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2275 ら特集10仙台弁護士会⑤25

仙台弁護士会
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平成17年12月14日 宮城県国民保護計画(原案)作成に対する意見書
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はじめに
当会は、平成14年4月、いわゆる有事法制3法案が国会に提出された後、同法案が憲法の根本規範である人権保障規定や民主的な統治構造を大きく変質させる危険があること等を指摘し、その廃案を求めるとともに、会内に有事法制問題対策本部を設置し必要な調査研究活動や市民集会の開催などを系統的に行ってきた。また、当会は昨年3月に国会に上程された上記有事法制関連7法案に対しても、「国民保護法案」は、国民保護措置の実効性に問題があるとともに平時から国民を統制する危険が高く、また、国民の戦時ムードをかりたて紛争の平和的解決の可能性を自ら塞いでしまうおそれがあること、「米軍支援法案」等は憲法が禁止する集団的自衛権の行使や交戦権の行使をも可能とする措置を内容とし、市民の生活や権利に対する重大な影響があること等を指摘し、これらの法案を廃案にするよう強く求めてきた。それは、特定の思想信条や政治的立場からではなく、法律家としての良心に基づき、基本的人権を擁護する立場からである。昨年、国民保護法が成立し、国が作成した「国民の保護に関する基本指針」及び「都道府県国民保護モデル計画」に基づいて、今年度中に都道府県において、国民保護計画の作成が行われる予定となっている。宮城県においても、既に国民保護協議会が開催され、宮城県国民保護計画(原案)(以下、「宮城県原案」という)が策定され、これに対する意見が募集されている。国民保護法に対する評価は別として、現実に法に則り国民保護計画が具体的に策定される以上は、それが万が一にも基本的人権を侵すことのないよう、充分な配慮の上で策定されなければならないことは当然である。本意見書は、現在、宮城県原案の策定に当たって、人権保障上留意すべき点を中心として、既に公表されており今回の策定に当たっても重要な参考とされるであろう「都道府県国民保護モデル計画」(以下「モデル計画」という)との関係も含めて、できる限り具体的に指摘し、意見を述べるものである。
第1  本意見書の要旨
 本意見書では、宮城県原案を検討対象としつつ、国民保護計画に関し、その策定時期、人権保障上特に規定すべき内容及び留意点、策定に際しての意見聴取等について指摘し、意見を述べるが、その要旨は次のとおりである。
 1  第2「各地方公共団体が独自に基本的人権を尊重した国民保護計画を作成することが可能であること」では、
(1) 2005(平成17)年度中に国民保護計画を完成するという政府の方針に固執するのではなく、また、モデル計画を単に引き写しただけの国民保護計画を作成するのではなく、各地方公共団体独自に広く県民や国民保護計画に関係する者の意見を聞いて、軍事作戦優先ではなく、住民の生命身体財産の安全を優先し、かつ住民の基本的人権を侵害するおそれのない国民保護計画を作成すべきであること、国民保護協議会委員に弁護士委員を加えるべきこと、
(2) 各地方公共団体独自に、武力攻撃事態に至らないためにいかなる役割を果たせるかを積極的に検討する必要があることを述べている。
2  第3「基本的人権及び平和主義を尊重した国民保護計画の作成」では、
(1) 各国民保護措置のうちで特に人権保障上問題となりうる措置に関して、宮城県原案では、人権保障のための手続保障や具体的な定めを欠いているので、これらの措置を取り上げて、人権保障のために具体的に盛り込むべき事項を指摘している。
(2) 日本国籍以外の住民の人権保障を図るために国民保護計画で具体的な定めを置くべきこと、
3  第4「国民保護法が定める強制措置の内容とその問題点について」では、
(1) 国民保護法が定めている強制措置については、その実施のための手続や関係者が拒否できる「正当な理由」を具体化しないと人権侵害のおそれが強い、という観点から、国民保護計画に具体的に定めるべき事項や検討すべき事項を指摘し、
(2) 更に強制措置の対象となる運送事業者や医療関係者など関係者について、実際に国民保護措置に従事することとなる現場担当者の意見も聞きながら国民保護計画を作成すべきであることを指摘している。
 4 第5「『平素からの準備』について」では、宮城県原案のうちで特に「第2編平素からの準備」の項目を取り上げて検討を行った。
まず、武力攻撃事態等によって発生した国民保護法でいうところの「武力攻撃災害」と自然災害とは本質的に違うという観点から、
(1) 国民保護計画の定める訓練や啓発活動では、この違いを充分に意識した活動を行う必要があること、
(2) 自然災害への対策と武力攻撃災害への対策とを誤解させて住民の協力を求め、更に住民の協力を事実上強制することのないように、国民保護計画で具体的な定めを置く必要があること、 などを指摘し、そして、
(3) 国民保護法が単にいわゆる「有事」が発生した場合だけではなく、それ以前の「平時」からの備えを求める点において、有事の脅威のみを強調して平素からの対策を行った場合、憲法で定める平和主義や人権保障との抵触の危険があるという観点から、宮城県原案の問題点を指摘し、平和主義や人権保障を侵害することのない国民保護計画とするために具体的に配慮すべき点を指摘している。
5  第6「安全配慮義務について」では、
(1) 実際に国民保護措置に従事する地方公共団体の職員や指定地方公共機関など関係者の生命身体の安全を確保するために、国民保護法に定められた抽象的な安全配慮義務に関する規定を具体化する規定を国民保護計画に盛り込むとともに、
(2) 国民保護計画を作成するに当たり、国民保護措置に実際に従事することとなる職員や労働者の意見を聞き、その意向を反映させる必要があることを指摘している。
 6 第7「報道の自由、知る権利への配慮をした国民保護計画」では、いわゆる「有事」において、知る権利や報道の自由が最大限に保障されなければならないという観点から、宮城県原案に盛り込まれた規定では、知る権利や報道の自由、更に国民の表現の自由への保障としては不充分であること、また、指定公共機関、指定地方公共機関に指定された放送事業者の自律性を保障するためにも不充分である点を指摘した。そして、これらの人権や放送事業者の自律性を保障するために国民保護計画に具体的に定められるべき事項を指摘している。
 第2  各地方公共団体が独自に基本的人権を尊重した国民保護計画を作成することが可能であること
1 国民保護計画作成を拙速に行うべきではない。
 自治体が足並みを揃えるよう、政府は国民保護計画の策定スケジュールを定め、「モデル条例」、「モデル計画」等を示して自治体を誘導しようとしている。このような政府の方針を受けて、宮城県においては、宮城県国民保護協議会で配布された資料や既に公表されている資料によれば、国民保護計画の作成のスケジュールとして、平成17年度内における国民保護計画の作成を目指すとしており、具体的に宮城県国民保護協議会本会の開催は、今後1回しか予定されていない。政府の方針としては、平成17年度中に各都道府県における国民保護計画の作成を目指しているが、国民保護法など法律の規定上、国民保護計画作成の期限が定められているわけではない。国民保護計画が住民の生命、身体、財産の安全にとって重要な意義を有するのみならず、人権保障上もその内容には慎重な検討が必要なことを考えれば、充分な検討をすることなく、単にモデル計画を1つしたような国民保護計画の作成を行うことは避けるべきである。特に国民保護計画の作成について、県議会へは報告で足り、県議会の承認が不要であることを考えても、住民の意見を充分に反映した国民保護計画を作成するには、国民保護協議会本会における審議の際に、多くの参考人から充分に意見を聞き、更に県民からの意見を聴取する機会を設けるなどして、国民保護計画が実施された場合に影響を受ける関係者や住民の意見を反映した国民保護計画を作成する必要がある。宮城県国民保護協議会の回数も今後1回と限定するのではなく、必要な回数と時間を確保すべきである。また、国民保護協議会の審議に基本的人権の擁護の観点からの意見が出ることを担保するためにも、国民保護協議会の委員に当会推薦の弁護士を加えるべきである。
2 地方自治体の使命は「住民保護」であり、作戦の支援ではない。
 国民保護法は、それ自体、単独の法律として存在するのではなく、米軍支援法、特定公共施設利用法等とともに、武力攻撃事態対処法(以下、「事態対処法」ともいう)を母法とする実施法の1つであり、地方自治体は、武力攻撃事態対処法の対処措置を実施する主体とされている(事態対処法3条、5条)。「対処措置」には侵害排除と国民保護の2つの分野があるが、地方自治体の主要な役割はあくまで国民保護にあり、事態対処法の下でも、地方自治体は「当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して、国の方針に基づく措置の実施その他適切な役割を担うことを基本とする」(同法7条)とされており、事態対処法、国民保護法の下でも、地方自治体の役割は、国の役割とは重点の置き方が異なっており、国家が「侵害排除」を行う際、地方自治体は、いわば安全装置として住民の人権保護の砦となることが求められているといっても過言ではない。国民保護計画を策定するに当たっては、あらゆる場面でこの点が確認されなければならない。なお、事態対処法7条の「その他適切な役割」とは、立法作業に携わった礒崎陽輔氏によれば、「国の方針に基づかない措置で、当該地方公共団体の独自の判断で実施するもの」をいい、「地方公共団体が独自の判断で実施する措置がありうるのではないかと考えて」このような規定を挿入したとしている(礒崎陽輔「武力攻撃事態法の読み方」ぎょうせい、p37)。 地方自治体が行う住民保護の措置や国民保護計画に、自治体独自の判断で行うものがありうることは、国民保護法の母法である武力攻撃事態法自体が認めているのである。 この条項を活用した自律的な措置にどのようなものがありうるのか、積極的に検討すべきである。
 3 「住民の生命、身体及び財産の保護」を実現する手段は多様であり、憲法が、地方自治体を三権と並ぶ統治機構の構成要素として位置づけを与えていることに鑑みても、地方自治体は、住民の生命、身体及び財産を保護するために独自に積極的な活動を行う責務がある。そして、国家間の関係は、いまや政府レベルの関係にとどまらないのであって、市民、NGO、自治体などによる、文化、学術、スポーツ等多面的な交流が緊密になされることは、市民間の相互理解を深めることに役立つ。市民レベルでの友好と相互理解が確固としている場合に、意見や利害の相違があってもそれが「有事」に至る可能性は小さいはずである。地方自治体は、事態対処法7条の「その他適切な役割」として、このような市民間、自治体間の友好と相互理解を積極的に行い、これを国民保護計画においても具体化すべきである。
第3  基本的人権及び平和主義を尊重した国民保護計画の作成
 国民保護法第5条第1項は「国民の保護のための措置を実施するに当たっては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない」ことを謳い、第2項は「国民の保護のための措置を実施する場合において、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該国民の保護のための措置を実施するため必要最小限のものに限られ、かつ公正かつ適正な手続の下に行われるものとし、いやしくも国民を差別的に取り扱い、並びに思想及び信条並びに表現の自由を侵すものであってはならない」と規定している。国民保護措置のうちで特に人権侵害が危惧される措置について、かかる視点から、宮城県原案の問題点と盛り込むべき具体的規定について指摘する。
 1  国民保護措置の実施に伴う人権侵害を回避するために国民保護計画中に具体的な定めを置く必要性
 宮城県原案は、国民保護法第5条の観点に照らし、人権保障に充分配慮した規定を置いているとはいえない。
(1) 国民の責務との関係(法4条)
 国民保護法は、国民の協力についても規定しているが、この規定によって国民の協力を事実上強制するようなことにならないよう国民保護計画を作成するべきである。特に、国民の協力はあくまで自発的な意思に基づくのであって、強制にわたることがあってはならない、と国民保護法4条2項で規定しているが、事実上の強制を防ぐためには、単にこのような規定を置くだけでは不充分である。
①宮城県原案第1編第2章(5)「国民の協力」(宮城県原案3頁)では、「国民は、その自発的な意思により、必要な協力をするよう努める」とあるが、これでは、事実上の強制にわたらないような配慮をするというのではなく、むしろ、自ら進んで「協力に努める」ことが強調されていると考えられる。
②宮城県原案第2編第8章2(3)「訓練に当たっての留意事項」(宮城県原案38頁)でも、住民に対して広く訓練への参加を呼びかけるという指摘はあるが、訓練への参加が事実上強制されないよう配慮すべきという指摘はない。
③宮城県原案第3編第3章9「住民への協力要請」(宮城県原案50頁)においても、住民に対し、「必要な援助について協力を要請する」とあるが、事実上の強制とならないように配慮した記載が存在しない。このように、宮城県原案では、事実上の強制とならないように配慮した定めをおいているとは理解できないのであって、国民保護計画の中で、国民の協力に関する事項を記載する場合には、あくまで住民の協力が任意であり、強制にわたってはならないということを各項目において明示して記載する必要がある。また、協力要請に際しては、要請が繰り返されたり、協力要請に応じないことが不利益に結びつくことがないよう留意すべきことを明記することも必要である(「『強制』とは相手の意に反して行わせることをいい、単純に勧誘や説得を行うことは強制には含まれないと考えるべきである。しかし、執拗に説得を繰り返したり、相手が不利益を被るような条件を出して協力を求めたりすれば、強制に当たることもありうる」(「国民保護法の読み方」礒崎p19))。また、住民に対して事実上の強制措置が行われないようにするためには、国民保護法に関する正確な情報を住民に広報するよう努めるとともに、特に本意見書で人権保障との関係で問題となりうると指摘した規定については、人権保障のために具体的にどのような配慮を国民保護計画の中でしているのかを住民に具体的に説明することも啓発の内容として定めるべきである。
(2) 避難における立入禁止等の措置の問題(法66条)
 避難住民を誘導する警察官又は海上保安官(これらの者がその場にいない場合、消防吏員又は自衛官)は、危険な場所への立ち入りを禁止し、若しくはその場所から退去させる措置を講ずることができるとされている(同条第2及び3項)。しかし、この措置は、住民の行動の自由を侵害し、また事態の状況によっては報道機関の取材活動の自由を侵害する危険がある。ところが、宮城県原案第3編第4章第2の4「避難実施要領」(宮城県原案60頁)以下において、避難実施要領の策定についての記載があるが、避難における立入禁止等の措置に関する具体的な定めがない。また、政府解釈でも、法66条の規定は、避難しない者に避難を強制する権限を与えたものではないとされているが(礒崎陽輔「国民保護法の読み方」172頁参照)、宮城県原案60頁に、要避難地域における残留者の確認に関する条項があり、そこでは、避難が本来任意であることについての明示的な指摘がない。そこで、国民保護計画を作成する際には、立入禁止等の措置の実施が恣意的に行われることがないように、立入禁止等の措置が、住民の行動の自由や報道機関の取材活動の自由と抵触する可能性があることを国民保護計画の中で指摘し、同措置を実施するに当たっては、住民の行動の自由や取材活動の自由を侵害しないように慎重にすべきであることを明示的に指摘しておく必要がある。そして、国民保護計画において、「特に必要があること」、「危険な場所」の要件についてできるだけ具体的な基準、想定される事態毎に具体例を明らかにすることが必要である。更に立入禁止や「当該危険を生ずるおそれのある道路上の車両その他の物件の除去」以外の「その他の必要な措置」の具体的な内容、措置をとるための適正な手続などを明記することが必要である。
(3)緊急通報の発令(法99条)
 知事は、緊急の必要性があると自ら判断した場合に、武力攻撃災害緊急通報を発令しなければならないとされているが、当該目的は、「住民の生命、身体又は財産に対する危険を防止」することにあるので、有事における情報統制にならないよう広く住民に情報を伝える必要がある。宮城県原案第3編第4章第1の3「緊急通報の発令」(宮城県原案53頁)では、緊急通報の内容として、危急の被害を避ける観点から必要最小限のもの、としている。この規定は情報の正確性、住民の混乱の防止という観点からどのような情報を、この段階で開示するのかということを考えての指摘だと思われるが、「必要最小限」に限定するのは、住民への必要な情報の提供を考えると問題であり、正確な情報をできるだけ住民に提供するという趣旨で、国民保護計画では規定をする必要がある。
(4)武力攻撃災害における立入禁止措置の問題点(法102条)国民保護法102条第5項は「都道府県公安委員会又は海上保安部長等は、武力攻撃事態等において、武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため、知事から要請があったとき、又は事態に照らして特に必要があると認めるときは、生活関連等施設の敷地及びその周辺区域のうち、当該生活関連等施設の安全を確保するために立入を制限する必要があるものを、立入制限区域として指定することができる」と定め、同条7項は「警察官又は海上保安官は、第5項の立入制限区域が指定されたときは、特に生活関連等施設の管理者の許可を得た者以外の者に対し、当該立入制限区域への立入を制限し、若しくは禁止し、又は当該立入制限区域からの退去を命ずることができる」と定めている(緊急対処事態にも準用されている、183条)。武力攻撃災害における立入禁止措置については、個人の行動の自由を侵害し、また報道機関の取材活動の自由を侵害する危険性もあるから、国民保護計画において当該措置をとりうる基準を明記するとともに、措置をとる際の適正手続を具体的に定める必要がある。宮城県原案第2編第6章「生活関連等施設の把握等」(宮城県原案33頁以下)、宮城県原案第3編第7章第1の3「生活関連等施設の安全確保」(宮城県原案72頁以下)の各項において、「生活関連施設」やその安全確保についての記述があるが、そこでは、法102条5項に基づく立入禁止区域の指定の要件や手続、立入禁止区域に指定するための知事からの要請を行うための要件が具体的には定められていない。また、生活関連施設の敷地からどの程度の範囲までを立入制限区域と指定できるのか、その範囲は、明示されておらず、武力攻撃事態等の態様や武力攻撃災害の内容に応じてその時々で判断することを宮城県原案では想定していると思われる。しかし、立入禁止区域の指定がされれば、警察官と海上保安官は、管理者の許可を得たもの以外の者に対しては、立入の制限、禁止、退去を命ずることができ、立入制限違反に対しては刑罰が科されるのであるから(法193条)、立入制限区域の指定は、住民の行動の自由や報道機関の取材活動の自由に対する罰則付きの制限となる。そこで、国民保護計画においては、立入禁止区域の指定に当たって考慮すべき事項を具体的に定める必要がある。すなわち、住民の生活への支障、住民の行動の自由制限ができるだけ出ない方法で指定すべきことや、報道機関の取材活動の自由が尊重される形で行われるべきことなどを明示的に定めておく必要がある。また、国民保護計画において、各生活関連施設について、どの範囲を立入制限区域として指定するのか、想定される事態に応じて、ある程度基準を明確にして定める必要があり、この基準を定めるに当たっては、当該生活関連施設の周辺住民の意見や報道機関を含めた関係諸機関の意見などを聴取して行うべきである。
(5)知事の応急措置(法111条、112条)
 知事は、武力攻撃災害が発生するおそれがあり、武力攻撃災害拡大を防止するため緊急の必要があると認めるときは、武力攻撃災害を拡大させるおそれがある設備等の除去等必要な措置(事前措置)を講ずべきことを指示することができ(111条2項)、武力攻撃災害から住民の生命、身体若しくは財産を保護し、又は当該武力攻撃災害の拡大を防止するため緊急の必要があると認められるときは、住民に対して退避すべきことを指示することができるとされている(112条5項)。これらの指示は、住民の生命、身体、財産を保護すること等が目的であるから、軍事目的に協力する趣旨で発動してはならない。また、住民に対して退避の指示をする場合でも、個人の意思に反して退避を強制することができない。宮城県原案第3編第7章第3「応急措置等」(宮城県原案80頁)では、これらの点について触れられていないので、前記の点を明示的に国民保護計画に定める必要がある。
(6)応急公用負担等(法113条)
 知事は、武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、武力攻撃災害への対処に関する措置を講ずるため緊急の必要があると認められるときは、武力攻撃災害を受けた現場の工作物又は物件で武力攻撃災害への対処に関する措置の実施の支障となるものの除去その他必要な措置を講ずることができる(113条3項)。この応急公用負担の要件として、住民の生命、身体に対する危険を防止するために行うということが条文には明記されていないが、次条の警戒区域設定の要件と同様に、国民保護法の目的からして、このことが要件となっていると解されることから、当該公用負担を軍事目的に協力する趣旨で発動してはならない。宮城県原案第3編第7章第3の3「応急公用負担等」(宮城県原案81頁)では、上記指摘がされていないので、国民保護計画において、上記の点を明示的に定める必要がある。
(7)警戒区域設定の問題点(法114条)
 知事は、武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、当該武力攻撃災害による住民の生命又は身体に対する危険を防止するため緊急の必要があると認めるときは、警戒区域を設定し、武力攻撃災害への対処に関する措置を講ずる者以外の者に対し、当該警戒区域への立入を制限し、若しくは禁止し、又は当該警戒区域からの退去を命ずることができる(114条2項)。警戒区域設定についても、個人の行動の自由を侵害し、また事態の状況によっては報道機関の取材活動の自由を侵害する危険があるから、警戒区域の設定と当該区域への立入禁止などの措置を行うためには、国民保護計画において、具体的で明確な基準を定めるとともに、人権を侵害することのないような適正な手続の保障について定めておくべきである。宮城県原案第3編第7章第3の2「警戒区域の設定」(宮城県原案80頁)で警戒区域の設定について定めているが、警戒区域設定及び当該区域への立入制限等の措置の実施に当たって、人権に対する配慮を求める規定を全く置いていない。警戒区域の設定によって、行動の自由や取材活動の自由に対して制限が加えられることになること、要件が限定されているとはい、警察官や海上保安官更に自衛官にも警戒区域の設定の権限が認められていること、同区域への立入制限等の措置への違反には罰則が科されること等からして、警戒区域が恣意的に設定されたり、軍事行動目的で警戒区域の設定が行われた場合には、重大な人権侵害のおそれがあるといわなければならない。警戒区域設定は周辺住民の行動の自由や取材活動の自由の制限にかかわる措置であるから、国民保護計画には、これらの人権を侵害しないように留意すべきであることを明示的に記載すべきである。また、想定される事態に応じて警戒区域設定の要件を例示を含めて具体的に定めるなど恣意的な設定を防止するための規定を置くこと、警察官、海上保安官、自衛官が警戒区域を設定できる場合を具体的に例示すること、などによって、人権侵害を惹起しないようにする必要がある。また、生活関連施設とその周囲への立入制限などの措置と同様に、警戒区域設定に関して国民保護計画に定めをするに当たっては報道機関などの意見を聴取する必要がある。
(8)避難施設の指定(法148条)
 知事は、住民を避難させ、又は避難住民等の救援を行うため、あらかじめ、政令で定める基準を満たす施設を避難施設として指定しなければならない(148条1項)。避難施設に指定しようとする対象が民間施設である場合、あらかじめ管理者の同意を得て避難施設の指定をしなければならないが、避難施設に指定された場合、当然、本来の目的に利用することが制限されること、その場合強制収用でない以上損失補償がなされないことなどを、充分に説明した上で管理者の了解を得る必要があるとともに、同意を事実上強制することのないよう慎重な配慮が必要である。宮城県原案第2編第5章の5「避難施設の指定・周知」(宮城県原案30頁以下)において、避難施設の指定手続が定められているが、そこでは、施設管理者の同意を文書等で確認すると指摘しているだけである。国民保護計画において、管理者の了解を得るに当たって説明すべき内容として、損失補償が行われないこと、本来の目的での利用が制限されても同様であること、了解するか否かは任意であることなど、説明すべき内容を具体的に定めて、管理者の充分な納得の上で了解を得るための説明の内容、方法(口頭ではなく説明内容を書面で交付するなど)などを具体的に記載しておく必要がある。また、管理者が同意を撤回するのは自由だと考えるが、この点が宮城県原案では不明確であるから、国民保護計画では、同意の撤回の手続なども規定し、かつ管理者に撤回が可能であることも説明すべき内容として定めておく必要がある。
(9)交通の規制等(法155条)
 都道府県公安委員会は、住民の避難、緊急物資の運送その他の国民の保護のための措置が的確かつ迅速に実施されるようにするため緊急の必要があると認めるときは、交通規制等ができるとされている(法155条1項)。広範囲な要件のもとで交通規制等を認めている点で、人権保障上の問題を含んでいるとともに、場合によっては出動した自衛官が交通規制等を行うことができるとされており、軍事目的を優先した交通規制等がなされないか非常に危惧される。宮城県原案第3編第11章「交通規制」(宮城県原案92頁以下)では、「住民の避難、緊急物資の運送その他の措置が的確かつ迅速に実施されるよう」にと規定しているが、明示的に軍事目的を優先した交通規制をすることを禁止する定めをしていない。住民の避難と自衛隊や米軍の軍事行動が錯綜した状態で住民の避難が阻害されることがないよう、国民保護計画では、軍事目的ではなくあくまで住民の避難や緊急物資の輸送のための交通規制であるということを明示した定めを置く必要がある。
2  日本国籍を有しない住民の人権保障への配慮の必要性
 外国籍住民を含めて、個人の基本的人権を保障した国民保護計画を作成することが必要である。
(1) この点、日本国籍を有しない者の人権保障としては、①国民保護措置を日本国籍を有する者と同様に適用して保護すべきであるという面とともに、②排外主義的な風潮による特定の国籍を有する住民への人権侵害が事実上発生しないように国民保護計画において配慮した定めを置くべきという面がある。
(2) 宮城県原案37頁以下では、「国民保護に関する研修・訓練・啓発の実施」に関する記述があり、そこでは訓練について避難誘導や救援等に当たり高齢者や障害者その他特に配慮する者への的確な対応が図られるよう留意するべきことが指摘されているが、日本国籍を有しない住民について、上記①及び②の観点からの指摘がないので、その点を明記すべきである。
第4  国民保護法が定める強制措置の内容とその問題点について
1  国民保護法における強制措置の内容
 国民保護法は、国民保護措置の実効性を確保するために、以下のとおり、知事及び市町村長に対し、強制権限を付与している。
(1)  運送の強制 知事、市町村長は、運送事業者である指定公共機関又は指定地方公共機関に対し、避難住民の運送、緊急物資などの運送を求めることができる。この場合、運送事業者は正当な理由がない限り拒否できない(法71、79条)
(2) 物資の保管命令・売渡要請・収用
 知事は、「救援を行うため必要があると認めるときは」、物資の生産、販売等を業とする者に対し、医薬品、食品等の救援の実施に必要な物資として政令で定める物資(特定物資)について保管を命令し、売渡を要請し、正当な理由なく拒否したときは、これを収用することができる(法81条)。物資の保管命令に従わず、特定物資を隠匿・損壊・廃棄・搬出したものについては、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられる(法189条1号)。同収用手続については、公用令書の交付により行うとされる(法83条)。指定行政機関又は指定地方行政機関も、「救援を支援する緊急の必要があると認めるとき、又は都道府県知事から要請があったとき」同様の措置をとることができる(法81条4項)。法が定めるこれらの権限は、「武力攻撃事態等」又は「緊急対処事態」の閣議決定がなされた事態の下で、対策本部から「救援の指示」を受け、知事が「救援を行う必要性を認めた」、又は指定行政機関又は指定地方行政機関が「緊急の必要性があると認めた」という要件だけで所有者の同意がない場合でも「政令が定める物資」を公用令書1つで収用するというものである。
(3)  土地・家屋・物資の強制使用
 知事は、収容施設又は臨時の医療施設を開設するため、所有者及び占有者の同意を得て、土地、家屋又は物資を使用することができ、正当な理由なく拒否したときは、「特に必要がある」と認めれば、強制使用できる(法82条)。この強制使用は、公用令書を交付して行うものとされるが、交付すべき相手が不明である場合等には、事後の交付で足りるものとされている(法83条)。なお、前記(2)における売渡要請等の対象となる物資は、特定物資であっていわゆる商品として業者が所有するものであるが、本項で使用の対象となる物資は、商品には限定されていない。また、上記特定物資及び土地・家屋・物資について所定の措置をとる必要がある場合に、知事などは、職員による立ち入り、検査を行わせることができ、(2)の特定物資の保管については必要な報告を求め、保管状況を検査させることができる(法84条)。この立入検査を拒み・妨げ・忌避し、特定物資の保管に関する報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、30万円以下の罰金を科せられる(法192条1号)。
(4)  医療の実施指示
 知事は、大規模な武力攻撃災害が発生した場合、「医療の提供を行うため必要があると認めるとき」、医療関係者に医療の実施を要請し、正当な理由なく拒否したときには、医療の実施を指示できる(法85条)。
2  人権侵害の危険性と措置の実施に当たって考慮すべき事項
 国民保護法が定める上記強制措置は、営業の自由や財産権を制約し、更に、個人の思想良心に抵触する行動を強制するおそれがあり、以下に述べるとおり、その実施に当たっては、慎重な配慮が必要である。
(1) 武力攻撃事態等及び緊急対処事態の認定について
「武力攻撃事態等」又は「緊急対処事態」については、その定義が曖昧であることは、法案段階から日弁連や当会において指摘してきたところである。しかも、我が国に対する武力攻撃のおそれがあるのか、武力攻撃が予測される事態であるのか、緊急対処事態であるのかの認定については、認定そのものや認定の時期について政治的な判断が含まれるだけに、国民の間で評価、判断が分かれる可能性が高い。この点で、価値的な評価に差が生ずることが通常では考えにくい自然災害とは大きく異なるのである。
したがって、知事等が前記強制措置をとるには極めて慎重であることが必要である。
(2) 正当な理由の判断
 前記の各措置については、「正当な理由」があれば、拒否することが可能である。そして、この「正当な理由」の内容については、例えば自己が使用する必要性があるなど具体的にその内容が明らかにされるべきである。また、この正当な理由の解釈について、思想、信条を理由とするものは認められないというのが政府の解釈のようである。しかし、前述のとおり、前記各措置をとる際の前提となる武力攻撃事態等や緊急対処事態の認定については、議論の分かれるところであり、思想、信条に基づく拒否について、一律に「正当な理由」から排除すべきではない。
(3) 適正手続の保障
 前記1(2)(3)の各措置は、「武力攻撃事態等」又は「緊急対処事態」の閣議決定がなされた事態の下で、対策本部から「救援の指示」を受け、知事が「救援を行うために特に必要があると認めた」というだけで、「政令が定める物資」等を公用令書1つで収用や使用ができるというものである。この規定については、余りにも包括的な収用権限、使用権限を知事に付与するものであり憲法が保障する財産権保障を損なうおそれが強い。都道府県知事は、前記各措置の実施に当たっては、適正手続を保障するべく、国民保護計画に具体的な定めを置くべきであり、基本的人権の保障の観点からは、この点について、関係者からも充分な意見を聞いて、慎重な運用のための規定を置くことが必要である。
3  宮城県原案の内容と国民保護計画の策定に当たって留意すべき事項
(1) 宮城県原案の内容
 宮城県原案は、第3編第4章第2の3「県による避難住民の誘導の支援等」(宮城県原案58頁)において、指定地方公共機関による運送の実施についてわずかに規定をおいているものの、「正当な理由がない限り、その求めに応じるものとする」とのみ規定している。また、宮城県原案は、第3編第5章の5「救援の際の物資の売渡要請等」(宮城県原案66頁)において、救援の際の特定物資の売渡等の要請、収容施設や臨時医療施設の開設のための土地使用、更に医療の要請について定めているものの、「正当な理由」についての具体的な説明がされていない。更に、売渡要請などについても、権利者の権利を侵害しないような手続についての定めを具体的に置いていない。
(2) 国民保護計画の策定に当たって留意すべき事項
そこで、具体的に国民保護計画を策定するに当たっては、以下の諸点に留意すべきである。
①  国民保護計画において強制措置について定める項では、国民保護措置の実施の前提となる武力攻撃事態等の認定について、自然災害と異なり、様々な評価がありうるので、知事又は市町村長が強制措置を実施することについては、慎重な配慮が必要である旨を明記することが必要である。
② 上記「正当な理由」については、例えば自己使用の必要性がある場合などを例示すべきであり、また、知事、市町村長の強制措置の対象となった住民が思想、信条に基づきこれを拒否した場合、一律に認めないとすべきではない。どのような場合が「正当な理由」に該当するかについては、関係者の意見を広く聴取し、国民保護計画の中で具体的に定めることも検討する必要がある。
③ 上記1(2)(3)の各措置を実施する場合の必要性の要件や手続について、具体的に明記すべきである。
④ 更に、国民保護計画を作成するに当たって、強制措置の対象となりうる運送業への従事者(単に事業者だけではなく、実際に運送に従事することになる労働者やその意向を代表する労働組合)、医療関係者、売渡要請や土地などの使用の要請を受ける可能性がある一定の土地所有者などの権利者等からできる限り広く意見を聴取した上で、その意見を反映した国民保護計画を作成するようにすべきである。
第5  「平素からの準備」について
1 自然災害のための制度を武力攻撃災害に対する準備へ転用する考え方は危険であることについて
(1) 国民保護法は、地方自治体は、「国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要な組織を整備するとともに、国民の保護のための措置に関する事務又は業務に従事する職員の配置及び服務の基準を定めなければならない」(法41条)と義務づけている。そして、法41条は、いつ、どのように発生するかわからない「事態」のために専任の組織を創設することはできないので、「有事のための専属組織を平時において設置しておかなければならないわけではなく、既存の組織を活用して、有事に転用できるよう有事における役割分担をあらかじめ定めておくことを意味している」と解されている(前掲「国民保護法の読み方」114頁)。
(2)  宮城県原案は、このような法の解釈を前提として、武力攻撃災害を自然災害と同様に扱い、自然災害への準備手段を武力攻撃災害に転用しているが、そのような考え方は危険である。
 国民保護法は、「武力攻撃災害」という概念を用いているが、武力攻撃災害と自然災害は全く異なるのであって、これを「災害」として同一視した対策をとることは、両者の違いを無視した安易な人権制限につながる危険性がある。同法によれば、「武力攻撃災害」とは、「武力攻撃により直接又は間接に生じる人の生死又は負傷、火災、爆発、放射性物質の放出その他の人的物的災害」(法2条4項)をいうとされる。同法は、本来人為的に引き起こされる武力攻撃による被害を、不可避的に発生する自然災害と同種であるかのようにいうことにより、有事の場合に、自然災害を対象とする既存の災害対策法制によって構築された組織やネットワークを転用しようとしている。我が国の災害対策法制は、伊勢湾台風を契機として制定された、災害対策基本法を中心として法制化され、同法は、国、地方公共団体、及びその他の公共機関によるネットワークを構築し、総合的、計画的な防災行政を整備、推進することを目的としている。そして、同法の基本は、国民の生命、身体、財産を災害から保護すること(同法1条)、すなわち、憲法の基本原理である基本的人権の保障にある。しかるに、国民保護法は、前記のとおり、平和主義、基本的人権の保護という憲法の基本原理を損なうおそれがあるから、国民保護計画に、災害対策法制に基づく諸制度を転用するのは、これらの制度の趣旨に反するおそれがあり、慎重でなければならない。 国民保護法が、「武力攻撃災害」という概念を用いて、武力攻撃による被害を一種の自然災害であるかのように位置づけることは、国民の協力や強制措置について了解が得られやすいという狙いもあるのではないかと考えられる。国民保護法は、政府に対して国民に対する啓発に努めることを求めているが(法43条)、政府あるいは地方公共団体は、国民の自然災害に対する意識を利用し、武力攻撃の事態と自然災害とを同種のものと誤解させるような啓発活動を行うことにより、国民の協力や強制措置への受忍を事実上強制し、国民の権利を安易に制限するようなことがあってはならない。したがって、宮城県が国民保護計画を作成し、また国民保護法に定める国民保護措置を実施するに当たっては、安易に災害対策法制に基づく諸制度を転用すべきではなく、自然災害と武力攻撃事態(緊急対処事態を含む)による被害の性格の違いや、そもそも武力攻撃事態等の発生やその認定自体が、自然災害と異なって、政治性を有するものであって、自然災害と同視できないことを充分に念頭に置く必要がある。
(3) そもそも、武力攻撃災害に対して、有効な準備がありうるのか大いに疑問である。平成17年3月に国が作成した「国民の保護に関する基本指針」は、武力攻撃事態として、着上陸侵攻、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃の4つの類型を想定しており、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃に対しては、まず屋内へ避難することとされている。基本指針のこの考え方は、最初の攻撃は避けようがないので、その後の被害の拡大を抑えることを想定しており、最初の攻撃に対しては有効な準備があり得ないことを前提としている。また、その後の被害の拡大を防止するといっても、宮城県の広い地域が攻撃され、あるいは広い地域に被害が広がるおそれのある場合に、多くの宮城県民が他府県に避難することなど、現実的には不可能である。また、原子力爆弾など、核兵器を用いた攻撃がなされた場合には、どんな準備があっても甚大な被害が生じることになる。このように、武力攻撃災害に対して有効な準備は実際には不可能であるにもかかわらず、国民に対してその準備を強調すると、武力攻撃災害に対する不安や危機意識だけを煽ることになり、仮想敵国を作り出して仮想敵国の国民を差別扱いしたり、我が国の軍事大国化を進めることにもなりかねない。 よって、宮城県が国民保護計画を策定するに当たっては、これまでに述べた問題点を踏まえ、平時からの準備を強調することのないように留意すべきである。
2  個別の問題点について
特に以下の点を指摘する。
(1)  「第2章 関係機関との連携体制の整備」について
① 宮城県原案では、国、特に防衛庁・自衛隊との連携を図る(宮城県原案19頁)、とされている。
しかしながら、自衛隊との過度の連携は、国民保護計画を通して、国、自衛隊が宮城県政全般に干渉することにつながりかねず、憲法が保障する地方自治の原則を危うくすることになる。よって、宮城県の策定する国民保護計画においては、防衛庁や自衛隊との連携が過度に強調されることがないようにしなければならない。
② 宮城県原案は、市町村との連携の項で、消防団の充実・活性化を図るという(宮城県原案20頁)が、消防団に国民保護計画の中で重要な役割を担わせるのであれば、消防団員に対して、国民保護措置を実施するに当たっては、国民の基本的人権を尊重し、国民の権利利益の迅速な救済が必要であること(基本指針3頁「第1章国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針」)をよく理解させる必要があり、国民保護計画において、そのための具体的な手だてを明記すべきである。また、宮城県原案は、ボランティア団体等に対する支援の項で、特に自主防衛組織に対する支援を述べる(宮城県原案21頁)が、自主防災組織を一般のボランティア団体と区別する必要はない。かえって自主防災組織を特別扱いすることは、住民間に無用の摩擦や人権侵害をもたらすおそれがある。よって国民保護計画においては、自主防災組織を特別扱いする規定を削除すべきである。
(2) 「第4章 情報収集提供等の体制整備」について(宮城県原案24頁)
 宮城県原案は、地方公共団体は、国民保護措置の実施のために必要な情報の収集、蓄積及び更新に努めると定める。しかし、この情報収集活動が過度に強調されると、平時から個人情報が際限なく行政によって収集、蓄積、利用されるおそれがある。また、国民が平時から、他人の行動を監視し、行政にその情報を伝えることになれば、戦前の国民相互監視社会の再現となりかねない。国民保護計画において、その点に留意し、宮城県の情報の管理の点を含めて、宮城県の情報収集活動を監視する第三者機関の設置を明記すべきである。
(3) 「第8章 国民保護に関する研修・訓練・啓発の実施」について(宮城県原案37頁)宮城県原案は、特に訓練について、防災訓練における既存のノウハウを活用する、防災訓練における実施項目を参考にして訓練を実施する、可能な項目について国民保護措置についての訓練と、防災訓練とを有機的に連携させるとして、自然災害のための制度の転用を図っている。しかし、自然災害のための制度を国民保護措置に転用することについては前述のように大きな問題点があり安易な転用は慎むべきである。また、宮城県原案は、訓練に当たっては、住民に対し広く訓練への参加を呼びかけるとされているが、訓練に参加するか否かは住民の自由意思に基づくべきであり、訓練に参加しなかった者が他の住民から差別扱いされるようなことがあってはならず、事実上の強制をすることのないよう、国民保護計画においてその旨を明記し、担当職員に周知徹底を図るべきである。宮城県原案では、「県は、住民に対し、各種広報媒体等を活用して、国民保護措置の重要性について継続的に啓発を行う」(宮城県原案38頁)とされているが、有効な準備が難しいにもかかわらず、過度の啓発活動を行うと、前述のように、国民に対して武力攻撃災害に対する不安や危機意識を煽ることになる。また、宮城県原案では、啓発の実施に当たっては、防災に関する啓発と連携するとされているが、自然災害のための制度を国民保護措置に転用することの問題点については既に述べたところである。国民保護計画において、「啓発」に名を借りた言論弾圧や思想統制とならないための方策、措置を明記することが必要である。
第6  安全配慮義務について
1 事態対処法及び国民保護法上の安全配慮に関する規定
 事態対処法及び国民保護法には、措置の実施に当たって、安全の確保につき多くの規定を置いているが、これは、対処措置に携わる者あるいは協力する者について、自己の生命身体を危険にさらしてまで対処措置を実施する必要がないという基本的な考え方に基づいている。地方公共団体は、いわゆる非常事態警報が出され、措置が指示されるという場合に、地方公共団体や指定公共機関、指定地方公共機関に所属する職員等を国民保護措置に従事させるよう派遣や指示を出し、職員らは危険に接近し、危険な状態にさらされることになるから、これらの者の生命身体への安全配慮は充分なされなければならない。事態対処法第17条は、「政府は、地方公共団体及び指定公共機関が実施する対処措置について、その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない」と定め、国民保護法第22条では、国、都道府県、市町村が国民保護措置について、「その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない」と定めている。いずれも規定が抽象的であるため、実際には国民保護措置の実施にあって危険な行為を事実上強制される可能性があり、これを防止するには、国民保護計画内に具体的な定めをする必要がある。ところが、以下で述べるとおり、政府が作成した基本指針や宮城県原案において、上記の点について、充分具体的な定めがされているとはいい難い。
2  国民の保護に関する基本指針について
同指針には、第1章8「安全の確保」という項が設けられている。その内容としては、「情報の提供」、「連絡応援体制の確立」、機関同士の「連携」と記載されている。これらは、「情報の提供」により、無用な混乱が回避され、混乱や危険な状態にさらされないという効果があることは否定できないが、むしろ「対処措置」(事態対処法第2条7号)や「国民の保護のための措置」(国民保護法第10条)を円滑に行うために必要な行為という意味合いが強く、法律が特別に安全配慮義務を規定した趣旨をより具体化し内容を豊かにするものとはいい難く、極めて不充分である。また、「対処措置」や「国民の保護のための措置」を円滑に行うために必要な行為と、国民保護措置に従事する者に危険が及ばないために必要な措置とは、ある意味では逆のことを意味する。そして、危険が及ばないようにするために必要な措置としては、様々な積極的行為や物的人的な具体的措置が想定されるところだが、基本指針はそれらについては全く触れられていない。
3  宮城県原案について
宮城県原案では、第1編第2章「国民保護措置に関する基本方針」(8)「国民保護措置に従事する者等の安全の確保」に「県は、国民保護措置に従事する者の安全の確保に充分に配慮するもの」とし、「要請に応じて国民保護措置に協力する者に対しては、その内容に応じて安全の確保に充分に配慮する。」とされている(宮城県原案4頁)。ところが、その後の安全配慮についての宮城県原案は、第3編第3章の9「住民への協力要請」の項に「要請を受けて協力する者の安全の確保に充分に配慮する。」(宮城県原案50頁)と記載され、同編第4章第2の3「県による避難住民の誘導の支援等」の項に「(8)避難住民の運送の求めに係る調整」として、運送業者に対する運送の「指示に当たっては、警報の内容等に照らし、当該機関の安全が確保されていることを確認するとともに、安全確保のため、当該機関に対し、武力攻撃の状況について必要な情報の提供を行う。」(宮城県原案59頁)と記載され、同編第5章5「救援の際の物資の売渡要請等」の項に「(2)医療の要請等に従事する者の安全確保」として「県は、医師、看護師その他医療関係者に対し、医療を行うよう要請し、又は医療を行うべきことを指示する場合には、当該医療関係者に当該医療を的確かつ安全に実施するために必要な情報を随時充分に提供すること等により、医療関係者の安全の確保に充分に配慮する。」(宮城県原案67頁)と記載され、同編第7章第1の1「武力攻撃災害への対処の基本的考え方」の項に「(3)対処に当たる職員の安全の確保」として「県は、武力攻撃災害への対処措置に従事する職員について、必要な情報の提供や防護服の着用等の安全の確保のための措置を講ずる。」(宮城県原案71頁)と記載され、更に同章第2の1「武力攻撃原子力災害への対処」の項に「(9)要員の安全確保」として「県は、武力攻撃原子力災害に係る情報について、武力攻撃原子力災害合同対策協議会等において積極的な収集に努め、当該情報の速やかな提供や被ばくの管理などにより、応急対策を講ずる要員の安全の確保に配慮する。」(宮城県原案77頁)と記載されている。この中で「1武力攻撃災害への対処の基本的考え方、(3)対処に当たる職員の安全の確保の項」の「県は・・・防護服の着用等」というのが僅かに具体的といるが、その余は、どのようにして安全を確保するのかが記載されていない。とりわけ、危険が及ばないようにするために必要な措置が求められるところでは、安全配慮義務の履行としては、様々な積極的行為や物的人的な具体的措置が想定されるところであるが(例えば、情報の伝達の具体的方法、連絡方法の整備、安全配慮のための組織作り等)、それらについては全く触れられていない。いずれにしても法律が条文に安全配慮義務を明示した趣旨を受け、その内容を豊かなものにしてゆく必要があり、宮城県原案は不充分なものであるといわざるを得ない。
4  国民保護計画について
国民保護計画においては、一般的な方針として、国民保護措置に従事する職員らは、自らの生命、身体を危険にさらしてまで措置を実施する必要がないこと、危険があると判断して各自が行うべき措置を実施しなかった場合にも、服務違反として懲戒処分などの不利益を受けないことを明示的に規定する必要がある。また、危険か否かを一義的に事前に規定することが困難なため、例えば武力攻撃が予測される地域と指定された場合には、当該地域以外の地域から当該地域に入って国民保護措置を実施することを指示することはできない(礒崎陽輔「武力攻撃事態法の読み方」78頁、同著者「国民保護法の読み方」62頁)というように、危険な地域となることが想定される地域における措置の実施についての一般的な基準を国民保護計画にあらかじめ規定しておくことが必要である。更に、武力攻撃事態が予測される地域での運送について指定公共機関、指定地方公共機関の事業者には応諾義務はないと思料されるので、このことも明示する必要がある。このように、国民保護措置の実施に当たっては、これに実際に従事する地方公共団体の職員や運送事業者などの指定公共機関、指定地方公共機関の労働者の安全が重要な問題となっているのであるから、国民保護計画を作成するに当たっても、職員団体や労働組合など職員の利益を代表するものからの意見聴取を充分に行うことが必要不可欠であると考える。この点で、国民保護協議会の構成員には、指定地方公共機関の事業者側の代表者は含まれているが、労働者側、職員側の代表者が含まれていないことは問題であり、国民保護計画作成に当たっては、これら労働者の意見を聞くために特別の機会を充分に設けることが必要である。
第7  報道の自由、知る権利への配慮をした国民保護計画
 1 知る権利は、民主主義社会を維持発展させるために極めて重要かつ基本的な権利である。放送事業者等の報道機関による報道の自由、その不可欠の前提である取材の自由は、知る権利を実質化するものの1つであって、これに対する制限は知る権利の否定につながる。また、報道機関による公権力に対する監視や世論喚起の機能も重視されるべきものである。このような「知る権利・報道の自由」は、まさに武力攻撃事態等の「有事」においてこそ、最大限に保障されなくてはならない。これは、指定公共機関や指定地方公共機関としての放送事業者に対してはもとより、それ以外のマスコミやミニコミ、更に個人に至るまで、同様である。 かかる観点に鑑みて、宮城県原案第1編第2章(3)「国民に対する情報提供」(宮城県原案3頁)の項中の規定だけでは不充分であり、国民保護計画において、引き続いて「その意味からも、『報道の自由、知る権利、取材活動の自由』は、有事にあっても、最大限に尊重されなければならないのであって、国民保護措置の実施を理由として、これらが制限されることがあってはならない。」と明記されるべきである。2  宮城県原案第2編第2章4「指定公共機関等との連携」(宮城県原案21頁)では、(2)で「指定地方公共機関から報告を受けた国民保護業務計画について、必要な助言を行う」とされている。自主的に策定されるはずの「業務計画」について、「助言」の名の下に、事実上の変更あるいは修正を求めたり、更に報道体制等について「助言」することによって事実上の「報道の自由」の制約となる危険性も考えられる。そこで、国民保護計画においては、そのような危険性を取り除くために、「但し、助言に当たっては、それが法令上のものであると事実上のものであるとを問わず、いかなる形においても強制となったり、あるいは強制ととられるなどして、指定地方公共機関の自主性を損なうことがあってはならない。」ことを付け加えるべきである。
 3  宮城県原案第2編第8章3「啓発」(宮城県原案38頁)は、国民保護に関する啓発について定める。
 「啓発」が行政機関から一方的に行われたり、それに対する批判を許さないような環境下で行われてはならないことは当然である。また、啓発の内容が常に正しいものとは限らない。それを防ぐためにも、「表現の自由及びその前提としての『知る権利・報道の自由』」の重要性は、ここでも強調されなければならない。「啓発」の対象である住民を含め、多方面からの様々な批判を受けてこそ、保護計画や業務計画は改良されていくのであって、啓発に当たってもその点は充分に留意されるべきである。よって、「啓発」に対する批判ないし自由な討論の重要性が、国民保護計画に明記されるべきである。
 4 宮城県原案第3編第2章1「県国民保護対策本部の設置等」の(4)(宮城県原案43頁)は、県対策本部長の権限を規定し、①においては指定地方公共機関が実施する国民保護措置に関する総合調整が、③においては指定公共機関に対し指名する職員の派遣を求めることが、⑤においては指定地方公共機関等に対し報告又は資料の提出要求が、それぞれできることとされている。これらは上からの強制あるいは強権発動となる危険性を含んでいる。①においては、「自主性及び自立性に配慮する」と記載されてはいるが、①以外にはこの点の記載はない。国民保護計画においては、全体について、「自主性と自立性」を明記するとともに、「配慮」ではなく、自主性と自立性の「尊重」とすべきである。⑤の報告又は資料の提出要求は、運用によっては報道の自由を正面から侵害しかねない危険性を含んでおり、慎重な対処が必要である。国や地方公共団体が提供する情報が適切妥当な内容のものか否かは、放送事業者等のメディアによる複合的・多角的な取材や報道によって検証されうるのであって、かかる、検証にさらされない情報は市民の適正な判断をゆがめ誤った選択を強いる危険性がある。特に、国の意思が強く出ることになる有事における情報についてはこの観点からの検証が不可欠である。以上から、国民保護計画においては、(4)の冒頭文の末尾に、「県国民保護対策本部長は、以下の権限の行使に当たっては、関係機関の自主性を損なうことがなく、また万が一にも表現の自由又は報道の自由を損なうこと、あるいは、損なうおそれあるとうけとめられることがあってはならない。」ことを明記すべきである。
 5 指定公共機関ないし指定地方公共機関としての放送事業者は、政府や知事に対して、取材過程で知り得た情報等を、取材源を含めて、提供することを事実上強いられる危険性がある(法34条7項)。また、放送事業者は報道の根幹にかかわる体制や報道姿勢について「業務計画」として作成し、これを内閣総理大臣や知事等に報告する義務を負い、かつ助言を受けることがある(法36条)。これは報道の自由の根本をなす取材活動を含む報道体制・姿勢を定めるについて公権力の関与を認めることに他ならない。更に、対策本部長(知事)が、いかなる情報・経緯に基づき武力攻撃事態等の現状を認識したかに関しての検証を前提とせず、放送事業者は、速やかに警報の放送、避難指示等の放送、緊急通報の放送などをすることが義務づけられている(法50条、57条、101条)。報道機関としての自主的な体制の構成及び維持がなければ、報道の自由はあり得ない。特に、武力攻撃事態等の現状については、その多くが防衛秘密とされ、放送事業者等の取材が著しく制限される。  国民保護計画の作成に当たっては、これらの問題点を回避できるような具体的な定めを明記すべきである。2005年(平成17年)12月14日

