活動を抑制してしまうことになり、後者については規制としての実効性がなく、名簿業者等を野放しにする結果となる。
 法案は、メディアの取材・表現の自由に対する配慮をしたとするが、「出版」が適用除外から外されており、また「報道」の定義の解釈につき、主務大臣が「客観的事実の報道ではない」と判断をすれば政府が取材・報道に事前に介入できる余地があるなど、以前としてメディアの取材・表現の自由に対する侵害のおそれがある。
 インターネットその他の通信手段の急激な発展にともない、メディアのみならず、弁護士・弁護士会、NGO、個人などが情報を収集し、意見表明をする比重が高まっている現状を前提にすれば、個人情報保護法が、弁護士・弁護士会、NGO、個人などの情報収集、意見表明の妨げとなることは許されない。法案は、すべての民間部門を主務大臣の監督下においているので、これらの団体や個人の表現の自由を侵害する危険性がある。
 そこで当面は、個人信用情報、医療情報、教育情報など、国民だれもが強い不安を感じている個人情報の侵害の危険性の高い分野についてだけ、その特性を考慮した上で、必要な限りで罰則を伴った分野別個別法の立法がなされるべきである。
2.行政機関個人情報保護法案について
 ほとんどの自治体の個人情報保護条例では、思想、信条、病歴、犯罪歴などの他人に知られたくないセンシティブ情報の収集制限を規制しているが、法案はこれを規制していない。
 法案は、「相当な理由」があれば、個人情報を目的外に利用したり、他の行政機関に提供することを認めているが、その判断は第三者機関ではなく当該行政機関が行うため、利用提供制限の歯止めにはならないと考えられる。
 更に昨年8月に稼働を開始した住民基本台帳ネットワークシステムでは、国民全員に対し11桁の番号が付番されたが、法案では、この番号をマスターキーとして個人情報が一元管理されることになる。これでは個人情報は保護されず、本年8月からの住基ICカードの交付など住民基本台帳ネットワークシステムの本格稼働により、国民総背番号制を導く危険性が高い。
 そこで今般の法案についても、以上の点の抜本的修正が為されない限り、岐阜県弁護士会は法案の成立に反対する。
2003年(平成15年)4月12日 
岐阜県弁護士会 会長 安藤友人

 

平成14年5月30日「有事法制」法案に反対する会長声明
ttp://www.gifuben.org/oshirase/seimei/seimei020530-4.html
4月17日、政府は衆議院に「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」(「武力攻撃事態」法案という)、「安全保障会議設置法の一部を改正する法律案」(安全保障会議設置法「改正」法案という)、「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」(自衛隊法等「改正」法案という)を上程した(以上を有事法制3法案という)。
 しかし、この有事法制3法案には、憲法原理に照らし、少なくとも以下に指摘する重大な問題点と危険性が存在する。
1.「武力攻撃のおそれのある事態」や「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」までが「武力攻撃事態」とされており、その範囲・概念は極めて曖昧である。政府の判断によりどのようにも「武力攻撃事態」を認定することが可能であり、しかも国会の承認は「対処措置」実行後になされることから、政府の認定を追認するものとなるおそれが大きい。
2.いったん内閣により「武力攻撃事態」の認定が行なわれると、陣地構築、軍事物資の確保等のための私有財産の収用・使用、軍隊・軍事物質(資)の輸送、戦傷者治療等のための市民に対する役務の強制、交通、通信、経済等の市民生活・経済活動の規制などを行なうことにより、市民の基本的人権を大きく制限することとなるが、これは憲法規範の中核をなす基本的人権保障原理を変質させる重大な危険性を有する。
3.憲法上の疑義がある自衛隊が、周辺事態法と連動し、且つ曖昧な概念の下で拡張された「武力攻撃事態」において行動することになれば、憲法の定める平和主義の原理、憲法9条(戦争放棄、軍備及び交戦権の否認)に抵触するのではないかとの重大な疑念は一層大きくなる。
4.武力の行使、情報・経済の統制等を含む幅広い事態対処権限を内閣総理大臣に集中し、その事務を閣内の「対策本部」に所掌させることは、行政権は合議代である内閣に属するとの憲法規定と抵触し、また内閣総理大臣の地方公共団体に対する指示権及び地方公共団体が行なう措置を直接実施する権限は地方自治の本旨に反し、憲法が定める民主的な統治構造を大きく変容させ、民主政治の基盤を侵食する危険性を有する。
5.日本放送協会(NHK)などの放送機関を指定公共機関とし、これらに対し、「必要な措置を実施する責務」を負わせ、内閣総理大臣が、対処措置を実施すべきことを指示し、実施されない時は自ら直接対処措置を実施することができるとすることにより、政府が放送メディアを統制下に置き、市民の知る権利、メディアの権力監視機能、報道の自由を侵害し、国民主権と民主主義の基盤を崩壊させる危険を有する。
 以上のように、有事法制3法案は、武力又は軍事力の行使を許容するための強大な権限を内閣総理大臣に付与する授権法であり、基本的人権侵害のおそれ、平和原則への抵触のおそれだけでなく、憲法が予定する民主的な統治構造を変容させ、地方公共団体、メディアを含む指定公共機関の責務と内閣総理大臣の指示権、直接実施権及び国民の協力・努力義務を定めることにより、国家総動員体制への道を切りひらく重大な危険性を有するものである。
 従って、当弁護士会は、法案の持つ重大性、危険性に鑑み、法案の問題点を国民に明らかにすると共に、上記理由に基づき、有事法制3法案に反対し、同法案を廃案にするように求めるものである。
2002年(平成14年)5月30日  
岐阜県弁護士会 会長 河合良房