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2274 ら特集10仙台弁護士会⑤24

平成19年06月29日 犯罪被害者等参加制度関連法成立に対する会長声明
ttp://senben.org/archives/466
去る6月20日、犯罪被害者および遺族(以下「犯罪被害者等」という。)の刑事手続参加制度の新設と損害賠償命令制度を含む「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立した。犯罪被害者等が刑事裁判手続に当事者として直接参加する制度は、現行の刑事訴訟の本質的な構造である検察官と被告人・弁護人との二当事者の構造を根底から変容させ、法廷を復讐の場に逆行させる大きな危険を孕むものである。また、損害賠償命令制度には、刑事事件と民事事件には、立証責任の所在などの点で重要な相違点があるにもかかわらず、刑事裁判と同一の裁判官が基本的には刑事訴訟記録に基づいて民事損害賠償の判断を行なうという重大な問題点がある。それゆえ、当会は、これまで両制度に強く反対してきたものであり、にもかかわらずこの法律が成立したことは、極めて遺憾である。この法律に重大な問題点があることは、参議院法務委員会での附帯決議が、①当事者主義の理念を前提とすること、②過度の報復感情や重罰化を招かないこと、③被告人の権利の適切な保障などに配意した公正かつ適正な運営、④実施時期が近接する裁判員制度において特に被害者参加人による量刑に係る意見については裁判員が被害者参加制度の趣旨を十分に理解することができるよう配意することを、政府及び最高裁判所に対して求めていることからも明らかである。当会は、本年2月の定期総会で反対の決議を行い、また、衆議院通過の際にも反対の声明を発表したところであるが、あらためて、今回の犯罪被害者等参加制度関連法の成立を受け、被告人に憲法上保障された権利の実現のために、上記附帯決議が指摘する運用の徹底と制度の問題点の不断の見直しを求めていく決意である。
2007(平成19)年6月29日仙台弁護士会 会長 角山正

平成19年06月13日 犯罪被害者の刑事参加手続に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/468
犯罪被害者の刑事参加手続に反対する会長声明
 当会は,本年2月24日の定期総会において,被害者参加人制度及び付帯私訴制度は現行刑事裁判制度の根幹を揺るがすものであり,その導入は断じて容認することができないので,政府に対し,このような制度を含む刑事訴訟法の改正案を国会に提出しないように求めるとともに,国会にも上記改正案を成立させないよう強く求めることを決議した。しかし,衆議院は,本年6月1日,被害者の刑事手続参加制度の新設を含む「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」を可決し,参議院に送付した。衆議院での可決に先立ち,本年5月29日の衆議院法務委員会における参考人質疑においても,被害者の遺族の立場にある二人の参考人が,この法案に対して賛成と反対という異なる意見を陳述し,研究者である二人の参考人も大きく異なる見解を述べている。このように,国民の中で意見が分かれているにもかかわらず,衆議院法務委員会においては,このように,十分な審議が尽くされず,法案が採決されるに至ったものである。本法案の参加制度においては,犯罪被害者等は,検察官とは別個の当事者の立場で,証人や被告人に尋問したり,求刑意見を述べたりすることができ,そこに報復感情が影響してくることは否定できない。また,被告人・弁護人は検察官だけでなく,犯罪被害者等とも対峙しなければならず,被告人の防御権の行使にとって負担が加重となることは避け難い。以上のように,本法案は刑事裁判の現場に多大な悪影響を及ぼすことが明らかであることから,参議院に対し,上記改正案を成立させないよう,改めて強く求める次第である。
2007(平成19)年6月13日仙台弁護士会会長角山 正

平成19年05月16日 憲法改正手続法の抜本的見直しを求める会長声明
ttp://senben.org/archives/470
本年5月14日、憲法改正手続法が、参議院本会議において可決成立した。当会は、国民主権主義などの憲法の基本原理を尊重する見地から、また硬性憲法の趣旨からも、憲法改正手続法案に対し、最低投票率の定めがないことをはじめ、公務員及び教員の投票運動を禁止していること、憲法改正の発議後投票日14日前までの有料意見広告を可能にしていること、発議後投票日までの期間が短すぎること等、多くの重大な問題点があることを指摘してきた。また、当会は、参議院での慎重審議を尽くすよう強く要請してきた。にもかかわらず、法案は、上記の問題点が何ら解消されないままに、極めて短い期間で、広く国民的論議が尽くされることなく可決成立してしまった。同法が可決される際、最低投票率制度の意義・是非について検討することを含む18項目にも亘る附帯決議がなされたことは、同法が多くの重大な問題点を残し、かつ、十分な審議を経ていないことを如実に示すものである。国民主権にかかわる最重要の法案が、国民の意思を十分に汲み取ったとは言えない拙速な審議によって成立してしまったことは誠に遺憾である。憲法改正手続法の国民投票に関する規定の施行は公布から3年後とされた。当会としては、国会に対し、この3年の間に、附帯決議がなされた事項にとどまらず、憲法改正権者は国民であるという視点にたち、あらためて国民投票に真に国民の意思を反映することができるような法律にするべく、同法の抜本的な見直しがなされることを強く要請する。
2007(平成19)年5月16日仙台弁護士会 会長 角山 正

平成19年04月27日 イラク特措法の2年間延長法案に反対し、自衛隊の即時撤退及びイラク特措法の廃止を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/472
政府は、2007(平成19)年3月30日、時限立法として制定され本年8月1日で失効する「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」(以下「イラク特措法」という。)を2年間延長する同法改正案を国会に上程した。当会は、自衛隊のイラク派遣に関して、これまで「イラク特別措置法案に対する会長声明」(2003年7月16日付け)、「自衛隊のイラク派遣に反対する会長声明」(同年12月18日付け)、「自衛隊のイラク即時撤退を求める会長声明」(2004年4月12日付け)、「自衛隊のイラク派遣延長反対・即時撤退並びにイラク特別措置法の廃止を求める会長声明」(2004年11月17日付け)及び「自衛隊のイラク派遣再延長に反対し、即時撤退及び『イラク特措法』の廃止を求める会長声明」(2005年11月17日付け)をそれぞれ発表し、自衛隊イラク派遣が自衛隊の武力行使を事実上容認し、また米英軍を中心とする占領軍及び主権移譲後の多国籍軍の武力行使と一体化するものであって、憲法前文及び9条に違反するおそれが極めて高いこと、自衛隊が駐留していたサマワも迫撃砲が撃ち込まれるなど「非戦闘地域」とは言えずイラク特措法にも違反していることを指摘してきた。そもそも、自衛隊のイラク派遣は米英によるイラク侵攻に端を発するものであるが、そのイラク侵攻は国連安保理決議もなく、自衛行為でもないので、国連憲章に違反していることは明らかである。しかもこの間、イラク侵攻の大義名分とされてきた大量破壊兵器の存在及び旧フセイン政権と国際テロ組織アルカイダとの結びつきまでもが、いずれも虚偽情報であったことが明らかとなった。このような状況の中、当初占領軍や多国籍軍に加わっていたスペイン、オランダ、及びイタリア等18カ国が既にイラクから撤退し、デンマークやリトアニアも撤退を表明し、さらにはイギリスも派兵規模を半減すると表明している。アメリカにおいても、イラク駐留米軍の撤退期限を上院では2008(平成20)年3月末まで、下院では同年8月末までとする法案を可決している。しかるに、政府は、2006(平成18)年7月17日に陸上自衛隊をサマワから撤退させたものの、航空自衛隊及び海上自衛隊の派遣を継続し、航空自衛隊についてはその活動地域をバグダッド等に拡大させている。既にイラク全土が内戦状態にあると言われている中で、航空自衛隊機が離発着するバグダッド及びその近郊は、とりわけテロや戦闘が続く激戦地であり、「非戦闘地域」であるとはおよそ認められない。従って航空自衛隊の活動拡大は、イラク特措法違反と言わざるを得ない。また、航空自衛隊の活動内容も、政府はその全容を明らかにしていないものの「武器を携行している米兵」(2004年4月8日津曲義満航空幕僚長記者会見)や「多国籍軍の軍人、兵士等」(2005年3月14日参議院予算委員会大野防衛庁長官答弁)を輸送しており、多国籍軍のための輸送支援であることは否定できない。これらの輸送支援は、「人道復興支援活動」ないし「安全確保支援活動」とは言えず多国籍軍の武力行使と一体化するものであって憲法前文及び9条に違反する疑いが極めて濃厚である。加えて、多国籍軍の中心をなす米軍は、これまで対テロ作戦と称してイラク各地で幾度となく掃討作戦を繰り返してきたが、その戦闘に巻き込まれて多くのイラク一般市民が死傷している。このような状況下で、イラク特措法を延長し、自衛隊のイラク派遣を継続することは、武力によらない平和を希求し、全世界の人々の平和的生存権を確認する日本国憲法の恒久平和主義に反するとともに、現地で活動する自衛隊員の安全を著しく脅かすものである。にもかかわらず、政府は国民に対して、イラクに派遣されている自衛隊の活動実態を十分説明することもないままに、時限立法たるイラク特措法の延長法案を成立させようとしている。よって、当会は、日本国憲法の恒久平和主義に背く政府の姿勢に対して抗議するとともに、イラク特措法の延長に反対し、自衛隊の即時撤退及びイラク特措法の廃止を強く求める。
2007年(平成19年)4月27日仙台弁護士会  会長 角山 正

平成19年04月25日 憲法改正手続法案(国民投票法案)に反対し参議院での慎重審議を求める緊急会長声明
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与党は、2007年(平成19年)4月13日、衆議院本会議において日本国憲法の改正手続に関する法案(いわゆる国民投票法案)を強行採決した。与党は参議院においても5月3日までに本会議採決を目指しているとされる。しかし、同法案には、国民に対する中立公正な情報提供、自由かつ十分な投票運動の保障、投票結果への国民意思の正確な反映等の観点から重大な疑義が存在する。これらの問題点については既に2006年(平成18年)7月7日の東北弁護士会連合会大会決議、同年8月22日付け日本弁護士連合会意見書、当会の2007年(平成19年)2月24日の総会決議において指摘されているところである。憲法96条1項の「国民の承認にはその過半数の賛成を必要とする」の意味については諸説があるが、憲法が、憲法改正について国民の承認という特別の手続を定めたのは、憲法改正は主権者である国民自らの意思によらなければならないという国民主権原理に基づく。そして国民自らの意思による改正と言えるためには、少なくとも改正に賛成する票が白票や無効票を含む全投票総数の過半数を超えたときに国民の承認があったものとされるべきである。しかしこのように解したとしても最低投票率の制度を設けなければ、投票率が低い場合、投票権者の少数の賛成で憲法改正が可能となってしまうが、それでは国民自らの意思による憲法改正とは到底評価できない。従って国民自らの意思による憲法改正と言えるためには一定の最低投票率の定めが不可欠である。もっとも最低投票率の定めについては、憲法がそれに言及していない以上そのような制度を設けることは憲法に違反するとの見解もある。しかし、最低投票率の制度は、最低投票率にも達しないような投票結果では真に国民自らの意思とは評価できないので「国民の承認あり」とすべきでないとの考えに基づくものである。従って最低投票率の定めはむしろ憲法96条1項の要求するところであって、条文が最低投票率に言及していないとの一事で憲法に違反すると考えることは妥当でない。そして最近の世論調査によれば、最低投票率の定めが必要とする意見は79%にも達している。また昨日仙台市で開催された参議院地方公聴会においても、公述人は最低投票率の定めは絶対に必要との考えを述べている。しかるに与党案は最低投票率の定めを欠いている。与党案については、それ以外にも、公務員及び教員の投票運動を禁止していること、憲法改正の発議後投票日14日前までの有料意見広告を可能にしていること、発議後投票日までの期間が短すぎること等重大な問題点が指摘されている。ところが与党は衆議院において、拙速審議との強い批判にもかかわらず与党単独での強行採決を行った。そして今また参議院送付後僅か2週間程度で再び強行採決を目指している。主権者たる国民の意思が正確に反映されるよう万全を期すべき国民投票法案についてかかる拙速な審議がなされることは誠に由々しき事態と言わねばならない。当会は、我が国の在り方の根幹に関わる国民投票法案が、上記の重大な問題を残したままで制定されることに断固反対である。参議院においては、さらに全国各地で公聴会を開催するなど国民の意思を十分に汲み取り、良識の府にふさわしい慎重な審議を尽くすよう強く求めるものである。
2007年(平成19年)4月25日仙台弁護士会 会長 角山 正

平成19年02月24日 国選弁護報酬・費用の大幅増額と予算措置を求める決議
ttp://senben.org/archives/480
1 憲法37条3項は,被告人に国選弁護人を付する義務を国に課している。また,被疑者の弁護人依頼権は憲法上保障されているが,貧困等のため弁護人を依頼できない被疑者に対しては,憲法と国際人権法の諸規定に鑑み,国が弁護人を付す責務を負っているというべきであり,平成18年10月から実施された被疑者国選弁護制度も,こうした憲法上の要請を受けて定められたものである。このような憲法上の要請を受けて活動する国選弁護人の職責は極めて重いものであり,国は国選弁護人に対してその職責に応じた適切な報酬と実費を支払うべきである。しかるに,国は,これまで国選弁護人報酬額を極めて低額な報酬にとどめ置いてきたばかりか,記録謄写料,交通費等の実費を原則として支給しなかった。これは,国選弁護人制度の実施にあたり,被告人の権利擁護のために努力する弁護士の犠牲的活動に依存し,国の経済的負担を不当に回避してきたものと言わざるを得ない。このような視点から,当会はこれまで,二度にわたる会長声明において国選弁護報酬の引き下げに厳重に抗議するとともに,適正な報酬額にするよう求めてきた。
 2 このような経過の下において,平成18年5月に定められた日本司法支援センターの「国選弁護人の事務に関する契約約款」に基づく国選弁護報酬及び費用(以下「新算定基準」という。)は,以下のとおり,極めて低額に据え置かれてきた報酬額をさらに減額したばかりでなく,加算基準の内容において極めて不合理な点があり到底容認できない。まず,被告人国選弁護の基礎報酬は,これまでの報酬額を更に下回るもので低廉に過ぎる。次に,被疑者国選弁護の報酬は,接見回数に2万円を乗じた金額(但し初回接見2万4000円)となっている。そもそも,被疑者弁護活動は接見に尽きるものではなく,事実調査を行なったり,自白強要等不当な取調べを阻止したり,家族との意思疎通を図ることで社会復帰に向けての環境を整備したり,示談を進めたり,また被疑事実及び情状について検察官に意見を述べるなどの様々な活動を含む。従って,接見回数のみによって報酬額を決定することに合理性がないことは明らかであり,別途基礎報酬を設定する必要がある。また,新算定基準によれば,報酬の特別成果加算として,示談成立が挙げられているものの,犯罪事実すべてについて示談が成立しなければ全く加算されないこととなっている。しかし,一部についての示談であったとしても,その成立のため弁護人が一定の活動をした結果,執行猶予や減刑の可能性が高まるのが通常であることからすると,このような成果を特別加算の対象とすべきは当然である。更に,被疑者弁護における起訴猶予,嫌疑不十分・嫌疑なしによる不起訴処分,被告人弁護における執行猶予や無罪及び保釈等の獲得に対する特別成果加算が認められていない。しかし,これらの結果は,弁護人が被疑者等に有利な情状,被疑者等と犯罪事実とのつながりを否定する事情や当該行為が犯罪を構成しない理由,また保釈を認めるべき相当な事情等を検察官や裁判所に対して主張した結果であることが通常であり,類型的に見れば,まさに弁護人の諸活動の成果であることは明らかであって,このような成果を特別成果加算の対象とすべきは当然である。実費についても,新算定基準によれば往復100キロメートル未満では弁護活動のための交通費の支払はなされず,200枚以内の謄写枚数に対して記録謄写料の支払さえなされないこととなっている。しかし,弁護活動に必要な実費さえ支給しないことは,低額な国選弁護報酬をさらに実質的に削減することを意味し,到底容認できない。
 1 平成21年には,被疑者国選弁護の対象が必要的弁護事件に拡大し,国選弁護制度を支えるために弁護士はさらなる経済的犠牲を求められ,前述した問題点が一層その深刻さを増すことは明らかである。そこで,当会は,持続可能性のある国選弁護制度の確立のためには制度を支える弁護士に対して適切な報酬及び費用が支払われるべきであるという視点から,日本司法支援センターに対しては,国選弁護報酬・費用の大幅増額及び合理的な加算基準を求めるとともに,国に対しては上記増額のために必要な予算措置を求める次第である。以上のとおり,決議する。
平成19年(2007年)2月24日仙台弁護士会会長  氏  家  和  男

平成19年02月24日 犯罪被害者参加人制度及び付帯私訴制度導入に強く反対する決議
ttp://senben.org/archives/478
犯罪被害者参加人制度及び付帯私訴制度導入に強く反対する決議
 1 法制審議会は,平成19年2月7日,被害者参加人制度及び付帯私訴制度を柱とする要綱を決定した。これを受けて政府は,今国会に法案を提出する構えである。しかし,上記両制度は,現行刑事裁判制度の根幹を揺るがすものであり,その導入は断じて容認することができない。
 2 被害者参加人制度は,故意に人を死傷させた事件等について,犯罪被害者や遺族(以下,「被害者等」という。)に,在廷することを認めた上で被告人に質問し,証人に対しては情状に関する内容について質問し,そして検察官の論告求刑後,独自に論告求刑をするなどの権限を付与するものであり,「参加人」と称しつつも,まぎれもなく訴訟当事者としての地位を認めるものである。しかし,近代刑事司法制度においては,私的復讐が公的刑罰に昇華された結果,国家と被告人が対立当事者として予定されることとなり,ここに私人としての被害者等が当事者として加わることは,法廷を復讐の場に逆行させる大きな危険を孕むものである。いうまでもなく,被告人は,有罪判決が確定するまでは無罪と推定されなければならない。被害者等が刑事裁判に当事者として参加することは,当該被告人が犯人であることが前提となっており,無罪推定の原則が侵害される結果となる。本制度が導入されるときには,被告人が,被害者等から怒りや悲しみなどを前面に出した質問を直接に受けることになり,時には供述したいことを控えざるを得なくなるなど防御活動を萎縮させる可能性が極めて高い。また,被害者が在廷すること,及び直接に質問又は論告求刑を行うことは,特に平成21年に実施される予定の裁判員裁判においては,裁判員の情緒に強く働きかける結果,証拠に基づいて冷静になされるべき事実認定について不当な影響を与える危険性も強い。更に,被害者等の直接関与により,検察官の訴追活動と異なる被害者等の訴訟活動が行われれば,検察官の訴追方針との不整合が生じ得ることは容易に予想されるところであり,被告人は,それら全てに対して防御することを余儀なくされ,防御すべき対象が拡大することとなり,被告人の防御を著しく困難にする。
 3 付帯私訴制度は,有罪判決言渡直後に,刑事事件と同一の裁判官が引き続き刑事裁判で認定した事実や,刑事記録を証拠として,被告人に対する損害賠償額を決定するというものである。しかし,そもそも,同制度は起訴後何時でも付帯私訴申立書を提出することが許されているため,同申立書記載内容が証拠法則の吟味を受けずに裁判所が目にすることを意味し,まさに証拠裁判主義に反し,ひいては予断排除,無罪推定原則にも抵触する。特にこの弊害は,刑事裁判についての経験に乏しい裁判員による裁判において顕著であるといわざるをえない。また,そもそも刑事事件と民事事件には,立証責任の所在や自白法則等,重要な相違点がある。刑事裁判に引き続き損害賠償命令を出せるとすることは,刑事裁判と民事裁判との相違点を無視することを意味する。更に,この制度においては,被告人及び弁護人としては,過失相殺など損害賠償請求についての審理で争点となると予測される事項を強く意識して審理に対応せざるを得なくなり,刑事訴訟が遅延するとともに,争うこと自体が量刑上不利な情状として考慮されるおそれを感じることで,十分な防御権の行使ができなくなる恐れもある。
 2 以上述べてきたとおり,両制度には大きな問題点があり,これを導入することは到底容認できないので,当会は,政府に対し,このような制度を含む刑事訴訟法の改正案を国会に提出しないように求めるとともに,国会にも上記改正案を成立させないよう強く求める次第である。以上のとおり,決議する。
平成19年(2007年)2月24日仙台弁護士会 会長 氏家 和男

平成19年02月24日 憲法改正国民投票法制定に反対する決議 〜特に最低投票率の定めのない法案に反対する〜
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平成18年5月26日,自民・公明の与党及び民主党は,それぞれ憲法改正に必要な手続を定める国民投票法案を衆議院に提出し,平成19年1月25日に始まった通常国会における重要法案として審議がなされている。いうまでもなく,憲法改正国民投票は,主権者である国民が国の最高法規である憲法のあり方について意思を表明するという国政上の重大問題であり,中立公正な情報提供,自由かつ十分な投票運動の保障,投票結果への国民の意思の正確な反映等が不可欠である。しかし,上記両法案には,中立公平が期待できない広報,国民投票運動の広範な制限,少数の賛成で承認とされる恐れ等の重要な問題点が多々含まれている。それらの問題点については,東北弁護士会連合会の平成18年7月7日の大会決議や日本弁護士連合会の同年8月22日付け意見書などで指摘されており,その後の国会での審議などで改善が検討されているものもある。しかるに,国民投票を有効とする条件としての最低投票率の定めについては,与党及び民主党は導入しないという考えであり,議論すらほとんどなされていない。現行憲法は,人権尊重主義,国民主権及び平和主義を掲げ,広く国民に浸透・支持されてきた国の最高法規である。憲法改正とは,このような現行憲法を積極的に変更しようとする行為であり,国民と国家に多大な影響を与えるものである。それゆえ憲法自身改正が容易になされないよう厳格な改正手続を定めている。よって,憲法改正には国民の多数がこれを是として現状を変更する旨の意思を明白かつ積極的に表明することが必要と考えるべきである。ところが,最低投票率の定めが導入されなければ,例えば投票率40%の場合には投票権者の20%超程度の賛成で足りることになり,投票権者のほんの少数の賛成により憲法が改正される恐れがある。このように投票権者の3分の1にも満たない少数の賛成で憲法改正が承認されるのは,改正憲法の正当性・信頼性に疑義が生じ極めて不当と言わざるを得ない。そのため,日本弁護士連合会も前記の意見書で憲法改正の重要性や硬性憲法とされている趣旨からして少なくとも3分の2以上の最低投票率を定めるべきであるとの意見を発表している。当会も少なくとも3分の2以上の最低投票率を定めることを強く求めるものである 憲法改正を目的とした国民投票法を制定すること自体の是非をめぐっては議論が存するところであるが,昨今の国会情勢からして,東北弁護士会連合会の前記決議で指摘した問題点が解消されないまま,また,最低投票率の定めについては議論もないまま,国民投票法が近日中に成立してしまう恐れが強くなっている。そこで,当会は,前記決議で指摘した問題点が解消されないまま国民投票法を制定することに反対するとともに,とりわけ最低投票率の定めのない国民投票法案に強く反対するものである。以上決議する。

平成19年(2007年)2月24日仙台弁護士会 会長 氏家 和男

平成18年11月16日 教育基本法改正に反対する緊急声明
ttp://senben.org/archives/487
これまで当会は2回にわたり、教育基本法改正反対の会長声明を発表し、本年5月18日には、改正法案についてほとんど非公開のうちに議論が進められたこと、改正の必要性について全く検証もなされていないこと、また、内容的にも、憲法に則り「個人の価値」を最大限尊重することを目的とした現行法に比べ「公共の精神」を養う目的を加えることで、その理念を後退させたばかりか、愛国心教育を目標と定めて内心の自由を保障する憲法19条に抵触するおそれがあることなどをその重大な問題点として強く反対した。 しかるに、今国会に提出された改正法案においては、上記問題点が全く解消されていないばかりか、近時のマスコミ報道により、教育基本法改正にあたっての民意の反映の過程自体にも重大な問題点を孕むことが明らかとなっている。すなわち、政府は市民と政府の相互対話の場としてタウンミーティングを開催し、教育基本法改正問題についてもタウンミーティングを通じて民意を反映したかのごとき体裁を整えてきた。しかし、政府は、タウンミーティング実施に際して、質問事項を地元教育委員会に送るなどして教育基本法改正に賛成する「やらせ」発言をさせたことなどが明らかになった。更に、近時は政府が、賛成意見を述べる者に対して謝礼を渡していたという事実も判明し、加えて主催者において政府側の意を受け、改正に反対する参加者を意図的に排除したという疑惑も生じている。いうまでもなく、教育基本法は、憲法と同様に、その基本において名宛人は国家であり、教育の根本規範として、子どもが自由かつ独立の人格として成長するために必要な理念と基本原則を明らかにしたものであって、準憲法的・立憲主義的な性格を有するものである。教育基本法の改正は、このような教育基本法の性格に鑑み、通常の法律以上に慎重でなければならないし、その内容について十分な国民的合意が必要なものと言わなければならない。にもかかわらず、上記の通り、民意を聞く場におけるやらせ発言によりいわば世論を偽装し、政府の求める方向に世論を恣意的に誘導しようとする姿勢は、民主主義の根幹を揺るがすものとして厳しく断罪されなければならない。NHKの最新のアンケートでは、改正に賛成する者は全体の4割に過ぎず、しかも、賛成するものの中でも、その7割は拙速な改正には反対しているという。また、東京大学による全国の小中学校校長に対するアンケートによれば約7割近くが改正に反対しており、宮城県でも元公立小中学校校長19名が連名で改正に反対を表明している。更に、仙台市において11月8日に開催された地方公聴会においても、国民的議論と合意が必要であると慎重審議を求める声が多かった。一方、現在、教育にまつわる重大な問題が噴出している。いうまでもなく、一つには陰湿なイジメの問題や虐められた子どもの自殺の問題、そしてその連鎖の問題であり、もう一つには学習指導要領により必修とされた科目を意図的且つ組織的に履修させないということが広く行われていたという問題である。今、社会が緊急に求められていることはまさにこれらの諸問題の原因の探求と対策であり、これらの検証作業が行われること抜きに、不適切な方法による世論の誘導の中で教育基本法の改正が行われることは断じて容認できない。しかし、与党は、去る11月15日、衆議院の教育基本法特別委員会において野党欠席のまま単独採決を行い、更に11月16日、衆議院本会議においても野党欠席のまま単独採決を強行した。ここに当会は、あまりにも民意を無視したかかる衆議院の審議のあり方に断固抗議するとともに、参議院においては衆議院における実質的な審理がなされなかった法案として速やかに廃案とすることを強く求めるものである。
18年(2006年)11月16日仙台弁護士会会長氏家 和男

平成18年10月03日 平成18年10月3日会長声明
ttp://senben.org/archives/489
平成18年8月15日、山形県鶴岡市にある加藤紘一衆議院議員の実家と地元事務所が放火されるという事件が発生し、9月19日、右翼団体の構成員であったとされるこの事件の被疑者が現住建造物放火罪と住居侵入罪で山形地方裁判所に起訴された。報道によれば、被告人は、加藤紘一議員が小泉前総理大臣の靖国神社参拝への積極的な姿勢について批判する意見を表明していたことについて強い不満を抱き、放火に及んだとのことである。靖国神社への首相参拝を巡っては、これまでも昨年1月、参拝に反対する発言をした財界関係者の自宅に火炎瓶が置かれ、実弾が郵送されるという事件が発生し、また、本年7月にも昭和天皇が靖国神社のA級戦犯合祀に不快感を示す発言をしていたとされるメモをスク?プした新聞社に対して火炎瓶が投げられるなどの事件が発生しており、今般の放火事件も、これらの事件と同様、自己と政治的意見が異なる者への言論封殺のための暴力行為であることは明らかである。いうまでもなく民主主義は、広く国民に多様な価値観、意見の違いがあることを前提に、自由な言論を通じて民意を形成していく過程にその本質があり、その意味で言論の自由の保障はまさに民主主義の根幹をなすものである。異なる政治的意見を持つ者に対して、放火という生命、身体、財産に対するいわば極限的な侵害行為をなすことによりその言論を封殺しようとすることは、ひとり当該政治家の言論の自由の侵害にとどまるものではなく、これにより他の政治家や他団体、更には国民一般の言論の自由に対する著しい萎縮的効果を与えるものであり、まさに民主主義社会を根底から否定しようとする蛮行と言わざるを得ない。当会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする法律家の団体として、言論の自由が保障され、いかなる意見や価値観も自由に表明しうる民主主義社会の重要性を改めて広く市民に訴えるとともに、自由な言論を萎縮させるあらゆる暴力行為を許さない社会を創るため全力を尽くす決意であることをここに表明するものである。
平成18年(2006年)10月3日仙台弁護士会 会長 氏 家 和 男

平成18年05月18日 共謀罪の新設に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/501
2006(平成18)年5月現在、衆議院において、共謀罪新設を含む「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」の審議がなされている。
 当会は、昨年度までに2度にわたり、この共謀罪の新設に反対する会長声明を出した。与党は法案審議の過程で、当初の政府法案を修正する法案を提出した。しかし、この与党修正案をもってしても、当会が上記の会長声明で指摘した問題点は解決されていない。このまま立法がなされるときには市民の思想・信条の自由が侵害され、ひいては情報伝達や情報発信という自由な活動に対する萎縮効果が見込まれ、これを看過することは到底できない。まず、上記政府法案及び与党修正案の最大の問題点は、犯罪の共謀があっただけで犯罪が成立することである。現行刑法では、共謀段階で犯罪が成立するのは、内乱罪・外患罪のみであり、きわめて重大な犯罪に限定されているが、政府法案及び与党修正案では615もの犯罪について、共謀を行っただけで犯罪が成立することとになる。しかも、共謀のみによって共謀罪の成立を認めるということは、犯罪の抽象的な危険の存否すら不明な段階であっても、犯罪に関する会話や通信をしたことだけで犯罪が成立するとされる虞がある。例えば、マンション建設反対運動の話し合いをしただけで、威力業務妨害共謀罪に当たるとして逮捕される可能性があるのである。また、政府法案及び与党修正案では、共謀とは犯罪実現の意思を通じることとされており、構成要件として抽象的であり明確性を欠いている。かかる抽象的、不明確な構成要件の共謀罪の捜査においては、特定の行為だけで構成要件該当性を認定することができないため、市民の思想、信条まで捜査対象となり国民の思想信条を侵害する虞がある。さらに、共謀の事実の捜査の名のもとに捜査機関が市民の一般的な会話を傍受したり、電話や電子メールのやり取りを監視する事態も予想される。このような捜査方法が認められるならば、市民の情報伝達や情報発信という自由な活動が萎縮することは避けられない。結局、共謀罪を新設し、615もの犯罪について、その共謀のみをもって犯罪の成立を認めるということは、思想信条の自由を侵害し、民主主義を支える市民間の自由な情報の流通、とりわけ表現の自由に対する重大な脅威となるものであり、到底容認することはできない。よって、当会は、あらためて、上記政府法案及び与党修正案に対し、強く反対することを表明するものである。
2006(平成18)年5月18日仙台弁護士会会長 氏 家 和 男

平成18年05月18日 教育基本法の「改正」に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/496
1 去る4月28日、教育基本法の全部を改正する法案(以下「本法案」という)が国会に提出された。
2 本法案については、法案化に至る過程において、十分な議論が行われたとは言い難く、法改正の手続に重大な問題がある。本法案の元になった「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(最終報告)」は、2003年6月に設置された「与党教育基本法改正に関する協議会」及びその下の「検討会」において、通算70回にわたる精力的な議論を積み重ねたうえで取りまとめられたものとされるが、この間、2004年6月に中間報告が公表されたことを除いては、全て非公開にて議論が進められており、国民に向けて開かれた議論が行われたとは言い難い。「教育の憲法」とも言われる教育基本法の改正の在り方としては極めて不適切である。
3 今回の改正については、その立法事実についても重大な疑問がある。「与党教育基本法改正に関する協議会」の設置に先立つ2003年3月、中央教育審議会が作成した答申においては、「教育の現状と課題」として、「いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊などの深刻な問題が依然として存在」することが指摘され、そのような「危機的状況を打破し、新しい時代にふさわしい教育を実現するために」改正が必要であるとされている。本法案は上記答申を受けたものであるが、上記答申後本法案提出までの間、上記答申が指摘するような教育現場の問題が教育基本法の欠陥によるものであることの検証は全くなされていない。
4 本法案は、現行教育基本法が第1条において教育の目的として掲げていた「個人の価値をたっとび」の文言を削除し、かえってその前文において、「公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を承継し、新しい文化の創造を目指す教育を推進すること」を謳い、教育の目標として、「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」を明記している。これは、個人の尊厳を重んじる憲法の精神に則り、「個人の価値」を最大限尊重することを教育の目的に据えた現行教育基本法の理念を、「公共の精神」を養う目的のもとで後退させるものであり、極めて問題というほかない。子どもの権利条約29条第1項aは、教育が子どもの成長発達権を支援するために行われるべきであるという理念を普遍的な教育目的として掲げているが、本法案が規定する上記の教育目標はこのような教育についての世界の到達点にも反するものである。
5 また、本法案は、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する(中略)態度を養うこと」を教育の目標として据えている。上記答申においては、「国を愛する心をはぐくむ」と表現されており、表現内容に若干の変容が見られるが、その実質において変わりはなく、公教育の場における愛国心教育を推進する内容となっている。しかし、国を愛するか否かを含め、国を愛する心情の内容は、個人の内心の自由に属する問題であり、国が介入し管理・支配してはならない領域である。公教育の場で「国を愛する」ことが当然であると教えることは、内心の自由を保障する憲法19条に抵触するおそれがある。さらに、現行教育基本法は、明治憲法下の「愛国心」教育が軍国主義という国策のための教育となりこのことが戦争の惨禍の一因となったことを反省し、平和国家建設の決意により誕生したものであるが、「国を愛する態度」を養う教育が行われるとすれば、正に時代の流れに逆行するものである。
 3 以上のとおり、本法案は、法案化の手続において著しく拙速であるとともに、その内容においても重大な問題をはらんでいると言わざるを得ない。当会は、「愛国心」教育の名の下に本来の教育が歪められ、国家に有為で従順な人間作りの目的で営まれることに強い危惧を表明し、本法案に基づく教育基本法の「改正」に反対する。
2006年5月18日仙台弁護士会会長 氏家 和男