 

平成14年5月30日住民基本台帳ネットワークシステムの稼働の延期を求める声明
ttp://www.gifuben.org/oshirase/seimei/seimei020530-3.html
1.1999年(平成11年)8月、住民基本台帳法が改正され、新しく住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)
が全国3300の市町村(特別区を含む。以下同様)で採用されることになり、今年8月から施行されることになった。
 住基ネットは、市町村に住民登録している国民全員に11桁の住民票コードをつけ、行政事務手続において本人確認手段として機能させようとするものである。コンピューターによる情報管理が進んでいる行政実務において、住民票コードは本人確認を必要とする行政事務の効率化に
著しく寄与するものと期待されている。電子政府化を進めている中央省庁の期待は特に大きい。
2.しかし、他方、この制度には人権、セキュリティ、コスト、地方分権などに関して多くの疑問がある。住基ネットによるとあらゆる行政分野で特定の個人は特定の番号で情報が管理されることになるので、行政機関にとって特定の個人の情報を集中することが従来に比べて技術的に
極めて容易になり、法律上も行政個人情報保護法案が行政機関同士での個人情報の相互提供を広く認めていることから、行政機関が個人を総合的に監視することが可能になってしまう。番号を変更しても従来の番号と照合する仕組みになっているので、過去の情報を生涯管理され続けることになる。のみならず、コンピューター管理されることで次世代、次々世代までもずっと個人情報が管理され続けることになる。このような個人情報の管理は人間の尊厳(憲法13条)を侵すものである。
 住基ネットのセキュリティが極めて脆弱であることは、住基ネットの実態を知るコンピューター専門家が異口同音に指摘するところである。
すなわち、コンピューターは情報の流通においては極めて便利であるが、情報管理については現時点ではまだ極めて不十分なレベルにあり、日本は世界的レベルからみるとかなり低いところにあるから、容易にハッカーに侵入される。3300の市町村が高度に同一レベルのコンピューター管理を形成し維持し続けることは不可能であり、日常的にハッカーに侵入されることになり、ときには悪質な情報の書換えなどで大事件が起こるだろう。
 これらに的確に対処するためには常に新たなセキュリティにコストをかけなければならなくなるが、現在の国及びすべての市町村にとって
際限のないセキュリティに費用をかけ続けるだけの財政的な余力があるのかという点も疑問である。
 日弁連が昨年11月から12月にかけて実施した全国市町村アンケートの結果によれば、プライバシー侵害に関する危惧を抱いている市町村が少なくなかった。セキュリティを高めるための経費が高額になることに不安を抱いている市町村も多かった。各市町村が独自の判断で住基ネットに入るか否かを選択しているのであれば、問題が起こったときにその自治体の責任において対応するということでよいが、住民基本台帳
 法は市町村の独自の判断による加入非加入の自由を認めていない。これは地方自治の本旨(憲法93条)を侵害する可能性がある。
3.コンピューターネットワークシステムは世界中が強い関心を抱く魅力的な仕組みではある。しかしバラ色の側面だけに目を奪われると取り返しのつかない重大な問題を引き起こしかねない。だからこそ他国では技術的に可能であっても未だ日本の住基ネットと同じ制度を採用していないのである。日本がここで拙速に「電子政府」の夢に向かって爆走すべき理由はない。人権、セキュリティ、コスト、地方自治などについて多分野の専門家が継続的多面的に検討しながら、堅実な電子政府を構築して行くべきである。
 今年8月からの住基ネットの施行を延期するとともに、新たな電子政府、電子自治体の構想づくりとその構想に基づく仕組みが検討されるべきである。
2002年(平成14年)5月30日  
岐阜県弁護士会 会長 河合良房