平成18年05月18日 未決拘禁法案の修正等を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/499
本年4月14日,「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」(いわゆる未決拘禁法案。以下、「本法案」という。)が衆議院法務委員会の附帯決議をつけ衆議院を可決成立し,参議院に送付された。しかし,本法案には次のような問題点があり,参議院においては修正等がなされることを求める。
* 1 法制審議会は1980年に,「関係当局は,将来,できる限り被勾留者の必要に応じることができるよう,刑事施設の増設及び収容能力の増強に努めて,被勾留者を刑事留置場に収容する例を漸次少なくすること」(漸減条項)という答申を全会一致で採択した。しかしながら,本法案は,上記答申と異なり、「都道府県警察に留置施設を設置する」(14条)として,法律で初めて警察留置場の設置根拠を認め,さらに,この警察留置場に本来刑事施設に収容すべき被勾留者を「刑事施設に収容することに代えて,留置施設に留置することができる」(15条1項)ことを認めるに至っている。この点に関し,衆議院は上記附帯決議において,「昭和五十五年に法制審議会から『関係当局は、将来、できる限り被勾留者の収容の必要に応じることができるよう、刑事施設の増設及び収容能力の増強に努めて、被拘留者を刑事留置場に収容する例を漸次少なくすること。』との答申がなされたが、現在、刑事収容施設の過剰拘禁問題の解決が、当時に比しても、喫緊の議題となっており、その実現に向けて、関係当局は更なる努力を怠らないこと。」とし,警察留置場漸減の点に触れてはいるが,代用監獄の弊害に言及せずに過剰拘禁問題との関連で述べるにとどまっていて,不十分のそしりを免れない。以上のとおり,本法案は,代用監獄廃止,漸減の方向性すら明示しておらず極めて遺憾である。
* 2 捜査と拘禁の分離は国際人権(自由権)規約(9条)の求めるところであり,国際人権(自由権)規約委員会も,警察内部での分離では不十分とし,代用監獄の廃止を勧告している(1993年,1998年)。
*  この点に関し,警察庁は1980年,捜査部門と留置部門を分離したと弁明しているが,それ以降でも代用監獄での自白強要,人権侵害事例は後を絶たず,代用監獄の弊害は現在でも解消されていない。これは宮城県内においても例外ではない。例えば,仙台地方裁判所平成13年4月24日判決は、酒に酔っていて事実経過を覚えていない被告人について、誘導のもと自白調書が作成された事案であるが,捜査関係者は被告人が犯行に関与しているとの嫌疑を有しており,自白供述を内容とする上申書が作成されていたが,これは,警部補が鉛筆で下書きしたものについて被告人にボールペンでなぞらせて作成したものであった。判決は,自白を裏付ける客観証拠の欠如,供述の変遷,説明の不自然さ,動機や犯行自体についての迫真性の欠如などを丁寧に認定した上で,自白の信用性を否定したものである。この事件は佐沼警察署での取調中のものであり,全国的にも今なお,代用監獄での人権侵害事例が数多く報告されている。
*  このような代用監獄の弊害からして,参議院は,1980年に法制審議会において採択された前記答申の歴史的事実をふまえ,「拘置所の収容能力の増強に努めて,代用監獄に収容される例を漸次少なくする」との漸減条項を法案の附則として盛り込むか,または,代用監獄の規定を廃止すべきである。
* 3 本法案は,「留置施設の規律及び秩序を害する行為」をするときは,面会の相手方が弁護人等の場合であっても職員による面会の一時停止を認めている(219条1項)。しかし、このような規定は刑事施設法案にもなかった規定であり,しかも、弁護人との秘密交通権に対する干渉に当たるものであるから、このような抽象的理由で弁護人との面会が停止されるようなことはあってはならないのである。したがって、当会は弁護人との面会の停止を定める当該条項が修正されることを求める。*  以上のとおり,本法案には代用監獄の漸減条項が盛り込まれていないなど,種々問題を有するものであるから,当会は今後とも,代用監獄の漸減,廃止と未決拘禁制度の抜本的改革を求めて引き続き粘り強く運動を続ける決意である。
2006(平成18)年5月18日仙台弁護士会会長氏家和男

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平成16年10月21日 教育基本法改正に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/536
1 中央教育審議会は、2003年3月20日、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」と題する答申(以下「本答申」という)を文部科学大臣に対して行った。本答申は、「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から、今日極めて重要と考えられる教育の理念や原則を明確にするため、教育基本法を改正することが必要である」と結論づけたうえで、教育基本法の前文及び各条文について、「引き続き規定することが適当」なものと「新しく規定することが適当」なものとを挙げ、具体的な改正の方向を示した。本答申を受けて、政府は与党内協議を重ねており、本年12月からの通常国会に上程すべく改正法案の作成作業を行っているとのことである。
 2 現行の教育基本法1条は、個人の尊厳を重んじる憲法の精神に則り、教育の目的を「人格の完成」と明記している。これは、教育が子どもの成長発達権を支援するために行われるべきであるという理念に基づくもので、世界人権宣言や子どもの権利条約にもこれと同様の規定が置かれており、普遍的な教育目的を示すものである。さらに、我が国においては特別な歴史的意義を有している。即ち、明治憲法下の教育は、天皇の言葉である教育勅語によって教育の根本的なあり方が定められ、「滅私奉公」、「忠君愛国」の理念が掲げられた。そして、「愛国心」の名の下、国家に役立ち従順に従う人間を育てるための教育が行われた。敗戦後の日本国憲法下の教育基本法は、明治憲法下の教育が戦争の惨禍の一因となったことを反省し、国家の役にたつ人間づくりの教育を排した。しかるに、本答申は、「これからの知識社会における国境を越えた大競争の時代に、我が国が世界に伍して競争力を発揮する」ために、「知の世紀をリードする創造性に富んだ多様な人材の育成が不可欠である。」とし、教育の基本目標として「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」を掲げて、教育基本法の「改正」を提言している。これは、「人格の完成」という教育の本来の目的を、国家の役にたつ人間づくりの教育へと変質させるものである。
 3 さらに、本答申は、「日本人であることの自覚や、郷土や国を愛する心の涵養」を教育の目的として据え、公教育の場において「愛国心」教育が実施されるべきであるとする。しかし、国を愛するか否かを含め、国を愛する心情の内容は、個人の内心の自由に属する問題であり、国が介入し管理・支配してはならない領域である。とりわけ、批判精神が十分に育っていない義務教育段階の子どもに対し、公教育の場で、教師から他の教科課目と並んで、「愛国心」を持つことが日本人として当然であると教えることは、「愛国心」の押し付けとなるおそれが強く、内心の自由を保障する憲法19条に抵触するおそれがある。また、公教育における日本人としての「愛国心」の押し付けは、我が国の少数民族や在留外国人の子どもたちに対する精神的な圧迫ともなる。近時、広島県、東京都等では、君が代斉唱時に起立しなかった教師が教育委員会によって処分されるという事態が生じており、教師の統制を通じて子どもや保護者に対する君が代斉唱を強制しようとする動きがある。また、2002年には、全国1100万人の小中学生に『心のノート』が配付され、その中には「愛国心」を持つことは日本人として「自然」であるという内容が記載されている。このように、本答申が提起する「愛国心」教育は既に先取りで実施されており、仮に教育基本法に「愛国心」教育が盛り込まれるならば、このような動きは一層強まることが懸念される。
 1 以上のとおり、本答申の内容は、教育の目的を国に役立つ人材作りに変容させるとともに、内心の自由を侵害するおそれがあり、憲法、子どもの権利条約及び現行教育基本法の根本理念に反する。当会は、教育が「愛国心」の名の下に国家に役立つ従順な人間作りの目的で営まれることに強い危惧を表明し、本答申に基づく教育基本法の「改正」に反対する。
2004年10月21日 仙台弁護士会会長 鹿野 哲義

平成16年08月26日 弱者の裁判を受ける権利を侵害する「合意による弁護士報酬敗訴者負担」法案に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/538
当事者の合意によって弁護士報酬を敗訴者負担とする制度を創設することを内容とする「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」(以下、本法案という)が、本年3月2日に国会に上程され、現在継続審議となっている。本法案は、訴訟提起後に双方に訴訟代理人がついている場合に当事者の共同申立により弁護士報酬の一部を敗訴者負担とすることを内容とするものである。本法案は、訴訟手続上の制度を定めるものであるが、訴訟外の契約・約款などで敗訴者負担の合意をすること(実体法上の合意)を禁じていない。このため、本法案が成立すれば、訴訟外での私的契約や約款などに「敗訴者負担条項」が盛り込まれ、これが広がっていくことが懸念される。このような合意が、事業者と消費者間の契約、使用者と労働者間の契約、大企業と中小零細企業間の契約など、力の格差のある当事者間の契約や約款に盛り込まれた場合、社会的弱者が、敗訴したときの費用負担を恐れて訴訟を提起することや訴訟を受けて立つことを躊躇し、結果として市民の司法へのアクセスに重大な萎縮効果を及ぼすことになる。本法案は、社会的弱者の裁判を受ける権利を侵害し、司法により権利救済の途を狭めるものである。司法改革推進本部司法アクセス検討会においては、合意による弁護士報酬敗訴者負担について十分な議論はなされておらず、本法案の国会上程に至る手続きも極めて問題のあるものであった。日本弁護士連合会も、上記訴訟外の合意による弊害を防止するため、私的契約による敗訴者負担条項の効力を否定する立法上の措置など抜本的対策を求めてきたが、本法案はその対策さえとられていない。よって、当会は、本法案に反対し、これを廃案することを求める。
2004年8月26日仙台弁護士会 会長鹿野 哲義

平成16年08月26日 国選弁護人報酬の減額に抗議し、増額を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/541
国選弁護人の報酬額は、2000年度から地方裁判所における標準的事件(3開廷)について、8万6400円とされ、その後2年間据え置かれてきていた。ところが、2003年度にはこの国選弁護人の報酬額が、8万5600円に引き下げられ、本年度は、さらに8万5200円に引き下げられるに至った。いうまでもなく国選弁護制度は、刑事被告人の憲法上の権利である弁護人依頼権を実質的に保障しようとする制度である。そして、現在の刑事弁護の実情は、刑事事件数の増大傾向とともに、国選弁護人が選任される比率も増大しており、実に75パーセントにも及んでいる。わが国の刑事事件は、国選弁護人によって支えられているといっても過言ではない。国選弁護人の職務内容は、私選弁護人のそれと同じである。しかるに政府は、弁護士会からの度重なる国選弁護人報酬増額の求めにも応じず、極めて低額な報酬にとどめ置いてきた。しかも、記録謄写料、交通費、通信費等の実費については、原則として支給されず、国選弁護人の個人的負担となっている。このような現在の状況は、弁護士の経済的犠牲の下に刑事弁護制度を維持しようとしているものといって過言ではない。しかも今般の刑事訴訟法の改正により、平成18年12月までには、被疑者段階における国選弁護制度が実施されることになっており、今後も国選弁護制度の適用範囲は増大し、その重要性は増していくことになる。それにもかかわらず、仮に現行の国選弁護人報酬額を基礎に被疑者段階の国選弁護報酬が算定されることになれば、国選弁護人の犠牲と負担はいっそう増大することになる。被疑者・被告人の弁護人依頼権を実質的に保障するためには、多くの弁護士が国選弁護を担当することが必要である。しかし、適正な報酬の支払いがなされず、これまでどおり経済的犠牲と負担を弁護人に押し付け続けるならば、適正な弁護活動を保障する国選弁護の担い手を確保することが困難となっていくことは必定である。適正な国選弁護人報酬の支払いがなされることは、国選弁護制度が十分に機能するための前提である。政府は、これまで極めて低額な国選弁護報酬を抜本的に改めようとせず、逆に昨年度に国選弁護報酬の減額を行い、本年度もさらに減額を行おうとしている。よって、当会は、適正な刑事弁護制度を確立していくためにも、国に対し、国選弁護人報酬の増額等を求め、以下の要望をする。
                                      記
 1.国選弁護人報酬の支給基準を、第一審標準基準事件1件あたり金20万円以上とし、そのために必要な予算措置を講ずること。
 2.事件の難度(罪質、罪数)、法廷外の準備活動、法廷内の具体的訴訟活動、出廷回数、審理期間など、弁護活動の総体に応じた報酬および日当を支給すること。
 3.弁護活動のための記録謄写料、交通費、通信費、通訳料、翻訳料等の実費全額を、本来の報酬に加算して支給すること。
2004年8月26日仙台弁護士会会長 鹿 野 哲 義

平成18年05月18日 教育基本法の「改正」に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/496
1 去る4月28日、教育基本法の全部を改正する法案(以下「本法案」という)が国会に提出された。
2 本法案については、法案化に至る過程において、十分な議論が行われたとは言い難く、法改正の手続に重大な問題がある。本法案の元になった「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(最終報告)」は、2003年6月に設置された「与党教育基本法改正に関する協議会」及びその下の「検討会」において、通算70回にわたる精力的な議論を積み重ねたうえで取りまとめられたものとされるが、この間、2004年6月に中間報告が公表されたことを除いては、全て非公開にて議論が進められており、国民に向けて開かれた議論が行われたとは言い難い。「教育の憲法」とも言われる教育基本法の改正の在り方としては極めて不適切である。
3 今回の改正については、その立法事実についても重大な疑問がある。「与党教育基本法改正に関する協議会」の設置に先立つ2003年3月、中央教育審議会が作成した答申においては、「教育の現状と課題」として、「いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊などの深刻な問題が依然として存在」することが指摘され、そのような「危機的状況を打破し、新しい時代にふさわしい教育を実現するために」改正が必要であるとされている。本法案は上記答申を受けたものであるが、上記答申後本法案提出までの間、上記答申が指摘するような教育現場の問題が教育基本法の欠陥によるものであることの検証は全くなされていない。
4 本法案は、現行教育基本法が第1条において教育の目的として掲げていた「個人の価値をたっとび」の文言を削除し、かえってその前文において、「公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を承継し、新しい文化の創造を目指す教育を推進すること」を謳い、教育の目標として、「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」を明記している。これは、個人の尊厳を重んじる憲法の精神に則り、「個人の価値」を最大限尊重することを教育の目的に据えた現行教育基本法の理念を、「公共の精神」を養う目的のもとで後退させるものであり、極めて問題というほかない。子どもの権利条約29条第1項aは、教育が子どもの成長発達権を支援するために行われるべきであるという理念を普遍的な教育目的として掲げているが、本法案が規定する上記の教育目標はこのような教育についての世界の到達点にも反するものである。
2 また、本法案は、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する(中略)態度を養うこと」を教育の目標として据えている。上記答申においては、「国を愛する心をはぐくむ」と表現されており、表現内容に若干の変容が見られるが、その実質において変わりはなく、公教育の場における愛国心教育を推進する内容となっている。しかし、国を愛するか否かを含め、国を愛する心情の内容は、個人の内心の自由に属する問題であり、国が介入し管理・支配してはならない領域である。公教育の場で「国を愛する」ことが当然であると教えることは、内心の自由を保障する憲法19条に抵触するおそれがある。さらに、現行教育基本法は、明治憲法下の「愛国心」教育が軍国主義という国策のための教育となりこのことが戦争の惨禍の一因となったことを反省し、平和国家建設の決意により誕生したものであるが、「国を愛する態度」を養う教育が行われるとすれば、正に時代の流れに逆行するものである。6 以上のとおり、本法案は、法案化の手続において著しく拙速であるとともに、その内容においても重大な問題をはらんでいると言わざるを得ない。当会は、「愛国心」教育の名の下に本来の教育が歪められ、国家に有為で従順な人間作りの目的で営まれることに強い危惧を表明し、本法案に基づく教育基本法の「改正」に反対する。
2006年5月18日仙台弁護士会 会長 氏家 和男

平成18年05月18日 共謀罪の新設に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/501
2006(平成18)年5月現在、衆議院において、共謀罪新設を含む「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」の審議がなされている。当会は、昨年度までに2度にわたり、この共謀罪の新設に反対する会長声明を出した。与党は法案審議の過程で、当初の政府法案を修正する法案を提出した。しかし、この与党修正案をもってしても、当会が上記の会長声明で指摘した問題点は解決されていない。このまま立法がなされるときには市民の思想・信条の自由が侵害され、ひいては情報伝達や情報発信という自由な活動に対する萎縮効果が見込まれ、これを看過することは到底できない。まず、上記政府法案及び与党修正案の最大の問題点は、犯罪の共謀があっただけで犯罪が成立することである。現行刑法では、共謀段階で犯罪が成立するのは、内乱罪・外患罪のみであり、きわめて重大な犯罪に限定されているが、政府法案及び与党修正案では615もの犯罪について、共謀を行っただけで犯罪が成立することとになる。しかも、共謀のみによって共謀罪の成立を認めるということは、犯罪の抽象的な危険の存否すら不明な段階であっても、犯罪に関する会話や通信をしたことだけで犯罪が成立するとされる虞がある。例えば、マンション建設反対運動の話し合いをしただけで、威力業務妨害共謀罪に当たるとして逮捕される可能性があるのである。また、政府法案及び与党修正案では、共謀とは犯罪実現の意思を通じることとされており、構成要件として抽象的であり明確性を欠いている。かかる抽象的、不明確な構成要件の共謀罪の捜査においては、特定の行為だけで構成要件該当性を認定することができないため、市民の思想、信条まで捜査対象となり国民の思想信条を侵害する虞がある。さらに、共謀の事実の捜査の名のもとに捜査機関が市民の一般的な会話を傍受したり、電話や電子メールのやり取りを監視する事態も予想される。このような捜査方法が認められるならば、市民の情報伝達や情報発信という自由な活動が萎縮することは避けられない。結局、共謀罪を新設し、615もの犯罪について、その共謀のみをもって犯罪の成立を認めるということは、思想信条の自由を侵害し、民主主義を支える市民間の自由な情報の流通、とりわけ表現の自由に対する重大な脅威となるものであり、到底容認することはできない。よって、当会は、あらためて、上記政府法案及び与党修正案に対し、強く反対することを表明するものである。
2006(平成18)年5月18日仙台弁護士会 会長   氏 家 和 男

平成18年03月22日 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律案」に対する意見書
ttp://senben.org/archives/503
仙台弁護士会
会長 松  坂  英  明
はじめに
厚生労働省は平成18年3月7日,「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律案」(以下,「法律案」という。)を第164回国会(常会)に提出した。雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下,「均等法」という。)の施行後20年を経ているが,今日のわが国の現状は,男女平等の実現にはほど遠く,パート・派遣など非正規女性労働者の増加やコース別雇用管理などにより,逆に性差別の拡大現象すらみられる。また,妊娠・出産を理由にした不利益取扱いも多発しており,このような性差別は重大な人権侵害といわなければならない。今回の均等法改正作業は,「男女雇用機会均等の確保を徹底するため必要な法的整備を行うべき時期にきている」との認識(中間とりまとめ)に立っており,今後の公平かつ平等な社会を築く上で大きな役割を担っているものである。そこで当会は,以下のとおり,実効性ある均等法の改正が行われることを求め,法律案に対して意見を表明するものである。
第1 意見の趣旨
1 均等法の理念に「仕事と生活の調和」を規定すべきである。
2 差別的取扱いを賃金についても禁止すべきである。
3 実効的な間接差別禁止規定を導入すべきである。
4 指針の「雇用管理区分」を廃止すべきである。
5 募集・採用時における妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いを禁止すべきである。
6 ポジティブ・アクションを義務化すべきである。
7 包括的差別禁止規定を新設すべきである。
第2 意見の理由
 1 「均等法の理念に『仕事と生活の調和』を規定すべきこと」について均等法において求められる平等は,男女とも「仕事と生活の調和」の上での平等であるから,その旨を基本理念(2条)に規定し,均等法解釈の基本とすべきである。即ち「仕事と生活の調和」を規定することにより,均等法において求められる平等が,今日わが国において無限定な労働を強いられている男性を基準とすべきではなく,男女とも生活との調和のとれた働き方を基準とすべきことが明確となり,同理念が均等法の具体的解釈基準としての意味を有することになるのである。また「仕事と生活の調和」については,すでに育児介護休業法において「職業生活と家庭生活との両立」(1条)として規定されているところであり,均等法の理念としても合わせてこれを規定することは自然かつ必要なことである。
2 「差別的取扱いを賃金についても禁止すべきこと」について
現行均等法は,募集・採用(第5条),配置・昇進・教育訓練(第6条),福利厚生(第7条),定年・退職・解雇(第8条)の各ステージについて差別的取扱いを禁止し,法律案は第6条で,上記の各ステージにつき,業務の配分及び権限の付与を含む労働者の配置,降格(第1号),労働者の職種及び雇用形態の変更(第3号),退職の勧奨及び労働契約の更新(第4号)についての差別的取扱いの禁止を追加しているが,賃金も差別的取扱いの禁止項目に入れるべきである。前記のとおり,現行均等法は,賃金についての差別を禁止していないため,後記3のとおり,法律案第7条により,間接差別が禁止されたとしても,賃金に関する間接差別が規制対象から除外されることになる。しかし,賃金差別は差別の最も重要かつ切実な領域であり,これを除外することは差別是正の主要部分を除外するものと言わざるを得ないことになるので,賃金についても差別的取扱いを禁止すべきである。
 3 「実効的な間接差別禁止規定を導入すべきこと」について法律案は,第7条で間接差別を禁止するともに,間接差別となるものを厚生労働省令(以下,「省令」という。)で定めることとしているが,厚生労働大臣が労働政策審議会に対して平成18年1月27日付で諮問した法律案要綱によれば,省令で定める間接差別として,①募集又は採用における身長,体重又は体力要件,②コース別雇用管理制度における総合職の募集又は採用における全国転勤要件,③昇進における転勤経験要件の3つが挙げられている。しかし,このような間接差別となるものを限定列挙する規定は,常に現実の後追いに過ぎない実効性を欠くものとなり,また,間接差別の対象外とされた差別を法的に許容する有害な規定となる可能性を有するものである。したがって,間接差別となるものを限定すべきではない。そもそも,国際的に形成されてきた間接差別禁止法理は,一方の性に対する差別的影響が存在するときに,平等実現への障害となっている差別を恒常的に抽出し,これを除去する取組みを重要な要素として形成されてきたものである。今日,差別は「明かな」男女差別ではない形態としてあらわれるものが主流になり,また,社会的状況により差別は常に形を変える。それゆえに,男女平等を実現するため,使用者に対し,制度等の導入・遂行過程で,それが性差別的効果を生じていないか・正当事由があるかの恒常的検討義務を課し,説明責任を求めるものが間接差別禁止法理である。ところが,前記法律案要綱どおりに,間接差別となるものが3つに限定されるときは,使用者は,これらについて間接差別を禁止されるにすぎず,差別的効果を生じ平等実現への障害となっているものは何かを恒常的に抽出し,これを除去していく義務を課せられない。これは間接差別禁止法理の本質の理解を欠くものであり,間接差別禁止法理の導入は名ばかりのものと言わざるを得ないことになる。間接差別となるものが法律案要綱どおりに限定列挙されるときは,日本における間接差別禁止制度が諸外国の間接差別禁止法理と異なった不十分な制度となってしまうことになり,今後に大きな禍根を残すことになる。また,間接差別となるものが上記3つに限定されると,「男女雇用機会均等政策研究会報告」の例に挙げられている「世帯主手当」差別,パートと正社員の賃金差別も対象から除外されてしまうことになる。以上のとおり,法律案は,国際的非難を免れるためだけに形のみの間接差別禁止規定を導入するものであり,逆に間接差別を拡大する可能性をもつものであるから,間接差別となるものを限定列挙する間接差別禁止規定には反対する。
 4 「指針の『雇用管理区分』を廃止すべきこと」について法律案では現行指針(平10労告19号)が定める「雇用管理区分」を廃止せず維持するものとされている(第10条第1項)が,雇用管理区分は,差別の温床として国際的にも問題とされてきたものであり,「雇用管理区分」に法的正当性は無いので,直ちに廃止措置を講ずるべきである。
 5 「募集・採用時における妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いを禁止すべきこと」について法律案では,募集・採用における妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いは対象とされていない(第9条)。しかし,募集・採用差別についても不利益取扱いの禁止を規定すべきである。使用者の採用・契約の自由は無制限ではなく労働者の人権保障のために規制されるものであり,既に均等法において募集・採用差別は禁止されている(第5条)。本来,妊娠・出産差別は女性差別であり,その意味からも,募集・採用においても妊娠・出産差別禁止規定をおくべきである。
 6 「ポジティブ・アクションを義務化すべきこと」について法律案は,第14条でいわゆるポジティブ・アクションにつき企業が自発的に開示を講じる場合に国が援助できると規定するに止まっている。しかし,今日企業のコスト削減競争が激化する下で,企業における平等施策は一向に進んでいない。企業へのポジティブ・アクションの義務づけが必要であり,少なくとも行動計画の作成義務づけ等,既に少子化対策等で導入している手法については男女平等に関しても義務づけるべきである。差別を是正するためには,「差別を禁止する」だけでなく,「積極的な」平等実現策(教育研修や透明公正な処遇制度の構築,育児・介護支援,過去に差別を受けてきた人へのサポート等)を講じ,差別を生み出す土壌を改善し,また,女性が能力を生かせる環境づくりをすることが重要なのである。
 3 「包括的差別禁止規定を新設すべきこと」について現行均等法は,雇用の各ステージについての差別を禁止するに止まり,包括的な差別禁止法とはなっていない。法律案は,雇用の各ステージに,前記2で述べたとおり,配置における業務の配分等を追加しているが,「仕事の与え方」や「雇止め」等の差別的取扱いは追加しなかった。本来,不合理な性差別が禁止されることは判例で確立しているのであるから,包括的な差別禁止規定を設けるべきである。以上

平成18年02月17日 「拡声機の使用による暴騒音の規制に関する条例」の一部を改正する条例案に対する会長声明
ttp://senben.org/archives/507
平成18年2月17日会長声明2006年02月17日
拡声機の使用による暴騒音の規制に関する条例」の一部を改正する条例案に対する会長声明
 1 新聞報道によれば、宮城県は、「拡声機の使用による暴騒音の規制に関する条例」(以下、単に「条例」という)の一部を改正する条例案を県議会2月定例会に提出するとのことである。
 2 当会は、条例の制定に先立ち、1991年(平成3年)11月20日の会長声明において、拡声機使用について規制の必要性があることは認めつつも、その規制は、憲法上保障され民主主義政治にとって不可欠な基本的人権である市民の表現活動の自由を損なうものであってはならないとの見地から、条例の問題を4点にわたって具体的に指摘した。
 3 今回の改正案は、 ①暴騒音の測定方法の変更、 ②拡声機の使用を要求する者等に対する義務・勧告規定の新設、③暴騒音の再発防止命令の新設及び④虚偽答弁者への罰則の適用の4点とされており、いずれも現行の規制を強化する内容となっている。
①「暴騒音の測定方法の変更」は、10メートル未満の地点においても音量測定可能とするものである。現行の測定方法では、測定場所が地形地物に左右されたり、測定場所が確保できなかったりする場合があるから見直しを行うとするが、改正条例の文言はそのような場合に限定する文言になっていない。これでは、測定者である警察官等が、その判断において、拡声機を使用する者の身近まで接近して音量測定をすることが可能であり、市民の街頭活動への威圧や萎縮効果をもたらすことが懸念される。
②「拡声機の使用を要求する者等に対する義務・勧告規定の新設」は、規制の対象を、拡声機使用者にとどまらずその上位の者や団体(市民団体・労働組合・政党など)さらには拡声機の所有者(管理者)に過ぎない者にまで拡大させうるものであり、規制の対象があまりに広範かつ漠然としている点で、表現活動の自由や結社の自由に対する脅威となる。
③「暴騒音の再発防止命令の新設」は、85デシベルを越える音を発している者が停止命令に従わなかった場合、警察署長が24時間以内なら拡声機使用停止等の措置をとることができるとするものであるが、事前抑制は本来仮処分等の司法的措置に拠るべきであり、法律より下位の条例で、しかも、「警察署長」だけでの判断でこのような表現の自由の事前抑止を可能とすることは立法上も重大な問題がある。
④「虚偽答弁者への罰則の適用」は、現行条例の立入調査の際の立入・調査の拒否・妨害・忌避に加えて、「虚偽答弁」に対して10万円以下の罰金を科すものであるが、立入調査の際の「虚偽答弁」とは具体的にどのような場面を想定しているのか曖昧であり処罰の範囲を不当に拡大するおそれがある。また、質問事項が広範ななかで、「虚偽答弁」を刑罰で処罰することは、結果的には、拡声機使用者の活動や背景の詳細についての情報提供を強要することになりかねず、これまた表現活動の自由や結社の自由に対する脅威となる。
 4 このように今回の改正案は、その内容においても、表現の自由や結社の自由など憲法上保障される人権について多くの重大な問題を包含しているといわざるをえず、しかも、改正を必要とする立法事実の存在も不明確であるので、当会は、今回の改正案に対しても反対せざるを得ない。より慎重かつ十分な検討を望む次第である。
2006年(平成18年)2月17日仙台弁護士会 会長 松坂英明

平成19年07月27日 光市母子殺人事件弁護人への脅迫行為に対する会長声明
ttp://senben.org/archives/462
山口県光市で発生したいわゆる「光市母子殺人事件」は、現在広島高等裁判所で審理が行われています。この事件に関し、本年5月29日、日本弁護士連合会に、「その元少年を死刑に出来ぬのなら、まずは、元少年を助けようとする弁護士たちから処刑する!」「裁判で裁けないなら、武力で裁く!」などとかかれた脅迫文が、模造銃弾様のものとともに届けられました。更に新聞報道によれば、その後の7月7日に、朝日新聞社及び読売新聞社に同事件弁護団の弁護士を「抹殺する」などと書かれた脅迫文が届けられたとのことです。これは「光市母子殺人事件」の弁護団に対する明らかな脅迫行為であり、当会はこのような脅迫行為を断じて見過ごすことは出来ず、ここに強く抗議するために本声明を発表するものです。本事件は母親と幼い子の命が失われたという大変痛ましい事件であり、当会は亡くなられたお二人に心よりの哀悼の意を表するとともに、ご遺族の方の心情も察するにあまりあるものです。しかしながら、どのようにこの事件が痛ましい事件であっても被告人の弁護人依頼権は十分に保障されなければならず、その権利実現のための弁護人の弁護活動に対し、脅迫による妨害行為がなされることは決して許されるべきではありません。歴史を遡れば、刑事手続過程で不当な身柄拘束、自白の強要など、さまざまな人権侵害が行われてきました。このような歴史的事実を踏まえ、憲法は、その31条でいわゆる適正手続の保障を定め、その具体化として、37条3項において「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することが出来る」として弁護人依頼権を保障しています。憲法が弁護人依頼権を保障しているということは、単に被告人が弁護人を依頼することに止まるものではなく、弁護人が被告人のための弁護活動を実質的に行えるということまでも保障するものです。弁護人が被告人の主張を踏まえた弁論・立証活動をすることで、被告人は初めて十分な防御の機会を与えられ、十分な主張が出来るからです。弁護人は、被告人のための実質的弁護活動を行ってこそその職責を全うすることが出来るのです。また、弁護人はそのような弁護活動をすることで憲法が保障した適正手続の保障、弁護人依頼権の保障等諸権利を実現する責務を負っているのです。もとより弁護人の弁論に対して批判等が行われること自体は、言論・表現の自由として十分に尊重されなければならないことは言うまでもありませんが、しかし、今回のような脅迫行為による弁護活動の妨害が許されないことは論を待ちません。今回の脅迫行為は弁護人の弁護活動を暴力によって封じ込め,その結果,被告人の弁護人依頼権および適正手続を保障した憲法の理念をも踏みにじろうとする卑劣な行為であり,断じて許すことができません。当会は今回の脅迫行為に厳重に抗議するとともに、今後も刑事手続にたずさわるすべての弁護士がこのような卑劣な行為に屈することなくその職責を全うできるように最大限支援していくことをここに表明するものです。
2007(平成19)年7月27日仙台弁護士会 会長 角山 正

平成19年07月18日 陸上自衛隊情報保全隊による国民監視活動に抗議しその中止を求める会長声明
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1 本年6月6日、陸上自衛隊情報保全隊(以下情報保全隊という)が、個人・団体の動向を監視し、その情報を系統的に収集・分析していた資料の存在が明らかとなった。自衛隊が作成したとして公開された内部文書には、自衛隊イラク派兵反対運動を始め消費税値上げや医療費問題に関する運動など、個人・団体の幅広い行動の情報が詳細に記載されている。そして政府も情報保全隊がかかる情報収集活動を行っていたことを認めている。上記内部文書には、東北方面情報保全隊による宮城県を含む東北地方の個人・団体の集会、街頭宣伝、ビラ配布等の諸活動に関する情報資料が数多く含まれている。そこでは東北地方の市町村議会やマスコミの取材活動までもが監視対象とされ、情報保全隊は、これらの表現行為を「反自衛隊活動」などと位置づけている。
 2 そもそも、情報保全隊の任務は、自衛隊の保有する内部情報の流出や漏洩の防止にあり、情報収集活動はその任務に必要な範囲内でしか許されない。今般の個人・団体に対する監視・情報収集活動は、自衛隊の内部情報の流出や漏洩防止とは無関係であって、その範囲を逸脱していることは明らかであり、法的根拠を有しない違法な活動である。このように情報保全隊が組織的・系統的・日常的に個人・団体を監視してその情報を収集・分析・管理保管することは、国民の集会その他の表現活動に対し強い萎縮効果をもたらすものであるから、日本国憲法21条で保障された表現の自由を侵害するものである。また同時に憲法13条で保障されたプライバシーの権利をも侵害するものである。ことに情報保全隊は集会・デモ等に参加した個人の写真撮影も行っているが、個人の容ぼう等を公権力がみだりに撮影することは憲法13条に違反するものである(最高裁判決昭和44年12月24日)。3 日本国憲法は、先の大戦下において国家機関によって国民の権利自由が著しく抑圧されたという苦い歴史の教訓をふまえ、国家権力の濫用を抑制し国民の権利自由を保障するという立憲主義に立脚している。国家機関である情報保全隊が、法的根拠もなく、しかも国民の憲法上の権利を侵害するような監視活動を行うことは、正に立憲主義に違背する行為であって許されない。
 5 よって、当会は、政府及び防衛省に対して、陸上自衛隊情報保全隊が個人・団体等に対して違憲・違法な監視活動を行ったことに厳重に抗議するとともに、かかる監視活動を直ちに中止することを強く求めるものである。
2007(平成19)年7月18日仙台弁護士会 会長 角山 正

2272 ら特集10仙台弁護士会⑤22

平成17年08月24日 金融庁事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係の改正に対する意見書
ttp://senben.org/archives/519
金融庁事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の改正に対する意見書
仙台弁護士会会長  松 坂 英 明
意見の趣旨
 今般予定されている金融庁事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の一部改正にあたっては、現在公表されている改正案について、「貸金業者に取引履歴の開示義務があり、正当な理由に基づく開示請求を拒否した場合には行政処分の対象になり得ることを明確化する」との改正の趣旨には賛成であるが、以下の点の修正を求める。
 (1)貸金業規制法第13条第2項の規定に該当する恐れが大きい行為の例示(3?2?2(6))の中に、「顧客等から貸金業者に対する過払金返還請求を目的とする取引履歴の開示請求に対し、開示を拒否しまたは虚偽の開示を行うこと」を明示すること。
 (2)本人等の「十分かつ適切」な確認方法として、本人確認法に依拠した確認方法を例示した部分を削除し、
① 本人による開示請求の場合は、氏名及び顧客会員番号又は生年月日、住所を記載した取引履歴開示請求書で本人確認は足りることを例示し、さらに、本人確認の手続きが、開示請求者の負担とならないよう貸金業者に注意を喚起すること。
② 弁護士、司法書士という資格者による開示請求の場合は、これまでの実務どおり、所属会を明記し、依頼者の氏名及び顧客会員番号又は生年月日、住所を記載した受任通知で足りるとすること。
 (3)貸金業者が開示にあたって手数料を徴収することが債務者に過重な負担を課すものであって許されないことを明確にすること。意見の理由
 1 金融庁は、本年8月12日、金融庁事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の一部改正について、別紙のとおりの改正案をまとめ、9月2日まで意見照会している。
2 取引履歴開示義務の明示には賛成である。
 本年7月19日、最高裁判所は、貸金業者が「貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として、信義則上、保存している業務帳簿に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負う」、との判断を示した(最高裁判所第三小法廷平成17年7月19日判決)。このたび、速やかにガイドラインを改正して貸金業者の取引履歴開示義務を明確化することは、まことに時宜に適った措置である。
 3 取引履歴開示請求の「正当事由」に「過払金の返還請求」も加えるべきである。上記の最高裁判決は、債務者が債務内容を正確に把握出来ない場合には、「弁済計画を立てることが困難になったり、過払金があるのにその返還を請求できないばかりか、更に弁済を求められてこれに応ずることを余儀なくされるなど、大きな不利益を被る」ことなどに鑑みて、取引履歴開示義務が存在するとの結論を導いている。そうである以上、一部改正(案)のうち、事務ガイドライン3?2?2にいう取引履歴開示請求の「正当な理由」として「弁済計画の策定、債務整理」だけを例示し、「過払金の返還請求」について殊更に言及を避けているのは、不適切である。「過払金の返還請求」も、取引履歴開示請求の正当理由のうちに含まれることを明記すべきである。
 4 本人確認法上の本人確認手続を取引履歴開示に持ち込むことは、債務者に過度の負担を課す重大な誤りである。今回の貸金業ガイドライン改正案は、取引履歴開示請求に際しての本人確認について、いわゆる本人確認法(金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律)所定の本人確認方法を「十分かつ適切」な本人確認方法として例示していることには、以下に述べるとおり重大な問題がある。
 (1)そもそも、本人確認法は、テロ及び組織犯罪等の悪質な犯罪行為に対する資金提供のために金融機関の預金口座が不正利用されることを防止するために(同法1条)、極めて厳格な本人確認の手続を定めた法律であって、上記犯罪行為とは全く無関係の取引履歴開示請求について、かような厳格な本人確認を求めることには、何らの法的根拠もない。
 (2)加えて、本人確認法に基づく厳格な本人確認を要求することは、従来の取引履歴開示の実務では用いられてこなかった厳格な手続を要求するものであって、債務者に過度の負担を課すことになる。すなわち、従来の取引履歴開示の実務において、特に弁護士が代理人として関与する場合については、貸金業規制法21条1項6号所定の「債務者が債務の処理を弁護士に委託した旨の弁護士からの書面による通知」(いわゆる受任通知書)が、債務者の代理人であることの十分かつ適切な確認資料であるとされてきた。実際、多くの貸金業者は、個人情報保護法が施行された現在においても、受任通知書の送付をもって代理権確認の方法とすることを、従前通り異議なく認めているのである。こうした現状に鑑みるなら、本人確認のために免許証等本人確認書類の原本または実印を押印した委任状と印鑑証明書の「提示」を要求する今回の貸金業ガイドライン改正案の内容が、債務者に対して従来より著しく煩瑣な手続を要求するものであって、これが債務者にとって過度の負担であることは明らかである。
 (3)したがって、今回の貸金業ガイドライン改正案において、本人等の「十分かつ適切」な確認方法として、本人確認法に依拠した確認方法を例示した部分については、全面的に削除されるべきである。その上で、取引履歴の開示を求めることは顧客の権利であることをふまえ、①本人よる開示請求の場合は、現在の実務を前提に、氏名及び顧客会員番号又は生年月日、住所を記載した取引履歴開示請求書で本人確認は十分であることを例示し、かえって、本人確認手続きに伴う負担が顧客等(弁済済みの者も含む)による、開示請求権の行使を妨げることがないよう貸金業者に注意喚起すべきである。②弁護士、司法書士による場合は、現行実務で、確立している、受任通知(依頼者の氏名及び顧客会員番号又は生年月日、住所で依頼者を特定すること)で足るものとすべきである(代理人資格の確認のため、所属会の明記は必要である)。最高裁判決が出され、実体的に取引履歴の開示義務を貸金業者が負うことになった時期に、実務で形成された取引履歴開示の慣行を特段のトラブルのないのに、手続き規定を加重して最高裁で認められた開示請求権を制限することを認めることは出来ない。
5 手数料の徴収は許されないこと
 また、一部の貸金業者の中には、取引履歴の開示にあたって、個人情報保護法を根拠に、手数料を要求するものがある。しかしながら、既に述べたとおり、信義則に基づく取引履歴開示請求は個人情報保護法25条1項に基づく開示請求とは関係ないのであるから、個人情報保護法30条1項を根拠に手数料を請求する貸金業者の主張は誤りである。上記最高裁判決も認定するとおり、「貸金業者が保存している業務帳簿に基づいて債務内容を開示することは容易であり、貸金業者に特段の負担は生じない」にもかかわらず、貸金業者が手数料を要求することは、個人情報保護法を口実として取引履歴開示請求に不当な制限を加えようとするものであって、到底許される行為ではない。
 本ガイドライン改正に当たっては、このような不当な要求を拒否する条項を盛り込むべきである。
6 まとめ
 よって、当会は、金融庁の事務ガイドライン改正案が、貸金業者に取引履歴の開示義務を認めたことは十分評価するとしても、過大な本人確認書面の要求など、多重債務者救済の実務に大きな混乱を生じさせ、その救済を大きく損なうことから、適正かつ迅速な取引履歴開示が促進され、債務者の権利が確保されるよう本意見書を提出するものである。 以 上

平成17年07月20日 宮城県貸金業協会による「ヤミ金融回避特区」提案に反対する意見書
ttp://senben.org/archives/525
仙 台 弁 護 士 会
会 長  松  坂  英  明
意見の趣意
 当会は、宮城県貸金業協会による「ヤミ金融回避特区」提案に反対すると共に、政府に対し特区提案を採用しないことを求める。
意見の理由
 1 宮城県貸金業協会(以下、「協会」という)は、平成17年6月23日、内閣官房構造改革特区推進室に対し、政府が地域の特性に応じた規制緩和の特例措置を設けて経済活性化を目指す構造改革特別区域制度に基づき、「ヤミ金融回避特区」の提案(以下、「本件提案」という)を行った。
 本件提案は、上限金利規制を緩和し、資金需要者に対し健全な貸金業者による資金供給を可能とさせることでヤミ金融による被害を抑制できるとの考えに基づき、特区内においては、貸付金額と貸付期間の上限その他の制限を定めることを条件として、出資法の上限金利を緩和して年40.004%まで認めるようにする、というものである。しかしながら、本件提案は、極めて問題が多く、当会はこれに対して強く反対するものである。
 2 協会による本件提案は、①平成12年の出資法改正により上限金利が引き下げられたことにより、貸金業者が貸付を抑制するようになり、資金需要者が貸金業者から貸付を受けることができなくなった結果、ヤミ金融を利用するようになった、②従って、上限金利を緩和し貸金業者が資金需要者に対して貸付を行いやすくすることがヤミ金融被害の防止につながる、との考えを根拠とするものである。しかしながら、以下のとおり、協会のこのような考えが誤りであることは明白である。
(1)①について
出資法の上限金利の引下げがヤミ金融被害の増加を招いたなどという社会的事実は存在しない。ヤミ金融は平成6年ごろにはすでに発生しており、出資法の改正がなされた平成12年に先立つ平成10年ころには、ヤミ金融の跋扈がすでに大きな社会問題となっていた。例えば、東京の有しの弁護士等のグループは、平成11年7月には、ヤミ金融245業者について警視庁に対し事実上の刑事告発を行うに至っている。また、平成12年以前にも数次にわたり出資法が改正され、上限金利の引き下げが順次行われてきているが、上限金利引き下げのたびにヤミ金融の被害が増大してきたという事実もない。さらに、平成12年の出資法改正以降も、消費者金融業者の貸付残高は年1兆円規模で増加を続けているのであり、上限金利の引き下げが貸付を抑制的にさせているという事実もない。そもそも、ヤミ金融が跋扈した大きな要因は、ヤミ金が狙う多重債務者が近年急増したことと、出資法違反に対する取り締まりが不十分なことにある。
 上限金利引き下げがヤミ金融被害の増加を招いたなどという社会的事実はなく、本件提案は、そもそもその前提に大きな誤りがある。(2)②について
 ヤミ金融がターゲットとする顧客層は、多数の貸金業者に対して多額の負債を抱え、中小の貸金業者からも貸付を拒絶されるような多重債務者である。本件提案のようにこのような多重さ武者に対して高利で新たな貸付を行うことは、多重債務者の債務をさらに増大さえることにほかならず、ひいてはその経済生活の破綻を促進させる結果につながることは明らかである。同時にそれは、ヤミ金融のターゲット層をさらに拡大させることをも意味する。このように、
 上限金利を緩和することは、ヤミ金融被害の防止策になりうるどころか、むしろ多重債務者のさらなる増加を促すものであり、ひいてはヤミ金融被害者を増加させる恐れが極めて大きいのである。 そもそも、近年における多重債務者の急増は、金利規制の甘さによる高利貸付の横行、債務者の経済力に見合わない過剰融資の横行に主要な原因が存するところであるが、本件提案は、まさにこの「高利貸付」「過剰融資」の正当化をはかろうとするものにほかならない。貸金業者のそのような姿勢こそが多重債務問題を深刻化させていることを指摘しないわけにはいかない。ヤミ金融被害の防止のために必要とされているのは、新たな高利貸付ではなく、金利規制の強化、過剰融資の抑制をはじめ、社会保障の充実や政府・自治体等による低利融資制度の充実、相談窓口の拡充等といった、多重債務者の予防・救済策なのである。
 3 協会は、上限金利の緩和が正しく運用されるように、①貸付期間の制限(貸付期間を原則3ヶ月以内として最大でも6ヶ月を越えないこととする)、②貸付金額制限(貸付金額を個人50万円以内、事業者150万円以内とする)、③担保・連帯保証人の不徴求、④協会に対する届出等、の仕組みを確保することを掲げている。しかしながら、まず①については、債務の書き換えを繰り返すことなどにより、貸付期間の制限は容易に潜脱することができるのであり、到底その実効性は期待できない。また、②についても、現在一般的に行われている無担保貸付における貸付金額とほとんど変わりはなく、何らの抑止効果も持たない。さらに③についても、債務者本人に対する過酷な取立てが行われる可能性は否定できないし、何よりも債務者本人の経済生活の破綻を招くことに対しては何らの予防措置にもなりえない。加えて、④についても、協会が実効性ある監督機能を営むことは期待しがたい。このように、①?④の措置を講じたところで、到底、本件提案が正当化されるものではない。
 4 当会は、多重債務問題解決のため、これまでも何度も出資法の上限金利の引き下げを求めてきたところ、上限金利については、2007年1月までに必要な見直しが行われる予定となっている(出資法改正附則12条2項)。
そのような状況の下において、出資法の見直し作業を待たずして上限金利の引き上げを実現しようという本件提案は、十分な検討の上で出資法改正という形で上限金利規制のあり方を見直そうという上記出資法改正附則の趣旨を没却せしめるものであることは明らかである。
 5 出資法では、上限金利に違反する利息の受領等を刑罰の対象としているが、この罰則は、いわば金融秩序に関する基本的な刑罰法規である。従って、その適用は全国的に平等になされるべきであるのが大原則であるところ、何らの合理的理由もなく特定の地域に限定して刑罰法規の適用に差異を設けることは、地域間において極めて不平等な結果をもたらすことは明白であり、ひいては憲法の定める法の下の平等にも反することになる。
6 本件提案は、構造改革特別区域の制度趣旨にも反するものである。
 構造改革特別区域制度は、各地域の特性に応じて規制の特例措置を定め、教育、農業、社会福祉などの分野における構造改革を推進し、地域の活性化を図り、国民経済を発展させることを目的とするものである。
しかるに、本件提案は、なにゆえ特定の地域だけに高金利を認める必要があるのか、全く明らかにされておらず、単に高利貸金業者の保護を目的としていることが明らかな提案であって、構造改革特別区域を設けた趣旨に反するものであることは明白である。
 7 よって、当会は、本件提案に対して強く反対するとともに、政府に対し、本特区提案を採用しないことを求める。 以 上

平成17年07月20日 共謀罪の新設に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/523
「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下「法案」という。)が、第156通常国会に提出され、一度廃案になったものの、現在、第162通常国会において審議されている。そして、その中に、共謀罪(または謀議罪、以下「共謀罪」という。)と呼ばれる新たな犯罪類方の新設が盛り込まれている。 共謀罪とは、団体の活動として、組織により行われるものの遂行を共謀したことだけで処罰するものである。死刑又は無期若しくは長期10年を越える懲役若しくは禁錮の刑が定められている犯罪について共謀した場合には5年以下の懲役又は禁錮の刑に処するものとし、長期4年以上10年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている犯罪について共謀した場合には2年以下の懲役又は禁錮の刑に処するものとされている。しかし、共謀罪、犯罪の実行行為の着手がないばかりでなく、予備行為さえも行っていない段階で、共謀をしたというだけで処罰するものとなっており、処罰時期を著しく前倒しにするものである。したがって、抽象的危険の存否すら不明な段階であろうとも、会話ないし通信をしたことだけで刑罰を科されることになりうる危険がある。しかも、現行刑法では、予備行為が処罰されているのは殺人ないし放火などの重大犯罪に限られているところ、この共謀罪では、長期4年以上の刑罰が科せられる犯罪について成立が認められていることから、500以上にものぼる非常に広範囲な犯罪が実行前において処罰の対象とされてしまう。また、「共謀」という不明確な概念を構成要件としているため、刑罰法規の明確性原則に反する。共謀は抽象的概念であるため、特定の行為からその認定は困難であり、行為者の会話のみならず内心にまで踏み込まなければ判断できない以上、行為者の思想、信条、主義にまで捜査機関が調査権限を及ぼすことを招き、その結果、国民の思想、信条の自由を侵害してしまうことになりかねない。そして、思想、信条を表現するための通信、出版などの情報伝達及び外部公表行為に対する萎縮的効果を極めて甚大となる。また、共謀の事実を捜査するためとして、捜査機関が、市民の一般的な会話や電話、そして電子メールのやりとりなどに対する監視ないし管理を強化していくという事態をももたらしかねない。このように、共謀罪の新設は、民主主義を支える表現の自由、そして個人として最も尊重されるべき思想信条の自由を侵害するおそれがあり、到底受け入れることができないのである。そもそもこの法案は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条例」(以下「犯罪防止条約」という。)の批准のための国内法を整備するため上程された。それであれば、法規制は犯罪防止条約が求める範囲においてなされれば足りる。ところが、犯罪防止条約においては、その適用範囲は「性質上越境的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するもの」に限定されているにもかかわらず、共謀罪ではこの「越境性」「組織的な犯罪集団の関与」を要件としていない。もって、条約批准に伴う国内法整備という範囲を超えて、過度にその適用範囲を拡大しているものである。このように、共謀罪の新設は、構成要件の明確性を欠き、更に処罰時期を著しく早め、処罰範囲を一気に拡大して、事実上刑法を全面改悪するに等しい。これは刑法の原則である罪刑法定主義に反し、憲法上の言論の自由、結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威である。よって、当会は、共謀罪の新設に反対するものである。以 上
2005年(平成17年)7月20日仙台弁護士会会長松坂英明

平成17年06月22日 少年法等「改正」法案に対する反対声明
2005年(平成17年)6月22日仙台弁護士会会長松坂英明
ttp://senben.org/archives/527
少年法等の一部改正に関する法律案(以下,「改正案」という。)が平成17年3月1日に閣議決定を経て国会に提出され,同年6月14日から衆議院において改正案の審議が開始された。この改正案は,①少年院送致年齢の下限(14歳)を撤廃すること,②保護観察中の遵守事項違反を理由として少年院等への収容を可能とすること,③触法少年及びぐ犯少年に対する警察官の調査権限を法律上明記すること,④国選付添人制度を検察官関与事件等以外にも拡充することを骨子とするものである。このうち,④については,家庭裁判所の職権で新たに国選付添人が選任されうる場合を一定の重大事件に限定している点で,未だ十分なものとは言えないが,国選付添人制度を拡充すること自体は積極的に評価できる。しかし,当会は,多くの会員が付添人活動を通じて非行少年に対する福祉的教育的対応を実践してきた実績に照らして,上記①ないし③については,以下のとおり反対の意思を強く表明するものである。
①について
現行法上,小学生など14歳未満の非行少年を少年院に送致することは認められていない。低年齢の非行少年であるほど,幼少期からの被虐待体験を含む複雑な生育歴を有していることから,家庭的雰囲気の中で子どもとしての「育ちなおし」の場を保障する必要が高く,そのような役割を担う児童福祉施設として児童自立支援施設が設けられているのである。家庭内で安定した人間関係を築く体験に欠ける小学生や低学年の中学生を「育てなおす」こと抜きに閉鎖的矯正施設たる少年院に収容しても,他者を受け容れて規範を内面化することを期待できず,再非行の防止策としては全く不適当である。今回の改正案の背景には,触法少年であっても閉鎖的施設で処遇すべき場合を認めるべきだとの考えがあると思われるが,強制的措置を付した児童自立支援施設送致によっても処遇が困難であるとの立法事実は何ら示されてはいない。ましてや,触法少年への児童福祉的対応という大原則を,報道等で煽られた社会的不安の沈静化策として短絡的に変更することは,決して許されるべきではない。従って,少年院送致年齢の下限を撤廃することには反対である。
②について
少年法の定める保護観察は,少年が自ら立ち直る力を育てるために保護司らが少年に対して粘り強く働きかけながら試行錯誤を見守ることを内容とする終局的保護処分である。しかし,改正案は,新たな非行事実もないのに遵守事項違反を理由にして,現に保護観察処分を受けている少年を新たに少年院に送致できるとするものであって,実質的に一事不再理効に抵触し,憲法39条の趣旨に反するものとして許されない。また,改正案は,保護観察の指導をいっそう効果的にするための措置であると説明されているが,実質的には少年院送致を威嚇手段として遵守事項を守らせようとするものに過ぎず,少年自らの立ち直りを見守るという保護観察制度本来の趣旨を没却する措置である。保護司が対応に苦慮するような少年に対しては保護観察官による専門的な指導援助によって対処すべきである。従って,保護観察中の遵守事項違反を理由とする施設収容を認めることには反対である。
③について
現行法上,触法少年や14歳未満のぐ犯少年に関しては,警察官には捜査権はもちろん,調査権限も認められていない。これは,低年齢の少年については,①で述べた特性に加えて,被暗示性・迎合性がとりわけ強いことから,子どもの特性に関する専門的知識と経験をもつ児童相談所が主導権をもって調査を行うことが,事実解明及び処遇選択に資するという考えに基づく。改正案のとおりに警察官が中心となって触法少年等の取調べを行えば,誤った供述が引き出されて冤罪を生む危険性が高く,専門性の不足から当該少年を心理的に傷付けるおそれもある。この点,触法事件における児童相談所の調査能力が不十分ではないかとの指摘もあるが,実際には,児童相談所による調査及び家庭裁判所の補充調査によっても事実解明に支障をきたした事例はまったく報告されていない。仮にこうした問題があるとすれば,児童相談所の人的物的資源を強化拡充することによって対処すべきであり,警察官の権限を強化することで解決しようとする改正案には賛成できない。また,改正案は,ぐ犯少年である「疑いのある者」をも調査の対象としているが,そもそもぐ犯自体が将来罪を犯すおそれのあることを要件とする非行類型であることに照らせば,かかる調査対象の設定は事実上限定を欠き,警察による過度の干渉によってぐ犯少年に対する児童福祉的対応が後退させられる危険がある。従って,警察官に触法事件等の調査権限を付与することにも反対である。 以 上2005年(平成17年)6月22日仙台弁護士会会長松坂英明

平成17年02月26日 債権管理回収業に関する特別措置法の改正に反対する決議
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2004年(平成16年)8月、全国サービサー協会(以下「協会」という。)から、「債権管理回収業に関する特別措置法改正に関する要望書」(以下「要望書」という。)が法務大臣宛に提出され、この度の通常国会において、この要望書の内容を盛り込んだ同法(以下「サービサー法」という。)の改正法案が、議員立法として上程されることが予定されている。協会からこのような要望書が出されたのは、同法の施行から5年(同法付則で定められた見直し検討のための経過期間)以上が経過した今日、協会が、債権管理回収会社(以下「サービサー」という。)の取り扱い業務の拡大やその業務遂行の利便性実現を目指して行動を起こしたことによるものである。そのため、要望書の内容は、(1)サービサーが取り扱い可能とされる特定金銭債権の範囲の拡大、(2)兼業の承認制の緩和(承認制からから届出制へ)、(3)「債権回収」の商号強制の廃止、(4)利息制限法超過利息の請求の認容、(5)身分証明書携帯と債権譲渡要件の緩和、(6)戸籍、住民票、外国人登録原簿に対する調査権限の付与、(7)競売での現況調査及び評価の特例のように、サービサーに対する規制を大幅に緩和することを求めるものとなっている。しかし、もともと債権回収を業とすることは、弁護士以外には禁じられており(弁護士法72条)、債権回収のために他人の権利を譲り受けることは許されないのが原則である(同法73条)。このような規定は、債権回収等の法律問題に適正に対処するためには、専門知識と経験、さらには厳格な倫理規制に服している弁護士でなくてはならないという趣旨に基づいている。これに対し、サービサー法は、「(不良債権と化した)特定金銭債権の処理が喫緊の課題となっている状況に鑑み」「弁護士法の特例」(サービサー法第1条)として成立したものである。このように、その立法目的は、特定金銭債権の処理に限定されるべきものであり、取り扱い可能な債権の範囲を広げることは、当初の立法目的を大きく逸脱するとともに、上記のような弁護士法の趣旨に反することは明らかである。実際上も、金銭債権の中には、債務者からその不存在が主張されたり相殺や時効の抗弁が主張されるなど紛争性を帯びるものも数多く存在するところ、こうした紛争性のある権利を、法的な専門知識及び倫理規制が必ずしも担保されていないサービサーの業務の対象と認めるときは、紛争の適正な解決がないがしろにされるおそれは否定できない。さらに、それ以外のサービサーの業務遂行の規制緩和に関する改正条項についても、これらが可決されるときは、利息制限法を超過する利息の支払を求めることによる債務者の経済的更生の阻害や、債務者とされる市民の個人情報(本籍・住所地など)を収集することによるプライバシーの侵害など、サービサーの業務が、市民の生活に対し深刻な脅威を及ぼす結果となることは明らかである。このように、今国会に上程される予定のサービサー法改正法案は、サービサー及びその業界に利便性をもたらすことを重視する反面、その相手方である債務者に及ぶ不利益や様々な社会的弊害を全く顧みないものであって、このような法案が国会において可決されることは決して許されるべきではない。以上の理由により、当会は、このようなサービサー法改正法案に強く反対し、今国会において同法案が上程された場合、この法案が廃案となるよう強く求めるものである。以上、決議する。
2005年(平成17年)2月26日仙台弁護士会会長 鹿 野 哲 義

平成16年11月17日 自衛隊のイラク派遣延長反対・即時撤退並びに「イラク特別措置法」の廃止を求める会長声明
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小泉首相は、人道復興支援という名目のもと、本年12月14日に期限を迎える自衛隊派遣期間を延長しようとしている。しかし、現在イラクでは、米軍が1万5000人もの兵力でファルージャに対する攻撃を行い、市内中心部の医療施設までが爆撃を受け、民間人を含む多数の死傷者が出ている。他方「武装勢力」側もこれに徹底的に交戦する意向を示し、日夜戦闘行為が続いている。また、11月7日には暫定政府のアラウイ首相が全土に非常事態宣言を発するなどイラク全土が戦闘状態にあり、既に自衛隊宿営地内にもロケット弾が打ち込まれる事件が発生していることもあわせると、自衛隊が派遣されているサマワも「非戦闘地域」でないことは一層明らかとなっている。そして、11月17日には、イラクの反米武装勢力の幹部が、「自衛隊は占領軍」と規定することと決めた、「われわれは占領者と戦っており、日本もその戦いの(相手の)一部になった」と言明した、と報道されるに至っている。このような状況下で自衛隊の派遣期間を延長すれば、自衛隊が攻撃を受けて武力行使に及び死傷者を発生させる危険性や隊員に被害が出る危険性は一層高くなっている。世論調査の結果をみても63%の国民が派遣延長に反対しており(賛成25%。朝日新聞10月26日付)、また、政権党である自民党の中からも派遣延長に反対の声があがっている。11月11日には野党3党が共同で「イラク特別措置法」廃止法案を衆議院に提出した。そして、今会期中の早急な審議入りを要望している。そもそも米英軍によるイラク攻撃は、国連憲章に反する違法行為であり、また、アメリカが戦争の大義とした大量破壊兵器が存在しないこと、フセイン政権とアルカイダとの関係についても何ら証明されていないことは、本年9月にパウエル国務長官自身が認めている。国連のアナン事務総長も、米英軍によるイラク攻撃は国連憲章に反することを名言しており、イラク戦争の正当性は全く否定されている。当会は、2003年3月24日付け「アメリカとイギリスによるイラクへの武力攻撃に反対する会長声明」で、大規模爆撃を含む武力攻撃は、多数の市民の声明を奪う最大の人権侵害であり真の平和と安全をもたらさないことを指摘した。更に、本年4月12日付け「自衛隊のイラク即時撤退を求める会長声明」で、自衛隊派遣の根拠となる「イラク特別措置法」は、イラクにおける自衛隊の武力行使を事実上容認するもので、国際紛争を解決する手段として武力による威嚇又は武力の行使を禁じた日本国憲法に違反するおそれが極めて高いものであること、イラクへの自衛隊派遣は、国連憲章に違反する米英軍の武力行使と一体化するものと評価されることが明らかであって憲法に反すること、自衛隊の派遣されているサマワも迫撃砲が撃ち込まれるなど「非戦闘地域」とはいえないことが明らかになってきたこと、従って「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施」するとのイラク特別措置法の規程自体にも違反することなどを指摘した。前述したイラクの悲惨かつ憂うべき現状等は、これまで当会が指摘してきた憲法上、法律上の問題点や危惧を裏付けるものとなっている。よって、当会は、以上に述べたイラクの実情に鑑み、改めて日本政府に対し、自衛隊の派遣期間を延長することなく即時撤退させること、国会に対し、憲法に違反する恐れの極めて高い「イラク特別措置法」を廃止することを求めるものである。
2004年11月17日仙台弁護士会会長鹿野哲義

2271 ら特集10仙台弁護士会⑤21

平成15年03月24日 アメリカとイギリスによるイラクへの武力攻撃に反対する会長声明
2003年3月24日仙台弁護士会長 犬飼健郎
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平成15年02月22日 有事法制3法案の廃案を求める決議
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政府・与党が、第154回国会に上程し、第156回通常国会において成立を図ろうとしている有事法制3法案には、憲法原理に照らし、少なくとも以下に指摘する重大な問題点と危険性が存在する。第1に、「武力攻撃事態」法案では「武力攻撃のおそれのある事態」や「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」までが「武力攻撃事態」とされており、その範囲・概念は極めて曖昧である。政府の判断によりどのようにも「武力攻撃事態」を認定することが可能であり、しかも、国会の承認は「対処措置」実行後になされることから、政府の認定を追認するものとなるおそれが大きい。第2に、いったん内閣により「武力攻撃事態」の認定がなされると、陣地構築・軍事施設・軍事物資確保等のための私有財産の収用・使用、軍隊・軍事物資の輸送、軍事施設の建設、戦傷者の治療等のための市民に対する役務の強制、交通・通信・経済等の市民生活・経済活動の規制がなされることになる。これは憲法規範の中核をなす基本的人権保障原理を変質させる重大な危険性を有する。
 第3に、曖昧な概念の下で拡張された「武力攻撃事態」における自衛隊の行動は、憲法の定める平和主義の原理、憲法九条の戦争放棄、軍備及び交戦権の否認に抵触するのではないかとの重大な疑念が存在する。またいわゆる「周辺事態法」と連動して、米軍が主体的に関与する戦争あるいは紛争に我が国を参加させることにより、日米の共同行動すなわち個別的自衛権の枠を超えた「集団的自衛権の行使」となって、周辺諸国から我が国が対外的脅威とみなされるおそれがある。このことは、我が国に対する攻撃を招く危険を生じさせることにさえなる。
 第4に、武力の行使、情報・経済の統制等を含む幅広い事態対処権限を内閣総理大臣に集中し、その事務を閣内の「対策本部」に所掌させることは、行政権は内閣に属するという憲法規定と抵触する。更に、内閣総理大臣の地方公共団体に対する指示権及び地方公共団体が行う措置の直接執行権は、地方自治の本旨に反する。この法案は、内閣総理大臣に強大な権限を付与するものであり、憲法が定める民主的・権力分立的な統治構造・地方自治制度を変質させるものである。
 第5に、日本放送協会(NHK)などの放送機関を指定公共機関とし、これらに対し、「必要な措置を実施する責務」を負わせ、内閣総理大臣が、対処措置を実施すべきことを指示し、実施されないときは自ら直接対処措置を実施することができる。これは、政府が放送メディアの権力監視機能、報道の自由を侵害し、国民主権と民主主義の基盤を崩壊させる危険を有するものである。仙台弁護士会は、法案の持つ重大性、危険性に鑑み、法案の問題点を国民・県民に明らかにし、上記理由に基づき、有事法制3法案に反対し、廃案にすることを改めて強く求めるものである。以上のとおり決議する。
2003年(平成15年)2月22日仙台弁護士会会長 犬飼健郎

平成15年02月22日 簡易裁判所判事及び副検事経験者に対して「準弁護士」資格を付与することに反対する決議
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最高裁判所と法務省は,簡易裁判所判事(以下「簡裁判事」という)及び副検事経験者に対し,次のとおり簡易裁判所(以下「簡裁という」)管轄の事件を中心に弁護士業務を行うことが出来るいわゆる「準弁護士」資格を付与することを提案している。すなわち,刑事に関しては簡裁判事及び副検事経験者とも,①簡裁における被告人の弁護,②法定刑に死刑または無期懲役がある罪以外の被疑者(少年を含む)の弁護,③上記①及び② に関わる示談,④刑事事件に関する法律相談が出来るものとされ,民事に関しては,簡裁判事経験者には,①簡裁における民事訴訟等の代理,②法律相談(訴額による制限なし),③裁判外の和解代理(訴額による制限なし)が出来るものとされている。今次の司法改革は,法科大学院を中核とする新しい法曹養成制度のもとで,高い資質,能力を確保しつつ,法曹人口を大幅に増員し,法曹が社会生活上の医師として社会の多様なニーズに対応することをめざしている。法曹資格を取得するには,これまで以上にプロセスを重視した養成課程を経ることが強く要求され,司法試験合格者数も平成22年以降は毎年3000人となり,法曹人口が急速かつ大幅に増加していくことが見込まれている。このようなときに,官公庁内部の登用試験で採用された簡裁判事や副検事に,本来の法曹養成課程を経ない「準弁護士」なる資格を創設,付与することは,上記改革の理念に反し,改革の流れに逆行するものである。しかも官公庁の内部試験を経た特定の公務員のみに,「準弁護士」の資格まで与えることは,司法制度改革審議会の意見書がいう「簡裁判事,副検事の専門性の活用」の範囲を明らかに逸脱するものであり,むしろ官の優遇策,退職者の天下り先確保策との批判を免れない。「準弁護士」のように,取扱い業務が極めて限定され,本来の弁護士とは異質な資格者が存在することは,利用者である国民からみても極めてわかりにくく,混乱を生ぜしめ,ひいては司法への不信を招く恐れすらある。また,法曹養成課程を経ない簡裁判事や副検事経験者が被告人や被疑者の弁護人となることは,憲法上保障された弁護人依頼権の保障の観点からも,到底容認し難いものである。なお,これら準弁護士資格の付与は,地方における弁護士不足解消のために必要であるとの意見もあるが,そもそも司法試験合格者は平成22年度までに飛躍的に増大することが確実となっており,弁護士不足の問題が日弁連・弁護士会が取り組んでいる全国の法律相談センター活動,公設事務所の推進,地域司法計画の展開,事務所法人化,法律扶助制度の拡充等により解決することのできる問題であることからすれば,準弁護士資格を付与する制度を新設する必要性はこの点においても全くないものといわざるを得ない。以上の理由により,当会は準弁護士制度を新設し,簡裁判事及び副検事に準弁護士資格を付与することに強く反対する。以 上 以上のとおり決議する。
2003年(平成15年)2月22日仙台弁護士会会長 犬飼健郎

平成15年02月22日 弁護士報酬の敗訴者負担制度導入に反対する決議
ttp://senben.org/archives/579
弁護士報酬の一般的な敗訴者負担制度は、市民の司法へのアクセスを抑制するおそれがあり、また裁判の人権保障機能及び法創造機能を損なうものであるから、当会はその導入に強く反対する。以上のとおり決議する。2003年(平成15年)2月22日仙台弁護士会会 長  犬飼健郎

平成14年06月20日 個人情報保護各法案に反対し、住民基本台帳ネットワークシステム施行の延期を求める仙台弁護士会会長声明
ttp://senben.org/archives/583
6月19日までの今国会の会期が延長された中、政府は、個人情報保護法案及び行政機関個人情報保護法案が成立しない場合であっても、住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネットシステム」という)の8月施行を実施したいとしている。個人情報保護法案は、メディアの活動を不当に規制するのみならず、弁護士、弁護士会を含む民間事業者一般に対し具体的義務を課した上、個人情報保護のための独立した機関をおかずに主務大臣が助言、勧告、命令等の権限を持ち、命令違反には罰則を設けているなど、事業者に対する広範な介入を招くおそれが高い。また、行政機関個人情報保護法案も、利用目的の変更、目的外利用や行政機関同士の情報提供を広く認める反面、その必要性・相当性についてチェックできる手続的配慮がなく、罰則も一般の守秘義務違反等しかない。 このように、個人情報保護法各法案には、重大な欠陥がある。昨今の、防衛庁における、職員が情報公開請求者のリストをデータ化して、他部局に流し、発覚するや削除した事件は、情報の収集、目的外利用及び内部の情報提供等について、まさに、上記必要性・相当性によるチェックが全く働かないことを、如実に示している。もとより高度情報化社会では、個人情報保護法制は必要である。OECD8原則を受けた、ネットワーク社会の個人情報保護を目的とするEUデータ保護指令は、その要求水準を満たす個人情報保護法制のない第三国へのデータの移転を禁止すらしている。情報化社会において取り残されないという面からも、上記水準を満たす個人情報保護法制の整備は不可欠であるが、前記個人情報保護各法案は、到底そうした水準を満たすものではない。翻って言えば、住基ネットシステムは、200を超える行政事務に使用できる共通番号を国民全員に付し、オンラインによりネットワーク化するというものである。技術的には、個人の付番号をいわばマスターキーにして、当該個人に関するあらゆる情報の集積が可能となるシステムである。法制の整備を含む十分なセキュリティ措置なしには、取り返しのつかないプライバシー侵害が起きるおそれが大きい。そこで、1999年の住民基本台帳法改正の際には、附則1条2項で「この法律の施行にあたっては、政府は、個人情報保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする」と定められた。しかるに、前記個人情報保護各法案は、上記附則にいう所要の措置を満たすものではない。 ましてや個人情報保護法制の整備を待たずに住基ネットシステムを稼働させるというのは、プライバシー保護の見地からは、暴挙とすら言いうるものである。以上、当会としては、個人情報保護各法案には前記重大な欠陥を払拭する抜本的修正が必要であり、また、そうした個人情報保護が十分になされるような法整備がなされない限り、住基ネットシステムの施行も延期されるべきである。
2002年(平成14年)6月20日仙台弁護士会会長 犬飼健郎

平成14年05月15日 「有事法制」法案に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/586
現在国会で「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」、「安全保障会議設置法の一部を改正する法律案」、「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」(以上を有事法制3法案という)が審議されている。 政府与党は、今国会でこれらの法案を成立させる構えを示している。しかし、有事法制3法案は、以下に述べるような極めて重大な問題点と危険性を有している。また、国民への事前の十分な説明と国民的議論がなされないままに審議がなされている。これらのことから仙台弁護士会は、この3法案に反対の意思を表明するものである。
 第1に、「武力攻撃事態」法案では「武力攻撃のおそれのある事態」や「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」までが「武力攻撃事態」とされており、その範囲・概念は極めて曖昧である。 政府の判断によりどのようにも「武力攻撃事態」を認定することが可能であり、しかも、国会の承認は「対処措置」実行後になされることから、政府の認定を追認するものとなるおそれが大きい。
 第2に、いったん内閣により「武力攻撃事態」の認定がなされると、陣地構築・軍事施設・軍事物資確保等のための私有財産の収用・使用、軍隊・軍事物資の輸送、軍事施設の建設、戦傷者の治療等のための市民に対する役務の強制、交通、通信、経済等の市民生活・経済活動の規制がなされることになる。これは憲法規範の中核をなす基本的人権保障原理を変質させる重大な危険性を有する。
 第3に、曖昧な概念の下で拡張された「武力攻撃事態」における自衛隊の行動は、憲法の定める平和主義の原理、憲法9条の戦争放棄、軍備及び交戦権の否認に抵触するのではないかとの重大な疑念が存在する。またいわゆる「周辺事態法」と連動して、米軍が主体的に関与する戦争あるいは紛争に我が国を参加させることにより、日米の共同行動すなわち個別的自衛権の枠を超えた「集団的自衛権の行使」となって、周辺諸国から我が国が対外的脅威とみなされるおそれがある。 このことが、我が国に対する攻撃を招く危険性を生じさせることにさえなる。
 第4に、武力の行使、情報・経済の統制等を含む幅広い事態対処権限を内閣総理大臣に集中し、その事務を閣内の「対策本部」に所掌させることは、行政権は内閣に属するという憲法規定と抵触する。更に、内閣総理大臣の地方公共団体に対する指示権及び地方公共団体が行う措置の直接執行権は、地方自治の本旨に反する。 この法案は、内閣総理大臣に強大な権限を付与するものであり、憲法が定める民主的・権力分立的な統治構造・地方自治制度を変質させるものである。
 第5に、日本放送協会(NHK)などの放送機関を指定公共機関とし、これらに対し、「必要な措置を実施する責務」を負わせ、内閣総理大臣が、対処措置を実施すべきことを指示し、実施されないときは自ら直接対処措置を実施することができる。 これは、政府が放送メディアを統制下に置き、市民の知る権利、メディアの権力監視機能、報道の自由を侵害し、国民主権と民主主義の基盤を崩壊させる危険を有する。 最後に、この法案は、法律施行後2年以内に有事法制の整備を総合的かつ効果的に実施することを国会に義務付けており、戦前の国家総動員体制と類似する国家体制を生じさせるおそれがある。このような重大な問題点を含む有事法制3法案が、その具体的内容が事前に国民に知らされることなく、したがって国民的議論が尽くされることもなく今国会に上程され、審議されていることは、国民主権に基づく民主的手続の点からも重大な問題を含むものであり、性急・拙速といわざるを得ない。 また、この間の国会における審議においても、「武力攻撃事態」の概念についての政府の説明に不統一がある等、上記にあげた種々の問題点が解明されたとは言い難い状況にある。以上の危険性及び手続き的問題点に鑑み、仙台弁護士会としては、有事法制3法案に反対し、同法案を廃案にするように求めるものである。
2002年(平成14年)5月15日仙台弁護士会会長犬飼健郎

平成14年05月15日 民事法律扶助事業に対する抜本的財政措置を求める声明
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民事法律扶助法は、民事法律扶助事業の統一的な運営体制の整備及び全国的に均質な遂行のために必要な措置を講ずることを国の責務とし、民事法律扶助事業の全国的に均質な遂行の実現に努めることを指定法人の義務としている。民事法律扶助事業の実施の指定を受けている財団法人法律扶助協会は、国に対し、平成13年度の民事法律扶助事業の補助金として、59億8000万円の要望をした。 これに対する国の決定額は25億7500万円弱であり、その後に認められた補正額2億8000万円を加えても約28億5500万円にとどまった。 一方、同年度に扱った財団法人法律扶助協会の事業のうち、代理援助の件数だけでも29,855件に及んでおり、財源不足のため、年度末には同協会の各支部において受付窓口を閉鎖したり、全国30以上の支部で自己破産の利用を制限したり、申込みは受け付けても扶助決定を4月以降とするなどの状況を呈するに至った。そこで、財団法人法律扶助協会は法務省に対し、平成14年度の民事法律扶助事業の補助金として66億円余の予算要望を行い、法務省は36億円の概算要求をまとめたものの、内閣府及び財務省の査定を受け、平成14年度の予算は要望額の半額以下である、約30億円しか認められなかった。しかしながら、30億円の国庫補助金では償還金等を加算しても平成13年度の事件数にしか対応できず、代理援助の件数が40,000件に近づくことが予測されている平成14年度は、前年度と同様、年度途中で財源不足のために、再び同協会の全国の各支部で援助申込受付を中止せざるをえない深刻な事態となることが予想され、このままでは民事法律扶助制度は破綻し、経済的弱者の司法へのアクセスが閉ざされることとなる。現に、同協会仙台支部においても、自己破産事件については平成13年度時点で既に希望者の半数程度しか援助決定ができておらず、更に本年度は一般民事事件についても件数制限を真剣に検討せざるを得ない状況にある。民事法律扶助制度は、憲法第32条の「裁判を受ける権利」を実質的に保障する制度であり、平成13年6月12日に発表された司法制度改革審議会の意見書では、「民事法律扶助制度については、対象事件・対象者の範囲、利用者負担の在り方、運営主体の在り方等について、更に総合的・体系的な検討を加えた上で、一層充実すべきである」とし、民事法律扶助の拡充を求めている。仙台弁護士会及び財団法人法律扶助協会仙台支部は、国に対し、国民の裁判を受ける権利を保障し、利用しやすい司法を実現するために、民事法律扶助事業に対する補正予算を計上するなど直ちに必要な財政措置を講ずることを強く求めるものである。
2002年(平成14年)5月15日
仙台弁護士会会長犬飼健郎
財団法人法律扶助協会仙台支部
支部長   渡 邊 克 彦

平成17年12月02日 平成17年12月2日会長声明
ttp://senben.org/archives/513
2005(平成17)年11月17日、政府(国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部)は、FATF(国際的なテロ資金対策にかかる取組みである「金融活動作業部会」の略称)勧告実施のための法律整備について、FIU(金融情報機関)を金融庁から警察庁に移管する等の決定を行った。 この決定について、当会は、下記の経緯に鑑みて、到底容認することができず、日弁連とともに、反対運動を展開していくことを決意する。2003年6月、FATFは、マネーロンダリング及びテロ資金対策のために、ひとつの勧告を行った。それは、規制対象を金融機関から弁護士当に拡大して、不動産売買等一定の取引について、FIUへの報告を義務付けるものであった。これを受け、政府(国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部)は、2004(平成16)年12月に、「テロの未然防止に関する行動計画」を策定し、上記勧告の完全実施を決定した。このFATF勧告は、弁護士に対し、依頼者の疑わしい取引の報告を義務付けるものであり、守秘義務に抵触するおそれがあり、ひいては依頼者の弁護士に対する信頼を崩壊させるものであって、弁護士制度の根幹を揺るがす内容であった。そこで、世界の弁護士は、この勧告の実施に反対し、日弁連も、勧告の完全実施のための国内法整備に反対を表明した。しかし、一方、テロ対策の必要性を否定することはできず、また、日本においては、金融庁にFIUが設置されており、日弁連が弁護士からの報告を審査して、金融庁に通知するという構造であれば、市民の弁護士に対する信頼や弁護士自治にとって、より侵害的でない制度の構築も可能ではないかとの判断から、日弁連も法務省との間で協議を続けてきた。そして、この協議は、FIU(金融情報機関)が金融庁に置かれる構造を当然の前提としてなされてきた。ところが、冒頭に述べたとおり、今般、FIU(金融情報機関)を金融庁から警察庁に移管する等の政府決定がなされた。弁護士会が警察庁に通知する制度構造は、弁護士・弁護士会が国家権力から独立したものであることの大きな障害になるものであって、市民の弁護士に対する信頼や弁護士自治を侵害するものと言わざるを得ない。したがって、今回の政府決定は、到底容認することができないものであり、当会は、市民の理解を得る努力を行いつつ、日弁連とともに、反対運動を展開していくことを決意する。
2005(平成17)年12月2日会長 松坂英明

平成17年10月21日 共謀罪の新設に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/category/statement2005
政府は、いわゆる共謀罪に関する法案を、今特別国会において審議する予定であったが,これを断念し,改めて次の国会における成立を目指すものと報じられている。この法案は、解散前の通常国会において提案され、廃案となったものとほぼ同じ内容であり、構成要件の明確性を欠き、更に処罰時期を著しく早め、処罰範囲を一気に拡大して、事実上刑法を全面改悪するに等しい。これは刑法の原則である罪刑法定主義に反し、憲法上の言論の自由、結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威である。当会は、本年7月、この共謀罪の新設の法案に反対する意思を表明した。共謀罪とは、団体の活動として、組織により行われるものの遂行を共謀したことだけで処罰するものである。死刑又は無期若しくは長期10年を越える懲役若しくは禁錮の刑が定められている犯罪について共謀した場合には5年以下の懲役又は禁錮の刑に処するものとし、長期4年以上10年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている犯罪について共謀した場合には2年以下の懲役又は禁錮の刑に処するものとされている。しかし、共謀罪、犯罪の実行行為の着手がないばかりでなく、予備行為さえも行っていない段階で、共謀をしたというだけで処罰するものとなっており、処罰時期を著しく前倒しにするものである。したがって、抽象的危険の存否すら不明な段階であろうとも、会話ないし通信をしたことだけで刑罰を科されることになりうる危険がある。しかも、現行刑法では、予備行為が処罰されているのは殺人ないし放火などの重大犯罪に限られているところ、この共謀罪では、長期4年以上の刑罰が科せられる犯罪について成立が認められていることから、500以上にものぼる非常に広範囲な犯罪が実行前において処罰の対象とされてしまう。また、「共謀」という不明確な概念を構成要件としているため、刑罰法規の明確性原則に反する。共謀は抽象的概念であるため、特定の行為からその認定は困難であり、行為者の会話のみならず内心にまで踏み込まなければ判断できない以上、行為者の思想、信条、主義にまで捜査機関が調査権限を及ぼすことを招き、その結果、国民の思想、信条の自由を侵害してしまうことになりかねない。そして、思想、信条を表現するための通信、出版などの情報伝達及び外部公表行為に対する萎縮的効果を極めて甚大となる。また、共謀の事実を捜査するためとして、捜査機関が、市民の一般的な会話や電話、そして電子メールのやりとりなどに対する監視ないし管理を強化していくという事態をももたらしかねない。このように、共謀罪の新設は、民主主義を支える表現の自由、そして個人として最も尊重されるべき思想信条の自由を侵害するおそれがあり、到底受け入れることができないのである。そもそもこの法案は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条例」(以下「犯罪防止条約」という。)の批准のための国内法を整備するため上程された。それであれば、法規制は犯罪防止条約が求める範囲においてなされれば足りる。ところが、犯罪防止条約においては、その適用範囲は「性質上越境的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するもの」に限定されているにもかかわらず、共謀罪ではこの「越境性」「組織的な犯罪集団の関与」を要件としていない。もって、条約批准に伴う国内法整備という範囲を超えて、過度にその適用範囲を拡大しているものである。よって、当会は、あらためて、この共謀罪の新設に強く反対するものである。以上
2005年(平成17年)10月21日仙台弁護士会会長松英明

平成17年09月21日 平成17年9月21日 憲法改正国民投票法案に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/517
仙台弁護士会は、日本国憲法の平和主義、国民主権、基本的人権保障などの原則を尊重する立場から、これらの諸原則に反する疑いのある法案や政府の行為に対し、批判や反対の意見を表明してきた。近時、政府与党は、国会での憲法改正国民投票法案成立を目指している。法案の内容は、2004年12月3日、国民投票法等に関する与党協議会の実務者会議において、2001年11月に発表された憲法調査推進議員連盟の日本国憲法改正国民投票法案に若干の修正を加えて日本国憲法国民投票法案骨子(案)(以下「法案骨子」という。)を策定し、この「法案骨子」を基に法案化するとのことである。しかしながら、この「法案骨子」には、国民主権、基本的人権の保障という憲法の基本原則からして、以下の重大な問題がある。
 1 「法案骨子」は、憲法の複数の条項について改正案が発議された場合に、全部につき一括して投票しなければならないのか、あるいは条項ごとに個別に投票できるのかについて明らかにしていない。この点については、国民主権の原理に則り、条項ごと又は問題点ごとに個別の賛否の意思を問う発議方法及び投票方法がとられるべきである。
 2 「法案骨子」は、国民投票運動について、広範な制限禁止規定を定め、不明確な構成要件により刑罰を科すものとなっている。その主なものを挙げると、① 公務員の運動の制限、②教育者の運動の制限、③外国人の運動の制限、④国民投票の予想結果の公表の禁止、⑤新聞・雑誌の虚偽報道の禁止、⑥新聞・雑誌の不法利用の禁止、⑦放送事業者の虚偽報道の禁止等である。しかし、国民投票にあたっては、表現の自由が最大限保障されるべきであり、国民投票運動は基本的に自由でなければならない。上記のような規制が広範かつ不明確な構成要件のまま設けられるならば、憲法改正国民投票という主権者が最も強く関与すべき事項について、主権者に十分な情報が伝わらず、また、国民の間で自由な意見交換がなされないまま国民投票が実施されることになるおそれがある。「法案骨子」の制限禁止規定は、表現の自由、報道の自由及び国民の知る権利を著しく制限するものであるといわなければならない。
 3 「法案骨子」は、国民投票の期日については、国会の発議から30日以降90日以内の内閣が定める日としている。しかし、国民が的確な判断をするために必要かつ十分な期間が確保されなければならず、この期間はあまりにも短い。
 4 「法案骨子」は、憲法改正に対する賛成投票の数が有効投票総数の2分の1を越えた場合に国民投票の承認があったものとする。また、国民投票が有効に成立するための投票率に関する規定を設けていない。しかし、少なくとも改正に賛成する者が、全投票総数の過半数を超えたときに、改正についての国民の同意があったとされるべきであり、国民投票が有効となる最低投票率に関する規定も設けるべきである。
 5 「法案骨子」は、国民投票無効訴訟についてさだめているものの、提訴期間を投票結果の告示の日から起算して30日以内とし、一審の管轄裁判所を東京高等裁判所に限定している。しかし、この提訴期間は憲法改正という極めて重要な事項に関するものとしては短すぎるし、管轄の限定も国民の裁判を受ける権利を制限するものであって不倒である。
 1 「法案骨子」は、軽微な選挙違反により公民権停止者の投票権を認めず、「衆議院及び参議院の選挙権を有する者は国民投票の投票権を有するものとする」としている。また、18歳以上の未成年者についても、これを認めないとしている。しかし、公民権停止中の者に対して憲法改正の投票権を否定する理由に乏しく、また、18歳以上の未成年者については十分な議論がなされるべきである。いうまでもなく、憲法改正国民投票は、主権者である国民が、国の最高法規である憲法のあり方について意思を表明するという国民の基本的な権利の行使にかかわる国政上の重大な問題である。よって、国政参加のどの機会に増して、国民には自由な議論の時間と方法が保障されることが必要であるし、投票結果には国民の意思が正確に十分に反映される手続が保障されるべきである。しかるに、「法案骨子」は、上記のとおり、民主的な手続的保障への配慮を欠いているといわざるを得ず、このまま拙速に進めば、国民の基本的人権を侵害したまま、国民の意思が正確に反映されないまま、国の最高法規たる憲法が改正されてしまう危険がある。このような「法案骨子」に基づく憲法改正国民投票法案が国会に提出されることは到底容認することができない。よって、仙台弁護士会は、国民主権、基本的人権尊重などの基本原則を尊重する立場から、「法案骨子」に基づく憲法改正国民投票法案が国会に提出されることに強く反対するとともに、広く国民の間で、真に国民主権に根ざした憲法改正国民投票法案のあり方について十分な議論がなされることを求めて、活動していくものである。以上
2005年(平成17年)9月21日 仙台弁護士会 会長松坂英明

2270 ら特集10仙台弁護士会⑤20

平成10年05月22日 平成10年5月会長声明
ttp://senben.org/archives/category/statement1998
平成10年5月会長声明1998年05月22日
 1 政府は本年4月10日、「公務文書」の文書提出命令に関する「民事訴訟法の一部を改正する法律案」を国会に上程した。
 2 平成8年、第136回国会に上程された民事訴訟法改正案の政府原案では、「公務秘密文書」について監督官庁が承認しなければ一律文書提出義務がなく、又裁判所に提出拒否事由の存否に関する判断権がない等、不合理な官民格差を生じ、各界から批判が集中した。その結果、上記政府原案は修正削除されたうえ、衆参各法務委員会の付帯決議及び新民事訴訟法付則27条によって、情報公開制度の検討と並行して総合的な検討を加え、新民事訴訟法公布後2年を目処として必要な措置を講ずるものとされた。
 3 しかし、今回提出された改正案は上記付帯決議及び附則の要求を十分に満たしておらず不当なものである。即ち、
① 「公務秘密文書」の定義があまりにも広く概括的であり、その結果「公務文書」の提出範囲が狭められる恐れがある。
② 刑事事件記録及び少年保護事件記録を文書提出義務の対象から除外しており、これらの文書が例えば交通事故による損害賠償訴訟等の民事訴訟及び官官接待や贈収賄等に端を発する住民訴訟等の行政訴訟における立証資料として果たしている重要性を無視するものである。
③ 「公務秘密文書」のうち、特に「防衛・外交文書」及び「犯罪・捜査文書」に関し、監督官庁が提出義務がないとの意見を述べたときは、裁判所は提出義務の存否ではなく当該監督官庁の上記意見の相当性について審査するものと しており、インカメラ手続に基く裁判所の判断を経ずに提出義務の存否を判断する場合が多くなることが予想され、その実質的判断権が監督官庁に委ねられる危険性がある。
④ 本年3月27日に国会提出された情報公開法案との関係では、本改正案においては「公務文書」についても自己使用文書であることが提出義務の除外事由とされているので、情報公開法案における非公開事由よりも提出拒否事由の範囲が広くなっていること、又情報公開法案では非開示事由の立証責任が官庁にあるのに対し、本改正案では提出拒否事由がないことの立証責任を申立人に課したものと解釈される余地があることにおいて整合性を欠く。
 4 当会は、上記のような問題を含む本改正案には反対であり、国会の審議において、上記附帯決議及び附則の趣旨に基づいた修正がなされるべきであり、その為に全力を尽くす決意である。以上、常議員会の決議に基き声明する。

平成10年04月20日 平成10年4月20日会長声明
ttp://senben.org/archives/628
平成10年4月20日会長声明1998年04月20日
 平成10年3月13日、政府は、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案」、「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」及び「犯罪捜査の為の通信傍受に関する法律案」の3法案を国会に提案した。同法案の主な内容は、組織的な犯罪への刑の加重、犯罪収益等による事業経営の支配を目的とする行為等の処罰及び犯罪捜査のための通信傍受の許容である。しかし、組織的な犯罪への刑の加重及び犯罪収益等による事業経営の支配を目的とする行為等の処罰は、現行法でもその犯罪態様に応じた処断が十分に可能であり、新たな立法を必要とするまでの事実が存在しない。加えて「組織」「不正権益」「支配」等の構成要件が不明確であり、犯罪収益とされる前提犯罪が広すぎる等全体として処罰範囲が広すぎること等の問題点を有している。特に、犯罪捜査のための通信傍受(いわゆる盗聴)については、対象犯罪が広すぎること、将来の犯罪も対象にしていること、別件盗聴も許容していること、盗聴許容期間につき再延長を認めるばかりでなく令状の再発布をも認めている等の問題点が多い。問題点のいくつかについては国会の審議の中での要件の厳格化等の修正も示唆されてはいるものの、その性質上いかに要件を厳格にしても憲法の定める令状主義、適正手続の保障の要請を満たすことが困難である。のみならず、警察が違法な盗聴を行った事件が存在したことを考えると、通信の秘密の侵害、プライバシ?の侵害等の深刻な人権侵害を大量に生じさせる危険があり、その立法には断固反対せざるを得ないものである。そこで、前記3法案に反対であることを広く訴えるため、本声明を発するものである。

平成16年06月22日 有事法制関連7法・3条約承認案件の成立に対する会長声明
ttp://senben.org/archives/547
6月14日、別紙記載の国民保護法・米軍支援法などの有事法制関連7法及び改正ACSAなど3条約承認案件が、参議院本会議において可決承認され、成立した。当会は、一昨年4月、別紙記載の「武力攻撃事態対処法」など有事法制3法案が国会に提出された後、同法案が憲法の根本規範である人権保障規定や民主的な統治構造を大きく変質させる危険があること等を指摘し、その廃案を求めるとともに、会内に有事法制問題対策本部を設置し必要な調査研究活動や市民集会の開催などを系統的に行ってきた。また、当会は本年3月に国会に上程された上記有事法制関連7法案に対しても、「国民保護法案」は、国民保護措置の実効性に問題があるとともに平時から国民を統制する危険が高く、また、国民の戦時ムードをかりたて紛争の平和的解決の可能性を自ら塞いでしまうおそれがあること、「米軍支援法案」等は憲法が禁止する集団的自衛権の行使や交戦権の行使をも可能とする措置を内容とし、市民の生活や権利に対する重大な影響があること等を指摘し、これらの法案を廃案にするよう強く求めてきた。更に、改正ACSAも、米軍と自衛隊との物品役務の相互提供の適用範囲を武力攻撃事態等やイラク特措法などにも拡大し、しかも弾薬提供も可能にするなど、重大な憲法問題を有する重要案件であった。しかし、衆議院さらに参議院においても、当会が指摘した問題点などについて、十分な論点整理や徹底した審議が行われたとはいえず、国民にも法案の必要性や問題点が十分認識されず、国民的議論がなされることもなかった。このように手続的にも広く十分な議論を尽くさないまま、有事法制関連7法・3条約承認案件が成立したことは、誠に遺憾と言わざるを得ない。当会は、「有事」の名の下に、憲法が保障する人権が制約され、国民主権と平和主義がないがしろにされることのないように、今後も引き続き、有事法制のあり方や運用を厳しく検証してゆくとともに、政府等関係諸機関に対して、国際紛争の解決は、国際協調主義に則り非軍事的方法によることを真摯に模索探求し、今後、憲法違反の疑いが極めて強い有事法の発動を決して行わないよう強く求めるものである。
2004年6月22日仙台弁護士会会長鹿野 哲義

平成16年05月19日 有事7法案の廃案を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/549
1 政府は、本年3月9日、別紙記載の国民保護法案、米軍支援法案、特定公共施設等利用法案、外国軍用品海上輸送規制法案等のいわゆる有事7法案を国会に上程し、本年4月13日から審議が行われている。
2 当会の基本的見解
 当会は、有事法の総則的規定である武力攻撃事態法案に対して、①武力攻撃事態や武力攻撃予測事態(併せて「武力攻撃事態等」と称する)の概念が曖昧であること、②「自衛」の範囲を大きく超え、憲法前文や9条の定める平和主義に抵触する重大な疑念があること、③市民の人権を大幅に制限し、憲法の保障する基本的人権を侵害する危険が高いこと、などを理由に廃案にするよう求めてきたが、武力攻撃事態法の各則ともいうべき今回の7法案についても、これらの批判があてはまる。
3 有事7法案の問題点
① 国民保護法案の問題点
 国民保護法案は、武力攻撃事態等及び緊急対処事態という2つの事態における「国民保護のための措置」として、住民の避難・避難住民の救援・武力攻撃災害対処措置などを定めている。同法案によれば、放送事業者である指定公共機関等に対して、政府が資料や情報の提供を求めたり、対策本部長が発令した警報の内容を放送する責務が課される。報道機関は、実際に武力攻撃事態が発生した場合には、当然に政府の発令した警報の内容を報道するはずである。にもかかわらず敢えて政府に対する情報提供や政府の発令した警報報道を責務として規定することは、逆に、報道に対して規制を行い、報道の自由や市民の知る権利に対して不当な制約を課すことになる危険性が高い。また、同法案は、立ち入り制限区域を定めて市民の立ち入りを制限し、また市民に対して特定物資の売渡・保管、土地・家屋の使用、土地・建物・物資について立入・検査など大きな権利の制約を課すことを内容としている。他方で、知る権利、集会・表現の自由の保護についての具体的な措置が確保されておらず、「国民の権利」保護としては極めて不十分な内容といわねばならない。更に、同法案は、平素から、国民に対する訓練と啓発に努めなければならないと規定しているが、特定の軍事シナリオを前提にして計画が作成され、地域社会が軍事シナリオに沿って統合・訓練されることになれば、国民の戦時ムードをかりたて、紛争の平和的解決の可能性を自ら塞いでしまうおそれすらある。このような重大な人権問題が発生する可能性がありながら、他方で、避難等の実効性については、鳥取県のシュミレーションでも、同県東部の住民2万6000人が隣県の兵庫県にバスで避難するのに11日間も要するなど、非現実的との指摘がなされている。しかも、国民保護法案では、武力攻撃事態等と異なる「緊急対処事態」というさらにあいまいな事態を規定し、その対処方針に国会承認を不要としながら、武力攻撃事態等の場合と同様に市民の権利を制限できることとしており、その危険性は極めて大きいものである。
② 米軍支援法案及び特定公共施設等利用法案の問題点
 米軍支援法案は、武力攻撃事態等と認定された場合において、日本による何らのコントロールもなされない米軍に対して、自衛隊等に属する物品や自衛隊等の役務の提供を認める。自衛隊が米軍に対して役務等を提供するということは、自衛隊が米軍の指揮下におかれることになるものである。また、特定公共施設等利用法案は、武力攻撃事態等と認定された場合において、日本国内の港湾施設・飛行場・道路・海空域及び無線通信を、自衛隊、米軍あるいはこれらから依頼を受けた業者などの優先的使用権下におくものである。そして、上記の武力攻撃事態等が、公海上で米軍に対する後方支援活動を行っている自衛隊への攻撃や攻撃が予測される場合も含むという政府見解からすれば、これらの法案は、日本の防衛とは直接関係のない場合にも、米国の軍事行動を支援協力する体制を日本国内に作り、また自衛隊をして協力させることになる。これは、従来の政府解釈によっても、憲法第9条によって禁止されている集団的自衛権の行使に該当するおそれが非常に強い。
③ 外国軍用品海上輸送規制法案の問題点
 外国軍用品海上輸送規制法案は、軍用品等を輸送していると疑われる船舶を、日本領海のみならず周辺公海においても強制的に停船させ、積荷を調べ、武器使用も認めるものであり、憲法9条が禁じた武力行使・武力による威嚇、さらに交戦権の行使に該当するおそれがある。
④ 上記法案と市民生活との関係
 国民保護法案は、最初に述べたように、市民の権利を制限し市民生活に重大な影響を及ぼすが、さらに、米軍支援法案は、適正手続の保障がないまま、米軍の緊急通行、通行妨害となっている物件の撤去を認め、さらに、米軍の土地家屋の使用のための立入検査の拒否に対する罰則をも規定している。米軍の軍事行動の支援のために市民の基本的人権の制約がなされるのであり、その問題は重大である。また同様に特定公共施設等利用法案は、米軍及び自衛隊に日本国内の港湾・飛行場・道路・海空域及び無線通信について優先利用を認めることによって、市民や業者の交通・輸送・通信を大きく制約し、日常生活に重大な影響をあたえるものである。
4 結論
 以上のべてきたように、これらの7法案のうち国民保護法案、米軍支援法案、特定公共施設等利用法案、外国軍用品海上輸送規制法案は、平和主義・基本的人権の尊重という憲法の根幹を損なう重大な危険をはらんでおり、その他の3法案についても、憲法に反するおそれのある武力攻撃事態法を補完するもので問題である。当会は、これら法案のもつ重大性・危険性に鑑み、有事7法案に反対し、廃案にすることを強く求めるものである。
2004年5月19日 仙台弁護士会会長 鹿野 哲義

平成16年04月12日 自衛隊のイラク即時撤退を求める会長声明
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自衛隊のイラク即時撤退を求める会長声明
 米国大統領による昨年5月1日の戦闘終結宣言の後も「イラクは戦争状態にあり、その全土が戦闘地域にある」状態が続いていたが、本年4月に入ると、従来協力的であったとされるシーア派と米軍など占領軍との間の激しい戦闘行為が発生し、現在も連日のように多数の死傷者が生じている。また4月8日には、自衛隊宿営地直近に向けて迫撃砲が撃ち込まれて着弾し、さらに同日、日本人民間人3名が誘拐され、自衛隊即時撤退の要求がなされるに至った。このような誘拐・脅迫行為は断じて許されるべきものではなく,誘拐された3名は速やかに解放されるべきものである。ところで,当会は、自衛隊派遣の根拠となるイラク特別措置法は、イラクにおける自衛隊の武力行使を事実上容認するもので、国際紛争を解決する手段として武力の威嚇又は武力行使を禁じた日本国憲法に違反する恐れが極めて大きいこと、イラク派兵は国連憲章に反する米英軍の武力行使と一体化したものと評価されることが明らかであることから、同法案の成立に反対した。さらに、法案成立後も、今回の自衛隊のイラク派遣は、憲法に反するだけでなく「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施し、武力による威嚇または武力行使にあたるものであってはならない」とのイラク特別措置法の基本原則にも反することを指摘し、派遣に強く反対しその中止を求めてきた。これにもかかわらず、政府はサマワは戦闘地域ではないとして自衛隊を派遣したのであるが、派遣後、戦闘はさらに激しくなり、上記のとおり迫撃砲が撃ち込まれるなどサマワも非戦闘地域とはいえないことがいっそう明らかになった。自衛隊が攻撃を受けて武力行使に至る危険性がますます高まってきたといわざるを得ない。このように状況が悪化するなかで,上記の民間人が紛争にまきこまれ誘拐されたもので,誘拐という犯罪行為に対し強い怒りを覚えるものであるとともに,まさに今自衛隊を撤退させなければ,日本国民が武力紛争の泥沼に入り込み,再び戦争の惨禍に苦しむことになることを深く憂うるものである。よって,当会は,日本政府に対し(1) 誘拐された3名の日本人を解放させるためのあらゆる努力を尽くすこと
(2) 自衛隊の派遣が日本国憲法及びイラク特別措置法の基本原則に反する派遣であることが歴然となった現実を冷徹に見据え、法の支配に則り、自衛隊を即時撤退させることを強く求めるものである。
2004年4月12日仙台弁護士会会長 鹿野 哲義

平成16年02月28日 宮城県災害対策支援機構(仮称)設立等に向けた決議
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2003(平成15)年5月、7月の宮城県北部連続地震は記憶に新しいところであるが、この地震においては、1978(昭和53)年の宮城県沖地震のような大規模な被害はもたらさなかったものの、被災地の高齢者・障害者等の社会的弱者に特に深刻な被害が見られた。また、宮城県付近を震源地とする大震災が近い将来発生するおそれもつとに指摘されている。1995(平成7)年1月17日の阪神淡路大震災においては被災住民からの法律相談が殺到し、復興活動においても弁護士・司法書士・土地家屋調査士・不動産鑑定士・建築士などの専門的知見の結集及び相互協力による横断的な対応が求められた。また、日本弁護士連合会は、2003(平成15)年5月23日開催の定期総会において、「全国弁護士会災害復興の支援に関する規程」を採択し、被災地域に居住又は勤務する市民の法的需要に応え、円滑な災害復興活動を被災地弁護士会が遂行するための支援体制の整備を打ち出している。当会は、阪神淡路大震災における被災地弁護士会等の諸活動の教訓に基づき、今後宮城県内において地震等の災害が発生した場合に、法律家として、災害後に起きる様々な法律問題に対し、関係諸団体と連携して、総合的に対処することを目的として、当会独自の災害対策に関する調査・研究を行なうとともに、県内の司法書士会等の関係諸団体との協議・意見交換を進め、横断的な災害復興支援機構を可及的速やかに設立する等して、災害復興対策のため、積極的な諸活動を企画・実行していくことをここに決意しここに決議する。
2004(平成16)年2月28日仙台弁護士会 会長松尾良風

平成15年12月18日 自衛隊のイラク派遣に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/555
自衛隊のイラク派遣に反対する会長声明
 政府は、12月9日、イラク特措法に基づく「基本計画」を閣議決定した。これに基づき、政府は年内にも無反動砲等の武器を携帯させて自衛隊をイラクへ派遣するとしている。しかし、今回の米英軍によるイラク侵攻は、国連安全保障理事会決議もなく、侵略行為に対する自衛行為でもなく、国連憲章に反する違法な行為と言わざるを得ない。そして現在、イラクにおいては、連日のように米英軍の占領に反対する抵抗が続いている。米英軍ばかりではなく、イタリア軍、スペイン軍等もその攻撃の対象となっている。軍隊の存在するところが、戦闘地域となると言っても過言ではない。しかも、国連事務所や国際赤十字委員会事務所も攻撃を受けており、国際機関職員や外交官の安全すら確保されていない。そして、ついに11月29日には日本人外交官2名が殺害されるといった事態も発生した。すなわち、イラクは戦争状態にあり、その全土が戦闘地域である。このような状況のなかイラクに自衛隊が派遣されれば、自衛隊そのものが占領軍としての米英軍の協力者として格好の攻撃目標となり、自衛隊員等が死傷したり、自衛隊員がその携帯する武器を用いてイラク国民に対して武力攻撃を行うという事態が発生する恐れが、極めて大きいといわざるを得ない。これは、憲法が否定した武力の行使を自衛隊が行うことにほかならない。日本国民は、過去の戦争に対する反省から「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」て、戦争と武力の行使の放棄を掲げる日本国憲法を制定した。憲法は、「国の最高法規」であり、これに反する国務に関する行為は無効である。しかも、イラク特措法は、「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施し、武力による威嚇又は武力行使にあたるものであってはならない」と定めている。今回の自衛隊のイラク派遣は、憲法および非戦闘地域にしか自衛隊を派遣してはならないとするイラク特措法に明らかに反するものと言わざるを得ない。内閣総理大臣をはじめとする国務大臣等は、憲法を尊重擁護する義務を負っているにもかかわらず、憲法にも法律にも反する自衛隊のイラク派遣を決定したことは極めて遺憾である。当会は「基本計画」の撤回を求めるとともに、自衛隊のイラク派遣に強く反対し、その中止を求めるものである。
2003年12月18日仙台弁護士会会長松尾良風

平成15年10月22日 司法修習生の給付制堅持を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/557
財務省の財政制度等審議会が司法修習の給費制の早期廃止を提言し,司法制度改革推進本部の法曹養成検討会でも,必ずしも十分な議論を尽くさないまま、「貸与制への移行という選択肢も含めて柔軟に検討する」との取りまとめをした。しかしながら,当会は,以下の理由により司法修習生の給費制を廃止することに強く反対する。現行司法修習制度における給費制は,司法修習生に修習専念義務を課していることの反面としてその生活を保障し、司法修習制度と不可分一体のものとして採用された制度である。すなわち、法曹養成制度は単なる職業人の養成ではなく、国民の権利義務、法の支配の実現にかかわるプロフェッションを養成するものであり、国及び社会にとって公共性・公益性の高い重要事項であるからこそ、司法修習生には修習専念義務を課す反面修習専念義務を尽くすための環境を確保するために給費制が取られているのである。したがって、修習専念義務と給費制を切り離すことは出来ない。また、修習専念義務が課される司法修習生の給費制が廃止されれば,経済的余裕のないものは法曹への道を断念せざるを得なくなる。高額な学費を要することが予想される法科大学院制度のもとではなおさらである。給費制の廃止により法曹への門戸が一般国民に閉ざされることは,社会の様々な分野において厚い層をなして活躍する法曹を獲得することを目指した司法制度改革の精神に反することは明らかである。給費制に代えて貸与制が採用された場合には、貸与の主体や条件等によって修習の独立性が脅かされるおそれもあること、また、法曹のスタート時点で多額の負債をかかえることは法曹としての質の高い活動を阻害する恐れもあることなどを考えると、貸与制では給費制廃止による弊害を取り除くことは出来ない。なお,給費制を廃止して貸与制に切り替えた上で任官者については当然に返済を免除するという議論が存在する。しかしこの議論は,実質的には任官者についてのみ給費制を維持することを意味するものであり,法曹三者の統一・公正・平等の理念に基づく司法修習を変容させ,法曹一元の理念を阻害するものであり到底容認することはできない。将来の法曹を担う人材の育成は国の責務と言うべきものであって,このため国は司法制度改革実現のため必要な財政上の措置を講ずる義務がある(司法制度改革推進法6条)。したがって、財政上の理由により給費制を廃止し貸与制を採用することは,本末転倒の議論である。よって,当会は,給費制廃止に強く反対し,給費制を堅持するよう求める。
平成15年10月22日仙台弁護士会会長松尾良風

平成15年07月16日 イラク特別措置法案に対する会長声明
ttp://senben.org/archives/559
2003年7月4日、与党3党の賛成により、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案(以下、「イラク特別措置法案」という)が衆議院を通過した。イラク特別措置法案は、「戦後はじめて、自衛隊が他国領土で米英軍を主力とする多国籍軍を支援する」ことをその目的とし、自衛隊をイラクに部隊として派遣しようとするものである。そもそも米英軍のイラク侵攻は、既に当会でも指摘しているとおり、国連憲章に反するものであり、大量破壊兵器の未発見という事態を前にして、米英が主張した正当性さえ大きく揺らいでいる。また、現在、イラクには、イラク人による統治機構は存在しておらず、米英軍が、侵攻の戦後処理としての占領行政を行っている状態である。そして、イラクにおいては、米英軍の占領に反対しての抵抗が続いており、ブッシュ大統領も認めたとおり、イラクは未だ戦闘状態にある。このような状態にあるイラクに自衛隊が武器を携えて派遣され、戦闘継続中の米英軍のために武器・弾薬・兵員を輸送することは、「非戦闘地域での後方支援」などということはできず、米英軍の武力行使と一体化したものと評価されることは明らかである。そして、米英軍の占領行為に反対するイラク人勢力から自衛隊が攻撃される可能性も大きく、その際には、自衛隊がイラク国民に対して武力を行使する事態も、自衛隊員が死傷する事態も、現実に予想されるところである。日本国憲法が他国領土での武力行使を禁じていることは言うまでもない。したがって、イラクにおける自衛隊の武力行使を事実上容認するイラク特別措置法案は、憲法に違反する恐れが極めて大きいものといわざるを得ない。しかるに、衆議院において、延長国会でのわずかな審議で、憲法との適合性に疑問があり、国民の意見も大きく分かれているこの法案を、与党3党が全野党の反対を押し切って採決したことは、到底容認することができない。当会は、イラク特別措置法案の衆議院における採決に強く抗議し、同法案に反対するものである。
2003年7月16日仙台弁護士会会長 松尾良風

平成15年06月18日 有事法制3法の成立に対する会長声明
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2003年6月6日、参議院本会議において、自民党・公明党・保守新党・民主党・自由党の賛成多数でいわゆる有事法制3法が可決され成立した。わが国は第二次世界大戦後58年を経て有事法制を有する国となった。当会は、本年5月21日付け会長声明などで、「対処措置」の発動要件である「武力攻撃事態」・「武力攻撃予測事態」の定義が曖昧であること、いわゆる周辺事態法でいう「周辺事態」との関係、武力攻撃事態法と周辺事態法がどう連動するかが不明確であること、有事認定の客観性も十分に担保されていないこと、国会による事前の民主的コントロールも確保されておらず、有事において民主的な統治機構や地方自治を維持することができるのか疑問であること、民放を含むメディアが有事に政府の統制下におかれる危険性も完全には排除されていないこと等の問題点を指摘し、参議院での慎重審議と十分な国民的議論を尽くすことを強く求めてきた。しかし、十分な国民的議論も尽くされず、上記のような重大な憲法上の問題点が何ら解消されないまま、有事法制3法が可決・成立されたことは、極めて遺憾なことといわざるを得ない。当会は、恒久平和と基本的人権の尊重、国民主権主義という日本国憲法の基本原理を擁護し、今後とも、有事法制の有する憲法上の問題点を広く明らかにし、平和が脅かされ基本的人権が侵害されることのないよう、法制の具体化や運用を、厳しく監視してゆく所存である。また、武力攻撃事態法を実施するため今後提出が予定されている「米軍支援法制」「国民保護法制」などの個別法案について、法律家団体として憲法の基本原理擁護の立場から、検討し提言していくものである。憲法は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」(前文)するとともに、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」(12条)ことを謳っている。憲法の理念や憲法が保障する基本的人権は、一人一人の市民が自らの自由と権利を保持するために努力することによってのみ守られるものである。当会は、引き続き市民とともに、最大の人権侵害である戦争に反対し、憲法で保障された自由と権利を守るため、引き続き最大限の努力をする決意である。
2003年(平成15年)6月18日仙台弁護士会会長 松尾良風

平成15年06月18日 国選弁護人の報酬引き下げに抗議し、増額を求める会長声明
2003年(平成15年)6月18日仙台弁護士会会長松尾良風
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平成15年05月21日 有事法制修正法案につき、参議院の慎重審議と国民的議論を尽くすことを求める会長声明
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与党と民主党の修正合意を踏まえて、2003年5月15日、衆議院本会議において、自民党、公明党、保守新党、民主党、自由党の賛成多数で、「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」、「安全保障会議設置法の一部を改正する法律案」、「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」が、一部修正(以下,これを「有事法制修正法案」という)の上採決された。採決された有事法制修正法案は、欠陥の大きかった政府案と比べれば、当会が指摘していた基本的人権の保障などの問題点に、ある程度応える内容となっている。しかし、「対処措置」の発動要件である「武力攻撃予測事態」の定義や範囲は曖昧なままであり、「予測事態」と周辺事態法でいう「周辺事態」の異同、武力攻撃事態対処法と周辺事態対処法がどう連動するかについても、依然として不明確なままである。また、「有事」認定の客観性も十分に担保されてはおらず、国会による事前の民主的コントロールも確保されていない。さらに、「有事」における内閣総理大臣の地方公共団体や指定公共機関に対する指示権・代執行権についても基本的な変更はなく、民主的な統治機構や地方自治を維持することができるのかという疑問は払拭されていない。民放を含むメディアが有事に政府の統制下におかれる危険性も残されたままである。このように修正法案にも、なお憲法上多くの重大な問題点が存在し、当会が指摘してきた憲法の定める平和主義・民主的統治機構・地方自治・基本的人権を侵害する危険性が解消されたとはいえない。
しかも、今回の修正法案については、衆議院での十分な審議はなされておらず、国民的な議論を尽くしたものとは到底言いがたい。言うまでもなく、有事法制法案は、わが国の進路を決定し、国民の生命と安全、そして基本的人権に大きくかかわる重要法案である。当会は、このような憲法原理にかかわる重要法案について、今後、参議院において徹底的な審議を行い、「有事」の定義や認定手続を含む修正法案の基本構造上の問題点を明らかにした上で、修正法案に対する国民的議論を尽くすことを、強く求めるものである。
2003年5月21日仙台弁護士会会長松尾良風

平成15年04月24日 個人情報保護各法案に反対し、実効的な個人情報保護法制の確立を求める会長声明
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去る4月8日から今国会では、個人情報保護関連5法案(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案、同法案要綱案)の審議がなされている。これらの法案は、個人情報の保護に関する法律案についてメディア規制にならないように若干の文言上の配慮をしたことと、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案について公務員に対する罰則規定を若干強めたこと以外は、昨年12月にいったん廃案になった従前の法案と変わっていない。すなわち、たとえば個人情報の保護に関する法律案については、一般の民間事業者一般に対し、具体的義務を課した上、主務大臣が助言、勧告、命令等の権限を持ち、命令違反には罰則を設けているなど、事業者に対する広範な介入を招くおそれは依然として高いといった問題を抱えたままである。また、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案についても、なんら第三者機関を置かずに、利用目的の変更、目的外利用や行政機関同士の情報提供を広く認める反面、その必要性・相当性についてチェックできる手続的配慮がないなど、国民の個人情報が不当に行政機関内部で流通する危険性が大であるといった問題を抱えたままである。さらに、上記両法案には、思想、信条、病歴、犯罪歴などのいわゆるセンシティヴ情報の収集制限をしていないといった問題もある。制度の根幹にかかわる基本的なこととして、個人情報の保護に関する法律案については、一般的規制を見直して、当面は、個人信用情報、医療情報、教育情報といった分野ごとの特性に応じた個人情報保護制度が整備されることをめざすべきである。他方、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案については、全個人情報のファイルの作成を義務づけ、利用目的の変更、目的外利用などの禁止又は本人への通知を必要とする規定を設ける、行政機関の個人情報の取り扱いの必要性・相当性をチェックする第三者機関を設置する、原告の住所地の地方裁判所に提訴できるといった管轄を認める、といった点が盛り込まれるべきである。当会は昨年6月20日にも同趣旨の会長声明を出しているが、こうした基本的なことについての修正がなされない限り、当会は、上記個人情報保護関連5法案に、あらためて強い反対の意思を表明せざるを得ない。
2003年(平成15年)4月24日仙台弁護士会会長松尾良風

2269 ら特集10仙台弁護士会⑤19

平成14年04月25日 平成14年4月25日会長声明
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1,政府は、本年3月18日『心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案』(以下本法案という)を国会に上程した。
 2,本法案は、殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ及び傷害の行為(対象行為)を行い、心神喪失または心神耗弱を理由として、不起訴処分にされた者、あるいは無罪または刑を減軽する確定裁判を受けた者について、「継続的な医療を行わなくても再び対象行為を行うおそれが明らかにないと認める場合」を除き、検察官は原則として地方裁判所に審判を求め、裁判官と精神科医である精神保健審判員が「医療を行わなければ心神喪失又は心神耗弱の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認める場合」には、決定により入院もしくは通院させて治療を受けさせるというものである。
 3,しかし、「再び対象行為を行うおそれ」とは、精神保健福祉法での本人の治療目的の医学的判断である『自傷他害のおそれ』とは全く別種の判断で、いわば『再犯のおそれ』にほかならない。 再犯の危険性予測を客観的に行うことは医学的にも極めて困難とされているのに、本法案では、それを理由として無期限の強制入院等を可能とするもので、精神障害者の人権上看過できない危険性を有しているものである。 また、本法案は、事実の認定、責任能力の有無の認定に際し、憲法31条以下の適正手続の保障を認めていないなど、重大な問題をはらんでいる。
 4,そもそも精神障害者による犯罪行為にあたる事件の発生率は高くはなく、再犯率は極めて低いといわれている。 時として起こる不幸な事件の多くは、治療が中断したり、適切な治療が受けれられなかったという事態の中で生じているものであり、地域における精神医療の改善・充実、福祉と連携して人権に配慮した地域精神医療体制の確立こそ必要とされているものである。
 5,しかるに、本法案は、精神障害者に対する適切な医療を保障するというより、精神障害者を特別に危険視して、精神障害者を社会から隔離することにつながる危険があるもので、従前当会が強く反対してきた保安処分と実質的に同様、社会防衛のために精神障害者の人権を危険にさらすものといわざるをえない。よって、当会は、本法案に強く反対するものである。
2002年(平成14年)4月25日仙台弁護士会会長犬飼健郎

平成13年02月22日 仙台拘置所内接見室問題についての会長声明
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平成13年2月3日仙台拘置支所において、弁護人と被告人の接見状況を拘置所職員がビデオ撮影した可能性があるとして、当該弁護人が当局に抗議したことがマスコミにより報道された。仙台弁護士会は報道の内容を重視し、当該弁護人に事情を聴取するなど事実を調査したところ、次の事実が判明した。
①仙台拘置支所内接見室の被疑者・被告人席背後のドアには縦50センチメートル、横15センチメートルの長方形のマジックミラー様の物(以下「マジックミラー」という)がはめ込まれ、接見室内部からは鏡としか見えず、外からは接見室内部が透けて見えるという構造になっている。 すなわち接見室外部から内部を監視したりビデオ撮影しても、接見当事者はそれに気付かない。
②前記接見においては、接見途中で看守が接見室に入ってきた際、接見室外にビデオカメラを構えた拘置所職員を弁護人が現認し、しかもそのビデオカメラは撮影中であることを示すと思われる赤いランプが点灯していた。仙台拘置支所は、前記弁護人の抗議に対し、①の事実及び②の事実中ビデオカメラを持った職員が接見室外にいたことを認めた上、接見状況をビデオ撮影した事実はないと釈明しているのであるが、その釈明は到底納得しがたい。弁護人と被告人との接見交通権は、憲法第34条、刑事訴訟法第39条第1項によって保障される権利であり、かつそれは秘密交通権であることに重要な意義を有するものである。 この秘密交通権という性格からするならば、捜査機関及び拘置機関が接見内容を探知することが許されないのは当然である。 外からの監視・撮影を接見当事者に咎められることなくなし得るような接見室は、秘密交通権保障の見地からして断じてこれを放置することはできないし、そのような接見室でありながらそのドアのすぐ外で職員がビデオカメラを所持するなどという行為は、当該機会に秘密交通権の侵害が行われたことを強く推認させ、秘密交通権に対する配慮を全く欠くものであったと言わざるを得ない。当会は、仙台拘置支所に対し、同所内接見室のマジックミラーを直ちに撤去することを求め、且つ同支所が秘密交通権を侵害したとの疑念を生じさせたことに強く抗議する。

平成13年01月27日 判事補制度の廃止を求める決議
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平成13年1月27日総会決議2001年01月27日
 1999年(平成11年)7月に設置された司法制度改革審議会(審議会)は、一通りの調査審議を行い、2000年(平成12年)11月20日その結果を中間報告として公表した。中間報告が取り上げている論点は司法に関わる全般に及んでいる。当会は、審議会に対し、諸論点のうち、裁判官制度の改革に関して次のとおり求める。審議会は、裁判官制度改革に関し、国民が求める裁判官像について、法律家としてふさわしい多様で豊かな知識、経験と人間性を備えている裁判官であるとし、そのような裁判官を得るため、
①裁判官の給源の多様化、多元化を図ること、
②裁判官の任命手続の国民の裁判官に対する信頼感を高める観点からの見直し(透明性、客観性、説明責任を確保する方策、指名過程に国民の意思を反映させるなど資格審査の充実を図る方策等の検討)、
③裁判官の人事制度の裁判官の独立性に対する国民の信頼感を高める観点からの見直し(透明性、客観性の確保)を行うべきであるとしている。
この中間報告中のあるべき裁判官像は妥当であるし、裁判官の選任手続と人事制度を透明性、客観性を確保する方向で見直すことを打ち出したことについては高く評価できる。今後、その方向性に合致した具体的な方策が打ち出されることを大いに期待したい。しかし、中間報告が、判事補制度の存廃に関し曖昧な態度を取っていることについては賛同しがたい。判事補制度は、中間報告がいう国民が求める裁判官像に合致した理想的な裁判官を育てる制度たり得ない(判事補から任用される裁判官がすべて理想から外れているという趣旨ではない)。 すなわち、判事補制度は、裁判所の組織の中で純粋培養的に裁判官を養成する制度であり、これによって生み出される裁判官は、概して生きた社会の真相に迫ったり生活者である当事者の痛みや感情を理解するバックグラウンドとなる社会的経験が乏しくなりがちである。又、現状の不透明な人事制度と相俟ってその独立性についての懸念をうち消せない。判事補制度は、官僚的裁判官を生む温床となっていると言わざるをえない。当会は、審議会に対し、21世紀を担うにふさわしい裁判官を生み出すために、判事補制度を廃止する方向を明らかにして、判事補以外の法律家から理想的な裁判官を選任するための具体的な諸方策及びその道筋(例えば、一定期間内に判事補制度を完全に廃止して弁護士やその資格を有する法律学者等から裁判官を確保することとし(法曹一元)、そうした裁判官の安定的確保のために弁護士や法律学者がその立場を残したまま裁判官の職務を行う非常勤裁判官制度を採用する、キャリア裁判官を前提とした累進的な給与体系を見直すなど)を調査審議し、最終報告においてはその結果を明らかにすることを求める。以上、決議する。

平成13年01月27日 弁護士報酬の敗訴者負担制度導入に反対する決議
ttp://senben.org/archives/598
司法制度改革審議会は、弁護士報酬の高さから訴訟に踏み切れなかった当事者に訴訟を利用しやすくするものであることなどから、弁護士報酬の敗訴者負担制度を基本的に導入する方向で考えるべきであるとする中間報告(2000年11月20日)をまとめた。しかし、弁護士報酬を原則的に敗訴者の負担とする制度を導入するならば、市民に訴訟による解決を躊躇させ、ルールに従って、紛争を解決するという司法の機能を阻害し、司法は国民にとって利用しにくいものとなりかねない。市民が訴訟を躊躇するのは、裁判の結果が予測し難い為であることが少なくない。訴訟となる事案は、双方に相応の言い分があり、訴訟以前の交渉でも解決に至らなかったことが少なくなく、更に、わが国では、証拠開示制度ないし証拠収集制度が不十分であることもあって、提訴段階では、訴訟の結果を予測し難い事件が多い。それにもかかわらず、弁護士報酬を原則として敗訴者が負担するという制度が導入されるならば、弁護士報酬を転嫁する手段も、負担する経済力もない市民や中小零細企業は、敗訴の場合の相手方の弁護士報酬を心配し、一層、訴訟をためらうこととなりかねない。また、敗訴の場合の負担を懸念して、不当な請求に応じたり、意に反する和解を甘受せざるを得ないという事態も生じかねず、訴訟は経済的な強者が弱者を威嚇する道具となりかねない。中間報告は、敗訴者に負担させるべき弁護士費用額の定め方、敗訴者負担の例外とすべき訴訟の範囲及び例外的取扱いの在り方等について検討すべきであるとし、政策形成訴訟、労働訴訟、少額訴訟などを敗訴者負担の例外とする考え方を示してはいるが、例外とすべき明確な基準を定めることはほとんど不可能であり、先に指摘した懸念を払拭できるものではない。これまで、消費者問題や公害問題、あるいは立法府や行政府が政策や制度の変更を求められる局面で、情報の格差(証拠の偏在)と経済力の格差等から、勝訴の確かな見込みがない中で、権利救済の為の裁判が提起され、幾多の敗訴判決を乗り越えて、市民の権利が確立し、政策や制度改正への途が拓かれてきたが、弁護士報酬の敗訴者負担制度が導入されるならば、そのような訴訟の提起は、極めて困難となってしまう。以上のとおり、弁護士報酬の一般的な敗訴者負担制度は、その意図するところとは異なり、市民の訴訟による解決を躊躇させ、国民の司法へのアクセスを現状よりも一層困難にする面を有しており、市民の為の司法改革の理念に逆行するものである。当会としては、その導入に強く反対する。

平成12年12月08日 少年法改正に関する会長声明
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平成12年11月28日、国会において、刑事処分対象年齢を現行の「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げ、16歳以上の重大事件については刑事手続に回す「原則逆送」という、少年事件の刑罰化・厳罰化への大転換を盛り込んだ少年法「改正」法が可決された。本「改正」法については、国会における審議のなかで、少年犯罪が決して凶悪化、低年齢化していないこと、「刑罰化」「厳罰化」が少年犯罪の抑止につながらないことなど様々な問題が指摘されたし、当会も、本「改正」法が、教育的対応を第一義とし少年の成長・発達を援助するため保護主義を原則としている少年法の基本理念を逸脱するものとして、慎重な審議を求めてきた。 それにもかかわらず拙速かつ不十分な審議により、かかる抜本的「改正」が行われたことは極めて遺憾である。 参議院段階で「改正」法の施行5年後に見直すとの付則条項を急遽加えたことからも、今回の「改正」法の内容における問題性及び法案審議の不十分さを窺わせるものである。当会は、本「改正」少年法施行後も、現場における運用の中で少年の保護育成という少年法の基本理念が堅持されるよう働きかけるとともに、少年審判の運営、処遇がどのように変化してゆくか、厳罰化が子どもにどのような影響をもたらすかを厳しく監視し、修正として付則に盛り込まれた5年後の見直し時期までに今回の改正の問題点を指摘し、あるべき少年法の実現に向けて努力する所存である。

平成12年10月02日 情報公開条例に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/602
今般、浅野宮城県知事は、宮城県議会9月定例会に「公安委員会」、「警察本部長」などを実施機関に加える旨の宮城県情報公開条例の改正案を提案した。 この改正案の中の、情報を公開しないことができる非開示規定に関し、「犯罪の予防、捜査等に支障が生ずるおそれがある情報」と定める現行規定によっても公開すべきでない捜査情報等は保護できるとする知事の主張に対し、県警側は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という)の規定と同様「犯罪の予防、捜査等に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めるにつき、相当の理由がある情報」としないと治安維持に支障が出ると主張し、この論議について社会的な関心が集まっている。しかしながら、捜査情報等の保護は知事提案にかかる規定でも十分であり、県警が危惧するような状況は考えられず、他方において県警側の主張を採用した場合、非公開処分の濫用のおそれが危惧されることに照らせば、知事提案の規定について敢えて県警が主張するような修正を行うべきではないと考える。情報公開法案の審議の際も、県警が主張する規定方法をとることについては異論が多く、とりわけ、ときに高度の政治判断が要求され、場面によっては司法判断になじみにくい面があるとされる外交、防衛情報と同じように捜査情報を扱うことには強い批判があった。捜査機関が逮捕状や捜索差押令状を求める際に裁判官の審査を経なければならないことからも明らかなように、本来、捜査活動は司法判断になじむものであるし、裁判所は捜査活動の適否を監督する機関でもある。判断の専門性・技術性・政治性いずれの点からも他の情報と異なる扱いをする合理的理由はないと言わなければならない。また、現行規定にあって、公開・非公開の適否が裁判上問題になったときには、真に非公開にすべき捜査情報等について、情報の内容そのものを明らかにすることなく、個々の非公開部分ごとにその種類、性質等及び非公開の理由を説明する文書を捜査機関が提出するといった主張・立証方法(いわゆる「ヴォーン・インデックス方式」と呼ばれる)をとることにより、「捜査等に支障を及ぼすおそれ」があるか否かについて適切な司法判断ができると考えられる。公開すべきでない捜査情報等を明らかにしないまま「捜査等に支障を及ぼすおそれ」の有無について主張・立証するのは極めて困難であるとの県警の主張は杞憂にすぎない。県警は現行規定では裁判の場で重要な捜査に関する情報が開示されるおそれがあるため、国や他県から捜査に関する情報が提供されなくなるという危惧を表明しているが、かかる状況は現実には考えにくく、またそのようなことはあってはならない。むしろ危惧すべきは県警の主張を採用した場合における情報秘匿のおそれである。警察にあっても度重なる不祥事が相次ぎ、しかも強い身内意識や組織防衛の立場から不祥事が露見してもなおそうした事実の情報公開に消極的であったことが他県等で報告されており、上記秘匿のおそれは決して杞憂ではない。当会は平成2年の宮城県情報公開条例制定の際にも、情報非公開の聖域を作るべきではなく、公安委員会をも実施機関に含めるべきであるとの意見を表明している。この表明の根拠である「より開かれた県政、民主的行政を築く」という観点は今回の改正においても最重要視されなければならない。以上述べてきたとおり捜査情報についても他の情報と異なる扱いをすることなく、真に実効的な情報公開条例とするための改正こそ県民の望んでいるものと言うべきである。

平成12年09月25日 少年法の改正に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/604
自民、公明、保守の与党三党は、前国会で廃案となった政府案の主要な部分を取り入れた少年法改正案(以下「本法案」という)を本年9月下旬開催の臨時国会に議員立法として上程しようとしている。上記政府案は、現在の職権主義構造下において、検察官の立会いを認め、観護措置期間を延長することなどを内容とするものであり、少年審判の基本理念である保護育成に反することはもちろん、何ら事実認定の適正化に資することにもならないことは、当会が従来より再三指摘してきたところである。今回の与党案は、上記のような問題を含んだ政府案に加えて、刑事処分対象年齢を現行の「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げ、16歳以上の重大事件については刑事手続に回す「原則逆送」という、少年事件の刑罰化・厳罰化への大転換を盛り込んだものであり、少年法の抜本的改正と言わなければならない。少年法の理念は、教育的対応を第一義とするものであり、少年の成長・発達を援助するため保護主義を原則としている。この少年法の基本理念は、社会内での教育的処遇を目指すべきであるとする「子どもの権利条約」等の国際準則にも合致しており、制度的に高い評価を受けているものである。加えてわが国の統計によれば大半の非行少年が更生し、20代の犯罪率が他の国に例がないほど低下しており、これは現行少年法のもとで保護システムが基本的には有効に機能していることの証左である。加えてアメリカの例を見ても「刑罰化」「厳罰化」が少年犯罪の抑止につながっておらず、少年の立ち直りにとっても少年法の理念に基づく矯正教育こそが有効であるというべきである。本法案のような抜本的改正は、少年犯罪の実態と原因の調査や重大な少年事件のケース分析を丁寧に行った上で、少年犯罪の被害者も含めた幅広い人々から十分に意見を徴するなど広範な国民的議論を経て、慎重に行われるべきである。 しかるに今回、与党三党は、国民的議論が熟しているとは到底認められないにもかかわらず、法制審議会の議論すら経ないで拙速に本法案の成立を図っており、手続面においても重大な問題が存する。よって、当会は、本法案に反対の意思を表明する。

平成12年05月17日 少年法改正法案の審議入りに対する会長声明
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本年5月11日、『少年法を一部改正する法案』(以下「本法案」という)は、衆議院本会議において、趣旨説明と質疑が行われ、法務委員会において実質審議が開始されることとなった。今回の審議入りは「5千万円恐喝事件」や17歳の少年による「主婦刺殺事件」「バスジャック事件」等も契機としているが、これらの少年事件の示していることは、子供の最初のSOSや問題行動を正面から受け止めて対応しきれない家庭、学校、警察、地域社会のあり方の問題や、少年の心の生育の未熟さ・不安定さであって、この法案のような対症療法的な処罰手続の強化によっては同様な事件の防止を期待できるとは考えられない。いま求められていることは、これらの事件の真の原因を探求する中で子供の状況を正確に把握し、子供の成長を真に支援し援助する大人側の連携と協力の態勢づくりである。本法案により現在の職権主義構造下において、検察官が立会い、観護措置期間が延長され、あるいは多数の監察官に囲まれた中で審判が行われることは、少年審判の基本理念である保護育成に反することはもちろん、何ら事実認定の適正化に資することにもならないことは、当会が従来より再三指摘してきたところである。よって、当会は、改めて本法案に反対するとともに、国会においては少年非行の真の解決を目指した冷静かつ慎重な審議がなされるよう強く求めるものである。

平成12年03月27日 少年法改正法案に対する会長声明
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『少年法を一部改正する法律案』(以下「本法案」という)は昨年(1999年)3月10日に国会に上程されたものの、日弁連や国民の反対運動の中で、衆議院法務委員会で継続審議となってきた。しかし、今年2月のいわゆる草加事件の民事裁判に関する最高裁判所判決を契機として審議再開の動きがあり、同法務委員会でいつ審議が開始されるかわからない状況になっており、本法案が可決される危険性も出てきている。仙台弁護士会は、本法案については、そのもととなった法制審議会少年法部会での法務省からの要綱骨子試案や、同試案に添った法制審議会の答申の段落から、その内容となっていた検察官の審判への関与、観護措置期間の延長、裁定合議制の導入等について、少年の保護育成という少年法の理念を変容する恐れがあるとして、反対の意思を会長声明(1998年12月8日)や定期総合決議(1999年1月30日)において表明してきた。 また、その後も、日弁連少年司法改革対策本部の呼び掛けに応じて、市民集会を開催したり、反対の請願署名に取り組んだり、国会議員に対する要請行動を行なう等反対運動に取り組んできた。ところで、本年2月に最高裁判所はいわゆる草加事件の民事賠償裁判において、少年らを犯人とした東京高等裁判所の判決を破棄し、事実上少年達の無罪を全面的に認めた。草加事件の誤判の原因は、当初から無罪を示す物証があったのに虚偽自白を強要したこと、その物証を少年法の規定に反して家庭裁判所に送付しなかったこと、自白と物証の矛盾があった後も検察官が警察の捜査の誤りを糊塗しようとしたことなど、大人の冤罪事件と同様、捜査官の自白偏重の姿勢や証拠隠し等捜査のあり方にあったものである。本法案による少年法改正の目的として、「少年裁判における事実認定手続の一層の適正代を図る」ということがあげられているが、誤判を防止するためにまずなすべきことは捜査の適正化であり、また審判を少年法の理念にのっとって運用することというのが、草加事件の教訓のはずなのである。草加事件で、少年審判と民事裁判で結論を異にしたことを理由として、少年法改正案の成立を急ぐことは、問題の本質を見誤るものであり、本法案により現在の職権主義構造下において検察官が立会い、観護措置期間が延長され、あるいは多数の裁判官に囲まれたなかで審判が行われる事になれば、少年はますます口を閉ざし、少年の保護育成に反することはもちろん、何ら事実認定の適正化に資することにはならないものである。よって、当会としては、改めて本法案に反対の意思を表明する次第である。

平成11年7月21日会長声明1999年07月21日
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安田弁護士の保釈を求める声明
 第二東京弁護士会所属の安田好弘弁護士が去る平成10年12月6日に強制執行妨害の容疑で逮捕され、その後同年同月25日東京地方裁判所に公訴が提起され、現在同裁判所で審理が係属中である。安田弁護士の弁護団は、公訴提起後これまでに7回にわたり保釈請求を行っている。これに対し、東京地方裁判所は6月11日保釈を許可する決定をしたが、東京高等裁判所は検察官の抗告を受け、即日保釈許可決定を取り消し、保釈請求を却下した。 次いで東京地裁は7月5日再度保釈を許可する決定をしたが、翌6日東京高裁はこれを取り消し、保釈請求を却下した。そもそも必要的保釈請求は除外事由に該当しない限り、被告人の権利として原則認められるべきものである(権利保釈)。そうであってこそ被告人に当事者としての地位を与え、防禦ないしその準備の機会を確保しようという、刑事訴訟における当事者主義構造に適うものと言いうる。しかしながら裁判実務においては、例えば公訴事実を否認したり、検察官申請の証拠に同意しない等の態度を被告人側がとると、抽象的に罪証隠滅のおそれがあるとして保釈請求が却下され、長期勾留が継続されるなど原則と例外が逆転した運用がなされてきており、弁護士及び弁護士会はこのような運用を強く批判してきたところである。今般の安田弁護士の例は、まさにわれわれが批判してきた実務運用上の問題点を如実に示しているものと思われるものであり、裁判所に対しては権利保釈制度の趣旨に則り真に具体的に罪証隠滅のおそれがあるのか適正な判断が求められるものである。しかるに、二度にわたる東京高裁の保釈却下決定は、関係者に働きかけるなどして罪証を隠滅すると疑うに足りる相当の理由が依然存在すると抽象的にのべるだけで格段の具体的理由も示さず、公判を現に審理している東京地裁の保釈許可決定を取り消したもので、極めて遺憾である。当会は、勾留・保釈の不当な運用は一人安田弁護士の場合にのみ現れているわけではないという現状に鑑み、刑事訴訟法の権利保釈制度の趣旨に則った適切な運用がなされるよう強く望むとともに、これを是正すべく全力を挙げることを決意する。

平成11年07月21日 国旗・国家法案に反対する声明
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平成11年7月21日会長声明
1999年07月21日
 政府は、「国旗および国歌に関する法律案」を国会に提出し、今国会での成立を図ろうとしている。同法案は「日の丸」及び「君が代」をそれぞれ国旗、国歌として法制化しようとするものである。確かに「日の丸」「君が代」が国民の間にある程度浸透していることも事実であるが、一方で歴史的経緯や歌詞の内容から国旗、国歌とすることを疑問視する国民も少なくない。 のみならず、法案の上程にあたり、政府は「君が代」の「君」の解釈について「日本国憲法に規定された国民統合の象徴としての天皇」であるとの新しい見解を示したが、このような解釈をとるにしてもなお「君が代」の歌詞は国民主権という憲法の基本原則に抵触する疑いがある。法案には「日の丸」「君が代」に対する尊重規定や義務規定はなく、政府も法案は「日の丸」の掲揚や、「君が代」の斉唱を強制するものではないとする。しかしながら、法制化されてない現時点においても、公立の小中高等学校において、文部省通達や学習指導要領を根拠として、「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱が事実上義務付けられており、法制化により?層義務化や強制が強まる恐れがあり、憲法の保障する思想及び良心の自由に関わる問題となりかねない。今回の法案上程は、国民的合意の基になされたものとは言えず、あまりに拙速であり国民の間に無用の混乱を引き起こしかねない。よって、当会は、国旗、国歌について、法制化の必要性を含め、十分かつ慎重に議論されるべきであると考え、今国会における早急な法案成立に反対するものである。

平成11年07月21日 住民基本台帳法の一部改正法案に反対する声明
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平成11年7月21日会長声明1999年07月21日
住民基本台帳法の一部改正法案に反対する声明
さる6月15日、衆議院において、住民基本台帳法の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)が可決され、現在参議院において審議中である。この改正法案は、すべての国民に「住民票コード」と呼ぱれる10桁の個人番号を付し、氏名、住所、性別、生年月日の4つの情報を全国の自治体のコンピューターに登録し、指定情報処理機関が統一的に管理することをその内容とする。しかし、この改正法案にはプライバシー保護等の点から重大な問題がある。改正法案は、収集される情報を上記の4情報としているが、一方で行政機関による他の情報との結合を特に禁止しておらず、政府がすでに保有する税金、医療、教育、年金、福祉、家族、犯罪等の多くの個人情報と、将来結合される恐れがあり、住民基本台帳法の本来の目的を逸脱し、国民総背番号制への道を開くものとなりかねない危険性を孕んでいる。また、個人情報が他に漏洩する危険性も否定できない。現行の個人情報保護法(行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律)は、民間情報を対象とせず、他方、行政機関の個人情報についての保護措置も不十分であり、個人情報の保護制度の整備がなされない現状のまま「住民票コード」が流出した場合、深刻な社会問題とならざるを得ない。改正法案が成立した場合、個人の知らないところでさまざまな個人情報が数多くの行政機関に保有され、かつ相互利用されることになりかねず、まさに国家による国民の集中管理という事態をまねきかねない。このような状態は憲法13条の保障するプライバシー保護の観点から看過できない。よって、当会は改正法案の制定に強く反対する。

平成11年05月20日 安藤・斎藤弁護士接見妨害 国賠訴訟最高裁判決に対する声明
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平成11年5月20日会長声明1999年05月20日
 平成11年3月24日、最高裁大法廷は、安藤・斎藤両弁護士の接見妨害国賠訴訟において、刑事訴訟法39条3項は、憲法34条、37条3項、38条1項のいずれにも違反しない旨の判決を言い渡した。しかしながら、本判決は、刑事訴訟法39条3項の規定がもたらした接見妨害の実情を直視せず、接見交通権の確立を阻害するものであって、著しく不当である。そもそも身体の拘束を受けている被告人・被疑者と弁護人または弁護人となろうとする者が自由に接見できる権利は前記憲法諸規定から導かれる刑事手続上最も重要な基本的人権のひとつであり、刑事訴訟法39条1項は、これらの権利を受けて弁護人と被疑者・被告人との接見交通権を規定しているものである。しかし、接見交通権は、その立法当初より刑事訴訟法39条3項を名目とする捜査当局の執拗な接見妨害により形骸化され、その結果、多くのえん罪事件や人権侵害事件等が生み出されてきた。これに対して、弁護士会は総力をあげて目由な接見交通権の確保のために闘い、いわゆる一般的指定制度の改廃を実現させるなど一定の成果を勝ち取ってきた。また、全国各地で起こされた接見妨害国賠訴訟において、検察官の行った接見指定を違法とする下級審判決が相次いで出され、最高裁も昭和53年7月10日の判決(いわゆる杉山事件判決)において、接見交通権が被疑者らの憲法上の権利に由来する重要な権利であり、原則としていつでも接見の機会を与えなければならない旨明言したうえ、刑事訴訟法39条3項に規定される「捜査のため必要があるとき」とは、現に被疑者を取調中であるなど捜査の中断による支障が顕著な場合をいうとして、捜査機関の指定による制限を必要止むを得ない例外的な措置である旨判示した。ところが、なおも各地で捜査機関による接見妨害が相次ぐ中で、最高裁は平成3年5月10日の判決(いわゆる浅井事件判決)において、接見指定要件を緩和させるかの如き判断を示し、その結果、その後になされた接見妨害国賠訴訟の下級審判決の後退がもたらされることとなり、本判決の原審である仙台高裁第3民事部も、平成5年4月14日の判決において、安藤・斎藤両弁護士に対してなされた捜査機関による接見制限を適法である旨不当な判断を示すにいたった。 このような司法判断の後退に対し、国賠訴訟弁護団は接見交通権の確立を期すためには刑事訴訟法39条3項の違憲性を真正面から指摘することが必要との認識に立ち、最高裁に対し同条項の違憲判断を強く求め、日弁連もこれを支援してきた。また、国際人権法においては、いついかなるときでも、被疑者は弁護人の援助を受ける権利があることを認めており、おりしも国際人権規約委員会は、平成10年11月、日本政府の報告書に対する最終見解を発表し、刑事訴訟法39条3項のもとで弁護人へのアクセスが厳しく制限されている点を指摘し、規約に適合するように日本の起訴前勾留制度を直ちに改革するよう日本政府に強く勧告している。最高裁は、このような情勢の中で刑事訴訟法39条3項の違憲性を明確にすることを強く求められていたものであるが、本判決は、浅井事件判決の接見指定要件の解釈を維持したうえで、同条項は憲法に違反しない旨の判断を示したものである。これは接見交通権の確立を求める理論と運動に逆行するものであり、極めて問題である。当会としては、本判決を厳しく批判するとともに、今後とも接見交通権の確立のため粘り強い運動を続けていく決意を表明する。